延納とは何か所得税の仕組みと賢い活用法

延納とは何か所得税の仕組みと賢い活用法

延納とは何か|所得税の仕組みと賢い活用法

延納の届出を出さずに放置すると、利子税の約10倍の延滞税が課されます。


この記事の3つのポイント
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延納とは何か?

所得税の延納とは、確定申告で確定した税額の最大2分の1を、5月末(令和7年分は2026年6月1日)まで支払いを後ろ倒しにできる国の公式制度です。申告書の一欄を記入するだけで手続きが完了します。

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利子税はどれくらいかかる?

延納期間中は年1.3%の利子税が発生しますが、延納額が約37万円未満であれば利子税が1,000円未満となり実質ゼロになります。無届けで滞納した場合の延滞税(年2.8%〜)と比べると負担は大幅に小さくなります。

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絶対にやってはいけないこと

届出なしで期限を過ぎると、延納の利子税ではなく「延滞税+加算税」のダブルペナルティが発生します。最悪の場合、財産の差し押さえに発展する可能性もあります。


所得税の延納とは何か:制度の基本的な仕組み


所得税の延納とは、確定申告で確定した納税額を2回に分けて支払うことができる公式の制度です。通常、所得税の納付期限は確定申告の最終日(令和7年分は2026年3月17日)ですが、この制度を使うと残りの税額を最長で5月末(令和7年分は2026年6月1日)まで引き延ばすことができます。


「税金は期限内に一括で払うもの」というイメージを持っている方が多いですが、実は国がこうした制度を用意しています。これが助かります。


ただし、2つの条件を同時に満たす必要があります。まず「納付すべき税額の2分の1以上を申告期限までに納付すること」、そして「確定申告書の延納届出欄に金額を記入すること」です。この2点だけが条件です。


延納が認められている税目は、所得税及び復興特別所得税のほかに相続税・贈与税があります。ただし、それぞれ制度の内容は異なります。この記事で解説する「所得税の延納」は、申告書の記入だけで完結する比較的シンプルな手続きです。


所得が急増した年や、売上はあっても現金の回収が遅れたタイミングなど、確定申告の時期に一時的に手元資金が足りなくなることは珍しくありません。延納はそういったケースの「正規のセーフティネット」として活用できます。


国税庁|手順5 延納の届出(申告書への記入方法の公式解説)


所得税の延納手続きの方法:確定申告書の書き方

延納の手続き自体は、拍子抜けするほどシンプルです。特別な書類を別途用意する必要はありません。


確定申告書(第一表)の右下に「延納の届出」という欄があります。そこに以下の2つの金額を記入します。
















記入欄 記入する内容
⑥5(期限内納付額) 申告期限(3月17日など)までに支払う金額
⑥6(延納届出額) 5月末まで延ばす金額(税額の2分の1以下)


計算手順を具体的に見ておきましょう。令和7年分の所得税額が600,000円だった場合を例に取ります。


- 所得税額:600,000円
- 2分の1を計算:600,000円 × 1/2 = 300,000円(千円未満切捨て後も300,000円)
- 延納届出額として記入できる最大額:300,000円
- 期限内に払う金額:600,000円 − 300,000円 = 300,000円


つまり、3月17日に300,000円を支払い、残りの300,000円を6月1日に支払う形になります。計算自体は難しくありません。


e-Taxの確定申告作成コーナーを使う場合は、「延納届出額(⑥6)」の入力欄に金額を入力するだけで自動的に計算されます。手書きでも電子申告でも対応可能です。


国税庁 確定申告書等作成コーナー|税金の延納について(令和7年分)


所得税の延納で発生する利子税の計算方法

延納期間中は「利子税」が発生します。これが延納の唯一のコストです。


現在の利子税率は年1.3%(租税特別措置法第93条第1項による特例割合)です。令和7年分の場合、延納期間は申告期限翌日の2026年3月17日から延納期限の2026年6月1日までの77日間になります。


