ebitdaとは何か・営業利益との違いを完全解説

ebitdaとは何か・営業利益との違いを完全解説

EBITDAとは・営業利益との違いと使い方を徹底解説

営業利益が赤字でも、EBITDAが黒字なら銀行融資を通過できます。


📊 この記事の3つのポイント
💡
EBITDAは「営業利益+減価償却費」が基本

EBITDAとは利払い・税引き・償却前の利益のこと。シンプルな計算式で企業の本当の稼ぐ力が見えてきます。

🔍
営業利益との違いは「減価償却費」の扱い方

営業利益は減価償却費を差し引いた後の数字。EBITDAはそれを足し戻してキャッシュ創出力を見る指標です。

💰
M&AではEV/EBITDA倍率が企業価値の目安になる

中小企業M&AではEBITDAの3〜5倍が相場。この指標を知らずに売却交渉に臨むと、数千万円単位で損をする可能性があります。


EBITDAとは何か・読み方と日本語の意味

EBITDAは「Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization」の頭文字をとった略語です。日本語では「利払い前・税引き前・減価償却前利益」と訳されます。読み方は「イービットディーエー」または「エビータ」が一般的です。


少し難しく聞こえますが、要するに「税金・利息・減価償却費を引く前の利益」のことです。これらの要素を取り除くことで、国や会計基準が違う企業同士でも、純粋に「本業でどれだけ稼いでいるか」を比べられるようになります。


EBITDAの各要素を整理すると、以下のとおりです。


略称の要素 内容 なぜ除外するか
I(Interest) 支払利息 借入の多寡で変わるため
T(Taxes) 法人税等 国・地域によって税率が違うため
D(Depreciation) 有形固定資産の減価償却費 現金支出がない会計上の費用のため
A(Amortization) 無形固定資産の償却費 同上(のれん・ソフトウェアなど)


特に重要なのが「減価償却費」の概念です。工場や機械などの設備を購入した場合、その購入代金は一括で費用計上されるわけではなく、使用期間にわたって少しずつ分割して計上されます。これが減価償却費であり、現金の支出は設備購入時に済んでいますが、会計上の費用として毎年計上され続けます。つまり、現金は出ていかないのに利益が削られる費用です。


EBITDAはこの「現金の動きを伴わない費用」を除外することで、企業の実際のキャッシュ創出力を可視化しています。これが基本の考え方です。




参考:EBITDAの定義について三菱UFJリサーチ&コンサルティングの解説が詳しいです。


EBITDA(イービットディーエー)|三菱UFJリサーチ&コンサルティング


EBITDAの計算方法・営業利益から求めるシンプルな計算式

EBITDAを計算する方法はいくつかありますが、実務で最もよく使われるのが「営業利益+減価償却費」という式です。この計算式だけ覚えておけばOKです。


  • 💡 基本式(最頻出):EBITDA = 営業利益 + 減価償却費
  • 🏦 銀行融資・審査向け:EBITDA = 経常利益 + 支払利息 + 減価償却費
  • 🌏 海外企業との比較向け:EBITDA = 税引前当期純利益特別損益調整 + 支払利息 + 減価償却費
  • 📋 原則的な定義に忠実な式:EBITDA = 当期純利益 + 法人税等 + 支払利息 + 減価償却費 ± 特別損益


具体的な数字で確認してみましょう。ある中小製造業の例では、営業利益が5,000万円、減価償却費が3,000万円だとします。この場合のEBITDAは5,000万円+3,000万円で8,000万円です。営業利益の数字だけ見ると5,000万円の稼ぎですが、EBITDAで見ると8,000万円のキャッシュ創出力があると評価されます。


ここで一つ、見落としがちな落とし穴があります。製造業や建設業の場合、損益計算書(P/L)の「販売費及び一般管理費」に含まれる減価償却費だけを使って計算してしまうミスが多く見られます。製造現場の工場や機械設備に関する減価償却費は「製造原価報告書」に別途記載されており、それも合算しなければなりません。この見落としがあると、EBITDAが実態より小さく算出されてしまい、銀行融資の審査やM&Aの売却価格交渉で自社の評価が不当に低くなる可能性があります。


また、M&Aの現場では「調整後EBITDA(Adjusted EBITDA)」という概念もよく登場します。オーナー経営者の私的経費や一過性のコスト(本社移転費、災害損失など)を加減算して、事業の「正常な収益力」を示したものです。売り手側にとっては企業の実力を正当に評価してもらうための重要なプロセスになります。




参考:経済産業省による中小M&Aの譲渡額算定方法についての資料です。


(参考資料2)中小M&Aの譲渡額の算定方法|経済産業省


EBITDAと営業利益の違い・減価償却費でどう変わるか

EBITDAと営業利益の本質的な違いは、「減価償却費を費用として扱うかどうか」だけです。シンプルな違いです。


営業利益は、売上高から売上原価と販管費(減価償却費を含む)を差し引いた会計上の利益を表します。一方のEBITDAは、その営業利益に減価償却費を足し戻すことで、会計処理の影響を排除したキャッシュ創出力を示します。


設備投資の状況によってどれほど違いが出るか、具体的な数字で見てみましょう。


  A社(古い設備) B社(最新設備を導入)
売上高 1億円 1億円
人件費・その他費用 6,000万円 6,000万円
減価償却費 500万円 3,000万円
営業利益 3,500万円 1,000万円
EBITDA 4,000万円 4,000万円


A社とB社は同じ売上・同じ経費構造を持ちながら、営業利益だけで比べると3,500万円対1,000万円と大きな差があります。しかしEBITDAで見ると両社とも4,000万円で同じです。B社が最新設備を積極的に導入した「成長途上の企業」であることを考えると、営業利益だけの比較は実態を歪めてしまいます。


