
相続放棄をしても固定資産税の納税義務が発生する場合があります。これは固定資産税の課税システムである「台帳課税主義」に起因します。
固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日時点で固定資産課税台帳に登録されている人です。相続放棄の手続きが年をまたいで完了した場合、1月1日時点では相続人として台帳に登録されているため、納税義務が発生してしまいます。
具体的なケース例:
相続放棄後に固定資産税納税通知書が届いた場合の対処法は以下の通りです。
相続放棄をした人でも生命保険金を受け取ることができますが、税務上の扱いが特殊です。生命保険金は受取人固有の権利として扱われ、相続財産には含まれないため、相続放棄をしても受取可能です。
生命保険金の非課税枠計算:
非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数
この計算において、相続放棄をした人も法定相続人の数に含まれます。ただし、相続放棄をした人が受け取った生命保険金には非課税枠の適用はありません。
実際の非課税適用例:
死亡退職金についても同様の扱いとなりますが、相続財産に含まれる場合は相続放棄により受取不可となる点に注意が必要です。
相続税の基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」で計算されます。相続放棄があった場合でも、基礎控除額の計算において法定相続人の数は変更されません。
これは相続税法において「相続の放棄をした人がいても、その放棄がなかったもの」として扱うためです。つまり、相続放棄により実際の相続人が減っても、基礎控除額は変わりません。
基礎控除額の計算例:
この仕組みにより、相続放棄があった場合は残りの相続人にとって有利になる面があります。
相続放棄を検討している場合、被相続人の税金を支払ってしまうと「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなる重大なリスクがあります。
単純承認となる行為:
民法第921条では「相続人が相続財産の全部または一部を処分したとき」に単純承認したとされており、税金の支払いもこの処分行為に該当します。
被相続人宛の納税通知書への対応:
ただし、具体的な事情が考慮されて例外的に相続放棄が認められるケースもありますが、リスクを避けるため支払いは控えるべきです。
相続放棄の申述時期と税金発生には密接な関係があり、戦略的な判断が重要になります。特に固定資産税においては、相続放棄の受理タイミングが1月1日を境に大きく影響します。
年内完了のメリット:
年をまたぐ場合のデメリット:
相続放棄の申述期限は「相続開始を知った時から3か月以内」ですが、特別な事情がある場合は期限延長が認められることもあります。
準確定申告との関係:
相続放棄をした人には被相続人の所得税の準確定申告義務はありません。ただし、すべての相続人が相続放棄をした場合は、相続財産法人が申告を行う必要があります。
相続放棄と他の税金の関係:
相続放棄を検討する際は、税務上の影響を総合的に判断し、必要に応じて税理士や司法書士などの専門家に相談することが重要です。特に不動産を多数所有している場合や高額な生命保険金がある場合は、事前のシミュレーションが欠かせません。