
事業所税は、都市環境の整備及び改善に関する事業に要する費用に充てるための目的税です。1975年に創設され、大都市における都市問題を解決するための財源として機能しています。この税金は地方税法で定められた特定の都市のみで課税される市町村税であり、すべての市町村で課税されるわけではありません。
2025年4月現在、全国で約80の都市が課税対象地域となっています。具体的には以下のような都市が該当します。
事業所税は、これらの指定都市等に事業所を持つ法人または個人事業主に対して課税されますが、事業規模が一定以下の場合は免税点制度により課税されません。
事業所税の課税対象となるかどうかを判断する際には、まず自社の事業所が課税対象地域内にあるかを確認することが第一歩です。不明な場合は、事業所が所在する市町村の税務担当部署に問い合わせることをお勧めします。
事業所税の資産割は、事業所等の床面積を対象として課税されるものです。具体的な計算方法と税率について詳しく解説します。
資産割の計算式は非常にシンプルです。
資産割の税額 = 事業所床面積(㎡)× 600円
ただし、課税対象となるのは指定都市内の事業所等の合計床面積が1,000㎡を超える場合のみです。この1,000㎡という基準が「免税点」と呼ばれるものです。例えば、東京23区内に複数の事業所を持つ場合、それらの合計床面積が1,000㎡を超えると課税対象となります。
資産割の計算において注意すべき点がいくつかあります。
資産割の計算例として、東京23区内に本社(800㎡)と営業所(300㎡)を持つ企業の場合。
資産割の計算に必要な情報を収集する際には、事業所の図面や賃貸借契約書などの資料が重要です。これらの資料は申告内容の確認のために税務署から提出を求められる可能性もあるため、適切に保管しておくことをお勧めします。
事業所税のもう一つの課税区分である従業者割は、従業者の給与総額を対象として課税されます。従業者割の計算方法と給与総額の範囲について詳細に解説します。
従業者割の計算式は以下の通りです。
従業者割の税額 = 従業者給与総額 × 0.25%
従業者割が課税されるのは、指定都市内の事業所等の従業者数の合計が100人を超える場合のみです。この100人という基準が従業者割における「免税点」です。
従業者割の計算において重要なポイントは以下の通りです。
従業者割の計算例として、東京23区内の事業所で従業者数120人、年間給与総額が6億円の企業の場合。
従業者給与総額を正確に把握するためには、給与台帳や源泉徴収簿などの給与関連資料を適切に管理することが重要です。また、65歳以上の従業者や障がい者の給与を控除する場合は、それらを証明する資料も必要となります。
事業所税の計算において、すべての施設や床面積が課税対象となるわけではありません。非課税対象となる施設や特例措置について理解することで、適切な税額計算が可能になります。
非課税対象となる主な施設
※屋内駐車場や立体駐車場は課税対象となる点に注意
ただし、非課税対象となる施設であっても、業務の性質上必要とされる場合は非課税にならない場合があります。例えば、以下のような施設は業務上必要と判断され、非課税対象外となります。
特例措置
事業所税には、特定の事業や状況に対する特例措置も設けられています。
資本金等が1億円以下の法人等が、特定の地域で新たに事業所等を設置した場合、一定期間、事業所税の課税標準を軽減する措置があります。
特定の地域で事業所を新設または増設した場合、一定期間、事業所税の課税標準を軽減する特例があります。
特定の業種(例:製造業、情報通信業など)に対して、事業所税の課税標準を軽減する特例が設けられている場合があります。
これらの非課税対象施設や特例措置は、地域や時期によって異なる場合があるため、最新の情報を確認することが重要です。また、非課税対象施設の判断に迷う場合は、所轄の税務署や市町村の税務担当部署に相談することをお勧めします。
事業所税の申告・納付に関する期限は他の税金と異なる特徴があり、特に申告期限の延長制度がない点は重要な注意点です。ここでは、申告期限と申告手続きの詳細について解説します。
申告・納付期限
事業所税の申告・納付期限は以下の通りです。
特に重要なのは、法人税や法人住民税、法人事業税とは異なり、事業所税には申告期限の延長制度が存在しないという点です。通常、多くの法人は法人税等の申告期限を1か月または2か月延長していますが、事業所税についてはそのような延長ができません。
例えば、3月決算の法人の場合。
この違いにより、事業所税の申告・納付を忘れてしまうケースが少なくありません。特に事業規模の大きい企業では、他の税目は申告期限を延長しているため、事業所税だけが先に申告・納付期限を迎えることになります。
申告手続き
事業所税の申告は、指定都市内における主たる事業所等の所在地を所管する税務署(東京23区の場合は都税事務所)に行います。申告には以下の書類が必要です。
免税点以下の場合の申告義務
免税点以下であることにより納税義務がない場合でも、指定都市等によっては条例の定めにより申告書の提出が必要な場合があります。例えば、以下のような場合には申告が必要です。
申告・納付漏れのリスク
事業所税の申告・納付を忘れた場合、以下のようなリスクがあります。
特に、事業所を新たに開設した場合や、事業拡大により免税点を超えた場合には注意が必要です。成長スピードの速いスタートアップ企業では、当期からいきなり申告・納税が必要になるケースもあります。
事業所税の申告漏れを防ぐためには、申告カレンダーに明確に記載しておくことや、税理士等の専門家に相談することをお勧めします。また、事業所の新設・移転・拡張を行った際には、事業所税の課税対象となる可能性を検討することも重要です。
事業所税の申告・納付をより効率的に行うための電子申告(eLTAX)の活用方法と、実務上の計算における重要なポイントについて解説します。
事業所税の電子申告(eLTAX)
事業所税も他の地方税と同様に、地方税ポータルシステム「eLTAX(エルタックス)」を利用して電子申告することができます。電子申告には以下のようなメリットがあります。
電子申告を利用するためには、事前に利用届出を行い、電子証明書を取得する必要があります。また、eLTAXに対応した税務・会計ソフトウェアを用意するか、eLTAXのポータルセンタから提供されるPCdesk(無償)を利用する必要があります。
実務上の計算ポイント
事業所税の計算を行う際には、以下のポイントに特に注意が必要です。