

オペレーティングリースを「ただの賃貸借」だと思っていると、2027年4月の新会計基準適用後にROAが急落して銀行融資の審査が通らなくなる可能性があります。
リースとは、企業が必要な設備・機器を購入せずに一定期間借り受ける取引形態のことです。日本の会計基準では、このリース取引を大きく「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2種類に分類してきました。
ファイナンス・リースとは、簡単に言えば「形式上はリースだが、実態は分割払いによる購入」です。借り手が選んだ設備をリース会社が購入し、それを借り手に貸し出す仕組みで、リース期間を通じてほぼ全額を支払うことになります。リース終了後に所有権が移転するケースもあります。
一方、オペレーティング・リースは「モノを所有するリスクをリース会社に負担してもらいながら、必要な機能だけを効率的に利用する契約」です。物件代金の全額ではなく、使用期間中の価値分だけを支払う形になります。イメージとしてはレンタカーやレンタルCDに近い仕組みです。
つまり、2つのリースの本質的な違いは「資産を所有するリスクとコストを誰が負うか」にあります。ファイナンスリースでは借り手、オペレーティングリースではリース会社(貸し手)が負担します。
2種類のリースは、複数の観点で大きく異なります。実務上の判断材料として最重要なのは「中途解約できるかどうか」と「資産計上が必要かどうか」の2点です。
| 比較項目 | ファイナンスリース | オペレーティングリース |
|---|---|---|
| 実態 | 分割払いによる実質購入 | レンタル・賃貸に近い借用 |
| 中途解約 | ❌ 原則不可(ノンキャンセラブル) | ✅ 可能(違約金が発生する場合あり) |
| 物件の所有権 | 法律上はリース会社、実質は借り手 | リース会社(法律上も実質上も) |
| コスト負担 | 物件価格・金利・税金・保険のほぼ全額 | 使用期間分の価値のみ |
| 修繕・メンテナンス | 借り手が負担 | 貸し手が負担(契約による) |
| 資産計上(現行) | 必要(オンバランス)※特例あり | 不要(オフバランス) |
| リース期間 | 比較的長期(5〜10年程度) | 比較的短期(1〜5年程度) |
| リース終了後 | 再リースまたは所有権移転 | 返却が原則 |
ファイナンスリースは「ノンキャンセラブル(解約不能)」かつ「フルペイアウト(費用全額負担)」の2要件を満たすものが該当します。
これが原則です。
オペレーティングリースは、ファイナンスリース以外のリース取引すべてを指します。
両者の違いが最も顕著に現れるのが「会計処理」の場面です。
ファイナンスリースは実質的な購入とみなされるため、契約締結時に「リース資産」と「リース債務」を貸借対照表に計上します。毎月のリース料支払い時には元本返済分と支払利息に分けて処理し、決算時には減価償却費も計上します。
一方、オペレーティングリースは一般的な賃貸借契約と同様の処理です。リース料を支払ったタイミングで全額を費用として計上するだけで、資産・負債ともに貸借対照表に載せる必要はありません。
ファイナンスリースの仕訳イメージ(リース料総額900万円・利息100万円・10年間・年払の例)は以下のとおりです。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 契約締結時 | リース資産 900万円 | リース債務 900万円 |
| リース料支払時 | リース債務 90万円 支払利息 10万円 |
現預金 100万円 |
| 決算時 | 減価償却費 90万円 | リース資産 90万円 |
オペレーティングリースの場合、リース料支払時に「リース料 ××円 / 現預金 ××円」と記帳するだけです。
これが基本です。
会計処理の違いは財務諸表の見た目に直結します。ファイナンスリースはB/S(貸借対照表)が膨らみ、ROAや自己資本比率が低下しやすいのに対し、オペレーティングリースはB/Sに影響を与えない「オフバランス効果」があります。
実務上、ある契約がファイナンスリースかオペレーティングリースかは、契約書の名前ではなく「実態」で判断します。この判定に使われるのが「現在価値基準(90%基準)」と「経済的耐用年数基準(75%基準)」の2つです。
現在価値基準(90%基準)とは、「リース料総額の現在価値 ÷ 物件の現金購入価額 ≧ 概ね90%」を満たす場合にファイナンスリースと判定するルールです。現金で買う場合とほぼ同じ金額を払うなら、実質的に買ったも同然と考えます。
具体例で確認しましょう。現金購入価額が1,000万円の機械を5年リースする場合、年間リース料220万円で5年分の現在価値が940万円なら「940万円 ÷ 1,000万円 = 94%」となり、90%以上なのでファイナンスリースと判定されます。
