
佐藤家の事例では、父の突然の死をきっかけに、それまで仲の良かった3人の兄弟が完全に絶縁状態になってしまいました。長男の誠さんは「家族全員で借金を返済すべき」と主張し、次男の健太さんは「相続放棄をして新しい出発を」と提案、実家で介護をしていた妹の美香さんは「住んでいる家だけは残したい」と訴えました。
わずか3ヶ月で兄弟関係が破綻した背景には、以下の要因がありました。
令和4年司法統計年報によると、家庭裁判所に持ち込まれた遺産分割事案は6,857件に上り、相続トラブルは決して珍しいことではありません。
Cさんの事例では、外見上は裕福に見えた父親が実は多額の借金を抱えていることが、相続手続き後に判明しました。高級車やゴルフなどの趣味を楽しんでいた父親でしたが、実際には以下の負債が隠されていました。
相続から2ヶ月後にこれらの事実が発覚し、兄とCさんは急いで弁護士に相談して期限内(相続を知ってから3ヶ月以内)に相続放棄の手続きを行いました。しかし、精神的な負担は大きく、父親の葬儀費用も自己負担となってしまいました。
負の遺産が発覚するケースでは、以下の点に注意が必要です。
不動産の相続では、物理的に分割が困難なため、特にトラブルが発生しやすくなります。代表的な争点には以下があります。
評価額をめぐる対立
同じ不動産でも評価方法によって価格が大きく異なるため、相続人間で意見が分かれることがあります。路線価、固定資産税評価額、実勢価格など、複数の評価基準が存在することが混乱の原因となります。
代償金の問題
不動産を取得する相続人が、他の相続人に代償金を支払うことで解決を図る場合でも、その代償金を用意できないケースが頻発しています。
換価分割への反対
不動産を売却して現金で分割する換価分割に対し、思い出のある実家を手放したくない相続人が反対するケースも多く見られます。
A家の事例では、不動産賃貸業を営んでいた父親の相続で、長男が自宅・賃貸ビル等の収益物件と借入債務を承継する提案をしましたが、長女・二女が法定相続割合での分割に納得せず、遺産分割がまとまらない状況となりました。
遺言書があっても、その有効性や内容をめぐってトラブルが発生するケースが増加しています。主な争点は以下の通りです。
遺言書の有効性に関する争い
内容の公平性に関する争い
一人の相続人にすべての財産を相続させる遺言書が遺された場合、他の相続人から遺留分侵害額請求がなされることがあります。また、内縁の妻や隠し子の存在が遺言書で判明し、家族が混乱するケースも報告されています。
遺言執行をめぐる争い
遺言執行者が指定されていない場合や、指定された遺言執行者が適切に職務を果たさない場合に、相続人間で対立が生じることがあります。
相続トラブルを未然に防ぐためには、以下の予防策を講じることが重要です。
財産目録の作成
プラスの財産とマイナスの財産を明確にし、一覧できる財産目録を作成することで、後々のトラブルを防げます。ただし、この作業は高度な専門性が求められるため、相続に詳しい税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
適切な遺言書の作成
遺留分に配慮した公平な内容で、公正証書遺言として作成することが望ましいです。A家の円満相続事例では、弁護士と相談しながら以下の内容を盛り込んだ遺言書を作成しました。
家族間のコミュニケーション
遺言書作成後は家族全員に内容を説明し、「なぜこのような分け方にしたのか」という理由と思いを伝えることが重要です。事前の話し合いにより、相続人の理解と納得を得ることができます。
専門家の活用
相続トラブルが発生してしまった場合は、早期に弁護士に相談することで以下のメリットを得られます。
相続は一度きりの重要な手続きです。家族関係を守りながら円満に解決するためには、事前の準備と適切な対策が不可欠です。トラブルが発生してからでは解決が困難になるため、早めの対策をおすすめします。