根抵当権抹消の必要書類と手続きを司法書士が完全解説

根抵当権抹消の必要書類と手続きを司法書士が完全解説

根抵当権抹消の必要書類と手続き・費用を徹底解説

ローン完済後でも、根抵当権は自動的には消えない。


📋 この記事でわかること
📄
必要書類は全4点

登記原因証明情報・委任状・会社等法人番号・登記申請書の4点が必要。うち3点は金融機関から送られ、1点は法務局で入手します。

💴
費用は最低2,000円〜

自分で手続きする場合、登録免許税は不動産1件につき1,000円。司法書士に依頼する場合は報酬1.5万〜3万円が別途必要です。

⚠️
放置すると不動産売却が不可能に

根抵当権が残ったままでは不動産の売却・担保提供ができません。金融機関の統廃合で書類取得が困難になるリスクも。


根抵当権の抹消に必要な書類4点を一覧で確認


まず全体像を把握しておきましょう。根抵当権の抹消登記に必要な書類は、大きく分けて4点です。そのうち3点は金融機関から送られてくるもので、残り1点は申請者自身が用意します。


| 書類名 | 入手先 | 備考 |
|---|---|---|
| 登記原因証明情報(解除証書・弁済証書・解約証書など) | 金融機関 | 完済後に郵送される |
| 金融機関の委任状 | 金融機関 | 完済後に同封される |
| 会社等法人番号または法人登記簿 | 金融機関 or 国税庁サイト | 委任状に記載済みの場合も |
| 根抵当権抹消登記申請書 | 法務局(書式は無料DL可) | 申請者が自ら作成する |


書類の入手ルートは明快です。ただし、状況によって追加書類が必要になるケースもあるため、以下でそれぞれを詳しく確認していきます。


📄 登記原因証明情報(解除証書・弁済証書等)


根抵当権を消滅させた法的根拠を示す書類です。ローンを完済すると、金融機関から「根抵当権解除証書」「弁済証書」「解約証書」などの名称で郵送されてきます。名称が違っても内容は同じです。


重要なのが「書類の記載内容の確認」で、金融機関によっては解除証書に不動産の表示が記載されていないことがあります。その場合は、登記申請書だけでなく解除証書にも不動産情報を追記する必要があります。見落としやすいポイントです。


📝 金融機関の委任状


法務局への申請を代理人(申請者または司法書士)に委任するための書類です。「代表取締役」ではなく「代表理事」「支配人」名義で作成されている場合もあります。書類が届いたら、肩書きが何であれ問題ありません。


なお、委任状は登記識別情報(権利証)と異なり、紛失しても再発行は可能です。ただし、金融機関によっては再発行に数日〜1週間以上かかる上、1件につき11,000円程度の再発行手数料が発生するケースがあります。書類が届いたら大切に保管してください。


🏢 会社等法人番号または法人登記簿


金融機関(法人)の実在を証明するための情報です。委任状に12桁の会社等法人番号がすでに記載されていれば、追加書類は不要です。記載がない場合は、国税庁の法人番号公表サイトで無料検索できます。


ただし、金融機関が合併・名称変更をしていた場合は、変更の経緯を示す法人登記簿が別途必要になることがあります。これが「想定外の手間」になりやすいポイントです。


📑 根抵当権抹消登記申請書


申請者自身が作成する書類です。書式は法務局の公式サイトから無料でダウンロードできます。記載する主な内容は、根抵当権が消滅した日付と原因、登記権利者(所有者)の住所氏名、登記義務者(金融機関)の本店・商号・代表者名、会社等法人番号、対象不動産の情報(登記簿の順位番号・受付番号)です。


申請書に不備があると法務局から呼び出しを受け、「補正」という修正作業が必要になります。この補正対応が思いのほか手間になることがあるため、慣れていない場合は司法書士への依頼も検討に値します。


法務局(法務省)の公式案内はこちらで確認できます。申請書の書式と記載例が掲載されています。


不動産登記の申請書様式について(法務局)|根抵当権抹消登記申請書の公式書式・記載例を掲載


根抵当権抹消の申請書の書き方と記載のコツ

書き方で迷う人が多い部分です。登記申請書は、手元に届いた各書類から情報を転記していく作業になります。ここでは、特につまずきやすい箇所を整理します。


🖊 「登記の原因」欄:日付と原因の書き方


「令和〇年〇月〇日解除」のように、解除証書に記載された日付をそのまま転記します。日付を誤ると法務局から補正を求められます。記載する原因の言葉も「解除」「弁済」「解約」など証書の記載に合わせてください。


