

申請を11月まで待てると思っているなら、あなたは数十万円を取り逃がすリスクがあります。
令和7年度(2025年度)の働き方改革推進支援助成金は、2025年4月1日(火)より交付申請の受付が始まりました。
これは例年どおりのスタートです。
締切日は2025年11月28日(金)必着とされていました。ただし、厚生労働省の公式サイトには「予算に制約されるため、11月28日以前に予告なく受付を締め切る場合があります」と明記されています。過去には2021年度に10月15日という異例の早期締切が発生した実績もあるため、「まだ先がある」と油断するのは危険です。
つまり「早い者勝ち」の側面が強い助成金です。
2025年度の事業実施期間は、交付決定日から当該年度の1月30日(金)まで。支給申請書の提出期限は2026年2月6日(金)と設定されていました。スケジュール全体の流れを把握しておくだけで、申請漏れを防ぎやすくなります。
| ステップ | 時期(2025年度実績) |
|---|---|
| 交付申請受付開始 | 2025年4月1日(火) |
| 交付申請締切 | 2025年11月28日(金)※予算上限次第で前倒し |
| 事業実施期間 | 交付決定日〜2026年1月30日(金) |
| 支給申請締切 | 2026年2月6日(金) |
参考:厚生労働省による2025年度の公式スケジュール案内です。
厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
この助成金には「会社単位」と「団体単位」という大きな区分があります。個々の中小企業が申請するのは会社単位の3コース、複数の事業主が集まる団体が申請するのが団体推進コースです。
以下の4コースから自社の状況に合ったものを選びます。
| コース名 | 主な対象 | 助成上限額 |
|---|---|---|
| 労働時間短縮・年休促進支援コース | 全業種の中小企業 | 最大150万円 |
| 勤務間インターバル導入コース | 全業種の中小企業 | 最大120万円 |
| 業種別課題対応コース | 建設・運送・医療・砂糖製造業等 | 最大250万円 |
| 団体推進コース | 事業主団体等 | 最大1,000万円 |
上記の上限額に加えて、賃上げを成果目標に加えた場合には別途加算があります。これが意外と大きな金額になるため、詳しくは後述します。
補助率は原則3/4です。ただし、常時使用する労働者が30人以下で、かつ労務管理用ソフトや設備機器の導入費が30万円を超える場合は補助率が4/5に引き上がります。
4/5が適用される条件が比較的シンプルです。
この助成金を申請できるのは「中小企業事業主」に限られます。自社が対象かどうかは、資本金または常時使用する労働者数のどちらか一方を満たせば認定されます。
| 業種 | 資本金・出資額 | 常時使用する労働者数 |
|---|---|---|
| 小売業(飲食店含む) | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他(製造業・建設業・運送業等) | 3億円以下 | 300人以下 |
なお、医業に従事する医師が勤務する病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院については、資本金の額にかかわらず「常時使用する労働者300人以下」であれば中小企業として扱われる特例があります。
これは意外と知られていないポイントです。
個人事業主も条件を満たせば申請可能です。ただし、雇用している従業員が存在し、労災保険の適用事業主である必要があります。
従業員ゼロの一人事業主は対象外となります。
注意が必要です。
参考:個人事業主が申請する際の要件について詳しく解説されています。
アクティベーションサービス|働き方改革推進支援助成金は個人事業主も対象?要件や注意点を解説
全業種の中小企業が活用できる基本コースです。主な成果目標は3つあり、1つ以上を選択して達成することが受給の条件になります。
成果目標①:36協定の時間外労働上限の縮減
現在の36協定で月80時間超を設定している場合、月60時間以下に縮減すると上限150万円が支給されます。月60時間超〜月80時間以下への縮減であれば上限50万円です。
2025年度の変更点として、令和7年1月1日以降に初めて36協定を届け出た事業場は成果目標①の対象外となりました。
これは改悪と評されています。
成果目標②:年次有給休暇の計画的付与制度の新規導入
就業規則へ計画的付与の規定を追加することで、上限25万円の支給対象になります。書類上の手続き中心なので比較的取り組みやすい目標です。