経済的耐用年数基準(75%基準)は、「解約不能リース期間 ÷ 物件の経済的耐用年数 ≧ 概ね75%」という判定基準です。耐用年数8年の機械を6年借りる場合、「6年 ÷ 8年 = 75%」で75%基準に該当します。資産の寿命の大部分を独占して使うなら、実質的な所有と同じと判断します。
重要な注意点があります。90%や75%という数字はあくまで「概ね」です。88%や73%であっても実質的にフルペイアウトとみなされる場合は、ファイナンスリースに判定されることもあります。判定に迷う契約は、税理士や会計士に相談することを強くお勧めします。
参考・会計基準の詳細はこちら。
公益社団法人リース事業協会「リース会計基準の概要」
オペレーティングリースの最大のメリットの一つが「オフバランス効果」です。資産と負債が増加しないため、総資産利益率(ROA)や自己資本比率などの財務指標を良く保つことができます。
ROAは「当期純利益 ÷ 総資産」で計算されます。ファイナンスリースを使うと総資産が増えてROAの分母が大きくなり、数値が下がります。一方、オペレーティングリースを使えば総資産は増えないため、ROAを維持しやすいのです。
例えば総資産10億円・純利益1億円でROA10%の会社が、2億円の設備をファイナンスリースで導入した場合、総資産は12億円に増え、ROAは約8.3%に低下します。同じ設備をオペレーティングリースで導入した場合はROAを10%のまま維持できます。
この差は、銀行融資の審査に直接影響します。融資担当者がROAを重要指標として見ている場合、リースの種類選択が融資条件を左右することもあります。
これは使えそうです。
また、技術革新が速い分野では、リース期間終了後に最新機器へ入れ替えやすいオペレーティングリースが実用的です。ITサーバー、医療機器、工作機械など、数年で陳腐化するおそれがある設備ではとくに有効です。
「オペレーティングリース」は、法人の節税対策としても活用されています。これは企業向けの設備リースとは別の概念で、航空機・船舶・コンテナなどの高額資産を対象にした投資スキームです。
仕組みはこうです。まず、法人が匿名組合契約を通じてリース事業に出資します。リース会社が航空機などを取得し、航空会社などのユーザー企業に貸し出してリース料を得ます。このリース資産は減価償却が行われ、減価償却費という「損失」が出資比率に応じて法人に分配されます。法人はこの損失を特別損失として計上し、課税所得を圧縮できます。
中には初年度に出資額の8割程度を損金計上できるスキームもあり、節税効果が非常に高い手法です。航空機リースの場合、1口1,000万円〜3,000万円以上で、航空機のリース期間は8〜12年程度です。
長期にわたって節税効果が継続します。
ただし、注意点もあります。匿名組合契約の途中解約は原則できないため、5〜10年以上の資金拘束が発生します。また、リース料が外貨建てのケースが多く為替変動リスクがあります。2022年以降の急激な円安では「想定より利益が出すぎた」という声も聞かれました。さらに、リース満了時に売却益が出て課税される「繰り延べ課税」の問題もあります。節税対策として検討する場合は、必ず顧問税理士と十分なシミュレーションを行いましょう。
法人向けオペレーティングリース節税スキームの詳細・リスクについての解説(武蔵コーポレーション)
両者のメリット・デメリットを整理します。企業の状況によってどちらが適しているかは異なります。
ファイナンスリースのメリット
- 初期費用を抑えながら長期的に資産を利用できる
- 手元キャッシュを温存でき、融資枠(与信)を使わない
- 固定リース料でキャッシュフローの計画が立てやすい
- リース期間終了後も再リースで使い続けられる場合がある
ファイナンスリースのデメリット
- 原則として中途解約不可(事業転換時に身動きが取れない)
- 購入時よりトータルの支払額が割高になる(金利・税金・保険が上乗せ)
- B/Sに資産・負債が計上されるため財務指標が悪化しやすい
オペレーティングリースのメリット
- ファイナンスリースより月々の支払額が抑えられる(残存価値分は支払い不要)
- オフバランス効果でROAなどの財務指標を維持できる
- 技術革新が速い分野で最新機器に入れ替えやすい
- 解約が可能(違約金ありの場合も)
オペレーティングリースのデメリット
- リース期間終了後は必ず返却が必要(自社資産にならない)
- 返却時に物件の過度な損耗があると原状回復費用が発生する
- 外貨建て契約の場合は為替リスクがある
- 2027年以降は現行のオフバランス効果が失われる(後述)
「初期費用ゼロで設備を使えるのがリースの最大のメリット」と考えがちです。ただ実際には、ファイナンスリースの支払総額は現金購入より割高になります。