👤 「登記権利者」と「登記義務者」の違い


根抵当権抹消において「登記権利者」は不動産の所有者(あなた)です。「登記義務者」は金融機関側になります。根抵当権が消えることで利益を受けるのが所有者のため、このような名称になっています。逆に記載すると即エラーになります。これは基本です。


🏠 「不動産の表示」欄


対象不動産の情報は、登記簿(登記事項証明書)の記載を正確に転記します。土地なら地番、建物なら家屋番号を使います。住所ではないため注意が必要です。手元の解除証書に不動産の記載がない金融機関も多く、その場合は登記申請書だけでなく解除証書にも不動産情報を追記する必要があります。


📌 「課税価格・登録免許税」欄


根抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1件につき1,000円です(固定)。土地・建物それぞれに設定されている場合は合計2,000円になります。なお、20件以上の不動産を一括申請する場合は上限が20,000円となっています。収入印紙を申請書に貼り付けて納税する形が一般的です。


申請書の作成後、他の書類と一緒に法務局へ提出します。管轄は対象不動産の所在地によって決まります。自分の家の近くの法務局ではない場合もあるため、事前に確認が必要です。


法務局の申請書記載例(静岡地方法務局)はこちらが参考になります。実際の記入サンプルが入手できます。


根抵当権抹消 記載例(法務局)|実際の申請書記載例PDF。対象不動産・登録免許税の記入方法を確認できる


根抵当権抹消の費用と司法書士報酬の目安

費用は「実費」と「司法書士報酬」の2種類に分かれます。自分で手続きする場合と、専門家に依頼する場合で総額が大きく変わります。


| 費用項目 | 自分で手続き | 司法書士に依頼 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 1,000円×不動産件数 | 同左 |
| 事前調査(登記事項確認) | 約330〜600円/件 | 同左(実費) |
| 郵送・雑費 | 約1,000〜4,000円 | 同左(実費) |
| 司法書士報酬 | なし | 1万5,000〜3万円程度 |


つまり自分で申請する場合、一戸建て(土地1件・建物1件)なら合計で5,000円以下で完結することが多いです。経費を抑えたい方にとっては魅力的な選択肢です。


ただし「自分でやればタダ同然」と思って手をつけると、思わぬ落とし穴があります。登記簿上の住所が現在の住所と異なる場合は、抹消登記の前に「住所変更登記」が必要になります。この場合は別途費用(登録免許税1,000円〜2,000円)と手間がかかります。


また、金融機関が合併や本店移転をしていた場合には、変更の経緯を示す書類の確認が必要になることがあり、その分だけ申請が複雑になります。慣れていない場合は専門家に依頼する方がリスクが少なく、トータルコストとして妥当です。


司法書士に依頼する際の流れは、①金融機関から必要書類を受け取る→②司法書士への委任状に署名捺印→③管轄法務局へ申請(司法書士が代行)→④登記完了確認、という順番です。


完了まで申請から約1〜2週間かかります。書類準備の期間も含めると、1〜2ヶ月程度見ておくと余裕があります。


根抵当権抹消を放置するリスクと注意点

「完済したのだから、登記は後回しでもいいか」と思いがちです。しかし実際には、放置するほどデメリットが積み重なっていきます。


🔴 不動産を売却できなくなる


根抵当権が残った不動産は、原則として売却が難しくなります。法律上は売買契約は可能ですが、根抵当権が設定されたままでは買い手がつかないのが現実です。「引き渡し前に抹消が必要」となり、売却のタイミングで書類を慌てて準備することになります。書類準備と登記完了には早くても2週間〜1ヶ月かかります。売却スケジュールが大幅に狂うリスクがあります。


🔴 金融機関の統廃合で書類取得が困難になる


時間が経過すると、根抵当権を設定した金融機関が合併・吸収・廃業などで存在しない状況になることがあります。この場合、書類の取得が困難になるだけでなく、手続き自体が複雑化し、弁護士や司法書士への費用が大幅に増える可能性があります。


🔴 相続時に負担が増える


根抵当権付きの不動産を相続する場合、相続が発生してから6ヶ月以内に対応しなければ、根抵当権がそのまま相続人に引き継がれてしまいます。この6ヶ月という期間が意外と知られていない重要なポイントです。完済済みであっても早めに抹消登記を済ませておくことで、相続人への余計な手間・費用を防ぐことができます。


🟡 書類そのものには期限はない(ただし注意が必要)


よく「書類に期限があるのでは?」という質問が挙がります。結論として、金融機関から届いた委任状や権利証に使用期限はありません。ただし、法人の資格証明書(法人登記簿謄本)は発行から3ヶ月を超えると、取り直しが必要になるケースがあります。書類を受け取ったらできるだけ速やかに申請するのが賢明です。


