

テンプレートをそのまま使うと、融資審査の通過率が半分以下に落ちます。
金融に携わっている方や起業を検討している方の多くが「テンプレートを使えば事業計画書はうまく書ける」と考えています。確かにテンプレートは書くべき項目を整理するうえで非常に有用なツールです。しかし、その使い方を間違えると、むしろ融資審査で不利になるという現実があります。
日本政策金融公庫の創業融資における審査通過率は、一般的に50〜60%程度とされています。つまり、申請者の約2人に1人は審査に落ちているのです。その落ちる理由の筆頭が「テンプレートの記入例を丸写しした計画書」です。審査担当者は毎日多くの計画書を見ており、記入例に近い文章パターンは即座に識別されます。
テンプレートはあくまで「構成の骨格」として使うものです。大切なのはそこに「自分の事業ならではの具体的な根拠と数字」を肉付けすることにあります。これが原則です。
たとえば「創業の動機」の欄に「〇〇に興味があったため独立を決意しました」とだけ書いても、審査担当者には何も刺さりません。それよりも「3年間の勤務経験のなかで月商〇〇万円の達成実績があり、そのノウハウを活かして〇月に開業予定」のように、時期・金額・経験を具体的に結びつけた記述が求められます。
| テンプレート丸写しの計画書 | 融資に通る計画書 |
|---|---|
| 記入例に近い文章パターン | 自分の経歴・数字・根拠が入っている |
| 売上が「希望ベース」 | 同業統計データや市場調査を根拠にした売上 |
| 自己資金の出どころが不明 | 通帳履歴で説明できる自己資金 |
| 競合分析がない or 曖昧 | 地域・業種の具体的な競合情報あり |
金融機関は「この人は本当に事業を理解しているか」を見ています。テンプレートはスタート地点として使い、内容はすべて自分自身の言葉と数字で埋めることが絶対条件です。
参考:日本政策金融公庫が公式に提供している創業計画書のフォーマット(PDF・Excel形式)とその動画解説です。書き方の全体像を把握するのに最適です。
事業計画書には決まったフォーマットはありませんが、金融機関への提出を前提とした場合には、押さえておくべき必須8項目があります。これが揃っていないと、そもそも審査の土俵にさえ上がれません。必須項目です。
以下に8項目とそれぞれの記入ポイントをまとめます。
これら8項目は省略できません。特に⑦と⑧は金融機関が最も注視する部分です。融資担当者は「返済できるか」を数字ベースで判断するため、ここが曖昧な計画書は即座に弱い印象を与えます。
意外と見落とされがちなのが⑥の借入状況です。消費者金融やカードローンの借入を「小さいから書かなくてもいい」と判断して未記載にするケースが多いのですが、信用情報機関の照合で発覚した場合、虚偽申告とみなされ審査に致命的な影響を与えます。正直に記載するのが基本です。
参考:freeeが提供する事業計画書の書き方と記入例を項目別に解説したページです。各項目の内容確認に役立ちます。
融資審査の合否を左右する最大のポイントが「財務計画の根拠」です。これが一番難しいところですね。売上計画が「希望的観測」ではなく「客観的根拠に基づく現実的な予測」であることを示せるかどうかが、審査通過の分水嶺です。
売上計画の根拠として使える情報源は以下の通りです。
たとえば飲食店の場合、「席数20席 × 回転数2.5回転 × 客単価1,500円 × 営業日数25日 = 月商187万5,000円」のように、数式で分解して説明できる形にすると、担当者が「なるほど、根拠がある」と判断しやすくなります。これは使えそうです。
財務計画では損益計算書(P/L)のシミュレーションが必要です。売上から「売上原価(仕入コスト)」「人件費」「家賃」「広告費」「その他経費」を差し引いた営業利益を月次で示します。融資担当者が特に注目するのは「最初の6ヶ月間の資金繰り」で、売上が立ち上がるまでの赤字期間をどう乗り切るかを示すことが重要です。
また、売上計画は「通常時」だけでなく「低調時(最悪ケース)」「好調時(最良ケース)」の3パターンを用意しておくと、「リスクを理解している経営者」という印象を与えられます。金融機関が怖いのは「想定外の事態に対応できない経営者」だからです。
収支計画と借入返済の数字が一致していることの確認も必須です。たとえば月の営業利益が15万円なのに、融資返済が月18万円という計画書は「数字が合わない」として審査ではねられます。利益から生活費と返済額を両方まかなえる計画になっているかを必ず確認してください。
