設備投資減税で中小企業が得する税額控除と即時償却の賢い使い方

設備投資減税で中小企業が得する税額控除と即時償却の賢い使い方

設備投資減税を中小企業が賢く活用するための完全ガイド

設備を買う前に申請しないと、減税がゼロになります。


📋 この記事の3つのポイント
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即時償却は「節税」ではなく「課税の先送り」

即時償却は初年度の税負担を大きく下げますが、トータルの納税額は変わりません。永久に税金が消えるのは「税額控除」だけです。

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設備を買う「前」に申請が必要な制度がある

経営力向上計画の認定を受けずに設備を取得してしまうと、優遇措置の対象外になるケースがあります。申請に30〜45日かかる点に要注意。

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2026年度改正で「5億円以上」の新制度が登場

2026年度税制改正で、中小企業も5億円以上の投資なら7%税額控除または即時償却を選べる大型制度が新設される見込みです。


設備投資減税の基本構造:中小企業が使える3つの制度


中小企業が設備投資の場面で活用できる税制優遇は、大きく3種類に整理されます。これらを最初に頭に入れておくことで、どの場面でどの制度を選ぶべきかが見えてきます。


中小企業投資促進税制は、最も手軽に使える制度です。事前の計画認定が不要で、要件を満たす設備を購入して確定申告の際に適用するだけです。対象は160万円以上の機械装置、70万円以上のソフトウェア、3.5トン以上の貨物自動車などで、取得価額の30%の特別償却か、7%の税額控除を選べます。ただし税額控除を選べるのは資本金3,000万円以下の法人に限られます。


② 中小企業経営強化税制は、少し手間はかかりますが、その分だけ優遇幅が大きい制度です。経営力向上計画の認定を受けた上で設備を取得することで、即時償却(取得価額の100%)または10%の税額控除(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)が適用されます。2025年度の税制改正でこの制度は2年間延長され、適用期限は2027年3月31日までとなりました。


③ 先端設備等導入計画は、法人税ではなく固定資産税を軽減する制度です。市区町村の認定を受けることで、対象設備の固定資産税が最大5年間1/4に抑えられます。この制度も2025年度の改正で2027年3月31日まで延長されており、さらに2025年4月以降は従業員への1.5%以上の賃上げ方針の表明が適用の必須条件となっています。


これらの制度は補助金との併用が可能なケースも多く、たとえばものづくり補助金を活用しながら経営力向上計画による税制優遇も受ける、というパターンは実務でよく見られます。制度ごとに申請先や必要書類が異なるため、まずは全体像を把握することが重要です。


制度名 優遇内容 事前認定 適用期限
中小企業投資促進税制 特別償却30%または税額控除7% 不要 2027年3月31日
中小企業経営強化税制 即時償却100%または税額控除10%(資本金3,000万円超は7%) 必要 2027年3月31日
先端設備等導入計画 固定資産税を最大5年間1/4に軽減 必要(市区町村) 2027年3月31日


設備投資減税で失敗しやすい「申請タイミング」の落とし穴

申請タイミングのミスが、最も多い失敗パターンです。


中小企業経営強化税制と先端設備等導入計画には、いずれも原則として設備を取得する前に認定や確認を受ける必要があるという重要なルールがあります。「先に設備を購入してから申請すれば問題ない」という考えは、この制度では通用しません。


経営力向上計画の認定には通常30日程度、書類に不備があれば45日かかることもあります。先端設備等導入計画も認定まで2週間〜1か月程度が標準的です。設備の納期と認定のタイミングが合わなければ、キャッシュだけが出ていき減税はゼロという最悪のケースになります。


なお、経営力向上計画には遡及申請(設備取得後2か月以内に申請)という救済ルールがありますが、これには落とし穴があります。3月決算の企業が2月に設備を取得した場合、「2か月以内なら4月に申請すればいい」と思いがちです。しかし4月は翌事業年度のため、事業年度をまたいだ遡及申請は認められません。この点は多くの中小企業経営者が見落としているポイントです。