法務局の公式案内でも「できるだけ速やかに申請されることをおすすめします」と明記されています。


住宅ローン等を完済した方へ(法務局公式)|法務局が推奨する抵当権抹消の案内ページ。速やかな申請を推奨している


根抵当権と抵当権の違い:抹消手続きで差が出るポイント

金融に関心のある方でも、「根抵当権」と「抵当権」を混同しがちです。抹消手続きにおいても違いが出るため、ここで整理しておきます。


| 比較項目 | 抵当権 | 根抵当権 |
|---|---|---|
| 設定目的 | 住宅ローンなど1回限りの借入 | 事業資金など繰り返す借入 |
| 抹消のタイミング | 完済すれば自動消滅(登記は手続き要) | 完済しても消滅しない。当事者間の合意が必要 |
| 抹消のしやすさ | 比較的シンプル | 債権者との交渉・合意が必須 |
| 連帯債務 | 設定可 | 設定不可 |


抵当権は、住宅ローンを完済した時点で「担保としての効力」は消えます。しかし登記は残ったままになるため、改めて抹消登記が必要です。根抵当権はさらに一歩進んで、完済しただけでは消滅自体が起きません。金融機関との解約合意が大前提になります。


これが原則です。


事業者が運転資金用に設定した根抵当権や、学資ローンのために設定した根抵当権が、完済後も登記簿に残ったままになっているケースは珍しくありません。親から不動産を相続した際に「何の権利かわからない登記が残っている」と気づくパターンが多く、実務でも相談が多い案件の一つです。


抹消が複雑になる典型的なケースとして、「不動産の所有者(根抵当権設定者)と実際の借入者(債務者)が別人」という状況があります。たとえば父親の土地に根抵当権を設定して子供が事業資金を借りた場合、所有者と債務者が異なります。この場合は元本確定手続きが別途必要になることがあり、手続きの難度が上がります。


根抵当権の基礎的な仕組みについては、法務省の法制審議会資料も詳しいですが、実務面では司法書士事務所のコラムが役立ちます。


根抵当権抹消手続きの必要書類・申請書の書き方(司法書士 明星法務事務所)|司法書士が解説する実務的な手順と注意点が詳しい


根抵当権抹消の手続きを自分でやる場合の独自チェックリスト

検索上位の記事では触れられにくいポイントですが、「実際に手続きをしようとした時に詰まりやすいポイント」を整理しました。この視点で事前確認しておくと、法務局への余計な往復が防げます。


✅ 登記簿上の住所と現住所が一致しているか確認する


不一致があると、抹消登記の前に住所変更登記(登録免許税1,000円〜2,000円)が別途必要です。まず登記事項証明書(600円程度)を取得して確認してください。


✅ 金融機関が合併・改称していないかチェックする


委任状の金融機関名と現在の正式名称が一致しているか確認します。不一致の場合は変更の経緯を示す登記簿が必要になります。国税庁の法人番号公表サイトで現在の名称を調べるのが最短ルートです。


✅ 不動産が複数ある場合は件数を正確に把握する


マンションでも「土地の共有持分」「建物(専有部分)」「敷地権」が別々の不動産として扱われるケースがあり、登録免許税の計算に影響します。登記事項証明書で対象件数を確認しておきましょう。


✅ 管轄法務局が遠方でないか確認する


申請は不動産の所在地を管轄する法務局への提出が原則です。郵送申請も可能ですが、不備があった際は出頭が必要になる場合もあります。法務局の管轄検索ツールで事前に調べておくと安心です。


✅ 解除証書に不動産の記載があるかチェックする


解除証書に不動産情報の記載がない金融機関は「非常に多い」と司法書士事務所のサイトに記述があります。この場合は解除証書にも不動産情報を追記する必要があります。書類の記載漏れは法務局への補正依頼につながるため、受け取った段階で確認してください。


✅ 申請書に使うハンコは認印でOK(シャチハタは不可)


実印・印鑑証明書は原則不要です。ただしシャチハタなどのスタンプ印は受け付けてもらえません。注意が必要です。


✅ 書類は原本を提出、ただしコピーを一緒に出せば原本が返却される


解除証書などの書類は原本提出が必須です。コピーを一緒に提出すれば原本は返還されます。大切な書類を失わないために、提出時にコピーを必ず同封しましょう。


根抵当権抹消の手続きは、準備が整えば難易度は高くありません。要点は「書類を速やかに集め、申請書の記載を正確に行う」という2点に集約されます。自信がない場合は司法書士への依頼が確実ですが、流れを理解しておくだけでも相談時のコミュニケーションが格段にスムーズになります。


不動産登記申請書様式一覧(法務局)|3-2 根抵当権抹消登記申請書の書式・記載例をダウンロードできる法務局の公式ページ




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