容積率の計算と前面道路幅員による制限・緩和の全知識

容積率の計算と前面道路幅員による制限・緩和の全知識

容積率の計算と前面道路による制限・緩和をわかりやすく解説

前面道路が4mの土地に指定容積率200%の物件を建てると、実際は160%しか使えず、延床面積が想定より40㎡も縮小します。


この記事でわかること
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容積率の基本計算

指定容積率と前面道路幅員から求める基準容積率の計算式と、どちらを適用するかの判断基準を解説します。

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前面道路が複数ある場合

角地など2つ以上の道路に接する敷地では、幅員の広い道路を基準に計算します。選び方次第で使える容積率が大きく変わります。

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特定道路・地下室・車庫の緩和特例

幅員15m以上の特定道路から70m以内にある土地には容積率緩和があります。地下室・ガレージの不算入も含め、使える特例を一覧で確認できます。


容積率の計算方法と前面道路幅員が12m未満の場合のルール


容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合のことです。計算式はシンプルで、「延べ床面積 ÷ 敷地面積 × 100」で求めます。しかし、不動産情報に表示されている容積率(指定容積率)が、そのまま実際の上限になるとは限りません。ここが多くの人が見落とすポイントです。


実際の容積率の上限は、次の2つのうち「低い方」が採用されます。



  • ①都市計画で定められた指定容積率

  • ②前面道路の幅員から計算される基準容積率


前面道路の幅員が12m以上ある場合は、指定容積率がそのまま適用されます。問題は12m未満のケースです。このとき、次の計算式で基準容積率を算出し、指定容積率と比較します。







用途地域の種別 係数 基準容積率の計算式
住居系(第1種低層住居専用地域 など) 0.4 前面道路幅員(m)× 0.4 × 100
商業・工業系など住居系以外 0.6 前面道路幅員(m)× 0.6 × 100


たとえば第1種住居地域で指定容積率が200%の土地に、前面道路の幅員が4mの場合を考えてみましょう。基準容積率は「4m × 0.4 × 100 = 160%」となります。160% < 200% ですから、適用される容積率は160%です。敷地面積が100㎡なら、建てられる延べ床面積の上限は160㎡です。


基準容積率が原則です。


指定容積率200%と聞いて「200㎡分建てられる」と思って土地を購入したのに、実際には160㎡しか建てられなかった——という事例は珍しくありません。前面道路が狭い土地は、指定容積率よりも基準容積率の方が厳しくなりやすく、特に住宅地では6m未満の道路が多いため注意が必要です。


なお、道路の幅員が4m未満のいわゆる「2項道路(みなし道路)」に接している場合は、セットバックを行って道路中心線から2m後退した位置が道路境界線とみなされます。セットバック未実施の段階では、前面道路の幅員は4mとして計算します。つまり実際の道幅が3mであっても、計算上は4mが使われるということです。


参考になる公的機関の情報としては、大阪市が公開している前面道路による容積率の算定方法の資料が詳しくまとまっています。


大阪市|前面道路による容積率の算定方法(PDF)


前面道路が2つある場合の容積率の計算と角地での活用

角地や旗竿地のように、敷地が2本以上の道路に接している場合も少なくありません。この場合、容積率の計算では幅員が最も広い道路を前面道路として採用します。


たとえば商業地域(係数0.6)で指定容積率600%の土地に、8mの道路と4mの道路が接していたとします。この場合の計算は次のとおりです。



  • 広い方の8mを採用 → 8 × 0.6 × 100 = 480%

  • 480% < 600%(指定容積率)

  • 適用される容積率:480%


もし誤って幅員4mで計算してしまうと、4 × 0.6 × 100 = 240%となり、実際より大幅に低い数値で建物規模を見積もってしまいます。これは使えます。


複数道路に接する土地を検討している方は、必ず「最も広い道路の幅員」で計算することを覚えておきましょう。これだけ覚えておけばOKです。


ただし、広い方の道路を採用できるのは「建築基準法上の道路」に接している場合に限ります。私道が含まれる場合は取り扱いが複雑になるため、自治体の建築指導課や専門家に確認することをおすすめします。


また、角地緩和は建ぺい率の話であり、容積率とは別の制度です。「角地だから容積率も上がる」という誤解をされている方もいますが、建ぺい率は緩和されても容積率は前面道路の計算ルールが適用されます。意外ですね。この区別は不動産を購入・投資するうえで重要な基礎知識です。


不動産情報を調べる際には、国土交通省が提供する「不動産情報ライブラリ(旧:土地総合情報システム)」で道路幅員も含めた土地の詳細情報を確認できます。


国土交通省|不動産情報ライブラリ(道路・用途地域など地図情報あり)


容積率の計算で使える緩和特例①:特定道路(幅員15m以上)から70m以内の土地

前面道路の幅員が狭くて容積率が制限されてしまう土地でも、一定の条件を満たせば容積率が緩和される制度があります。それが「特定道路による容積率緩和」です。


この特例が使える条件は次の2つです。



  • 前面道路の幅員が6m以上12m未満であること

  • 幅員15m以上の特定道路から敷地まで70m以内であること


条件を満たす場合、容積率の計算に「加算値」を前面道路幅員に足し込むことができます。加算値の計算式は次のとおりです。


加算値 =(12 − 前面道路幅員)×((70 − 特定道路までの距離)÷ 70)