長期的なコスト比較は必ず行いましょう。
ファイナンスリースは原則として「売買処理(オンバランス)」が必要ですが、中小企業には便利な特例があります。これを活用することで、複雑な会計処理を省略できる場合があります。
最も広く使われているのが「少額リース資産の特例(300万円基準)」です。1契約あたりのリース料総額が300万円以下であれば、ファイナンスリースであっても賃貸借処理(オフバランス・全額費用計上)が認められます。
パソコン1台のリース、複合機のリース、オフィスの電話設備など、日常的なオフィス機器の多くは1契約300万円以下に収まります。この特例により、資産計上・減価償却計算といった煩雑な処理を省けます。
また、リース期間が1年以内の短期リースも、費用処理を継続できる「短期リースの特例」が適用されます。古い設備の1年単位の再リース延長などに役立ちます。
さらに、中小企業基本法に基づく中小企業は「中小企業の会計に関する指針」により、所有権移転外ファイナンスリースについて賃貸借処理が認められています。ただし、300万円超の重要な契約は貸借対照表の注記に「未経過リース料」の記載が必要です。
厳しいところですね。
自社がどの処理を採用すべきかは、契約金額・会社規模・税務上の取り扱いによって異なります。300万円を超えるリース契約を結ぶ際は、必ず顧問税理士に確認しましょう。
ここが非常に重要です。2024年9月13日、企業会計基準委員会(ASBJ)は企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」を公表しました。この新基準は2027年4月1日以後開始する事業年度の期首から強制適用されます。
最大の変更点は「オペレーティングリースのオフバランス処理が廃止される」ことです。新基準では、ファイナンスリースとオペレーティングリースという区分がなくなり、原則としてすべてのリースが「使用権資産」と「リース負債」として貸借対照表に計上(オンバランス化)されます。
これにより、これまでオフバランスで処理していたオペレーティングリースも、資産・負債が増加します。多くの店舗を賃借している小売業や、多数の航空機をオペレーティングリースで使っている航空会社などは、特に大きな影響を受けます。
財務指標への影響は下表のとおりです。
| 経営指標 | 影響 | 理由 |
|---|---|---|
| 自己資本比率 | 📉 低下する傾向 | 総資産(分母)が増加するため |
| 負債比率 | 📈 上昇する傾向 | 負債(分子)が増加するため |
| ROA(総資産利益率) | 📉 低下する傾向 | 総資産(分母)が増加するため |
| EBITDA | 📈 増加する傾向 | 支払リース料が減価償却費+支払利息に置き換わるため |
| 営業利益 | 📈 増加する傾向 | 従来の営業費用が営業外費用に振り替わるため |
例外として「短期リース(12ヶ月以内)」と「少額リース(PC・コピー機など重要性が乏しいもの)」はオフバランスが継続できます。
これが条件です。
3月決算の企業にとっては、2028年3月期の決算から強制適用となります。準備には時間がかかるため、今すぐ自社のリース契約の洗い出しを始めましょう。
新会計基準の詳細はこちら。
マネーフォワード「2027年に適用開始の新リース会計基準とは?改正内容や影響をわかりやすく解説」
企業会計基準委員会(ASBJ)「企業会計基準第34号 リースに関する会計基準」公表ページ
新リース会計基準への対応は「2027年になってから」では遅すぎます。影響範囲の確認、システム改修、ステークホルダーへの説明など、準備には相当な時間がかかるためです。
まず行うべきことは、社内のすべてのリース契約・賃貸借契約の洗い出しです。本社だけでなく、各支店・子会社・グループ会社が個別に締結している契約まですべてが対象になります。パソコン・コピー機・車両・オフィス・店舗・倉庫など、あらゆる契約を網羅的にリストアップします。
次に、影響額の試算です。洗い出した契約をもとに「使用権資産額」「リース負債額」「利息額」をシミュレーションし、B/SやROAなどの主要指標がどう変わるかを把握します。特に金融機関との融資契約にコベナンツ(財務制限条項)がある場合は、基準値に抵触しないか早急に確認が必要です。
実務対応のステップをまとめると、①リース契約の網羅的な把握、②会計方針の決定と影響額の試算、③業務プロセスとシステムの再構築、④ステークホルダーへの説明・開示準備、の4段階です。
会計システムをすでに導入している企業は、ベンダーへの問い合わせを早期に行いましょう。多くの会計ソフトが新リース会計基準対応を進めています。各社の対応状況を確認するためには以下も参照になります。