具体的な計算式はこうなります。



  • 利子税 = 延納額 × 1.3% × 77日 ÷ 365日 ≒ 延納額 × 約0.27%


たとえば延納額が300,000円の場合、利子税は約810円です。これは非常に小さな金額です。


ここで知っておきたい重要なルールがあります。国税通則法第118条の規定により、利子税が1,000円未満の場合は納付不要になります。計算すると、延納額が約37万円未満であれば利子税は実質ゼロになります。つまり無利息で2か月半の猶予を得られることになります。


利子税が1,000円以上になる場合は、後日税務署から「納付書」が郵送されてきます。送られてきた納付書を使って、コンビニ・金融機関・e-Tax等で支払います。自分で計算して自主納付する必要はありません。


また、事業所得に対応する部分の利子税については、必要経費に算入できるというルールもあります(所得税法第45条第1項第2号)。フリーランス個人事業主の方は、この点も覚えておくと役立ちます。


延納をしないと発生する延滞税との決定的な違い

「どうせ少し払えばいいんでしょ」と思って届出を出さずに期限を過ぎた場合、事態は大きく変わります。延滞税が発生するからです。


延滞税は延納の利子税とはまったく異なる性格の税金です。以下に比較をまとめます。





























項目 延納(利子税) 無届けの滞納(延滞税)
税率(現行) 年1.3% 納期限から2か月以内:年2.8%
2か月超:年8.7%
加算税 なし 発生する場合あり(15%等)
手続き 申告書に記入するだけ 税務署から督促が来る
最悪のリスク なし 財産の差し押さえ


これが深刻です。延納の利子税と比べると、無届けで放置した場合の延滞税は最大で6倍以上になります。さらに加算税が重なると負担は一層大きくなります。


延納額が37万円未満で利子税がゼロになるケースと比較すると、差はさらに明確です。届出一つで0円か数万円かが変わることもあります。


滞納が続くと税務署から督促状が送付され、それでも無視すると財産調査が行われます。最終的には預金口座や給与、不動産の差し押さえに至るケースもあります。税務署は裁判所を通さずに差し押さえができる点が、一般的な債権者とは大きく異なります。


「払えないから何もしない」という選択は最もリスクが高くなります。期限内に払えないと分かった時点で延納届出を出すことが、金銭的な損失を最小化する最善の行動です。


ぜいりし.com|所得税の延納ルール〜期日までに税金が納められないときのための対処法


振替納税との組み合わせで延納をフル活用する方法

延納の効果をさらに高める方法があります。「振替納税」との組み合わせです。これは独自の視点として紹介する価値があります。


振替納税とは、事前に税務署へ「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を提出することで、指定した口座から自動的に税金が引き落とされる仕組みです。通常の申告期限より約1か月後(令和7年分は2026年4月23日)に引き落とされるため、手続きなしに支払いが後ろ倒しになります。


しかも、振替納税には利子税がかかりません。


延納と振替納税を組み合わせると、こんな形になります。



  • 🏦 振替納税分(税額の2分の1以上)→ 2026年4月23日に口座引落し(利子税ゼロ)

  • 📅 延納分(税額の2分の1以下)→ 2026年6月1日に自分で納付(利子税1.3%)


つまり、振替納税を先に設定しておくことで、3月時点での現金支出をゼロにしたうえで、延納の2か月半のプラスアルファまで活用できるのです。これが最も資金効率のよいパターンです。


振替納税の申し込みは、確定申告書の提出時期と同様に申告期限までに完了させる必要があります。申込書は税務署の窓口で入手できるほか、e-Taxでも手続きが可能です。一度設定すると翌年以降も継続されるので、毎年手続きする必要がない点も便利です。


ただし、延納後には「予定納税」が待っている可能性があります。前年の申告納税額が15万円以上だった場合、7月末と11月末にそれぞれ前年税額の3分の1ずつを先払いする義務が生じます。延納で今の支払いは後ろ倒しにできても、数か月後には次の納税が来ることを念頭に置いてキャッシュフローを管理することが大切です。


納税資金の管理に不安がある場合は、会計ソフト(弥生・freee等)で毎月の所得と概算税額を自動計算させておくと、資金不足の「予兆」を早期に把握できます。


HRT税理士事務所|所得税の延納とは?確定申告で納税資金が足りないときの対処法(振替納税との比較も詳しく解説)






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