

経理・管理部門が最初に押さえるべき「社労士と弁護士の違い」は、扱える業務範囲の設計思想がそもそも異なる点です。弁護士は、訴訟事件・非訟事件・行政庁への不服申立て、そして「その他一般の法律事務」まで幅広く取り扱えると整理されています。これは労働分野・社会保険分野も含めて制限がない、という意味で実務上かなり強いです。参考として、弁護士の業務範囲は弁護士法3条を根拠に整理されています。
※弁護士の業務範囲(弁護士法第3条の整理)
https://www.kanaben.or.jp/profile/lawyer/lawyer04/index.html
一方、社労士は「労働社会保険諸法令」に基づく申請書類の作成、提出手続代行、事務代理、帳簿書類の作成、そして労務管理等の相談・指導が中心です。重要なのは、社労士の業務が“何でも法律相談屋”ではなく、労働・社会保険の領域で行政手続と実務運用を支える専門職として設計されていることです。大阪労働局のパンフレットでも、社労士の業務として「書類作成代行・提出代行・(特定社労士に限る)紛争解決手続の代理・相談等」と整理されています。
※社労士の業務の整理(大阪労働局パンフレット)
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/library/osaka-roudoukyoku/H25/kantoku/251203.pdf
経理的には、ここで「同じ“士業費用”だから同列」と捉えると危険です。なぜなら、同じ“相談”に見えても、成果物(届出の適法性、就業規則の整合性、訴訟リスク評価、交渉の可否)がまったく違うからです。たとえば、雇用保険・社会保険の資格取得や年度更新、36協定など行政提出物が主戦場なら社労士がフィットしやすい一方、紛争化・交渉・訴訟に直結するなら弁護士が必要になりがちです。
実務で最も揉めやすいのが、「相談はできるが代理はできない(または限定される)」という線引きです。弁護士は、示談交渉、労働審判、訴訟で当事者の代理人として活動でき、権限の制限がないと整理されています。神奈川県弁護士会の解説でも、弁護士は労働者側・使用者側いずれでも、交渉や訴訟の代理・そのための相談を制限なく行えるとされています。
https://www.kanaben.or.jp/profile/lawyer/lawyer04/index.html
社労士は「労務管理等の相談・指導」は業務として整理されますが、相手方(従業員、労組、元従業員など)との示談交渉を“代理人”として行うことは、一般の社労士には権限根拠がないと明確に整理されています。さらに、特定社労士であっても、代理できるのは一定の紛争解決手続(あっせん・調停・指定ADR等)を利用している場合で、しかも開始から終了まで等、範囲が限定される点が重要です。つまり「特定社労士=何でも交渉代理できる」ではありません。
https://www.kanaben.or.jp/profile/lawyer/lawyer04/index.html
経理が怖いのはここで、依頼のつもりが「非弁」や権限外に近い運用になり、後から契約・請求・成果物の正当性が説明しづらくなるケースです。稟議の段階で「この案件は交渉代理が発生する可能性があるか」「代理権限が必要か」を一文で明示し、必要なら弁護士の受任に切り替える設計をしておくと、監査・内部統制の観点でも強くなります。
「社労士と弁護士の違い」を経理業務に落とすと、社労士の強みは“行政手続と書類の精度・速度”に出やすい点です。大阪労働局の資料では、社労士が扱える業務として、申請書等の作成、提出代行、事務代理、帳簿類の作成などが整理され、さらに社会保険・労働保険の手続は複雑で、ミスが追徴金・延滞金などの損害につながり得る旨も述べられています。経理としては、ここが「外注コストに見合うリターン(ミス削減・工数削減・リスク回避)」を作りやすいポイントです。
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/library/osaka-roudoukyoku/H25/kantoku/251203.pdf
また、同資料には、社労士が書類に記名押印を行うことの重要性(適正な委嘱業務の確認が困難になる等)も説明されています。ここは地味ですが、内部統制・証跡管理の観点では意外に効きます。たとえば、年度更新や算定基礎、助成金申請などで「誰が作成し、誰が提出代行したか」を後追いできる形にしておくと、担当者交代や税務調査・監査対応で説明しやすくなります。
