
狩猟税は、2004年(平成16年)に狩猟者登録税と入猟税が統合されて創設された都道府県税です。狩猟者が狩猟を行うために必要な登録を受ける際に課される税金で、その収入は鳥獣の保護や狩猟に関する行政施策の実施に要する費用に充てられる目的税です。
狩猟税には二つの性格があります。一つは狩猟免許を受けることによって狩猟行為をなし得る地位を獲得した事実に着目した免許税的な性格、もう一つは狩猟行為を行って利益を受ける事実に着目した受益者負担金的な側面です。
この記事では、狩猟税の計算方法や免許種類による税率の違い、納付方法などについて詳しく解説します。税理士として、クライアントから狩猟税に関する質問を受けた際に役立つ情報をまとめました。
狩猟税の税率は、狩猟者登録(狩猟免許)の区分に応じて異なります。主な区分と税率は以下の通りです。
【第一種銃猟免許(装薬銃等を使用)】
【網猟免許またはわな猟免許】
【第二種銃猟免許(空気銃等を使用)】
ここで注意が必要なのは、「県民税の所得割を納めなくてよい人」であっても、同一生計配偶者や扶養親族に該当する人(農林水産業に従事している人を除く)の場合は、第一種銃猟免許が16,500円、網猟免許・わな猟免許が8,200円になる点です。
また、複数の都道府県で狩猟を行う場合は、狩猟を行う都道府県ごとに狩猟税を納める必要があります。例えば、A県とB県で狩猟を行う場合、両方の県で狩猟者登録を行い、それぞれの県に狩猟税を納めなければなりません。
狩猟税には、有害鳥獣を捕獲する人材の確保の観点から、一部の狩猟者に対する課税免除や軽減税率の特例措置が設けられています。これらの特例措置は令和11年3月31日までに登録を受ける場合に限り適用されます。
【課税免除(非課税)となるケース】
【税率が2分の1になるケース】
【その他の軽減措置】
これらの特例措置は、シカやイノシシなどの有害鳥獣による農作物被害対策として、捕獲を担う人材を確保するための支援策として設けられています。税理士としては、クライアントがこれらの特例措置の対象となるかどうかを確認し、適切なアドバイスを提供することが重要です。
狩猟税の納付方法は、狩猟者登録を受ける際に、狩猟者登録申請書に税額に相当する県の証紙を貼って納める「証紙徴収」が一般的です。都道府県によっては、証紙の代わりに現金で納付する場合もあります。
県民税の所得割を納付することを要しない者として軽減税率の適用を受ける場合は、住所地の市町村が発行するその旨の証明書を提出する必要があります。近年では、マイナンバーを利用して県民税所得割の状況を確認できる自治体も増えています。
マイナンバーを利用する場合の注意点。
また、特例措置の適用を受ける場合は、対象鳥獣捕獲員であることを証明する書類や、鳥獣捕獲等の許可を受けたことを証明する書類など、それぞれの要件を満たすことを証明する書類の提出が必要です。
税理士としては、クライアントが適切な証明書類を準備できるよう、事前に必要書類を確認し、アドバイスすることが重要です。
狩猟税の前身は、昭和38年に創設された狩猟免許税です。その後、昭和54年の狩猟免許制度の改正により、狩猟者登録税へと改組されました。
2004年(平成16年)3月31日に公布・施行された「地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律(平成16年法律第17号)」に伴い、狩猟者登録税と入猟税が廃止され、現在の狩猟税が新設されました。
狩猟税の法的根拠は地方税法第700条の51から第700条の58に規定されています。この法律に基づき、各都道府県は条例を定めて狩猟税を課税しています。
狩猟税の税率は、当初は第一種銃猟免許が10,000円(所得割非課税者は4,500円)、第二種銃猟免許が3,300円でしたが、その後の改正により現在の税率に引き上げられました。
この歴史的変遷を理解することで、狩猟税の性格や目的をより深く理解することができます。税理士としては、税制の変遷を把握しておくことで、クライアントからの質問に対してより専門的な回答を提供することができるでしょう。
狩猟税は都道府県税であるため、基本的な枠組みは地方税法で定められていますが、細かい運用や手続きについては都道府県ごとに若干の違いがあります。税理士として実務上注意すべき点をいくつか紹介します。
【都道府県別の違い】
【実務上の注意点】
また、狩猟税は個人住民税の定額減税の影響を受ける場合があります。令和6年度は個人住民税の定額減税後の都道府県民税の所得割額をもとに、県民税の所得割を納める必要があるかどうかが判断されます。
税理士としては、クライアントの居住地や狩猟を行う予定の都道府県の規定を事前に確認し、適切なアドバイスを提供することが重要です。特に、複数の都道府県で狩猟を行う場合や、特例措置の適用を受ける場合は、それぞれの都道府県の手続きを確認する必要があります。
狩猟税は比較的マイナーな税金ですが、狩猟を趣味とするクライアントや、有害鳥獣捕獲に従事するクライアントにとっては重要な税金です。税理士として正確な知識を持ち、適切なアドバイスを提供することで、クライアントの信頼を得ることができるでしょう。
狩猟税は単なる税金ではなく、鳥獣保護や狩猟行政の費用を賄うための目的税であることを理解し、クライアントにもその意義を伝えることが大切です。また、有害鳥獣対策としての特例措置の活用方法についても、積極的に情報提供することで、クライアントの税負担軽減に貢献することができます。
狩猟税の概要と特例措置について詳しく解説されている総務省のページ
さらに、狩猟税の納付に関連して、狩猟者登録の手続きや狩猟免許の取得方法についても基本的な知識を持っておくと、クライアントへのアドバイスがより充実したものになります。狩猟免許は都道府県知事が交付するもので、狩猟者登録は毎年度行う必要があります。これらの手続きと狩猟税の納付は密接に関連しているため、一体的に理解しておくことが重要です。
最後に、税理士としてクライアントに狩猟税に関するアドバイスを行う際は、単に税金の計算や納付方法だけでなく、特例措置の活用方法や将来的な税制改正の動向についても情報提供することで、より付加価値の高いサービスを提供することができるでしょう。特に、有害鳥獣対策は全国的な課題となっており、今後も税制面での支援措置が拡充される可能性があるため、最新の情報を常に把握しておくことが重要です。