SASBスタンダード日本語版の基礎と活用法を解説

SASBスタンダード日本語版の基礎と活用法を解説

SASBスタンダード日本語版の全解説

SASBスタンダードを「任意開示だから急がなくていい」と後回しにしている企業は、すでに機関投資家のスクリーニングから外され、ESGファンドの投資対象リストに載っていない可能性があります。


📋 この記事の3つのポイント
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日本語版は2024年12月に公開済み・無料DL可能

IFRS財団が2024年12月19日にSASBスタンダードの日本語訳を公表。IFRSサイトに無料アカウント登録するだけで77業種分の全文PDFをダウンロードできます。

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TOPIX100企業の63社がすでにSASB開示を実施

PwCの2023年調査によるとTOPIX100のうち63社がSASBスタンダードを活用。採用率は21年から一貫して増加中で、未対応企業は相対的に評価が低下するリスクがあります。

2027年3月期から東証プライム大手に義務化開始

SSBJ基準(SASBスタンダードを参照必須)が2027年3月期に時価総額3兆円以上の企業から段階的に義務化。2029年には5,000億円以上の企業まで対象が広がります。


SASBスタンダードとは何か・日本語版の基本概要

SASBスタンダードは、SASB(Sustainability Accounting Standards Board:サステナビリティ会計基準審議会)が策定したESG情報開示基準です。2011年に米国サンフランシスコで設立された非営利団体が、約6年間にわたる実務家・企業・投資家・学識者との議論を経て、2018年11月に正式な初版を公表しました。その最大の特徴は、11セクター・77業種それぞれについて、財務的な影響が大きいと考えられるサステナビリティ課題を業種固有の指標として定めている点にあります。


他の開示フレームワークと大きく異なるのは、「誰のための開示か」という点です。SASBスタンダードは一貫して投資家向けの財務的重要性(Financial Materiality)を軸にしており、企業の経営成績や将来キャッシュフローに影響を与えうる非財務情報に絞って開示を求めます。広報やCSRレポートとしての体裁ではなく、投資判断に直結する情報を整理するツールという位置づけです。


これは投資家視点が原則です。


2022年6月、SASBはIFRS財団の傘下に統合され、現在はISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が管理しています。この統合によって、SASBスタンダードはグローバルなサステナビリティ開示基準であるIFRS S1号の「産業別ガイダンス」として正式に位置づけられました。つまり、IFRS S1号を適用する企業はSASBスタンダードの開示トピックを参照し、自社への適用可能性を「考慮しなければならない」とされています。


日本語版については、2024年12月19日にIFRS財団が正式な日本語訳を公表しました。これはSASBスタンダード(2023年12月改訂版)の内容を日本語化したもので、IFRSのアカウント登録(無料)をした後に、ダウンロードページから言語を「日本語」に切り替えることで全業種分のPDFを取得できます。以前は英語のみでアクセスのハードルが高く、日本語版の整備が急務とされていた状況がようやく解消された形です。


日本公認会計士協会:ISSBによるSASBスタンダード日本語訳の公表(2024年12月23日)


SASBスタンダード日本語版のダウンロード手順と注意点

日本語版のダウンロードは無料ですが、手順がやや独特です。まずIFRS財団の公式サイト(sasb.ifrs.org)にアクセスし、アカウント登録を行います。名前・メールアドレス・所属などを入力するだけで登録でき、費用は一切かかりません。


無料が原則です。


ログイン後、Standards(スタンダード)のダウンロードページへ移動します。ここで「PDF COLLECTIONS」のタブを選び、Languageのドロップダウンメニューから「日本語(Japanese)」を選択すると、77業種すべての日本語版PDFが表示されます。業種ごとに個別ダウンロードも、まとめてダウンロードも可能です。


注意すべき点が一つあります。日本語版は翻訳のレビュー状況によって、英語の原文と一部表現が異なる可能性があります。IFRS財団は「指名したレビュー委員会による承認を経ていない翻訳が含まれる場合がある」と明示しており、実務上の判断や正式な適用においては英語原文を確認することが推奨されています。


翻訳と原文の差異には注意が必要です。


また、マテリアリティマップ(SASB Materiality Map)という無料ツールも非常に便利です。これはSASBの公式サイト上で公開されており、業種と開示トピックの関係を視覚的に確認できます。「Materiality Finder」機能を使えば、自社の業種に関連する開示トピックと具体的な指標を一覧表示できるため、開示準備の出発点として活用するのが効率的です。