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/library/osaka-roudoukyoku/H25/kantoku/251203.pdf
一方で弁護士も、行政手続の代理を行える場合がありますが、弁護士に依頼する主目的は「紛争対応・交渉・法的整理」に寄りがちです。経理のコスト設計としては、日常運用は社労士、火が付いたら弁護士、という役割分担が合理的になりやすいです(もちろん会社規模・業種・リスク許容度で最適解は変わります)。
「社労士と弁護士の違い」が最もクリティカルになるのが、労働審判・訴訟・交渉です。神奈川県弁護士会の整理では、弁護士は労働審判手続・訴訟手続において当事者の代理人として活動でき、相談も含め制限がないとされています。
https://www.kanaben.or.jp/profile/lawyer/lawyer04/index.html
対して社労士は、労働審判や訴訟では代理人にはなれず、弁護士である訴訟代理人とともに出頭して陳述する「補佐人」としての関与に限られる、と明示されています。ここを理解していないと、たとえば「未払い残業代の請求が来たので社労士に丸投げ」→相手方との交渉が必要→弁護士へバトンタッチ、という二度手間が起きます。経理視点では、スピードが落ちるだけでなく、費用の二重化や社内説明の複雑化(なぜ追加費用が発生したのか)につながりやすいのが痛点です。
https://www.kanaben.or.jp/profile/lawyer/lawyer04/index.html
実務での「切替シグナル」を箇条書きで置いておくと判断が安定します。
この段階では、弁護士の受任を前提に動いた方が、結果としてコスト総額が下がることが多いです(早期に争点整理が進み、無駄な対応が減るため)。一方で、証拠となる勤怠・賃金台帳・就業規則の整備、社内の労務フローの棚卸しなどは社労士が強い領域なので、社労士と弁護士を同時に走らせるのも合理的です。
ここは検索上位でも触れられがちですが、経理従事者の「独自視点」として、支払いの正当性・委任範囲・証跡をどう設計するかが現場で効きます。大阪労働局の資料では、社労士の業務の制限や、無資格者が営利目的で社労士業務を行うと罰則があり得ること、さらに社労士にも義務・監督・懲戒・刑事罰があることが説明されています。つまり、外注先が“制度に守られている”一方で、“制度に縛られている”職種でもあるため、契約書・発注書で範囲を明確化しないと、社内の統制上の説明が難しくなります。
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/library/osaka-roudoukyoku/H25/kantoku/251203.pdf
経理で使えるチェックリスト(入れ子にせず、すぐ稟議に貼れる形)を置きます。
意外に見落とされがちなのは、「社労士の仕事は“書類を出す”だけ」ではなく、法令と実務の両面から“会社がやってはいけないことを止める”役割も期待されている点です。大阪労働局の資料では、社労士は公正な立場で誠実に業務を行うことが求められ、違法な相談(残業代を払わない方法など)に対して「NO」と言うべきだ、という趣旨の説明もあります。ここは、コンプライアンスと支出統制が絡む経理にとって、外注先選定の評価軸(安いから、ではなく、止めてくれるから)として使えます。
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/library/osaka-roudoukyoku/H25/kantoku/251203.pdf
最後に、判断を一発で揃えるための早見表を付けます。
| 論点 | 社労士 | 弁護士 |
|---|---|---|
| 中心領域 | 労働・社会保険の手続、書類、労務管理の相談・指導 | 法律事務全般(労働・社会保険も含む) |
| 示談交渉の代理 | 一般の社労士は不可。特定社労士でも一定手続内など限定あり。 | 可能(制限なしと整理される) |
| 労働審判・訴訟の代理 | 代理は不可。補佐人として弁護士と同席し陳述は可と整理される。 | 可能(代理人として活動できる) |
| 経理の主な使いどころ | 定常手続の品質・工数削減、届出の証跡整備、労務運用の改善 | 紛争対応、交渉、審判・訴訟、法的リスクの整理と意思決定支援 |