三井住友ファイナンス&リース「図解で分かる!新リース会計基準と必要な対応4ステップ」
自社にとってどちらのリースが適しているかは、「どのくらいの期間使うか」「財務指標をどう維持したいか」「技術革新への対応が必要か」によって変わります。
ファイナンスリースが向いているケース:
- 製造ラインや医療機器など、耐用年数いっぱいまで長期使用する予定の設備
- 最終的に自社の資産として管理・運用したい場合
- 長期固定コストでキャッシュフロー計画を安定させたい場合
オペレーティングリースが向いているケース:
- パソコン・サーバーなど技術進歩が速く、数年ごとに入れ替えたい機器
- ROAなどの財務指標を良好に保ちたい場合(※2027年以降は要注意)
- 短期間だけ必要で、将来的に不要になる可能性がある設備
リース期間の選択も重要です。ファイナンスリースは耐用年数の60〜80%程度の期間で設定されることが多く、オペレーティングリースは耐用年数より短い期間で設定されます。
判断に迷う場合は「もし今後3〜5年以内に事業環境が変わって不要になる可能性があるか」を基準にしてみましょう。「可能性がある」ならオペレーティングリース、「ない」ならファイナンスリースが安全です。
なお、2027年以降は「オフバランスを使った財務指標の改善」というオペレーティングリースのメリットが一部失われます。財務指標重視の視点でリースを選んでいた企業は、選択基準の見直しが必要です。
この点には早めに注意すれば大丈夫です。
一般的に「高額な航空機はファイナンスリースが多い」と思われがちですが、実際は世界の主要航空会社の多くが保有機材の40〜50%をオペレーティングリースで調達しています。
意外ですね。
その戦略的な理由は複数あります。まず、航空機は1機100〜400億円もする超高額資産で、これをすべて購入またはファイナンスリースで保有するとB/Sが膨大に膨らみます。オペレーティングリースによってオフバランスにすることで、自己資本比率や格付けを健全な水準に保てます。
次に、航空需要の変動への対応です。繁閑の差が激しい航空ビジネスでは、需要の少ない時期に機材を返却できるオペレーティングリースの柔軟性が極めて重要です。コロナ禍では、オペレーティングリースで機材を調達していた航空会社は返却交渉を通じて固定費を削減できました(ただしリース会社側は回収リスクを負いました)。
また、航空機は約20〜25年の経済的耐用年数を持ちますが、燃費性能の改善が速く、10年程度で最新鋭機に入れ替えるインセンティブがあります。オペレーティングリースなら8〜12年でリース会社に返却し、より燃費の良い新型機に乗り換えられます。
これは航空会社だけの話ではなく、船舶、コンテナ、大型建設機械など「高額で長寿命だが技術革新もある資産」全般に共通する考え方です。自社の設備投資を検討する際にも、この「財務の柔軟性と最新設備維持のバランス」という視点は参考になります。
リースに関しては、実務でよく見かける誤解がいくつかあります。
知っておくと損を防げます。
誤解①:「リース契約書に"ファイナンスリース"と書いてあるかで決まる」
会計上の判定は契約書の名称ではなく実態(90%基準・75%基準)で決まります。「オペレーティングリース」と書かれた契約書でも、実態がファイナンスリースと判定されることがあります。
誤解②:「オペレーティングリースは解約自由」
オペレーティングリースは解約可能なケースが多いですが、解約時には違約金が発生するのが一般的です。「いつでも無条件で解約できる」わけではありません。
誤解③:「リースは購入より絶対に節約になる」
ファイナンスリースは購入代金に加えてリース会社の金利・利益・固定資産税・保険料が含まれるため、支払総額は現金一括購入より割高です。初期費用を分散させる効果はありますが、トータルコストは高くなります。
誤解④:「個人でもオペレーティングリースの節税スキームが使える」
法人向けの節税スキームとしてのオペレーティングリース投資は、個人には節税効果がほとんどありません。個人の場合、オペレーティングリースからの所得は「雑所得」に分類され、給与所得との損益通算ができないためです。節税を期待して個人で投資するのはリスクがあります。
誤解⑤:「300万円以下のファイナンスリースは費用処理でいつでもOK」
中小企業の300万円特例は、あくまで「所有権移転外ファイナンスリース」が対象です。
また、適用するには一定の要件があります。
自社の状況を必ず確認しましょう。
リース契約は一度締結すると数年〜10年以上の長期にわたります。「よくわからないまま契約した」という事態を避けるために、契約前に専門家に相談することをお勧めします。
マネーフォワード「ファイナンスリースとオペレーティングリースの違いは?わかりやすく解説」
Please continue.