

取引時確認がお済みでない口座からは、10万円を超える送金がATMでもオンラインでも一切できなくなります。
「取引時確認」という言葉を聞いて、ゆうちょ銀行から何か面倒な手続きを求められた、と感じた方も多いのではないでしょうか。実はこれは、銀行側の独自ルールではありません。「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)」という国の法律によって、すべての銀行に義務付けられた本人確認手続きのことです。
マネー・ローンダリング(資金洗浄)やテロ資金供与の防止を目的として、金融機関は口座を持つすべての顧客に対して、一定の取引時に「あなたは誰ですか?何のためにこの取引をしていますか?」を確認する義務があります。つまり基本は法令対応です。
ゆうちょ銀行の場合、確認が必要な事項は以下のとおりです。
取引目的や職業まで申告が必要なのか、と驚く方も少なくないはずです。これは2013年4月の犯罪収益移転防止法改正によって追加された項目で、それ以前に口座を開いた方は未確認のままになっているケースが多くあります。
口座自体はずっと使えていたのに、ある日突然ATMでメッセージが出たり、送金が止まったりするのは、この確認が未完了のためです。確認済みかどうかは口座ごとに管理されています。なお、取引時確認は一度完了すれば基本的にずっと有効ですが、住所・氏名の変更や、ハイリスク取引(なりすましの疑いのある取引・特定の国との取引など)の際には再確認が求められます。
取引目的等の申告が追加要件になったのは法改正後です。
参考リンク(犯罪収益移転防止法に基づく取引時確認の仕組みを解説・金融庁)。
金融庁|金融機関窓口や郵送書類等による確認手続にご協力ください
最もスムーズな手段は、スマートフォン専用の「ゆうちょ手続きアプリ」を使う方法です。窓口に出向く必要がなく、自宅で好きな時間に手続きを完了できます。所要時間は約10〜15分が目安です。
ただし、利用できる対象には条件があります。
パスポートのみ所持・在留カードのみ所持、といった方はアプリでの手続きができません。その場合は後述の窓口手続きが必要です。
手順はシンプルです。アプリをインストールし、メニュー画面の「お客さま情報の申告をしたい」を選択。チャット形式の案内に従って、職業や口座の利用目的、資金の原資(給与・年金・貯蓄など)を回答します。その後、本人確認書類のICチップを読み取れば完了です。
会員登録は不要です。
アプリの便利な点は、手続き完了が即時に反映されることです。ATMで「取引時確認が未完了です」というメッセージが表示されていた口座も、アプリでの手続き完了後すぐに制限が解除されます。銀行の営業時間に左右されないのは大きなメリットですね。
注意点が1点あります。マイナンバーカードを使って手続きする場合、アプリ側がマイナンバーそのものを取得することはありません。カードの券面情報(氏名・住所・生年月日など)の確認のみに使用されます。個人番号が第三者に渡ることはないため、安心して利用できます。
参考リンク(ゆうちょ手続きアプリの公式ガイド)。
ゆうちょ銀行|ゆうちょ手続きアプリ 公式ページ
アプリが使えない方・アプリに慣れていない方・法人のお客さまは、郵便局またはゆうちょ銀行の貯金窓口で手続きを行います。簡易郵便局では対応していないことがあるため、通常の郵便局またはゆうちょ銀行の店舗を選ぶのが確実です。
窓口で必要なものは次のとおりです。
2025年12月2日以降、各種健康保険証は本人確認書類として使用できなくなりました。使用できるのは介護保険の被保険者証(有効なもの)を除く保険証には適用されないため、注意が必要です。これは重要な変更点です。
健康保険証に代わる書類としては「資格確認書」があります。ただし、資格確認書は顔写真がないため、使用する場合は追加の書類(公共料金の領収書など)も合わせて持参する必要があります。顔写真付き書類を1点持参するほうが、手続きがスムーズです。
また、法人名義の口座の場合は、登記事項証明書などの法人確認書類と、来店した担当者個人の本人確認書類の両方が必要です。さらに、議決権の25%超を保有する実質的支配者(大株主など)の氏名・住所・生年月日の申告も求められます。中小企業のオーナー経営者が窓口に出向く場合、あらかじめ大株主の情報をメモしておくとスムーズです。
窓口の営業時間は平日9時〜16時が基本です。時間に余裕を持って訪問しましょう。
参考リンク(ゆうちょ銀行が使用できる本人確認書類の全一覧)。
ゆうちょ銀行|本人確認書類一覧
「そもそも自分の口座が取引時確認済みかどうか、わからない」という方も多いはずです。確認方法は大きく2つあります。
通帳で確認する場合は、総合口座通帳のご利用欄を見てください。「確認」の文字の上に「○」が印字されており、かつその右横に「取」という文字が表示されていれば、取引時確認済みです。この「取」の印字がない場合は未確認です。
ゆうちょダイレクト(オンラインバンキング)で確認する場合は、次の手順で確認できます。
「否」だった場合は、アプリまたは窓口で手続きを行う必要があります。
では、取引時確認が未完了のままではどうなるのでしょうか?ゆうちょ銀行の公式情報によれば、具体的に以下の取引が制限されます。
「10万円を超える振込」というのは、個人間の仕送りや、ネット通販の代金、ビジネスの支払いなど、日常的な場面で十分起こりえる金額です。
放置して制限がかかるのは痛いですね。
一方で、「10万円超の現金による払込み(ATM)」は取引時確認の有無にかかわらず、そもそもATMでは取り扱いができない仕様です。この場合は窓口での手続き一択になります。また、公共料金(電気・ガス・水道)や学校の入学金・授業料・受験料の払込みについては、取引時確認が不要です。この例外も覚えておくと便利です。
参考リンク(取引時確認済みかどうかをゆうちょダイレクトで確認する方法)。
ゆうちょ銀行よくあるご質問|取引時確認済みかをゆうちょダイレクトで確認する方法
本人が窓口に行けない事情がある場合、代理人による手続きも可能です。ただし、手続きが複雑になります。代理人が窓口を訪問する際には、口座名義人(本人)の本人確認書類と代理人自身の本人確認書類の両方、そして委任状(または同居の親族であることを示す書類)が必要です。100万円を超える請求の場合は、委任状・代理人の書類に加え、名義人ご本人の書類も必要です。
単に「家族が代わりに行く」だけでは受け付けてもらえません。必ず事前に書類を揃えましょう。
また、取引時確認には「再確認」が必要になるケースがあります。それが「ハイリスク取引」と呼ばれる取引です。
ハイリスク取引に該当すると、すでに確認済みの口座であっても改めて取引時確認が求められます。さらに取引金額が200万円を超える場合は、確定申告書(個人)や貸借対照表(法人)など、資産・収入状況の証明書類の提示まで必要になります。
これは金融機関側にとっても法律上の義務です。拒否した場合、そのお取引が受け付けてもらえなくなります。
外国での高リポジションにある公職者の家族は対象です。
また、取引時確認完了後に住所や氏名に変更があった場合も、変更届の提出が必要です。取引時確認は「一度やれば永続」という性格の手続きですが、情報に変更があれば随時更新が求められます。引っ越し後に変更届を出し忘れたまま放置すると、後々大口取引の際に証明書類の再提出を求められるケースもあります。
口座情報の変更は早めに届け出るが原則です。
参考リンク(取引時確認の詳細と確認事項の全容・ゆうちょ銀行公式)。
ゆうちょ銀行|取引時確認等に関するお願い(公式)