
64歳でもらえる年金の代表的なものが「特別支給の老齢厚生年金」です。この制度は、昭和60年の法律改正により厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられた際、激変緩和措置として設けられました。
特別支給の老齢厚生年金は、厚生年金加入歴が1年以上あり、昭和36年4月1日(女性は昭和41年4月1日)以前に生まれた人に支給される年金です。64歳の方であれば、生年月日によって受給資格があるかどうかが決まります。
この年金制度の特徴は以下の通りです。
64歳でもらえる年金の受給要件は、生年月日と性別によって細かく決められています。特に重要なのは、報酬比例部分と定額部分で受給開始年齢が異なることです。
男性の場合の受給開始年齢。
女性の場合は、男性より5年遅れのスケジュールで設定されています。昭和41年4月1日までに生まれた女性が対象となり、段階的に受給開始年齢が引き上げられています。
基本的な受給要件は次の通りです。
64歳でもらえる年金は、報酬比例部分と定額部分の2つの要素で構成されています。それぞれ計算方法と受給開始時期が異なるため、理解が重要です。
報酬比例部分の計算方法。
平成15年4月以降の加入期間については、以下の計算式を使用します。
例えば、月収12万円で1年間厚生年金に加入した場合。
12万円 × 5.481/1000 × 12カ月 = 約7,893円(年額)
定額部分の計算方法。
令和7年度の定額部分の計算式は以下の通りです。
定額部分は老齢基礎年金と同様の性格を持ち、加入期間に応じて支給されます。上限は480月(40年)となっており、満額で約77万8,080円となります。
重要なポイント。
64歳でもらえる年金には「44年特例」という特別な制度があります。これは、厚生年金の被保険者期間が44年以上ある方に対する優遇措置で、通常より早い時期から定額部分も含めた年金を受給できます。
44年特例の適用条件。
この特例により、本来であれば報酬比例部分のみしか受給できない年齢でも、定額部分も同時に受給することができます。
44年特例のメリット。
実際に44年特例が適用される場合、定額部分として約77万8,080円(年額)が追加で受給できます。月額に換算すると約6万5,000円の上乗せとなり、老後の生活における経済的な安定に大きく貢献します。
64歳でもらえる年金の手続きは、支給開始年齢に達する3か月前に日本年金機構から案内が送付されます。この案内には請求書類も同封されているため、必要事項を記入して提出することで受給手続きが完了します。
手続きの流れ。
将来への影響と注意点。
64歳から特別支給の老齢厚生年金を受給した場合、65歳以降の年金受給にも影響があります。65歳からは老齢基礎年金と老齢厚生年金(報酬比例部分)の組み合わせに変わりますが、経過的加算により受給額の減少を防ぐ仕組みがあります。
在職中の年金受給。
64歳で働きながら年金を受給する場合、在職老齢年金制度の適用を受けます。月収と年金額の合計が一定額を超えると、年金の一部または全部が支給停止となる可能性があります。
しかし、厚生年金に加入して働き続けることで、将来の年金額は増加します。例えば、月収12万円で1年間働いた場合、年額約7,893円の年金が一生涯にわたって増額されます。
繰下げ受給という選択肢。
64歳から受給可能な年金でも、あえて受給を遅らせる「繰下げ受給」という選択肢もあります。繰下げ受給を選択すると、1か月あたり0.7%の増額率で年金額が増加し、最大42%の増額が可能です。健康状態や家計状況を総合的に判断して、最適な受給タイミングを選択することが重要です。
64歳でもらえる年金は、老後の生活設計において重要な要素です。自分の生年月日や厚生年金の加入期間を確認し、適切な手続きを行うことで、安定した老後生活の基盤を築くことができます。