
相続手続きにおいて必要となる証明書には、主に法定相続情報一覧図の写しと遺産分割協議証明書の2種類があります。
法定相続情報証明制度は、平成29年5月に創設された制度で、相続関係を一覧に表した図とともに戸除籍謄本等の束を登記所に提出し、登記官が確認した上で認証文を付した写しを無料で交付してもらえます。この制度により、これまで各種手続きで何度も戸籍謄本の束を提出する必要がなくなりました。
一方、遺産分割協議証明書は、遺産分割協議書とは異なり、それぞれの相続人が単独で1通ずつ作成する書類です。相続人全員が1通の書面に署名押印する遺産分割協議書に対し、遺産分割協議証明書は各相続人が個別に作成できるため、相続人が遠方に住んでいる場合や、スケジュール調整が困難な場合に非常に有効です。
法定相続情報証明制度を利用するためには、以下の書類が必要です。
被相続人に関する書類:
相続人に関する書類:
申出人の確認書類:
代理人による申出の場合:
遺産分割協議証明書の作成には、特別な添付書類は不要ですが、以下の情報を正確に記載する必要があります。
法定相続情報証明制度の申請手続き:
申出ができる登記所は以下の4つのいずれかです。
手続きの流れは以下の通りです。
STEP1: 必要書類の収集
出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を収集します。本籍地を何度も移している場合は、すべての除籍謄本等を集める必要があります。
STEP2: 法定相続情報一覧図の作成
被相続人と法定相続人を一覧にした家系図のような図を作成します。A4サイズの白い紙で作成し、手書きでも構いません。
STEP3: 申出書の記入・提出
申出書に必要事項を記入し、収集した書類と一覧図とともに登記所へ提出します。郵送での申出も可能です。
登記官による確認後、偽造防止措置を施した専用紙で「認証文付きの法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。交付には約1週間程度かかります。
令和6年4月からは、法定相続情報番号の提供により、不動産登記の申請時に一覧図の写しの添付を省略できるようになりました。
遺産分割協議証明書の書き方には2つの方法があります:
①全ての財産を記載する方法
各相続人の遺産分割協議証明書に、全ての相続財産を記載する方法です。相続人全員が「誰が、何の財産を相続したのか」を確認できるため安心感があります。
②相続人が取得した財産のみを記載する方法
各相続人が自分の取得する財産のみを記載する方法です。他の相続人の取得財産は記載しません。
記載時の重要なポイント:
氏名、本籍地、最後の住所地、生年月日、死亡年月日を正確に記載します。
不動産の場合は登記簿上の表示通りに記載し、預貯金の場合は金融機関名、支店名、口座番号を明記します。
各相続人ごとに異なる日付でも相続手続きに問題ありませんが、一番遅い日付で協議成立とみなされます。
相続人名は必ず直筆で署名し、実印を使用します。印鑑登録証明書の準備も必要です。
軽微な訂正が生じた場合に備え、捨印を押しておくと再作成の手間を省けます。
法定相続情報一覧図作成時は、相続人の住所記載は任意ですが、提出先で必要な場合は相続人全員の住民票を添付して記載します。
相続証明書を効率的に活用するためには、以下の点に注意が必要です。
法定相続情報一覧図の写しの活用範囲:
効率的な利用のコツ:
相続手続きを2件以上行う場合は、法定相続情報証明制度の利用が強く推奨されます。何通でも無料で発行してもらえるため、手続きする機関の数より多めに取得しておくと安心です。
注意すべき制限事項:
法定相続情報番号を使った添付省略制度は、現在のところ不動産登記の申請等手続きのみに限定されています。会社登記や裁判所、金融機関の手続きでは使用できません。
また、法定相続情報一覧図の保管申出から5年以上が経過している場合は、法定相続情報番号を使えない可能性があります。
専門家の活用も検討:
司法書士、弁護士、税理士、社会保険労務士、行政書士などの専門家に手続きを依頼することも可能です。期限が迫っている場合や、慣れない手続きに不安がある場合は、専門家への依頼を検討しましょう。
遺産分割協議証明書との使い分け:
法定相続情報一覧図は相続関係の証明のみを行うため、遺産分割協議がある場合は別途遺産分割協議書や遺産分割協議証明書の提出が必要です。どちらを使用するかは、相続人の状況や手続きの緊急度に応じて判断することが重要です。
相続証明書は相続手続きの効率化に大きく貢献する制度です。適切に活用することで、複雑な相続手続きをスムーズに進めることができるでしょう。