先端設備等導入計画では遡及申請という概念がなく、認定を取得してから設備を購入することが絶対条件です。設備メーカーや工事業者への発注前に認定申請の手続きを進めておく必要があります。


設備投資を検討している場合は、次のステップで進めることを強くお勧めします。


  1. 活用する制度を決める(税理士や認定支援機関に相談)
  2. 必要書類を準備して申請・認定を受ける(1〜2か月の余裕を確保)
  3. 認定後に設備を発注・取得する
  4. 設備を事業の用に供した事業年度に税務申告で適用する


参考:中小企業経営強化税制の申請の流れと詳細が掲載されています。


中小企業経営強化税制|中小企業庁(経済産業省)


設備投資減税の即時償却と税額控除、どちらを選ぶべきか

即時償却と税額控除の違いは、ここが核心です。


この2つの選択は一見似たように見えますが、会社にとっての実質的な効果は大きく異なります。即時償却は課税の先送りであり、税額控除こそが永久に税負担を減らす本当の節税です。


即時償却を選んだ場合、1,000万円の設備を取得した年に1,000万円全額を経費として計上できます。その年の課税所得が圧縮され、法人税の支払いを抑えられます。ただし翌年以降は同設備について減価償却費を計上できないため、翌事業年度以降の税負担が増えます。最終的に会社が納める税金の総額は変わらず、課税のタイミングを前倒しでずらしているだけです。


一方、税額控除を選んだ場合は、通常通り減価償却を行いながら、さらに取得価額の10%(または7%)を法人税額から直接差し引きます。1,000万円の設備なら100万円(または70万円)の税金が永久に消えます。設備の価値が利益を生み続ける期間も、節税効果が継続するのです。


  • 📌 即時償却が有利なケース:今期は利益が大きく出ており、来期以降は不透明な場合。キャッシュを手元に残しておきたい場合。
  • 📌 税額控除が有利なケース:利益が安定しており、長期的に会社にお金を残したい場合。長期的なキャッシュフローを最大化したい場合。


なお、資本金が3,000万円を超え1億円以下の法人は、中小企業経営強化税制での税額控除率が10%ではなく7%に下がる点に注意が必要です。また、中小企業投資促進税制では、資本金3,000万円超1億円以下の法人は税額控除の選択肢自体がなく、特別償却のみとなります。資本金の額によって適用できる優遇内容が変わるため、事前に自社がどのカテゴリに当たるかを確認しておきましょう。


設備投資減税で見落とされがちな固定資産税の節税ルート

固定資産税の軽減を忘れると、数十万円を丸ごと捨てることになります。


多くの中小企業が法人税の節税(即時償却・税額控除)には着目する一方で、固定資産税の軽減を見落としがちです。先端設備等導入計画を活用すれば、対象設備の固定資産税を最大5年間にわたって1/4に圧縮できます。


具体的な数字でイメージしましょう。2,000万円の工作機械を導入した場合、固定資産税は年間約28万円かかります(税率1.4%で計算)。3%以上の賃上げ方針を表明して5年間1/4軽減を受けると、5年間の節税総額は約105万円になります。これは東京ドームのグランド面積(約13,000㎡)で例えれば、全体のうち4/5の面積分の税金がなくなるようなイメージです。設備投資の規模が大きければ、その効果はさらに膨らみます。


対象設備の最低価格は機械装置であれば160万円以上、工具・器具であれば30万円以上です。これを下回る設備は本制度の対象外となる点に注意が必要です。


また、2025年4月以降の改正で、この制度を受けるには従業員への賃上げ方針の表明が必須になりました。表明する賃上げ率に応じて軽減期間・軽減率が変わります。


  • 1.5%以上の賃上げ表明:3年間、固定資産税を1/2に軽減
  • 3%以上の賃上げ表明:5年間、固定資産税を1/4に軽減


固定資産税の節税は法人税の節税とは別枠で享受できます。つまり、経営力向上計画(法人税の即時償却・税額控除)と先端設備等導入計画(固定資産税の軽減)を組み合わせて申請することも可能です。片方しか使っていない中小企業はかなりの機会損失をしているといえます。


