
不動産取得税は、土地や建物などの不動産を取得した際に一度だけ課税される地方税です。この税金は、不動産の所在する都道府県に納めることになります。基本的な計算式は以下の通りです。
不動産取得税 = 固定資産税評価額 × 税率
税率は原則として4%ですが、住宅用の不動産(土地・建物)に対しては特例措置として3%に軽減されています。この特例措置は2027年3月31日まで適用される予定です。
固定資産税評価額とは、市区町村(東京23区の場合は都)が算定する不動産の価値を示すもので、一般的に実際の取引価格の約70%程度になるよう調整されています。例えば、4,000万円で購入した建物であれば、固定資産税評価額は約2,800万円程度と考えられます。
固定資産税評価額は以下の方法で確認することができます。
また、宅地(建物が建っている土地または建物の敷地として使用される土地)については、2024年3月31日までに取得した場合、課税標準額が固定資産税評価額の1/2に減額される特例措置が適用されます。
住宅を取得する際には、様々な控除や特例措置が適用され、不動産取得税の負担を軽減することができます。主な控除と特例措置は以下の通りです。
【新築住宅の場合】
新築住宅を取得した場合、以下の条件を満たせば、固定資産税評価額から1,200万円を控除した金額に税率を乗じて不動産取得税を計算します。
不動産取得税(新築住宅) = (固定資産税評価額 - 1,200万円)× 3%
適用条件。
さらに、認定長期優良住宅の場合は、控除額が1,300万円に増額されます(2024年3月31日までの特例)。
【中古住宅の場合】
中古住宅を取得した場合も、一定の条件を満たせば控除が適用されます。控除額は建築された年月日によって異なります。
不動産取得税(中古住宅) = (固定資産税評価額 - 控除額)× 3%
適用条件。
【土地の軽減措置】
住宅の敷地として使用する土地を取得した場合も、一定の条件を満たせば税額の軽減が受けられます。
不動産取得税(土地) = (固定資産税評価額 × 1/2 × 3%)- 控除額
控除額は以下のいずれか大きい方の金額となります。
適用条件。
実際に不動産取得税がどのように計算されるのか、具体的なシミュレーション例を見てみましょう。新築戸建てと中古戸建ての2つのケースで計算してみます。
【新築戸建ての場合】
条件。
(1,800万円 - 1,200万円)× 3% = 18万円
1,400万円 × 1/2 × 3% = 21万円
14万円(土地1㎡当たりの価格)× 1/2 × 120㎡ × 2 × 3% = 50.4万円
※50.4万円 > 4.5万円なので、控除額は50.4万円
21万円 - 50.4万円 = 0円(控除額が税額を上回るため)
18万円(建物)+ 0円(土地)= 18万円
【中古戸建ての場合】
条件。
(1,200万円 - 450万円)× 3% = 22.5万円
※1988年築の中古住宅の場合、控除額は450万円
1,050万円 × 1/2 × 3% = 15.75万円
10.5万円(土地1㎡当たりの価格)× 1/2 × 120㎡ × 2 × 3% = 37.8万円
※37.8万円 > 4.5万円なので、控除額は37.8万円
15.75万円 - 37.8万円 = 0円(控除額が税額を上回るため)
22.5万円(建物)+ 0円(土地)= 22.5万円
このように、不動産取得税は様々な控除や特例措置が適用されることで、実際の税負担が大きく軽減されることがあります。特に土地部分については、控除額が税額を上回ることで税金がかからないケースも少なくありません。
不動産取得税には、一定の条件を満たす場合に非課税となる措置や、課税対象とならない免税点が設けられています。これらを理解することで、さらに税負担を軽減できる可能性があります。
【非課税措置】
以下のような場合は、不動産取得税が非課税となります。
【免税点】
不動産の価格が一定金額未満の場合は、不動産取得税が課税されません。免税点は以下の通りです。
例えば、固定資産税評価額が9万円の小さな土地を取得した場合、免税点未満となるため不動産取得税は課税されません。