参考:中小企業診断士監修のもと、事業計画書の財務計画の作り方を詳しく解説したページです。
TOKYO創業ステーション|事業計画書の作成ガイド(中小企業診断士監修)
金融に興味がある方ほど「融資額を最大化したい」と考えます。しかし、事業計画書の自己資金欄には、多くの人が知らない「落とし穴」が潜んでいます。
日本政策金融公庫の創業融資では、開業に必要な総資金のうち、自己資金が3分の1以上あることが融資審査において有利に働く目安とされています。たとえば開業資金の総額が900万円の場合、300万円以上の自己資金を用意できていれば審査に通りやすくなります。逆に自己資金がほとんどない状態で「全額融資してほしい」という申請は、審査担当者から「本気度が低い」と見られるリスクが高くなります。
問題は「自己資金の中身」にあります。審査では自己資金の保有を預金通帳の履歴でさかのぼって確認されます。以下のようなケースは「見せかけの自己資金」として疑われます。
これらは「ロンダリング自己資金」と呼ばれ、発覚すると融資申請が否決されるだけでなく、審査履歴にも残ります。痛いですね。
自己資金として認められるのは、給与・賞与からの計画的な貯蓄、退職金、保険の解約返戻金など、「自分で積み上げた資金」です。これに加えて、家族から贈与を受けた場合は贈与を証明できる書類を用意しておくと安心です。
日本政策金融公庫の審査では、融資希望額が自己資金の3〜4倍以内に収まっていることも重要な判断基準の一つとなっています。自己資金100万円であれば、融資希望額の上限は現実的には400万円前後が目安です。この範囲を大きく超えた金額の申請は、減額されるか否決されるケースが多くなります。
自己資金の状況を客観的に整理したい場合は、商工会議所やよろず支援拠点での無料相談が一つの選択肢です。専門家が計画書を事前チェックしてくれるため、提出前に弱点を発見できます。
参考:創業融資の自己資金要件と審査基準について、元国税調査官の税理士が解説したページです。融資前のセルフチェックに活用できます。
freee|融資審査で重要視される自己資金・財務計画のポイント
融資審査担当者は、事業計画書を「夢の宣言書」ではなく「返済できるかどうかの判断材料」として読みます。つまり読み手の視点は常に「この人はいくら稼いで、いつ返せるか」に集約されます。この前提を踏まえて計画書を構成すると、内容が劇的に変わります。
まず「競合との差別化」について。多くの計画書では「他社にはない〇〇なサービスを提供します」と書かれていますが、それだけでは不十分です。金融機関が知りたいのは「その差別化が集客・売上につながる具体的な根拠」です。たとえば「半径1km以内に同業他社3店舗あり、いずれも〇〇の対応をしていない。そこをカバーすることで月〇件の獲得が見込める」のように、地域の競合情報と数字を組み合わせた記述が効果的です。
次に「リスクへの言及」です。融資担当者が最も不安視するのは「リスクを理解していない経営者」です。あえてリスク項目を設けて「仕入コストが10%上昇した場合でも、売上原価率を〇〇%に保てる仕組みがある」「主要顧客を失った場合の代替顧客獲得ルートを確保済み」などを書くことで、「リスク対応力がある経営者」という印象を与えられます。
また、見落とされがちな「実施スケジュール」の欄も重要です。「開業から3ヶ月以内に〇〇を実施し、6ヶ月以内に月商〇〇万円を達成する」という具体的なマイルストーンを記載することで、計画の実現可能性がより高く評価されます。
最後に構成の話です。事業計画書は「事業内容→市場・競合→強み→財務計画」の順に組み立てると、読み手が全体を理解しやすくなります。図やグラフを1〜2点入れるだけで、視覚的な伝わりやすさが大幅に向上します。Canvaなどの無料デザインツールでA4一枚の資料として整理してから計画書に盛り込む方法もあります。自分の計画書を「見せる資料」として意識することで、審査担当者の印象は大きく変わります。
参考:融資審査に落ちる事業計画書の特徴と、通るための改善ポイントを専門家が解説した解説記事です。
BulkUp Group|融資審査に落ちる事業計画書の7つのNG特徴と改善策
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