JPX(日本取引所グループ):SASBスタンダード概要と活用方法(ESGナレッジハブ)


SASBスタンダードの5つのディメンションと26の課題カテゴリー

SASBスタンダードは、サステナビリティ課題を分析するための共通の枠組みとして「5つのディメンション(局面)」と「26の課題カテゴリー」を設定しています。すべての開示項目はこの枠組みに紐づいており、業種ごとに重要な課題カテゴリーが異なります。


まず「環境(Environment)」ディメンションには、GHG排出・エネルギー管理・大気質・水および下水管理・廃棄物及び危険物管理・生態系への影響という6つのカテゴリーが含まれます。製造業や電力会社など環境負荷の大きい業種で特に多くの開示が求められます。


次に「社会資本(Social Capital)」ディメンションは、人権と地域社会のつながり・顧客のプライバシー・データセキュリティ・アクセスとアフォーダビリティ・製品の品質と安全性・販売慣行と製品のラベリング・顧客の福祉の7カテゴリーで構成されます。銀行や保険、ヘルスケア業種では顧客のプライバシーやデータセキュリティが特に重要課題として位置づけられています。


「人的資本(Human Capital)」には、労働慣行・従業員エンゲージメント・多様性とインクルージョン・従業員の健康と安全の3カテゴリーがあります。労働集約型の業種やサービス業で重視されます。「ビジネスモデルとイノベーション」には製品設計とライフサイクル管理・サプライチェーン管理・ビジネスモデル回復力・材料の調達と効率・気候変動の物理的影響の5カテゴリーが含まれ、特にテクノロジーや消費財セクターで重要性が高いです。最後に「リーダーシップとガバナンス」は、経営倫理・競争行動・法規制環境の管理・クリティカルインシデントリスク管理・システミックリスク管理の5カテゴリーで構成されます。


PwCの調査では、TOPIX100企業の対象となる課題カテゴリー26種すべてが何らかの形で含まれていることが確認されています。つまり業種にかかわらず全企業が参照する必要のある構造です。


SASBスタンダードの業種別セクターと77業種の一覧

77業種という数字は一見多く感じますが、11のセクターに整理されているため、自社の分類は比較的容易に特定できます。SASBではセクターをより大きな産業グループとして整理しており、各セクターの下に複数のインダストリー(業種)が置かれています。


消費財セクターには、アパレル・アクセサリーおよびフットウェア、家庭用品・パーソナルケア用品、マルチライン・専門小売業者およびディストリビューター、おもちゃ・スポーツ用品などが含まれます。金融(Financials)セクターには商業銀行・保険・投資銀行業務および仲介業務・証券・商品取引所の4業種が設定されており、金融に関心のある読者にとって特に身近なカテゴリーです。


テクノロジー&コミュニケーションセクターはハードウェア・インターネットメディアおよびサービス・半導体・ソフトウェアおよびITサービス・電気通信サービスの5業種を持ちます。運輸セクターにはエアライン・自動車部品・自動車・海運・鉄道輸送が含まれており、日本の主要製造企業の多くがここに分類されます。


実務上の注意点として、事業が複数業種にまたがる企業は複数のインダストリー基準を参照する必要があります。例えば水産加工企業のニッスイは「加工食品」と「食肉・家禽・乳製品(Meat, Poultry & Dairy)」の2業種を参照しています。


複数業種への対応も可能です。


自社の主要事業を軸に、収益規模や環境・社会リスクの大きさを踏まえて参照業種を決定するアプローチが現実的です。


aiESG:日本企業のSASB採択事情と活用事例(2024年版)


SASBスタンダード日本語版とIFRS S1号・SSBJ基準の関係

SASBスタンダード日本語版を理解する上で欠かせないのが、IFRS S1号とSSBJ基準との関係性です。少し複雑に見えますが、整理すると「一連のつながり」として把握できます。


IFRS S1号は2023年6月にISSBが公表したグローバルなサステナビリティ開示基準の親規格です。その中で「企業はSASBスタンダードの開示トピックを参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」と明記されており、SASBスタンダードは事実上の産業別ガイダンスとして組み込まれています。つまり、IFRS S1号に準拠する企業はSASBスタンダードを無視できない構造になっています。