参考:先端設備等導入計画の固定資産税軽減措置の詳細が掲載されています。


先端設備等導入制度による支援|中小企業庁(経済産業省)


設備投資減税の2026年度改正で変わる「大型投資促進税制」を先読みする

2026年度の改正内容を知っていると、今から準備できます。


2025年12月に公表された令和8年度(2026年度)税制改正大綱では、「特定生産性向上設備等投資促進税制(大胆な設備投資促進減税)」の創設が盛り込まれました。全業種を対象とした、非常にスケールの大きな制度です。


主なポイントは以下の通りです。


  • 💼 全業種対象:製造業・建設業・小売業・サービス業を問わず利用可能
  • 💴 中小企業の最低投資額は5億円以上
  • 📊 投資額の7%税額控除または即時償却の選択制
  • 🏭 工場・建物も対象に含まれる見込み
  • 🔄 米国追加関税の影響を受けた企業は税額控除を最大3年間繰り越し可能
  • 📅 投資計画の確認期限は2028年度末まで


これまでの中小企業向け設備投資減税は機械装置や器具備品が中心で、建物は原則対象外でした。この新制度が施行されれば、工場の新設や倉庫・物流拠点の建設といった大型投資にも7%の税額控除が適用されます。5億円の投資であれば3,500万円の税額控除です。これは驚異的な優遇幅といえます。


ただし、法案成立前の段階であるため内容が変更される可能性があります。制度の確定に向けて、経済産業省や税理士からの最新情報を継続的に確認することが重要です。


なお、この大型新制度と並行して現行の中小企業経営強化税制(2027年3月末まで)も継続しています。5億円未満の投資には引き続き現行制度を活用し、大型投資の計画がある企業は新制度を視野に入れた中長期的な投資計画を策定する時期に来ています。


参考:2026年度税制改正の設備投資促進減税案の詳細が解説されています。


【2026年度税制改正】設備投資促進減税案を徹底解説|kojimachi capital


設備投資減税を活用する際に税理士に必ず確認すべき3つの質問

税理士に相談するタイミングが遅いと、使える制度を逃します。


設備投資減税の手続きは複数の機関が絡み、書類も多岐にわたります。ただ「節税になるから使いたい」という姿勢ではなく、具体的な質問を持って税理士に相談することで、最大の効果を引き出せます。


質問①「この設備に使える税制優遇はありますか?事前申請は必要ですか?」


設備の種類・価格によって適用できる制度が異なります。機械装置なのかソフトウェアなのか、価格はいくらか、中古ではないか——これらを確認することで該当制度が絞られます。事前申請が必要な場合は、発注前に相談することが大前提です。


質問②「即時償却と税額控除、今期の利益水準でどちらが得ですか?」


先述のとおり、即時償却は課税の先送り、税額控除は永久の節税です。ただし、利益がほとんど出ていない年に税額控除を選んでも効果は薄くなります。税額控除額が法人税額の20%を超えた分は翌年への繰り越しができますが、繰り越せる期間は限られます。今期の利益水準・翌期以降の見通しと組み合わせて判断することが大切です。


質問③「固定資産税の軽減(先端設備等導入計画)と法人税の控除(経営力向上計画)は一緒に申請できますか?」


この質問を忘れる中小企業経営者は非常に多いです。2つの計画は同じ設備に対して同時に申請できる場合があり、法人税と固定資産税の両方で節税できます。ただし設備の種類や要件によって組み合わせに制限がある場合もあるため、必ず税理士と認定支援機関に確認しましょう。


制度活用で迷ったときは、中小企業庁が設けている中小企業税制サポートセンター(電話:03-6281-9821、平日9:30〜17:00)に問い合わせることもできます。認定支援機関(税理士・会計士・商工会議所など)への相談は原則無料か低コストで利用でき、申請書類の作成補助まで対応してもらえることもあります。




ビジネスの種を蒔け: 設備投資の国民経済学