遺贈相続税基礎控除の計算方法と注意点

遺贈相続税基礎控除の計算方法と注意点

遺贈相続税基礎控除の仕組み

遺贈相続税の基礎知識
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基礎控除の計算

3,000万円+600万円×法定相続人の数で算出

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2割加算制度

配偶者・子・両親以外の受遺者は相続税が2割加算

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申告期限

相続を知った日から10か月以内に申告・納税が必要

遺贈による相続税の基礎控除計算方法

遺贈とは、遺言書によって財産を贈与することを指し、相続人以外の人にも財産を譲ることができる制度です。遺贈を受けた場合でも相続税の対象となりますが、基礎控除の計算方法には重要な注意点があります。

 

相続税の基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算されます。この計算式で重要なのは、遺贈を受ける人(受遺者)の人数は法定相続人の数に含まれないということです。

 

例えば、被相続人に配偶者と子2人がいる場合、友人1人に遺贈があったとしても、基礎控除額は以下のように計算されます。

  • 法定相続人:3人(配偶者1人+子2人)
  • 基礎控除額:3,000万円+600万円×3人=4,800万円

受遺者が何人いても、基礎控除額の計算には影響しません。これは、基礎控除が法定相続人の生活保障という趣旨に基づいているためです。

 

遺産総額が基礎控除額以下の場合は、相続人・受遺者を問わず相続税はかかりません。しかし、基礎控除額を超える場合は、遺贈分も含めて相続税の計算対象となります。

 

遺贈の種類と基礎控除への影響

遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」の2種類があり、それぞれ特徴が異なりますが、基礎控除の計算方法に違いはありません。

 

包括遺贈は、被相続人の財産を割合で指定して遺贈する方法です。例えば「財産の3分の1を○○に遺贈する」といった形で行われます。包括遺贈の場合、プラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産もその割合に応じて承継することになります。
特定遺贈は、特定の財産を指定して遺贈する方法です。「自宅の土地建物を○○に遺贈する」「預金1,000万円を○○に遺贈する」といった形で行われます。特定遺贈の場合、原則として借金などのマイナスの財産を承継する必要はありません。
どちらの遺贈方法であっても、相続税の計算は遺贈財産のみではなく、被相続人が保有していた全財産を対象として行われます。これは、相続税が被相続人の財産移転に対して課税される税金であるためです。

 

また、遺贈の種類に関わらず、小規模宅地等の特例の適用を受けることができる場合があります。ただし、適用要件は相続の場合と同様で、被相続人との関係や居住・事業の継続などの条件を満たす必要があります。

 

遺贈相続税の2割加算制度

遺贈を受けた場合の相続税で特に注意すべきなのが「2割加算」制度です。この制度は、被相続人の配偶者・子・両親以外の人が遺贈を受けた場合に適用されます。

 

2割加算の対象者

  • 被相続人の兄弟姉妹
  • 被相続人の甥・姪
  • 被相続人の孫(代襲相続人を除く)
  • 内縁の配偶者
  • 友人・知人など親族以外の人

2割加算の計算方法は、各人の税額控除前の相続税額に0.2(20%)を乗じた金額を加算します。例えば、相続税額が100万円の場合、2割加算により20万円が追加され、合計120万円の相続税を納付することになります。

 

この制度の趣旨は、相続税の負担公平を図ることにあります。法定相続人以外への財産移転は、相続税の軽減を図る目的で行われる可能性があるため、追加の税負担を課すことで税制の公平性を保っています。

 

ただし、養子の場合は注意が必要です。被相続人の養子は法定相続人となるため、原則として2割加算の対象外となりますが、被相続人に実子がいる場合は養子のうち1人まで、実子がいない場合は養子のうち2人までしか法定相続人として認められません。

 

遺贈時の申告義務と手続き

遺贈により財産を取得した場合、一定の条件下で相続税の申告義務が発生します。申告が必要となるケースと手続きについて詳しく解説します。

 

申告が必要なケース

  • 遺産総額が基礎控除額を超える場合
  • 納付税額がゼロでも、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を適用する場合
  • 相続時精算課税適用財産の贈与を受けていた場合

申告期限は、相続を知った日から10か月以内です。この期限は相続人・受遺者すべてに適用され、期限内に申告・納税を完了させる必要があります。

 

申告書の提出先は、被相続人の住所地を所轄する税務署です。複数の相続人・受遺者がいる場合でも、全員が同じ税務署に申告することになります。

 

申告時に必要な主な書類

  • 相続税申告書
  • 遺言書の写し
  • 被相続人の戸籍謄本
  • 相続人・受遺者の戸籍謄本
  • 財産の評価に関する書類(不動産登記簿謄本、預金残高証明書など)
  • 債務・葬式費用の明細書

相続税の計算は複雑で、特に遺贈が絡む場合は専門的な知識が必要になることが多いため、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。

 

遺贈相続税節税のための事前対策

遺贈を検討する際は、相続税の負担を軽減するための事前対策が重要です。特に2割加算の対象となる人への遺贈では、税負担が重くなる可能性があるため、慎重な検討が必要です。

 

効果的な節税対策

  1. 公益法人等への遺贈寄付

    国や地方公共団体、認定NPO法人などの一定の要件を満たした団体への遺贈は、寄付した財産の価額を相続財産から控除できます。これにより、相続税の課税対象額を大幅に減らすことが可能です。

     

  2. 生前贈与の活用

    年間110万円の贈与税基礎控除を活用した生前贈与により、将来の相続財産を減らすことができます。ただし、相続開始前3年以内の贈与は相続税の計算に含まれるため、計画的な実行が重要です。

     

  3. 相続時精算課税制度の活用

    2,500万円までの贈与について贈与税を非課税とし、相続時に相続税で精算する制度です。将来値上がりが期待される財産の贈与に効果的です。

     

  4. 小規模宅地等の特例の検討

    居住用や事業用の宅地について、一定の要件を満たせば評価額を大幅に減額できる特例があります。遺贈の場合でも適用可能ですが、要件が厳しいため事前の確認が必要です。

     

  5. 遺言書の作成と定期的な見直し

    税制改正や家族構成の変化に応じて、遺言書の内容を定期的に見直すことで、最適な財産分配と税負担の軽減を図ることができます。

     

これらの対策を実施する際は、税制改正の動向や個別の事情を考慮して、専門家と相談しながら進めることが重要です。また、税務面だけでなく、家族関係や遺言執行の実務面も含めて総合的に検討することをお勧めします。

 

国税庁の相続税に関する詳細な情報
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm