

市街化調整区域の土地は、銀行から担保価値ゼロと判断されて融資を受けられないケースがあります。
都市計画法は1968年に制定された、日本の都市の土地利用や開発行為を規制する根拠法です。一言で言えば「どこに何を建ててよいか」を国レベルで定めたルールブックで、不動産投資において物件の収益性・売却可能性・融資の可否に直結します。
金融に興味を持つ人の多くは「土地は安く買えれば利益になる」と考えがちです。しかし都市計画法を無視した物件選びは、価格が安い理由が規制にあることに気づかないまま購入してしまう典型的な失敗パターンです。都市計画法の基本を理解することが、不動産投資の損失回避の第一歩になります。
都市計画法が対象とするエリアは大きく「都市計画区域」と「準都市計画区域」に分かれます。都市計画区域とは、一体の都市として総合的に整備・開発・保全する必要のある区域として都道府県知事が指定したエリアです。日本の全人口の約9割以上がこの区域内に居住しており、不動産投資で対象になる物件のほとんどがこのエリアに含まれます。
さらに都市計画区域は以下の3つに区分されます。
- 市街化区域:すでに市街地を形成しているか、概ね10年以内に優先的に市街化を図るべきエリア。住宅・商業施設・工場の建築が一定ルールのもとで認められます。
- 市街化調整区域:市街化を抑制するエリア。原則として建物を建てることができず、不動産投資に活用しづらいケースが多い。
- 非線引き区域:市街化区域と市街化調整区域の区分がされていないエリア。規制は中程度です。
基本はこの3区分の把握が出発点です。
出典:都市計画法の目的と区域区分について(国土交通省)
国土交通省 開発許可制度の概要
市街化区域はさらに「用途地域」として13種類に細分化されます。不動産投資をする場合、この用途地域こそが収益物件の建築可能な種類・規模・将来の資産価値を左右する最重要ファクターです。
用途地域は住居系・商業系・工業系の3グループに大別されます。
| グループ | 用途地域 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| 住居系(8種) | 第一種・第二種低層住居専用地域 | 低層住宅限定。高さ制限10m〜12m |
| 住居系(8種) | 第一種・第二種中高層住居専用地域 | 中高層マンション可。大型店舗は制限あり |
| 住居系(8種) | 第一種・第二種住居地域 | 住居中心。一部大型店舗・工場可 |
| 住居系(8種) | 準住居地域・田園住居地域 | 自動車関連施設や農業との調和地域 |
| 商業系(2種) | 近隣商業地域・商業地域 | 店舗・オフィス・マンションが建築可能 |
| 工業系(3種) | 準工業地域・工業地域 | 工場と住宅が混在。一定の住宅建築可 |
| 工業系(3種) | 工業専用地域 | 住宅・マンション・学校は建築不可 |
不動産投資家が特に注意すべきは「工業専用地域」です。この用途地域では住宅・マンション・学校・ホテルの建築は一切認められていません。安価な土地を購入してアパートを建てようとしても、工業専用地域に指定されていれば建築確認が下りません。価格の安さだけで飛びつくと大きな損失になります。
商業地域や近隣商業地域はマンション・事務所・店舗・ホテルなど幅広い建物が建設可能なため、収益物件の立地として人気があります。ただし容積率が高く設定される一方、周辺に繁華街・風俗施設が入居するリスクもゼロではないため、住宅賃貸物件としての空室リスクを見極める眼が必要です。
2018年に新設された「田園住居地域」は、農地と低層住宅が調和したエリアで農地内での土地形質変更に市町村長の許可が必要です。新設区分のため認知度が低く、購入後に思わぬ建築制限に直面するケースがあります。これは見落としやすいポイントですね。
出典:用途地域13種類の一覧・特徴(オリックス銀行)
オリックス銀行 都市計画法の用途地域とは?13種類の一覧・特徴と制限をわかりやすく解説
「開発行為」とは、建築物の建築や特定工作物の設置を目的として行う土地の区画・形質の変更を指します。都市計画法第29条は、この開発行為を行う場合に都道府県知事等の許可(開発許可)を義務づけています。不動産投資において購入した土地を宅地開発・賃貸アパート建設に転用する際には、この開発許可の要否を最初に確認することが必須です。
開発許可が必要かどうかは、土地の区域区分と面積によって変わります。
- 市街化区域:原則1,000㎡以上(三大都市圏の一部は500㎡以上)の開発行為に許可が必要
- 市街化調整区域:面積に関係なく、原則すべての開発行為に許可が必要
- 非線引き都市計画区域・準都市計画区域:3,000㎡以上で許可が必要
- 都市計画区域外:1ha(10,000㎡)以上で許可が必要
特に市街化調整区域は「規模に関わらず許可が必要」という点が投資上の最大の落とし穴です。1,000㎡未満の小規模な土地を購入して建物を建てようとしても、市街化調整区域であれば必ず許可申請が必要になります。
開発許可申請から許可が下りるまでの期間は、通常1〜3ヶ月ですが、事前協議を含めると半年以上かかるケースも珍しくありません。投資スケジュールが大きくずれ込む原因になるため、物件購入前に許可が得られるかどうかを確認しておくことが条件です。
無許可で開発行為を行った場合の罰則は非常に厳しく、都市計画法第89条により3年以下の懲役または200万円以下の罰金が科されます。さらに行政から工事の中止命令・原状回復命令が出された場合、造成済みの土地を元の状態に戻すための費用が別途発生します。意外ですね。加えて「無許可開発地」として登録された土地は、その後の売買や金融機関からの融資が著しく困難になるため、事実上の資産凍結状態に陥ります。
出典:開発行為の基準・許可の要否・罰則について(build-app)
金融に関心のある投資家が特に注意すべきなのが、市街化調整区域における金融機関の担保評価です。市街化調整区域の土地・建物は、銀行をはじめとする金融機関から担保価値が著しく低く評価される傾向があり、場合によっては担保評価がゼロとして融資審査が拒否されるケースもあります。
市街化調整区域は都市計画法によって「市街化を抑制する区域」として指定されており、原則として住宅の新築や建て替えに開発許可が必要です。農家や農業従事者の住宅など特定条件を満たす建物を除き、一般的な住宅・アパートを建てることは許可されません。建物を建てられないエリアの土地に担保価値を認める金融機関は少なく、物件価格が市街化区域と比べて半値以下であっても、ローンが組めない状況に陥ることがあります。
市街化調整区域の物件の主なデメリットをまとめると次のとおりです。
- 🏦 住宅ローン・不動産投資ローンの審査が極めて厳しい(担保評価が低いため)
- 🔨 建て替え・増改築に許可が必要(自由なリノベーションができない)
- 📉 将来の売却が困難(買い手が限られ、流動性が低い)
- 💸 固定資産税が低い一方で資産価値そのものが下落リスクあり
一方で「逆線引き」と呼ばれるリスクも存在します。市街化区域として指定されていた土地が、都市計画の見直しによって市街化調整区域に変更されるケースです。この場合、建築制限が大幅に強化され、保有する不動産の資産価値が急落します。都市計画は5年ごとに見直されるため、購入後も定期的な動向チェックが必要です。
近年では「立地適正化計画」によって、自治体が「居住誘導区域」として推奨するエリアを定める動きが全国に広がっています。2024年12月時点で599の都市が計画を公表しており、居住誘導区域外の土地は将来的な不動産価値の大幅下落リスクが高まっています。投資判断の際には、対象エリアが居住誘導区域内かどうかも確認しておくと安心です。
出典:市街化調整区域の住宅ローンと担保評価について(HOMES)
LIFULL HOME'S 市街化調整区域でも住宅ローンは利用可能?土地の購入時に気をつけること
都市計画法は時代に合わせて改正が繰り返されており、2018年の改正では「田園住居地域」が新設されました。また近年は「立地適正化計画」との連動が強まっており、コンパクトシティ推進の観点から都市機能や居住を特定エリアに集約する方向性が明確になっています。この流れに乗り遅れた不動産は、長期的に見て資産価値の目減りリスクを抱えることになります。
不動産投資家がとるべき具体的な確認ステップは以下のとおりです。
1. ✅ 購入前に用途地域を確認する:自治体の都市計画課や国土交通省の「都市計画情報提供サービス」で無料で閲覧可能。
2. ✅ 区域区分(市街化区域か調整区域か)を確認する:市街化調整区域なら融資・建築のリスクが高い。
3. ✅ 開発許可の要否を事前相談する:購入後に「許可が下りない」では手遅れになる。
4. ✅ 立地適正化計画の居住誘導区域を確認する:各自治体のウェブサイトや都市計画課で確認できる。
5. ✅ 重要事項説明書の都市計画欄を必ず精読する:宅建業者が義務として説明する内容のなかに、用途地域・区域区分・建ぺい率・容積率が記載されている。
用途地域のチェックは、国土交通省が提供している「不動産情報ライブラリ」(旧・土地総合情報システム)を利用すれば、住所を入力するだけで無料で確認できます。物件情報を見た段階でまず用途地域を調べ、その後に収益計算に進む流れが基本です。
また、収益物件を購入する際には宅地建物取引士(宅建士)が発行する「重要事項説明書」の都市計画関連欄を必ず精読することが大切です。重要事項説明書には①都市計画区域の内外・区域区分②用途地域③建ぺい率・容積率④その他法令上の制限が記載されており、これを把握せずに契約するのはリスクが高すぎます。これは必須です。
出典:都市計画情報の調べ方と重要事項説明のポイント(いえーる)
iqrafudosan 都市計画・区域区分・用途地域・地域地区・地区計画等とはなにか