SASBは親規格の一部です。


SSBJ(サステナビリティ基準委員会)は日本版のIFRS S1号・S2号に相当する基準を2025年3月に確定・公表しました。SSBJ基準もIFRS S1号と同様に「SASBスタンダードは参照し、その適用可能性を考慮しなければならない」という位置づけを継承しています。これにより、日本の上場企業にとってSASBスタンダードは参考資料の一つではなく、開示プロセスに組み込むべき必須の参照基準となりました。


義務化のスケジュールは段階的に設定されており、2027年3月期から時価総額3兆円以上の東証プライム上場企業に適用義務が生じます。続いて2028年3月期には1兆円以上、2029年3月期には5,000億円以上の企業へと対象が拡大します。これはちょうど今から3年以内に義務化が始まる話であり、開示体制の準備を今から始めることが現実的な対応です。


EcoVadis:SSBJ基準の概要と企業が今すぐ着手すべき対応


SASBスタンダード日本語版でわかる開示トピックと指標の読み方

SASBスタンダードの日本語版PDFを実際に開いてみると、各業種に「開示トピック(Disclosure Topic)」「会計指標(Accounting Metrics)」「テクニカルプロトコル(Technical Protocols)」「アクティビティ指標(Activity Metrics)」の4要素が記載されています。それぞれの役割を理解すると、実務での使いやすさが大きく変わります。


開示トピックは、その業種で財務的影響が特に大きいとされるサステナビリティ課題のテーマです。例えば化学品業種では「GHG排出」「大気質」「水管理」「廃棄物管理」などが開示トピックとして設定されています。会計指標はそのトピックについて何を・どのように測定・報告するかを具体的に規定しており、GHG排出量ならスコープ1の排出量とその規制対象割合を開示する、といった形で記載されます。


テクニカルプロトコルは測定方法の詳細な解説であり、例えばGHG排出量の算定をどの国際基準に基づいて行うか、バウンダリ(範囲)をどう設定するかなどが示されています。アクティビティ指標は企業規模や事業量を示す指数であり、売上高や生産量など、他の指標を相対化して比較可能にするための分母的な役割を持ちます。


これが比較の基準です。


金融業種で見ると、商業銀行セクターには「データセキュリティ」「顧客のプライバシー」「販売慣行」「システミックリスク管理」などのトピックが含まれ、各指標には「顧客データに関するセキュリティ侵害の件数と被害を受けたアカウント数」「消費者向けローンに関する規制当局のエンフォースメント件数」といった具体的な数値指標が要求されます。


SASBスタンダード日本語版を活用したSASB対照表の作成ステップ

SASB対照表(インデックス)は、企業がSASBスタンダードのどの指標をどこに開示しているかを一覧化した表です。これをサステナビリティレポートや統合報告書の巻末に付けることで、投資家・アナリスト・ESG評価機関が情報にアクセスしやすくなります。


対照表の作成は推奨です。


作成の第一ステップは「業種の特定」です。まずSASBの業種分類(11セクター・77インダストリー)の中から、自社の主要な事業活動に対応するインダストリーを選びます。複数業種にまたがる場合は、収益の過半を占める事業や環境・社会へのインパクトが最も大きい事業を主要業種として選定します。


次に「重要指標の抽出」として、選定した業種の開示トピックと会計指標を日本語版PDFから確認し、自社に適用可能な指標をリストアップします。SASBスタンダードは全指標への対応を義務づけておらず、対応できない指標については理由を記載することが推奨されています。九州電力や武田製薬のように「非該当・理由あり」として明示する方式は投資家から高く評価されます。


最終ステップは「開示情報との紐付け」です。既存のサステナビリティレポート・統合報告書・有価証券報告書のどこに関連情報が記載されているかをページ番号またはURLリンクで示します。旭化成・マツダ・ニッスイのようにハイパーリンク方式で対応するケースと、九州電力・武田製薬のように同一ページ内に表形式で示すケースの2通りがあります。


どちらでも正式に認められます。


GRIスタンダードとSASBスタンダード日本語版の違いと使い分け

金融や投資に関心のある方が混同しやすいのが、GRIスタンダードとSASBスタンダードの違いです。結論から言えば、両者は「誰への情報提供か」という目的が根本的に異なります。