意外ですね。このような場面でEBITDAが真価を発揮します。


また、EBITDA・EBIT・営業利益の関係性を整理すると次のとおりです。


  • 📌 営業利益:本業で稼いだ利益(減価償却費・税金・利息をすべて差し引き後)
  • 📌 EBIT:利払い前・税引き前利益。日本の会計基準における「営業利益」とほぼ同義
  • 📌 EBITDA:EBITからさらに減価償却費を足し戻したもの。最もキャッシュフローに近い指標


EBITDAは常に営業利益よりも大きい数値になります。なぜなら、営業利益に減価償却費を加算した数値がEBITDAだからです。EBITDAは営業利益の上位概念といえます。




参考:EBITとEBITDAの違いについてfreee公式が詳しく解説しています。


EBITDAとは?意味や計算式、営業利益との違いをわかりやすく解説|freee


EBITDAが重視される理由・M&Aと企業価値評価での活用法

EBITDAが特に重視される場面として、M&A(企業の合併・買収)における企業価値評価が挙げられます。その理由は明快で、国ごとに異なる税率・金利・会計ルールの影響を排除できるため、異なる条件の企業同士を同じ物差しで比較できるからです。


M&Aの現場でよく使われる指標が「EV/EBITDA倍率」です。EV(Enterprise Value:企業価値)をEBITDAで割ったもので、「買収コストをEBITDAの何年分で回収できるか」を示します。


$$EV/EBITDA倍率 = \frac{EV(企業価値)}{EBITDA}$$


$$EV = 時価総額 + 有利子負債 - 現金及び預金$$


業種別の目安は次のとおりです。


対象企業の種別 EV/EBITDA倍率の目安
上場企業(全業種平均) 8〜10倍
IT・インターネット関連企業 10〜15倍前後
成熟産業・資本集約型業種 5〜8倍程度
中小企業のM&A(非上場) 3〜5倍程度
サービス業(中央値) 8.0倍


たとえば、中小企業でEBITDAが5,000万円あれば、EV/EBITDA倍率を4倍として計算すると企業価値は2億円という試算が出ます。「倍率×EBITDA」がおおよその売却価格の目安になるわけです。


もうひとつ知っておくべき指標が「EBITDAマージン」です。


$$EBITDAマージン(\%) = \frac{EBITDA}{売上高} \times 100$$


一般的な目安は、SaaS・テクノロジー企業で20〜30%程度、製造業で10〜15%程度です。このマージンが高いほど、本業で効率的にキャッシュを生み出せている会社です。


さらに、財務健全性を測る「EBITDA有利子負債倍率」も重要です。


$$EBITDA有利子負債倍率 = \frac{有利子負債}{EBITDA}$$


5倍前後が比較的健全とされ、10倍を超えると債務負担が重すぎる水準です。これは銀行の融資審査でも重視されており、会計上の損益が赤字でもこの倍率が健全な範囲なら融資継続の根拠になります。これは使えそうです。




参考:EV/EBITDA倍率の業種別目安について詳しく解説されています。


M&A価格は"利益の何倍"が妥当?価格決定の仕組みや業種別相場|M&A成功


EBITDAの落とし穴・営業利益との数字が示す限界と正しい使い方

EBITDAは便利な指標ですが、万能ではありません。数字だけを鵜呑みにすると、企業の実態を大きく見誤るリスクがあります。主な注意点を3つ整理します。


⚠️ 落とし穴①:設備投資コスト(CapEx)が隠れてしまう


EBITDAは減価償却費を足し戻しますが、現実には設備が老朽化すれば更新・買い替えに多額の現金が必要です。たとえば、運送業でEBITDAが1億円あっても、トラックの買い替えに毎年9,000万円かかるとすると、自由に使える資金は実質1,000万円しかありません。装置産業では「EBITDA−CapEx(設備投資額)」で実質的な資金余力を判断することが大切です。


⚠️ 落とし穴②:黒字倒産リスクが見えない


EBITDAは損益計算書ベースの指標であり、売掛金の回収遅延や在庫増加といった「運転資本の変動」を反映しません。売上が急増してEBITDAが最高水準でも、代金が未回収であれば手元現金は枯渇します。この状況でEBITDAだけを見ていると、突然の資金ショートに気づけません。必ず「営業キャッシュフロー」と併用することが原則です。


⚠️ 落とし穴③:借入金の利払い負担が反映されない


EBITDAが10億円でも、支払利息が8億円あれば成長投資や主還元に回せる資金はほぼゼロです。LBO(レバレッジド・バイアウト:多額の借入による企業買収)直後の企業でよく見られる状況です。EBITDAの絶対額だけで「稼ぐ力が大きい」と判断するのは危険です。


痛いですね。EBITDAを正しく使うためのチェックリストを以下にまとめます。


  • ✅ 製造業・建設業では製造原価明細書の減価償却費も必ず加算する
  • ✅ EBITDAと合わせて「営業キャッシュフロー」も確認する
  • ✅ 設備集約型の業種では「EBITDA−CapEx」で実質資金余力を見る
  • ✅ 有利子負債EBITDA倍率で財務健全性も必ずチェックする
  • ✅ M&Aの場面では「調整後EBITDA」を使い一過性コストを調整する


EBITDAは単体で使うのではなく、複数の財務指標と組み合わせて活用することが基本です。金融の現場や投資判断では、EBITDAはあくまでも「入口の指標」として捉え、その先にある実際のキャッシュフローや財務健全性まで掘り下げることが重要です。企業の本当の実力は、一つの数字では語れません。




参考:MoneyForwardのEBITDA解説記事は計算方法から注意点まで網羅されています。


EBITDAとは?営業利益やEBITとの違い、見方や計算方法をわかりやすく解説|Money Forward