結婚・子育て資金贈与はいつまでに使い切るべきか

結婚・子育て資金贈与はいつまでに使い切るべきか

結婚・子育て資金贈与はいつまでに使うべきか、非課税の仕組みと注意点

50歳の誕生日に、使い残した贈与金に突然の贈与税が課されて損をする人が続出しています。


この記事でわかること
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制度の期限は2027年3月31日まで

令和7年度税制改正で2年延長。ただし今後の廃止も議論されており、利用するなら早めの判断が重要です。

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非課税で贈与できるのは最大1,000万円

結婚費用は300万円、子育て費用は700万円が上限。婚約指輪・新婚旅行は対象外など、使い道に細かいルールがあります。

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残額には贈与税または相続税が課される

受贈者が50歳になった時点で口座に残高があると贈与税の対象に。また贈与者が死亡すると残額に相続税がかかるケースもあります。


結婚・子育て資金贈与の非課税制度の概要といつまでが申込期限か


結婚・子育て資金贈与の非課税制度とは、父母や祖父母などの直系尊属が、18歳以上50歳未満の子や孫に対して、結婚や子育てに充てる資金を一括で贈与した場合に、最大1,000万円まで贈与税がかからなくなる特例制度です。正式名称は「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度」といい、2015年(平成27年)4月1日にスタートしました。


申込期限(制度の適用期限)は2027年3月31日です。もともと2025年3月31日が期限でしたが、令和7年度税制改正によって2年間延長されました。ただし、この延長は「こども未来戦略」の集中取組み期間に合わせた暫定的なものとされており、専門家の間では今後の廃止も議論されています。利用を検討しているなら、早めに動くのが賢明です。


受贈者には所得要件もあります。贈与を受ける年の前年の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、この制度を利用できません。高収入の子・孫への贈与を想定している場合は、この点を必ず確認しましょう。


手続きの大まかな流れは、信託銀行などの金融機関に「結婚・子育て資金管理口座」を開設し、「結婚・子育て資金非課税申告書」を金融機関経由で税務署に提出する、という形です。申告書の税務署への直接提出は不要で、金融機関が代わりに提出します。これが通常の贈与税申告との大きな違いです。


制度を使う期限は申込期限(2027年3月31日)だけではありません。資金の管理契約そのものは、受贈者が50歳になった時点で終了します。50歳が条件です。制度の期限と受贈者の年齢制限は別物として、しっかり区別しておく必要があります。


参考:国税庁「No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4511.htm


結婚・子育て資金贈与の非課税対象となる費用の範囲と対象外の落とし穴

「結婚費用だから全部非課税になるはず」と思い込んでいると、後で痛い目を見ます。この制度は、非課税になる費用の範囲が細かく定められており、意外なものが対象外になっています。


結婚に関する費用は300万円を上限として非課税になります。対象となるのは、挙式・披露宴の費用、入籍日の1年前以後に支払われた結婚式場の費用(衣装代なども含む)、そして結婚を機に転居した際の家賃・敷金・転居費用などです。


一方、以下のものは非課税の対象外です。結婚指輪・婚約指輪の購入費、新婚旅行の費用、結納式や両家顔合わせにかかる費用、婚活サービスの利用料、新居の家具・家電の購入費用、光熱費などは一切適用されません。


子育てに関しては最大700万円(合計1,000万円から結婚費用分を引いた残り)が非課税になります。対象は不妊治療・妊婦健診の費用、分娩費用・産後ケア費用、子の医療費(未就学児)、保育所・幼稚園の保育料やベビーシッター代などです。


注意が必要なのは、「未就学児」という要件です。小学校入学以降の子の医療費や学費などは、この制度ではカバーできません。その場合は、別途「教育資金一括贈与の非課税制度」を検討する必要があります。


また、新居の「家賃・敷金」は対象になりますが、「マイホーム購入代金」は対象外です。住宅購入を助けたい場合は「住宅取得等資金の贈与税非課税制度」が別に用意されています。これは使えそうです。


費用を支払った後に口座から引き出す場合は、領収書に記載された支払日から1年以内に金融機関に領収書を提出しなければなりません。この期限を過ぎると、非課税の対象外となる可能性があります。手続きの期限にも注意が条件です。


参考:こども家庭庁「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」
https://www.cfa.go.jp/policies/shoushika/zouyozei


結婚・子育て資金贈与でいつまでに使い切らないと贈与税がかかるか

この制度を活用するうえで、最も理解しておくべきポイントが「残額の課税ルール」です。非課税でもらった資金を使い残したままにしておくと、後になって税金が課されます。


受贈者が50歳に達した時点で、口座の残額は贈与税の課税対象になります。たとえば、25歳で1,000万円の贈与を受けたが、35歳時点で口座に200万円が残っていた場合、50歳になった時点でその200万円に贈与税が課されます。


さらに見落としがちな点があります。残額には特例税率ではなく一般税率が適用されます。2023年4月1日以降に贈与された部分は、たとえ父母や祖父母からの贈与であっても、通常の直系尊属からの贈与に適用される「特例税率(軽い税率)」ではなく、「一般税率(重い税率)」で課税されます。つまり、残額が多いほど税負担が大きくなるということです。


