公正証書遺言の手数料を財産額と人数で徹底解説

公正証書遺言の手数料を財産額と人数で徹底解説

公正証書遺言の手数料を正しく知って損しない準備を

相続人が4人いると、同じ財産総額でも手数料が1人の場合の約4倍になることをご存じですか?


この記事の3つのポイント
💡
手数料は「財産総額」では計算しない

公正証書遺言の公証人手数料は、財産総額ではなく「受け取る人ごとの財産額」をもとに計算します。相続人が多いほど合計手数料は高くなります。

⚠️
病院や自宅への出張は手数料50%増し

公証役場に来られない場合に公証人が出張すると、基本手数料が1.5倍になります。さらに日当・交通費も別途かかる点に要注意です。

費用を抑えるコツは「書類収集を自分で」

専門家への依頼範囲を絞り、書類収集を自分で行うことで、専門家報酬を10万円以上節約できるケースもあります。


公正証書遺言の手数料の全体像|費用は3つの項目で構成される


公正証書遺言を作成するとき、かかる費用は「公証人手数料」「専門家報酬」「実費」の3つに分かれます。これをひとまとめに「手数料」と呼ぶ方も多いですが、実はそれぞれ性質がまったく異なります。


まず「公証人手数料」は、国が政令(公証人手数料令)で定めた法定の費用です。全国どの公証役場に行っても金額は同じです。財産の価額と受け取る人数に応じて変動し、これは自分の意思でゼロにすることができません。


次に「専門家報酬」は、司法書士・行政書士・弁護士に遺言作成のサポートを依頼した場合に発生する費用です。法定ではないため、事務所によって大きく差があります。相場は5万円〜15万円程度で、依頼範囲によって変わります。もし専門家を使わずに直接公証役場とやり取りすれば、この費用はゼロになります。


最後に「実費」は、戸籍謄本・登記事項証明書・印鑑証明書などの取得費用や、遺言書正本・謄本の発行費用などです。これは数千円〜2万円程度が目安です。


これが基本です。次のセクションから、各項目をくわしく見ていきましょう。


以下は公正証書遺言の費用に関する公的情報の参照先です。
日本公証人連合会|公正証書遺言の作成手数料について(公式)


公正証書遺言の手数料(公証人手数料)の計算方法と具体例

「財産総額で手数料が決まる」と思っている方は多いですが、それは誤りです。正確には、遺言で財産を渡す相手(相続人・受遺者)ごとに財産額を算出し、それぞれに手数料を計算して合計します。


公証人手数料令第9条別表に基づく手数料は以下のとおりです。


目的の財産額 手数料
100万円以下 5,000円
200万円以下 7,000円
500万円以下 11,000円
1,000万円以下 17,000円
3,000万円以下 23,000円
5,000万円以下 29,000円
1億円以下 43,000円
1億円超〜3億円以下 43,000円+5,000万円ごとに13,000円加算
3億円超〜10億円以下 109,000円+5,000万円ごとに13,000円加算


さらに、財産総額が1億円以下の場合は「遺言加算」として11,000円が上乗せされます。これは相続人の数に関係なく1通の遺言書に対して1回だけかかるものです。


具体例で確認してみましょう。


  • 📌 例①:財産6,000万円を1人に全額相続させる場合
    基本手数料:43,000円(1億円以下)+遺言加算:11,000円=合計 約54,000円
  • 📌 例②:同じ6,000万円を2人に3,000万円ずつ相続させる場合
    A分:23,000円 + B分:23,000円 + 遺言加算:11,000円=合計 約57,000円
  • 📌 例③:同じ6,000万円を4人に1,500万円ずつ相続させる場合
    4名×17,000円=68,000円 + 遺言加算:11,000円=合計 約79,000円


財産総額が同じ6,000万円でも、例①と例③では手数料が25,000円異なります。これは意外と知られていない事実です。相続人の数が多いほど、受け取る財産額が少額の区分に分散されやすく思えますが、人数分の手数料を積み上げるため、結果的に総額が高くなるケースが多いです。


また、原本が3枚を超える場合は1枚あたり300円が加算されます。遺言書の正本・謄本(書面発行の場合)にも1枚あたり300円かかります。遺言内容を複雑にしすぎると枚数が増え、ここでも費用が膨らみます。


手数料の仕組みを先に知っておくことが大切です。


日本公証人連合会|公証人手数料(遺言関連)の詳細解説(公式)


公証人の出張費用と手数料50%増しの仕組み|病院・老人ホームに来てもらう場合

体調を崩して公証役場まで出向けない場合でも、公証人に自宅・病院・老人ホームなどへ出張してもらうことは可能です。ただし、費用はそれなりに増えます。


出張の場合の費用は、次の3つが積み重なります。


  • ⚠️ 基本手数料の50%増し:たとえば基本手数料が46,000円なら、1.5倍の69,000円になります
  • ⚠️ 公証人の日当:出張先に1日滞在する場合は2万円、4時間以内なら1万円(日当は現地までの移動時間は含まず)
  • ⚠️ 交通費:公証役場から出張先までの実費(電車・タクシーなど)