この式で重要なのは、特定道路に近いほど加算値が大きくなる点です。たとえば前面道路幅員が6m、特定道路までの距離が35mの場合:加算値 =(12 − 6)×((70 − 35)÷ 70)= 6 × 0.5 = 3m。つまり実質的に9mの前面道路があるとみなして計算できるわけです。


この特例はあまり知られていません。


住居系地域(係数0.4)で指定容積率300%の土地に適用した場合、特例なしでは6 × 0.4 × 100 = 240%ですが、特例適用後は(6 + 3)× 0.4 × 100 = 360% → 300%(指定容積率)と比較して300%が上限となります。60%の差は、敷地面積100㎡なら60㎡の床面積の違いを意味します。ワンルームマンション1室分くらいの広さです。


不動産投資でアパートやマンションを建てる計画を立てている場合、この特例の有無によって収益計画が大きく変わります。土地を購入する前に、特定道路までの距離を確認する習慣をつけると、見逃していた「使える土地」に気づけることがあります。


三井不動産が提供する「容積率と前面道路幅に応じた制限の解説」は、この緩和計算をわかりやすく整理しています。


三井不動産レッツ|容積率とは?前面道路幅に応じた制限や計算方法について解説


容積率の計算から除外できる部分:地下室・ビルトインガレージ・小屋裏収納

前面道路で決まる基準容積率の壁を感じたとき、知っておくべきなのが「容積率の不算入措置」です。建築基準法第52条の規定により、特定の空間は容積率の計算から除外できます。


地下室(住宅用途) は、次の3条件を満たせば延べ床面積から除外されます。



  • 地階であること

  • 天井が地盤面から高さ1m以下であること

  • 住宅の用途に供する部分であること


除外できる上限は「住宅部分の床面積の3分の1まで」です。たとえば容積率80%で土地100㎡の場合、本来は80㎡までしか建てられません。しかし地下室(住宅用途)を設ければ、80㎡×3/2 = 最大120㎡まで床面積を確保できます。つまり地下室で通常の1.5倍の空間が実現できるわけです。


ビルトインガレージ(駐車場) は、延べ床面積の5分の1までを容積率の計算から外せます。たとえば延べ床面積が150㎡の建物にビルトインガレージが20㎡あれば、150㎡の1/5 = 30㎡まで除外可能なので、20㎡はすべて不算入となります。


小屋裏収納(ロフト含む) は、直下の階の床面積の2分の1まで不算入です。ただし天井高さが1.4m以下という制限があり、立って歩けるような居室とはなりません。コンパクトな居住空間を最大限に広く使いたい場合の工夫として有効です。


これらの緩和を組み合わせることで、指定容積率が低い土地でも実質的に建物の利用面積を増やすことが可能です。知らないと損する制度の代表例といえます。


不動産投資目的でアパートやマンションを計画する場合は、建築士や設計事務所に緩和特例の適用可否を最初の段階で確認することを強くおすすめします。設計段階での試算漏れは、収益計画の根本的な修正につながります。


SUUMOが監修した緩和制度の解説ページも参考になります。


容積率の計算で見落とされがちな用途地域またぎと資産価値への影響

ここまでの内容は「敷地が1つの用途地域に収まっている」場合の話でした。しかし実際の土地では、1つの敷地が容積率の異なる2つの用途地域にまたがるケースもあります。この場合、単純に低い方の容積率を採用するのではなく、「加重平均」で計算します。


たとえば前面道路6mの土地が100㎡あり、そのうち60㎡が近隣商業地域(指定容積率400%)、40㎡が第2種住居地域(指定容積率200%)にまたがっているとします。計算はこうなります。



  • 近隣商業地域の基準容積率:6 × 0.6 × 100 = 360% < 400% → 360%

  • 第2種住居地域の基準容積率:6 × 0.4 × 100 = 240% > 200% → 200%

  • 加重平均:(60㎡ × 360% + 40㎡ × 200%) ÷ 100㎡ = 296%


単純に「低い方の200%」と思い込んでいると、実際に建てられる面積を大幅に過小評価してしまいます。加重平均が条件です。


この計算を正確に行うには、敷地の何㎡がどの用途地域に属しているかを把握する必要があります。都市計画図や各自治体が提供するWebGISサービスで確認できます。たとえば東京都であれば「東京都都市整備局 都市計画情報等インターネット提供サービス」で用途地域の境界線を地図上で確認することができます。


また、容積率は土地の資産価値に直結する指標です。容積率が高い土地ほど建てられる建物が大きく、賃貸収入の最大化や転売時の評価向上につながります。不動産を金融商品として見る際に容積率の正確な理解は欠かせません。違反建築の場合、銀行融資を受けにくくなるだけでなく、売却時に資産価値が著しく下落するリスクもあります。厳しいところですね。


金融的な観点から不動産を評価する際には、容積率だけでなく建ぺい率・日影規制・斜線制限などを合わせて確認することが、リスクを避けるための基本です。東京カンテイなど不動産鑑定・調査会社が提供する土地情報レポートを参照するか、税理士・建築士と連携して総合的に評価することを検討しましょう。


用途地域と容積率の関係をより詳しく理解するために、イクラ不動産の解説記事も役立ちます。


イクラ不動産|容積率と容積率の緩和についてわかりやすくまとめた(用途地域またぎの計算例あり)




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