
2022年10月1日から実施されてきた後期高齢者医療制度の配慮措置が、2025年9月30日をもって終了しました 。この配慮措置は、窓口負担割合が1割から2割に変更された方を対象に、1か月の外来医療費の負担増加額を3,000円までに抑える制度でした 。
参考)後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)…
配慮措置は、窓口2割負担導入時に伴う急激な負担上昇を防ぐ目的で設けられた3年間の時限措置として位置づけられており 、制度施行から一定期間経過後は原則通り2割負担をお願いするという趣旨から、期限をもって終了することが決定されていました。
参考)https://ajhc.or.jp/siryo/202509end.pdf
対象者は後期高齢者医療の被保険者全体の約20%にあたる約370万人で、住民税課税所得が28万円以上145万円未満の方のうち、年金収入とその他合計所得が単身世帯200万円以上、複数世帯320万円以上の条件を満たす方々です 。
参考)神戸市:後期高齢者医療窓口負担割合の2割化
窓口負担割合が2割となる対象者の判定は、世帯単位で行われ、複数の条件を満たす必要があります 。まず、同一世帯に住民税課税所得が28万円以上145万円未満の後期高齢者医療被保険者がいることが前提条件です。
参考)窓口負担割合が2割となる方へ|兵庫県後期高齢者医療広域連合公…
その上で、被保険者が1人の世帯では「年金収入+その他の合計所得金額」が200万円以上、被保険者が2人以上の世帯では320万円以上の場合に2割負担となります 。なお、年金収入には遺族年金や障害年金は含まれません 。
参考)お医者さんでの負担
現役並み所得者(住民税課税所得145万円以上)については、これまで同様3割負担が継続されており、今回の制度変更の対象外です 。この判定基準により、中程度の所得を持つ高齢者層が主に2割負担の対象となっています。
参考)大阪府後期高齢者医療広域連合
配慮措置の終了により、2割負担対象者の外来医療費は大幅に増加する可能性があります 。具体例として、月の医療費が11万円で複数の医療機関を受診した場合、配慮措置適用中は窓口負担が1万6,000円でしたが、措置終了後は本来の2割負担である2万2,000円を支払うことになり、月6,000円程度の負担増となります 。
参考)【社労士が警告】2025年10月から医療費が急増!後期高齢者…
特に慢性疾患を抱え定期的に通院が必要な高齢者にとって、この負担増は家計に継続的な影響を与えることが懸念されます 。医療費の増加は、年末の医療費控除の計算にも影響し、これまでの配慮措置による還付額が減ることで、実質的な「隠れ増税」となる側面もあります 。
一方で、高額療養費制度により外来の自己負担上限額は月18,000円(年間144,000円)に設定されているため 、極端に高額な負担は回避される仕組みが維持されています。
参考)高額療養費|給付について|医療制度|和歌山県後期高齢者医療広…
後期高齢者世帯は平均で2,000万円以上の金融資産を保有しており 、医療費負担増による家計圧迫は金融資産の取り崩しを促進する可能性があります。65歳以上世帯の金融資産残高は2023年度末の1,129兆円から2035年度末には1,601兆円程度に増加すると予測されていますが 、医療費負担増により消費や投資行動に変化が生じることが想定されます。
参考)https://www.yu-cho-f.jp/wp-content/uploads/2025spring_articles06.pdf
高齢者の認知機能低下と資産の高齢化が同時に進行すると、適切な資産管理・運用が困難となり、消費・投資の「根詰まり」が発生し日本経済全体に悪影響を及ぼす可能性があります 。
参考)加齢に伴う意思決定の変化が日本社会・経済に与える影響 〜文理…
このため、医療費負担増に備えた自助努力として、貯蓄等の自己資金の活用や民間保険の検討が重要となってきます 。金融機関としては、高齢者向けの医療費準備商品の開発や資産管理サービスの充実が求められる状況です。
参考)大樹生命保険株式会社:大樹の認知症サポートサービス
後期高齢者医療制度の変更は、金融市場にも多面的な影響をもたらします。まず、約370万人の高齢者の可処分所得が減少することで、消費行動や投資行動に変化が生じる可能性があります。特に、医療費負担増を見込んだ預貯金の積み上げが進む可能性があり、これがマクロ経済全体の消費不足につながることが懸念されます 。
金融所得への社会保険料賦課の検討も進んでおり 、高齢者の株式配当などの金融所得が国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険料算定に反映される可能性があります。これにより、高所得の高齢者層の投資行動にも変化が生じることが予想されます。
参考)https://www.myri.co.jp/viewpdf.php?id=a2fa2ba7cf097dcdae9cbc86762a93a71e86648da82171b7b47bcd22c0cdff19f6a629f981537fc5ac8ab4d3752183eb4a9327c3bc3235a8eb7087769691e84ae4ea34a097496acdf1cabedc7723c4f4188031ddad7577b0b42fc12bc2c5fe19f5a922facc0a26dbe79de8c77e729bf510906ddaf97f6064058f1db1481b5892741fb72079a7a6762b1a0d6da69b30f61fd362def81aa63818f66ca1116b5eca1624f84254d2f672706d2d00ca96475c8bcd2788ad6779faamp;tmp=1722362645
また、後期高齢者1人あたりの医療費が約100万円、全体で約20兆円という莫大な金額にのぼり 、その約8割が税金と現役世代の支援金で賄われている現状から、世代間格差の是正圧力が高まり、金融資産課税の強化につながる可能性もあります。
参考)「新NISA増税」というワケではなさそうだが…これから「金融…