64歳でもらえる年金の特別支給制度と受給要件

64歳でもらえる年金の特別支給制度と受給要件

64歳でもらえる年金の仕組み

64歳でもらえる年金の概要
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特別支給の老齢厚生年金

65歳より前に受給できる特別な年金制度で、生年月日により受給開始年齢が決まります

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対象者の条件

厚生年金に1年以上加入し、昭和36年4月1日以前生まれの男性または昭和41年4月1日以前生まれの女性

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年金の構成

報酬比例部分と定額部分の2つの要素で構成され、生年月日により受給開始時期が異なります

64歳でもらえる年金の特別支給老齢厚生年金とは

64歳でもらえる年金の代表的なものが「特別支給の老齢厚生年金」です。この制度は、昭和60年の法律改正により厚生年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられた際、激変緩和措置として設けられました。

 

特別支給の老齢厚生年金は、厚生年金加入歴が1年以上あり、昭和36年4月1日(女性は昭和41年4月1日)以前に生まれた人に支給される年金です。64歳の方であれば、生年月日によって受給資格があるかどうかが決まります。

 

この年金制度の特徴は以下の通りです。

  • 段階的な受給開始:生年月日により60歳~64歳から受給開始
  • 2つの構成要素:報酬比例部分と定額部分に分かれている
  • 一時的な制度:将来的には65歳からの受給に統一される予定

64歳でもらえる年金の受給要件と生年月日

64歳でもらえる年金の受給要件は、生年月日と性別によって細かく決められています。特に重要なのは、報酬比例部分と定額部分で受給開始年齢が異なることです。

 

男性の場合の受給開始年齢

  • 昭和34年4月2日~昭和36年4月1日生まれ:64歳から報酬比例部分のみ
  • 昭和32年4月2日~昭和34年4月1日生まれ:63歳から報酬比例部分のみ
  • 昭和30年4月2日~昭和32年4月1日生まれ:62歳から報酬比例部分のみ

女性の場合は、男性より5年遅れのスケジュールで設定されています。昭和41年4月1日までに生まれた女性が対象となり、段階的に受給開始年齢が引き上げられています。
基本的な受給要件は次の通りです。

  • 厚生年金保険に1年以上加入していること
  • 老齢基礎年金の受給資格期間(10年)を満たしていること
  • 被保険者でないこと(退職していること)

64歳でもらえる年金の報酬比例部分と定額部分

64歳でもらえる年金は、報酬比例部分と定額部分の2つの要素で構成されています。それぞれ計算方法と受給開始時期が異なるため、理解が重要です。

 

報酬比例部分の計算方法
平成15年4月以降の加入期間については、以下の計算式を使用します。

  • 平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入期間の月数

例えば、月収12万円で1年間厚生年金に加入した場合。
12万円 × 5.481/1000 × 12カ月 = 約7,893円(年額)
定額部分の計算方法
令和7年度の定額部分の計算式は以下の通りです。

  • 1,734円 × 生年月日に応じた率 × 被保険者期間の月数

定額部分は老齢基礎年金と同様の性格を持ち、加入期間に応じて支給されます。上限は480月(40年)となっており、満額で約77万8,080円となります。

 

重要なポイント

  • 報酬比例部分:過去の給与水準に基づいて計算
  • 定額部分:加入期間に基づいて計算
  • 両方とも被保険者期間が長いほど金額が増加

64歳でもらえる年金の44年特例による優遇措置

64歳でもらえる年金には「44年特例」という特別な制度があります。これは、厚生年金の被保険者期間が44年以上ある方に対する優遇措置で、通常より早い時期から定額部分も含めた年金を受給できます。

 

44年特例の適用条件

  • 厚生年金保険の被保険者期間が44年(528月)以上
  • 被保険者資格を喪失していること(退職していること)
  • 報酬比例部分の受給開始年齢に達していること

この特例により、本来であれば報酬比例部分のみしか受給できない年齢でも、定額部分も同時に受給することができます。

 

44年特例のメリット

  • より早い時期からの年金受給が可能
  • 定額部分も合わせて受給できるため、月額受給額が大幅に増加
  • 長期間働いた方への優遇措置として機能

実際に44年特例が適用される場合、定額部分として約77万8,080円(年額)が追加で受給できます。月額に換算すると約6万5,000円の上乗せとなり、老後の生活における経済的な安定に大きく貢献します。

 

64歳でもらえる年金の手続きと将来への影響

64歳でもらえる年金の手続きは、支給開始年齢に達する3か月前に日本年金機構から案内が送付されます。この案内には請求書類も同封されているため、必要事項を記入して提出することで受給手続きが完了します。

 

手続きの流れ

  1. 支給開始年齢の3か月前に案内が届く
  2. 請求書類に必要事項を記入
  3. 添付書類を準備(戸籍謄本、住民票など)
  4. 年金事務所または年金相談センターに提出

将来への影響と注意点
64歳から特別支給の老齢厚生年金を受給した場合、65歳以降の年金受給にも影響があります。65歳からは老齢基礎年金と老齢厚生年金(報酬比例部分)の組み合わせに変わりますが、経過的加算により受給額の減少を防ぐ仕組みがあります。

 

  • 経過的加算 = 定額部分の額 - 老齢基礎年金額
  • 一般的に老齢基礎年金は定額部分より低いため、差額が保障される

在職中の年金受給
64歳で働きながら年金を受給する場合、在職老齢年金制度の適用を受けます。月収と年金額の合計が一定額を超えると、年金の一部または全部が支給停止となる可能性があります。

 

しかし、厚生年金に加入して働き続けることで、将来の年金額は増加します。例えば、月収12万円で1年間働いた場合、年額約7,893円の年金が一生涯にわたって増額されます。

 

繰下げ受給という選択肢
64歳から受給可能な年金でも、あえて受給を遅らせる「繰下げ受給」という選択肢もあります。繰下げ受給を選択すると、1か月あたり0.7%の増額率で年金額が増加し、最大42%の増額が可能です。健康状態や家計状況を総合的に判断して、最適な受給タイミングを選択することが重要です。

 

64歳でもらえる年金は、老後の生活設計において重要な要素です。自分の生年月日や厚生年金の加入期間を確認し、適切な手続きを行うことで、安定した老後生活の基盤を築くことができます。