仮に手数料46,000円(基本)のケースで出張を頼んだ場合、50%増しで約23,000円増加し、さらに日当1万円+交通費が加わります。合計で3万円以上の追加支出は珍しくありません。


厳しいところですね。


「まだ元気だから大丈夫」と先延ばしにしていると、いざというときに出張費が上乗せされるリスクがあります。公正証書遺言の作成は、できるかぎり公証役場に自分で出向ける状態のうちに済ませておくのが、費用面でも合理的な選択です。


また、入院中や療養中に遺言を作成する場合、「病床行為」として手数料が50%加算されることが公証人手数料令で定められています。遺言者が実際に床に伏していることが条件ですが、これも事前に知っておくと予算計画が立てやすくなります。


遺言公正証書の公証人手数料・出張費用について詳しく解説したページ


公正証書遺言の手数料を抑えるための3つの実践ポイント

公証人手数料は法定のため値引きできませんが、専門家報酬と実費は工夫次第で大幅に削減できます。具体的な方法を3つ紹介します。


まず1つ目は「書類収集を自分で行う」方法です。専門家へのフルサポート依頼で最もコストがかかる業務のひとつが書類収集代行です。戸籍謄本(1通450円)、印鑑登録証明書(1通300円)、住民票(1通300円)、不動産の登記事項証明書(1通600円)などは、マイナンバーカードがあればコンビニで取得できる自治体も増えています。これらを自分でそろえるだけで、数万円の専門家報酬を節約できるケースがあります。


2つ目は「相談のみ専門家に依頼し、文案チェックだけお願いする」方法です。フルサポート(10〜15万円)と比較して、相談・チェックのみの依頼なら3〜5万円程度に抑えられることもあります。遺言内容がシンプル(相続人2名以下・財産の種類が少ない)であれば、この方法は有力な選択肢です。


3つ目は「遺言内容をシンプルに整理する」ことです。相続人の数が多いほど手数料は合計で高くなります。また、付言事項(遺言に添えるメッセージ部分)を長く書きすぎると遺言書の枚数が増え、正本・謄本の発行費用も増加します。付言事項は要点を絞って書き、遺言の構成をコンパクトにするだけで数百円〜数千円の節約につながります。


ただし注意点があります。費用を優先するあまり、遺留分(配偶者・子・直系尊属に保障された最低限の取り分)への配慮をないがしろにした遺言を作ると、相続後に「遺留分侵害額請求」が起きてトラブルになるリスクがあります。請求を受けた相手が遺産の一部を金銭で返さなければならなくなるケースもあり、そうなると余計な費用と時間がかかります。節約はできる部分で行い、法的な観点は必ず専門家の目を通しておくのが原則です。


司法書士が解説する公正証書遺言の費用節約方法と内訳の詳細


金融資産保有者が見落としがちな「手数料の盲点」と賢い作成戦略

金融に関心の高い方ほど、「総費用を最小化したい」という発想から、遺言書の作成を後回しにしたり、自筆証書遺言で済ませようとしたりするケースがあります。しかし、この判断が後々コストを大幅に増やすことがあります。


まず、株式投資信託・不動産など複数の金融資産を持つ場合、公証人手数料の計算に使う「財産の価額」は、それぞれの評価額の合計(受け取る相続人ごとの分)を用います。不動産なら固定資産評価額、株式なら時価評価額が基準です。負債(住宅ローンなど)は差し引かず、プラスの財産のみで計算する点も見落としがちなルールです。


たとえば、評価額8,000万円の不動産と2,000万円の金融資産を1人に相続させる場合、合計1億円として基本手数料49,000円(※日本公証人連合会の手数料表より)+遺言加算11,000円の計60,000円になります。これは総財産1億円以下なので遺言加算が適用される最後のラインです。


もし財産が1億円をわずかに超えると遺言加算11,000円はかかりませんが、1億円超の手数料区分が適用されるため基本手数料が上がります。この境界付近で「わずかに1億円を超える」ケースは要注意です。


もうひとつ見落とされがちなのが「遺言書の内容変更(書き直し)」にかかるコストです。公正証書遺言を変更したい場合、新しい公正証書遺言を一から作成し直すことになります。その際は当初と同様の公証人手数料・専門家報酬が再度かかります。「今の内容でいいか」を最初の段階でしっかり検討しておくことが、長期的なコスト管理につながります。


これは使えそうです。


さらに、「公正証書遺言を作ったあとに資産が増えた場合はどうなるか?」という疑問を持つ方もいます。遺言書に記載されていない財産(遺言作成後に取得した資産など)は、原則として法定相続に従って分割されます。資産内容が変わった際には、定期的に遺言書を見直すことが賢明です。遺言書の改訂は費用がかかりますが、「意図しない相続」が起きるリスクと比較すれば、それは合理的な保険といえます。


金融資産の管理と同様、遺言書も「一度作って終わり」ではなく、定期的な見直しが資産防衛の観点で有効な行動です。


三菱UFJ信託銀行|公正証書遺言の費用計算例(財産1億円ケースなど)(PDF)




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