

根抵当権を完済しても、あなたの不動産から権利は自動で消えず売れなくなります。
抵当権とは、債務者がお金を返せなくなったときに、債権者が担保として設定した土地や建物を競売にかけ、他の債権者よりも優先して返済を受けられる権利です。住宅ローンを借りるときに銀行が自宅に設定するのが代表的な例で、金融に関心がある人なら一度は耳にしたことがあるでしょう。
宅建試験において、抵当権は権利関係の分野(民法)で毎年のように出題される最重要テーマのひとつです。試験全体50問のうち権利関係は14問を占め、抵当権・根抵当権はほぼ毎年1問が割り当てられます。
抵当権には3つの重要な性質があります。まず「付従性」は、被担保債権(担保している借金)が消滅すれば抵当権も消滅するという性質です。つまり住宅ローンを完済すれば、抵当権は理論上消える関係にあります。次に「随伴性」は、被担保債権が第三者に譲渡されると、抵当権もそれに伴い移転するという性質です。そして「物上代位性」は、担保物件が焼失・売却された場合でも、債務者が受け取るべき保険金や代金を差し押さえられるという性質を指します。
ここで多くの受験生が混乱するのが、利息の優先弁済範囲です。後順位の抵当権者が存在する場合、1番抵当権者が優先的に回収できる利息は「満期となった最後の2年分」に限定されます(民法375条)。ただし、後順位抵当権者がいない場合はこの制限が適用されず、2年を超える利息も優先回収できます。これが基本です。
また、抵当権は土地や建物などの不動産だけでなく、地上権・永小作権にも設定できます。一方、賃借権には設定できない点も試験で問われやすいので要注意です。
宅建試験での頻出論点として押さえておくべき比較ポイントを以下にまとめます。
| ポイント | 抵当権 | 根抵当権 |
|---|---|---|
| 担保する債権 | 特定の債権(1つ) | 不特定の複数債権 |
| 付従性 | あり(完済で消滅) | なし(完済しても残る) |
| 随伴性 | あり(債権と共に移転) | なし(元本確定前) |
| 利息の優先範囲 | 最後の2年分のみ | 極度額の範囲内で全額 |
| 上限額 | 債権額そのもの | 極度額(設定した上限) |
参考:民法375条の「被担保債権の範囲」について詳しく解説された資料
民法 第375条【抵当権の被担保債権の範囲】 | クレアール司法書士講座
根抵当権とは、不動産を担保に「極度額(上限金額)」と「債権の種類」を定めることで、その範囲内であれば何度でもお金を借りたり返したりできる権利です。普通の抵当権が「この1000万円の借入に対する担保」という形で設定されるのに対し、根抵当権は「一定の取引関係から生じる債権なら、3000万円の枠内で何度でも担保する」というイメージです。
具体的な例で考えてみましょう。飲食店オーナーが毎月食材卸業者から30万円分の食材を仕入れるとします。通常の抵当権では、仕入れのたびに設定・抹消の手続きが必要になり、双方にとって非常に手間がかかります。根抵当権を極度額300万円(約10ヵ月分の仕入れ額)で設定しておけば、毎月の取引は自動的にその枠内で担保されます。つまり反復する事業融資に向いた仕組みということですね。
宅建試験で最も問われるのが「元本確定」の概念です。根抵当権は返済が完了しても消えないため、「ある時点での債務残高を確定させる」手続きが必要になります。これが元本確定です。元本確定期日をあらかじめ定めていなかった場合でも、根抵当権の設定時から3年を経過すれば、設定者から元本確定の請求ができます(民法398条の19)。元本確定後は普通の抵当権と同じ性質になります。
根抵当権の変更に関しても試験頻出の論点があります。以下の表を参照してください。
| 変更内容 | 元本確定前 | 元本確定後 | 利害関係人の承諾 |
|---|---|---|---|
| 極度額の変更 | ✅ できる | 必要 | |
| 被担保債権の範囲の変更 | ✅ できる | ❌ できない | 不要 |
| 債務者の変更 | ✅ できる | ❌ できない | 不要 |
| 元本確定期日の変更 | ✅ できる | ❌ できない | 不要 |
極度額の変更だけは元本確定の前後を問わず可能ですが、利害関係人(後順位抵当権者など)の承諾が必要です。この点は独立した問題として出題されやすいので、表をそのまま記憶するとよいでしょう。
宅建試験において根抵当権の出題は過去10年で3〜4回程度とされています。頻度は抵当権より少ないものの、出題されると細かい論点が問われることが多く、正確な理解が求められます。これは使えそうです。
参考:根抵当権の重要ポイントと過去問解説が網羅されたページ
抵当権と根抵当権の違いを一言でまとめると、「特定の債権を担保するか、継続的な取引関係を担保するか」という点にあります。この差が、付従性と随伴性という2つの性質の有無につながります。