成果目標③:時間単位年休+特別休暇の新規導入
時間単位の年休制度と、病気休暇・ボランティア休暇・不妊治療のための休暇などの特別休暇を1つ以上同時に就業規則へ追加することで、上限25万円が支給されます。
どれが条件です。
いずれの成果目標にも「賃上げ加算」を上乗せできます。例えば従業員30人以下の企業で7%以上の賃上げを30人に実施した場合、加算上限は720万円に達します。これは実質的な助成金の「倍以上」の価値になり得るため、賃上げを計画している経営者にとっては非常に重要な情報です。
退勤から次の出勤まで一定時間(9時間以上)の休息を確保する「勤務間インターバル制度」の新規導入や拡大を支援するコースです。
申請前の前提条件として、過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態があることが必要です。ただし、勤務形態上インターバルの確保が困難な事情が認められる場合などは例外が認められます。
助成上限額は以下のとおりです。
| 区分 | 導入するインターバル時間数 | 助成上限額 |
|---|---|---|
| 新規導入 | 9時間以上11時間未満 | 100万円 |
| 新規導入 | 11時間以上 | 120万円 |
| 適用範囲の拡大・時間延長 | 9時間以上11時間未満 | 50万円 |
| 適用範囲の拡大・時間延長 | 11時間以上 | 60万円 |
11時間以上のインターバルを新規導入すると120万円が上限です。
実例として、飲食店(従業員9人)がスチームコンベクションオーブンを導入して調理の自動化に取り組んだところ、業務の見通しが改善され1時間の休憩確保と11時間以上のインターバル達成に成功したケースがあります。設備投資と制度整備をセットで行うことが成功のコツです。
このコースは2024年4月に時間外労働の上限規制が新たに適用された特定業種を優先的に支援します。対象業種は建設業・運送業・病院等・砂糖製造業(鹿児島・沖縄)・情報通信業・宿泊業の6業種です。
業種別課題対応コースの助成上限は最大250万円で、全コースの中で最も高額です。該当業種の経営者にとって最優先で検討すべきコースと言えます。
業種ごとに選択できる独自の成果目標が設定されています。たとえば建設業なら「4週8休以上の週休2日制推進」が選択でき、1日増加ごとに25万円(最大100万円)の助成が受けられます。病院では「医師の労務管理責任者設置」「医師の労働時間の実態把握と管理」が成果目標として設定されています。
砂糖製造業(鹿児島・沖縄限定)を対象に「3直3交代制の勤務割表整備」という独自目標があり、達成時の上限額は350万円と高く設定されています。こうした地域・業種限定の高額枠は活用されないままになるケースが多く、競争率が低い穴場と言えるかもしれません。
参考:業種別課題対応コースの詳細な内容はこちら。
厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)
賃上げ加算は、会社単位の3コース(労働時間短縮・年休促進支援コース、勤務間インターバル導入コース、業種別課題対応コース)に共通して適用できる仕組みです。
従業員の時間当たり賃金を引き上げた人数と引き上げ率に応じて、上限額が加算されます。
従業員30人以下の中小企業の場合
| 引き上げ人数 | 3%以上 | 5%以上 | 7%以上 |
|---|---|---|---|
| 1〜3人 | 12万円 | 48万円 | 72万円 |
| 4〜6人 | 24万円 | 96万円 | 144万円 |
| 7〜10人 | 40万円 | 160万円 | 240万円 |
| 11〜30人 | 1人あたり4万円(上限120万円) | 1人あたり16万円(上限480万円) | 1人あたり24万円(上限720万円) |
これが大きいですね。
たとえば従業員30人以下の企業で7%以上の賃上げを30人分実施した場合、加算額だけで720万円になります。基本の助成上限額(例:150万円)と合算すると、合計870万円相当の助成を受けられる計算です。
2025年度の変更点として、3%以上の加算額が旧制度より一部縮小された一方で、新たに7%以上という区分が追加されました。賃上げ幅を大きく取れる企業ほど有利な設計になっています。
賃上げを予定している企業は、この助成金のスケジュールと合わせて賃上げの実施時期を調整することで、受給額を最大化できます。
会社単位の3コースに共通して、以下の9種類の取組の中から1つ以上を実施する必要があります。