目的の違いが核心です。


GRIスタンダードは、従業員・顧客・地域社会・NGOなど幅広いステークホルダーに対して、企業が社会・環境に与えるインパクトを報告するための包括的な基準です。約200以上の指標を持ち、定性・定量の両面から幅広い開示を求めます。一方でSASBスタンダードは、主に投資家に対して財務的な影響が大きい情報を効率よく開示するための基準です。業種ごとに20〜30程度に絞られた指標で構成されており、「投資判断に必要な情報」に集中しています。


日本の大手企業の多くは実際にGRIとSASBの両方を採用しています。例えばオムロンはGRI対照表とSASB対照表を並列で公開し、味の素はTCFDとSASBを組み合わせた気候変動関連の開示を実施しています。これは両基準が補完関係にあるためで、GRIで社会へのインパクト全体を示しながら、SASBで投資家向けの財務重要性の高い情報を整理するという二層構造が実務では機能しています。


金融に関心のある投資家・アナリストの立場で情報収集する際、SASBの開示トピックに対応した定量データが揃っている企業は、業種横断での比較分析が格段に行いやすいです。S&Pグローバル1200指数の構成企業906社がSASBを採用している(2021年からの累計)という事実も、この基準が投資実務に深く根付いていることを示しています。


Carbonix:SASBスタンダードとGRIスタンダードの比較解説


SASBスタンダード日本語版を活用している日本企業の開示事例

実際にSASBスタンダードを活用している日本企業の事例を見ると、業種ごとの特徴と工夫が浮かび上がります。PwCの調査では、2023年時点でTOPIX100企業63社がSASBを何らかの形で活用しており、そのうち38社がSASB対照表を公開しています。


これは2021年比で3倍近い増加です。


旭化成は資源変換セクター(化学品インダストリー)でSASBを採用しており、温室効果ガス排出の算定手法・計算根拠を報告書内の注釈として詳細に記載しています。透明性の担保という点で高く評価されているアプローチです。九州電力はインフラストラクチャーセクター(電力・発電事業者)として、開示できない指標については理由を丁寧に記載しており、「対応できない理由を示す誠実さ」が機関投資家からのエンゲージメントで好評を得ています。


マツダは運輸セクター(自動車インダストリー)においてSASB指標報告書を独立した文書として公開しており、燃費性能・製品安全性・サプライチェーン環境影響などの指標を数値で一覧化しています。武田製薬はヘルスケアセクター(バイオテクノロジー・医薬品)として、臨床試験の倫理・医薬品アクセス・製品の安全性に関するSASB指標を同一ページ内に記載し、投資家向けの情報密度を高めています。


グローバルで見ると、NikeがSASBの早期採用企業であり、アパレル・アクセサリー業種の基準に基づいてサプライチェーンの労働条件・化学物質管理を詳細に開示しています。Intelは半導体業種で水資源管理・エネルギー効率の実績値を複数年分並べており、経年比較を可能にしています。


これが投資家の喜ぶ開示スタイルです。


SASBスタンダード日本語版をめぐる2025年以降の改訂動向

SASBスタンダードは現在も継続的に改訂が進んでいます。2025年7月にISSBが「SASBスタンダードの修正案」の公開草案(SASB ED 2025-1)を発表し、採掘・鉱物加工セクター8業種と加工食品産業を含む9業種について包括的な見直しが提案されました。


この動きは最新の修正動向です。


改訂の主な方向性は2つです。まず「国際的な適用可能性のさらなる向上」で、従来は米国固有の法規制を前提としていた指標が修正または削除され、世界中の企業が実務で使える形に整えられています。2023年12月版でも同様の方針に基づいた修正が行われており、今後も継続的にグローバル対応が進みます。次に「IFRS S2号との整合性強化」として、気候関連開示との連携を深める形で特定の指標が再設計されています。


投資家や金融機関の立場から見て特に注目すべきは、修正後の基準がSSBJ基準へも波及する点です。日本のSSBJは「ISSBによってSASBスタンダードが修正される場合、参照する」という方針を明示しており、ISSBの改訂がそのまま日本の開示義務にも影響します。つまり今後の改訂動向を把握しておかないと、対照表の内容が古くなるリスクがあります。