付従性とは「担保の主役(被担保債権)が消えれば、担保権も消える」という性質です。住宅ローンを完済したとき、抵当権は付従性によって本来消滅すべき状態になります。ただし、登記簿上の抵当権登記は自動では消えないため、別途「抵当権抹消登記」の申請が必要です。この点を知らずに放置すると、不動産を売却しようとしたときに「登記簿に抵当権が残っている」状態が発覚し、売却手続きが止まってしまいます。注意に注意です。
根抵当権には元本確定前において付従性がありません。たとえ借りたお金を全額返済しても、根抵当権は自動的には消滅しません。これは法律上の仕様であり、根抵当権の最大の特徴です。完済後も「またいつでも借りられる枠」として機能し続けます。抹消したい場合は明示的に抹消登記の申請が必要になります。
随伴性についても重要です。普通の抵当権では、貸した側(債権者)がその債権を第三者に譲渡すると、抵当権も一緒に移転します。これが随伴性です。一方、根抵当権は元本確定前には随伴性がありません。仮に根抵当権の枠内にある個別の債権が第三者に譲渡されても、根抵当権はもとの権利者のもとに留まります。
この違いが宅建試験で問われる典型的なパターンは次のようなものです。「元本確定前の根抵当権の被担保債権を取得した第三者は、その債権について根抵当権を行使できるか?」という問いに対して、正解は「できない」となります。随伴性がないからです。
💡 付従性・随伴性の有無をシンプルにまとめると。
元本確定後は普通の抵当権と同じ扱いになる、という点が試験での得点ポイントです。これだけ覚えておけばOKです。
抵当権には「物上代位性」という独特の性質があります。担保に入れた不動産そのものに何かが起きたとき(火災による焼失、強制収用による買収、賃貸による賃料収入など)、その「代わりになるお金」に対しても権利を及ぼせるのが物上代位です。
例えば、抵当権が設定された建物が火災で全焼したとします。建物は消えてしまいましたが、火災保険の保険金が発生する場合、抵当権者はその保険金を差し押さえることができます。ただし条件があります。差し押さえは、債務者が保険金を受け取る前に行わなければなりません。受け取った後では遅すぎます。これが原則です。
同様に、抵当物件が売却・賃貸された場合も物上代位が機能します。賃料収入に対して物上代位を行使できるかどうかは、裁判所の判例でも取り上げられた論点です。実務では、抵当権者(銀行など)が賃料を差し押さえることで、債権回収を図るケースもあります。
第三者との関係も宅建試験の頻出テーマです。抵当権が設定された不動産を第三者が購入した場合(第三取得者)、登記の前後が決め手になります。抵当権の登記が先に入っていれば、後から買い主となった第三者はその抵当権付きで取得したことになり、抵当権が実行されると所有権を失うリスクがあります。
一方、抵当権より先に賃借権を取得し対抗力を備えていた賃借人は、競売後も賃借権を主張できます。逆に抵当権登記より後から賃借した場合は、競売後に退去を求められる可能性があります。厳しいところですね。
宅建試験に向けて第三者保護ルールを整理すると。
参考:物上代位の仕組みや競売と第三者の関係について詳しく解説されたページ
根抵当権と抵当権の違い|不特定債権の担保で必要になる極度額 | iYell
宅建のテキストでは「根抵当権は付従性がない」とサラッと解説されるだけで終わることが多いのですが、これは実生活においてもきわめて重要な知識です。根抵当権の付従性のなさが、不動産売却や相続の場面で大きな障害になるケースが実際に起きています。
最も多いのが、事業融資の返済を完了した後、根抵当権の抹消登記を行わずに数年・数十年が経過してしまうケースです。相続が発生し、子どもが不動産を売却しようとして初めて「登記簿に根抵当権が残っている」と気づく、という事例は珍しくありません。
この状態での不動産売却は非常に困難です。買い主の立場からすれば、根抵当権が残った物件はいつ競売にかけられるかわからないリスクがあるため、購入を敬遠します。事実上、根抵当権を抹消しないと売れないと考えたほうが現実的です。
抹消には費用もかかります。司法書士に根抵当権抹消登記を依頼した場合の費用は、登録免許税(不動産1件につき1000円)に加えて司法書士報酬が必要で、全国平均で約1万5000円〜2万円程度です。手続きは比較的シンプルなものの、金融機関が廃業・合併していると書類の取得だけでも大幅な時間と費用がかかることがあります。
しかしより問題なのは、金融機関が現存していても抹消書類の発行に応じてもらえないケースや、担当者が不明で連絡が取れなくなるケースです。古い根抵当権ほど手続きが難しくなります。痛いですね。
✅ 根抵当権の抹消を忘れることで起きる具体的なリスクをまとめます。
宅建の学習だけでなく、自分や家族が事業用融資で根抵当権を設定している場合は、完済後すぐに司法書士へ抹消登記の依頼をすることが現実的な対策です。法務局の登記情報はオンラインでも確認できる(登記情報提供サービス、334円/件)ため、まず現状確認するところから始めるとよいでしょう。
参考:根抵当権の抹消手続きの流れと必要書類、費用について詳しく解説されたページ
忘れていませんか?抵当権、根抵当権の抹消登記 | オアシス法律事務所