| 番号 | 支給対象となる取組 |
|---|---|
| ① | 労務管理担当者に対する研修 |
| ② | 労働者に対する研修・周知啓発 |
| ③ | 外部専門家(社会保険労務士・中小企業診断士等)によるコンサルティング |
| ④ | 就業規則・労使協定等の作成・変更 |
| ⑤ | 人材確保に向けた取組 |
| ⑥ | 労務管理用ソフトウェアの導入・更新 |
| ⑦ | 労務管理用機器の導入・更新 |
| ⑧ | デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新 |
| ⑨ | 労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新 |
注意点が1つあります。
原則としてパソコン・タブレット・スマートフォンは対象外です。ただし、「長時間労働恒常化要件」に該当する場合は例外的にパソコン等の購入費用も助成対象に含まれます。この要件は「令和5年4月1日〜令和7年3月31日の期間を含む、2年連続で月60時間超の36協定を届け出た事業場」に適用されます。
また、乗用定員7人以上または車両本体価格200万円以下の乗用自動車も、長時間労働恒常化要件に該当する場合は対象経費として認められます。これが俗に「ハイエース申請」と呼ばれるケースで、検索キーワードとして「働き方改革推進支援助成金 ハイエース」が話題になったこともあります。
この助成金の申請は「事前申請型」です。取組を開始する前に必ず交付決定を受けなければなりません。
順序を間違えると全額不支給になります。
これが原則です。
STEP1:交付申請書を提出する
所在地を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に交付申請書を提出します。窓口への持参のほか、郵送またはjGrants(電子申請ポータル)での提出も可能です。jGrantsを利用するにはGビズIDの「プライムアカウント」または「メンバーアカウント」の取得が必要です。
STEP2:交付決定後に取組を実施する
交付決定通知が届いた後にはじめて、助成対象の取組を開始できます。
この順序は絶対に守る必要があります。
交付決定前に設備を購入したり、就業規則の変更を行ったりした場合、その費用は助成対象外になります。
STEP3:支給申請書を提出する
事業実施期間内(原則、交付決定日〜翌年1月30日)に取組を完了させ、成果目標を達成したうえで、支給申請書と証拠書類を提出します。
証拠書類には成果目標の達成を証明するものが必要です。たとえば36協定の縮減であれば「縮減後の36協定届の写し」、年次有給休暇の計画的付与であれば「改定後の就業規則の写し」などが該当します。
申請で損をしないために、特に重要な注意点を押さえておきましょう。
注意点①:交付決定前の着手は絶対NG
繰り返しになりますが、取組の着手・費用の発生はすべて交付決定後でなければなりません。
「申請中だから大丈夫」というのは誤りです。
交付決定通知書が届いてから動き始めることが大前提です。
注意点②:予算上限到達による前倒し終了リスク
2021年度には予定締切(11月末)より約1.5ヶ月早い10月15日に受付終了しました。
このリスクは毎年度存在します。
4〜6月のうちに申請書類を整えて早期に提出することが最大のリスク回避策です。
注意点③:過去1年以内の労働関係法令違反で失格
申請時点で、過去1年以内に賃金不払いなどの労働関係法令違反がある事業主は申請できません。また、過去3年間に不正受給があった事業主も対象外です。
注意点④:消費税は原則として助成対象外
設備購入等の費用に消費税が含まれる場合、消費税額を除いた金額(税抜)で助成金額が計算されます。見積もり段階から税抜金額で上限額との比較を行う必要があります。
注意点⑤:令和7年1月以降に初めて36協定を届け出た事業場は成果目標①対象外
2025年度から追加された新ルールです。新たに事業を始めたり、初めて36協定を届け出た事業場では、時間外労働の縮減(成果目標①)を使えません。
成果目標②または③の選択が必要になります。
注意点⑥:支給申請書は事業終了後30日以内か締切日のいずれか早い日まで
成果目標を達成してからの支給申請にも期限があります。提出が遅れると不支給になるため、取組完了後すぐに書類を準備するのが賢明です。
参考:助成金の不支給理由とよくある失敗事例について詳しくまとめられています。
社長の顧問|助成金をもらえない原因はこの7つ!失敗を防ぐための注意点と成功事例