【申告と納付】
不動産取得税は、不動産を取得した日から60日以内に、不動産の所在地を管轄する都道府県税事務所に申告する必要があります。ただし、登記を行った場合は、登記情報に基づいて都道府県が課税するため、通常は申告の必要はありません。
納税通知書は、不動産を取得してから数ヶ月後に送付されてきます。納期限は通知書に記載されており、通常は納税通知書を受け取ってから30日以内となっています。
不動産取得税と確定申告の関係性について理解することは、総合的な税務戦略を立てる上で重要です。この点は多くの解説で見落とされがちですが、税理士として顧客にアドバイスする際には欠かせない視点です。
【所得税における不動産取得税の扱い】
不動産取得税は、その不動産をどのような目的で取得したかによって、確定申告での扱いが異なります。
居住用として不動産を取得した場合、支払った不動産取得税は原則として所得税の計算上、控除や経費にはなりません。ただし、住宅ローン控除を利用する場合は、不動産取得税も含めた取得費用の合計額が控除額の計算に影響します。
事業用や投資用として不動産を取得した場合、不動産取得税は以下のように扱われます。
例えば、賃貸用のアパートを購入した場合、建物に係る不動産取得税は建物の取得価額に含めて減価償却を行います。これにより、毎年の不動産所得の計算において経費として控除されることになります。
【消費税との関係】
不動産取得税自体は消費税の課税対象ではありませんが、不動産の購入時に消費税がかかる場合があります。
消費税込みの価格で建物を購入した場合でも、不動産取得税の計算に用いる固定資産税評価額は消費税を含まない金額となるため、この点は混同しないよう注意が必要です。
【節税戦略】
不動産取得税と確定申告を組み合わせた節税戦略としては、以下のようなものが考えられます。
事業用不動産を取得する場合、不動産取得税は経費化できるため、所得が多い年に取得することで、その年の税負担を軽減できる可能性があります。
家族間で不動産の共有持分を分散させることで、将来の相続税対策になるだけでなく、各人の持分が小さくなることで、場合によっては免税点以下となり、不動産取得税が課税されないケースも考えられます。
認定長期優良住宅の取得や、省エネ住宅の取得など、特例措置が手厚い物件を選ぶことで、不動産取得税の負担を軽減しつつ、住宅ローン控除などの所得税の特例も最大限に活用できます。
不動産取得税は一度きりの税金ですが、確定申告における所得税や将来の固定資産税、相続税などと合わせて総合的に考えることで、より効果的な税務戦略を立てることができます。税理士としては、単に不動産取得税の計算だけでなく、このような広い視点からのアドバイスが求められています。
国税庁:不動産所得の必要経費に算入される租税公課
不動産取得税は、不動産を取得した際に一度だけ課税される税金ですが、その計算方法や軽減措置を理解することで、大きな税負担を避けることができます。基本的な計算式は「固定資産税評価額×税率」ですが、住宅用の不動産であれば税率が3%に軽減され、さらに新築住宅では1,200万円、中古住宅では建築年数に応じた金額が控除されます。
また、土地については固定資産税評価額の1/2を課税標準とする特例や、住宅の床面積に応じた控除が適用されることで、多くの場合、実質的な税負担がゼロになるケースも少なくありません。
不動産取得税の申告は通常、登記情報に基づいて自動的に行われますが、軽減措置を受けるためには別途申請が必要な場合もあります。不動産を取得する際には、事前に税額をシミュレーションし、適用可能な軽減措置を確認することで、効果的な節税対策を立てることができるでしょう。
さらに、不動産取得税は確定申告における所得税の計算とも関連しており、事業用や投資用の不動産であれば経費化できる可能性もあります。不動産取引を検討する際には、不動産取得税だけでなく、所得税や固定資産税、将来の相続税なども含めた総合的な税務戦略を立てることが重要です。
税理士としては、クライアントの状況に応じて最適な不動産取得のタイミングや方法をアドバイスし、税負担の軽減を図