たとえば残額が300万円あった場合、一般税率で計算すると贈与税の税率は20〜25%程度になるケースもあり、数十万円の納税が発生します。痛いですね。


受贈者が口座残高を使い切った場合や、残高がゼロになって契約終了に合意した場合は課税されません。対照的に、受贈者が死亡した場合は、残額があっても贈与税は課されません。これは意外と知られていないルールです。


50歳の誕生日まで、という感覚で制度を管理するのが基本です。計画的な使い方が前提の制度だということを忘れないようにしましょう。


参考:税理士法人チェスター「結婚・子育て資金の一括贈与は1,000万円まで贈与税が非課税に!」
https://chester-tax.com/encyclopedia/8964.html


贈与者が死亡すると相続税がかかる:見落とされがちな「管理残額」ルール

非課税制度を使って贈与が完了したからといって、安心はできません。贈与者(父母や祖父母)が亡くなった場合に、思わぬ税負担が発生する可能性があります。


契約期間中に贈与者が死亡すると、口座の残額(管理残額)は相続税の課税対象になります。「贈与税が非課税だったはずなのに、相続税がかかるの?」と驚く方が多いのですが、これは制度の重要な落とし穴です。


管理残額とは、贈与された金額から結婚・子育て資金として認められた金額(適切に使った分)を差し引いた残りの金額です。たとえば祖父から1,000万円の贈与を受け、400万円を結婚・子育てに使い、残り600万円が口座に残っている状態で祖父が亡くなった場合、その600万円に相続税が課されます。


さらに注意すべき点があります。
受贈者が贈与者の子以外(孫やひ孫)である場合、管理残額のうち2021年4月1日以降に贈与された部分は「相続税の2割加算」の対象になります。相続税の2割加算とは、法定相続人以外の孫などが相続で財産を取得した場合に、通常計算される相続税額に20%を上乗せするルールです。祖父母から孫への贈与でこの制度を利用している家庭は特に注意が必要です。


贈与者が死亡した際には、金融機関に速やかに届け出る義務もあります。届け出を怠ると後処理がより複雑になりかねません。


この相続税リスクを踏まえると、贈与者の健康状態や年齢も考慮したうえで、制度の利用可否を判断することが大切です。結婚・子育て資金贈与は「非課税」というメリットが目立ちますが、使い残しや贈与者の死亡タイミングによっては思った以上の税負担が生じることを、金融に関心のある方であれば必ず把握しておきましょう。


参考:三菱UFJ信託銀行「結婚・子育て資金一括贈与とは?子どもや孫への支援に活用できる制度を詳しく解説」
https://sozoku-guide.bk.mufg.jp/column-list/columns/7r5_m9uf905a


結婚・子育て資金贈与を使うべきか否か:都度贈与との比較で見えるメリットとデメリット

「一括贈与の特例を使うべきか」という問いに対して、実は「使わなくてよいケースも多い」というのが専門家の本音です。これは意外ですね。


そもそも、父母や祖父母が子・孫のために生活費や教育費をその都度支払う場合は、金額が社会通念上相当な範囲であれば贈与税は課されません。挙式費用を支払ってあげる、ベビー用品を一緒に購入する、保育料を毎月援助するといった行動は、特別な手続きをしなくても非課税です。これが「都度贈与」の仕組みです。都度贈与で十分な場合は多いです。


一括贈与の特例が活きるのは、まとまった金額を前もって受贈者の手元に渡したい場合です。たとえば、祖父母が健康上の不安を抱えており、今のうちに資産を移転させておきたい場合や、子・孫が近い将来に大きな結婚費用・出産費用を必要とすることがわかっている場合などは有効です。


一方で、特例制度にはデメリットも複数あります。



  • 口座から引き出す際に領収書の提出が必要で、手続きが煩雑

  • 一度開設した契約は原則として取り消せない

  • 50歳時点で使い残した分に贈与税(一般税率)がかかる

  • 贈与者が死亡すると残額に相続税がかかる(孫なら2割加算も)

  • 対象外の用途(指輪・新婚旅行など)に使っても非課税にならない


これらのデメリットを総合的に考えると、「少額をコツコツ都度贈与する」ほうがシンプルで税負担も少ないケースは少なくありません。つまり、一括贈与の特例は「使える人を選ぶ制度」です。


制度の利用を検討する際は、贈与者・受贈者双方の収入・年齢・ライフプランを整理し、税理士や金融機関の担当者に相談することを強くおすすめします。贈与税・相続税の専門家が在籍する税理士事務所や、信託銀行のライフプランニング窓口に相談する際は、「今後の資産移転全体の計画」をセットで話すと、より的確なアドバイスが得られます。


参考:バリューソリューションズ「結婚・子育て資金の一括贈与特例とは?贈与税の非課税枠や手続き方法を解説」
https://vs-group.jp/sozokuzei/souz-10million/




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