団体推進コースは、個別の企業ではなく事業主の「団体」を対象とするコースです。商工会議所・事業協同組合・商工組合・一般社団法人などが申請主体となれます。
対象となる団体の条件は「3事業主以上で構成」「1年以上の活動実績」の2点です。共同事業主として申請する場合は10事業主以上の構成が必要です。なおかつ、傘下の構成事業主のうち中小企業が2分の1以上を占めることが必要とされています。
助成額の上限は原則500万円、都道府県をまたぐ広域団体などの場合は1,000万円です。かつ補助率は100%(全額助成)という、他のコースにはない破格の条件が設定されています。
成果目標は「支援した取組や結果を、構成事業主の2分の1以上に活用させること」の1つのみです。必ずしもすべての加盟企業が取り組む必要はなく、半数を超えれば達成とみなされます。
支援対象の取組としては、セミナー開催・好事例集の作成・合同求人広告の掲載・共同で利用する設備機器の導入・市場調査などが含まれます。
ここでは少し視点を変えてみましょう。
この助成金を「もらうもの」と捉えるか「投資の先払いを取り戻すもの」と捉えるかで、経営判断が大きく変わります。
たとえば労務管理ソフトの導入を検討している中小企業があるとします。月額2万円程度のクラウド型勤怠管理ツールを1年間(24万円)導入した場合、補助率3/4で最大18万円が助成されます。
実質負担は6万円です。
そこに賃上げ加算を組み合わせると、さらに大きな助成が受けられます。
つまり「賃上げ+設備投資+助成金申請」を一体で設計することで、実質的なコストを大幅に圧縮できます。
具体的な行動としては、まず自社の36協定の現状を確認し、月何時間の上限を設定しているかをチェックすることから始めます。月60時間超で設定しているなら、成果目標①(時間外縮減)が使えます。そのうえで今期の賃上げ計画と連動させて助成金の受給額をシミュレーションする、というのが「賃上げ連動投資」の考え方です。
この方向性は、令和8年度(2026年度)の概算要求でも「賃上げ加算の拡充」が継続されており、少なくとも数年単位での活用が見込めます。令和8年度の予算として101億円が計上されており、2026年4月前後に公募開始が予想されます。
申請書類の準備は、就業規則の確認・36協定の分析・設備購入の見積もり取得・添付書類の収集など、初めての事業者には相当な手間がかかります。こうした申請実務を社会保険労務士(社労士)に代行してもらうことも選択肢の1つです。
社労士への報酬の相場は、申請1件あたり着手金5〜10万円程度+成功報酬で受給額の10〜20%程度が一般的です。たとえば100万円の助成金を受給した場合、成功報酬が15%なら社労士費用は15万円です。
差し引きでも85万円の実入りがあります。
特に初回申請では、要件の確認ミスや書類不備が起きやすい場面です。申請を却下されてしまうと、その年度内での再申請は実質困難になるケースもあります。リスクを考慮すれば専門家のサポートは費用対効果が高いと言えるでしょう。
なお、社労士など「申請代行業者」の中には、実態のない申請書を作成して助成金を不正受給させる悪質業者が存在します。助成金関連でのトラブルが発覚した場合、不正受給として事業主名が公表され、返還金・加算金の支払いを求められます。
業者の選定は慎重に行いましょう。
参考:社労士と連携した申請のコツや注意点が解説されています。
hitowa社会保険労務士法人|社労士が解説|助成金の基礎知識と個人事業主・中小企業が活用できる制度
令和8年度(2026年度)の働き方改革推進支援助成金については、2025年度末時点で厚生労働省から概算要求資料が公開されており、主な見直し方向が判明しています。
予算規模として101億円が計上される予定であり、2025年度の92億円から約10%増加します。
特に注目すべき変更点は以下の通りです。
まず賃上げ加算の一層の拡充が予定されています。特に小規模事業者が7%以上の賃上げを実施した場合の加算上限が引き上げられる見込みです。
次に、物流の2024年問題を背景とした「取引環境改善コース(仮称)」の新設が検討されています。これは荷主側が主体となって運送事業者の荷待ち・荷役時間を短縮するための取組を支援するもので、助成上限100万円・補助率3/4が予定されています。
2026年度のスケジュールは例年通り2026年4月1日前後に公募開始が予測されます。正式な公募要領は2026年3〜4月頃に厚生労働省ホームページで公表される予定のため、定期的に公式サイトを確認するのが確実です。
参考:2026年度の予測スケジュールと変更点の概要が掲載されています。
補助金ポータル|働き方改革推進支援助成金とは?全4コースの概要を解説