改訂の追跡は必須です。


金融系の投資家・アナリストとして情報収集する際は、IFRS財団のニュースページやSSBJの公表物ページを定期的にチェックするのが確実です。SSBJは公表物のメール通知サービスも提供しており、登録しておくと最新の改訂情報を受け取れます。


SSBJ(サステナビリティ基準委員会):ISSBによるSASBスタンダード修正案の公表(2025年7月)


【独自視点】投資家がSASBスタンダード日本語版で企業を評価するリアルな実態

ここまでは企業の開示側の視点を中心に解説してきましたが、金融に関心のある投資家・個人投資家の立場から「SASBスタンダードを使って企業をどう評価するか」という視点は、意外と語られていません。


これが独自視点です。


機関投資家や ESGファンドがSASBスタンダードを活用する際の実態は、評価のプロセスとして2段階になっています。まず「スクリーニング」フェーズで、SASB対照表を公開しているかどうかを確認し、開示の有無を投資候補企業の足切り基準に使います。三菱UFJ信託銀行の責任投資報告書では「SASBスタンダードをはじめとしたESG情報開示の促進に向けた取り組みをエンゲージメントで推進」と明記しており、開示が不十分な場合には議決権行使での反対という圧力をかけることも示唆しています。


次に「比較分析」フェーズでは、同業種内の企業を同一の指標で横並び比較します。例えば商業銀行セクターで投資候補を絞る際、A銀行とB銀行のデータセキュリティ侵害件数・消費者向け金融エンフォースメント件数・システミックリスク管理体制を同じ指標軸で比べることが可能になります。これは財務データだけでは見えない「非財務の差別化要因」を可視化します。


ニッセイアセットマネジメントは「投資家がSASBスタンダードを高く評価する最大の理由は産業別になっているから」とレポートに明記しています。横断的に見ても意味がなく、同業種内の比較でこそ威力を発揮するという本質を突いた指摘です。個人投資家としてSASBを活用したい場合は、まず保有・検討中の銘柄のSASB対照表をサステナビリティレポート内で探し、同業他社と同じ指標項目を並べて比較してみると、財務諸表だけでは見えなかったリスクや競争力の差が浮かび上がることがあります。


また、SASBが定義するマテリアリティは「開示されていなかった情報が存在していた場合、合理的な投資家が利用する情報の位置づけを著しく変更していた可能性が大きいもの」です。この定義は投資家として非常に実践的な視点を与えてくれます。「この情報が公開されていたら自分の投資判断は変わっていたか?」という問いがSASBの本質的な評価軸です。


PwC Japan:SSBJ基準への対応に向けたSASBスタンダード活用の現状と課題(2025年版)


SASBスタンダード日本語版の活用でよくある疑問と実務的な回答

最後に、SASBスタンダードを実際に活用しようとした際によく出てくる疑問をまとめます。実務担当者・投資家・アナリストのどの立場にも共通して役立つ情報です。


「全指標に対応しないといけないのか?」という疑問について、答えはノーです。SASBスタンダードは法的拘束力のない任意の開示基準であり、該当しない指標については「適用外・理由あり」として記載することが認められています。重要なのは、対応できない指標についても理由を明示して透明性を保つことです。


これが適切な対応です。


「自社の業種分類がわからない」という場合は、SASBの公式サイトで業種分類のガイドラインが提供されています。主要な事業活動と収益構造を基に判断しますが、迷う場合は複数業種への参照も許容されています。特に持会社・コングロマリット型の企業は、事業セグメントごとに別々の業種基準を参照する事例も見られます。


「SASB対照表は英語で作らないといけないのか?」については、日本語での作成で差し支えありません。ただし、グローバル投資家へのアクセスを意識するなら英語版も並行して作成することが推奨されています。実際、多くの日本大手企業は統合報告書の英語版に英語のSASB対照表を掲載しており、日英両方の開示が国際的な投資家評価で優位に働きます。


「年に一度しか更新しなくていいのか?」については、一般的にはアニュアルレポートやサステナビリティレポートと同じサイクル(年1回)の更新で問題ありません。ただし、業種や指標の改訂があった場合は対照表の内容も適宜アップデートが必要です。


基準改訂には常に注意が必要です。


SSBJ基準の義務化対象企業となった場合には、有価証券報告書との整合性確保も求められる見込みです。


JPX ESGナレッジハブ:SASBスタンダードの適用ガイダンスと活用ツール一覧


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