
出資法は、正式名称を「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」といい、昭和29年に制定されました。この法律の最大の目的は「一般大衆の財産の保護」にあります。
私たちの生活の基盤となる大切なお金を他人に出資したり預けたりすることで失ってしまう事態や、借り手という弱い立場につけ込まれて高額の手数料を搾取されてしまうような事態を防ぐために作られました。
出資法は、以下のような行為に関する規制を定めています。
社会情勢の変化に応じて何度か改正が行われており、平成22年の完全施行によって現在の形になっています。金融取引の健全性を確保し、一般市民が不当な損害を被らないようにするためのセーフティネットとしての役割を果たしています。
出資法では、特に以下の行為が禁止されており、これらはすべて刑事罰の対象となります。
1. 元本保証を示した出資金の受け入れ(第1条違反)
不特定かつ多数の者に対して、「必ずもうかる」「元本保証」といったうたい文句で出資を募ることは出資法違反となります。具体的には、後日、出資金の全額またはそれを超える金額を支払うことを明示または暗示して出資金を集める行為が該当します。
例えば。
このような表現で出資を募ることは、出資法第1条に違反します。
2. 業としての預り金(第2条違反)
銀行や信用金庫など、他の法律で特別に認められている者以外が、不特定かつ多数の者から預金・貯金・定期積金・社債・借入金などの名目で、業として預り金をする行為は禁止されています。
預り金の成立要件は以下の4つをすべて満たすものとされています。
3. 浮き貸し等の禁止
他人から資金を調達して、それより高い金利で貸し付ける「浮き貸し」行為も出資法で禁止されています。
4. 上限を超える金銭消費貸借の媒介手数料の契約・受領
借金の媒介に関して、法定の上限を超える手数料を取ることも違反となります。
5. 金銭の貸し付けに関する高金利・高保証料
出資法では、貸金業者が貸付を行う際の上限金利も定められており、これを超える金利での貸付は「高金利」として禁止されています。現在、出資法における上限金利は年109.5%(うるう年は109.8%)となっています。
出資法に違反した場合、違反内容によって刑の内容は異なりますが、厳しい刑事罰が科される可能性があります。
1. 元本保証での出資金受入れ・預り金禁止違反(第1条・第2条違反)
2. 高金利での貸付(第5条違反)
業として年109.5%(うるう年は109.8%)を超える高金利で金銭を貸し付けた場合。
3. 法人に対する罰則(両罰規定)
違反行為者だけでなく、その法人に対しても罰金刑が科されます。
なお、出資法違反と詐欺罪が成立する場合には、詐欺罪が優先され、出資法違反は成立しないとされています(第8条第4項)。
出資法違反は単なる行政処分ではなく、刑事事件として扱われるため、逮捕・起訴される可能性があります。実際に、投資詐欺集団などが出資法違反で逮捕されるケースも少なくありません。
出資法違反は、しばしば投資詐欺と密接に関連しています。特に「必ずもうかる」「元本保証」といった甘い言葉で出資を募るケースは、詐欺的な要素を含んでいることが多いのです。
ケフィア事業振興会事件
2021年11月、警視庁は加工食品などへの出資名目で違法に資金を集めていたとして、通信販売会社「ケフィア事業振興会」(千代田区)の元会長鏑木秀弥容疑者(当時84歳)を出資法違反(預り金禁止)の疑いで逮捕しました。
この事件では、同社が「ケフィア飲料」などの加工食品の製造・販売事業に投資すれば、年6%の配当が得られるなどと勧誘し、全国の会員から約1,000億円を集めていたとされています。しかし、実際には事業実態がほとんどなく、新規会員からの出資金を古い会員への配当に回す「自転車操業」状態だったと言われています。
このような「ポンジ・スキーム」と呼ばれる詐欺的な投資スキームは、出資法違反として摘発される典型的なケースです。
投資詐欺の手口と警戒すべきポイント
投資詐欺の手口には以下のような特徴があります。
これらの特徴に当てはまる投資話には十分注意が必要です。正規の金融商品であれば、元本保証と高利回りが両立することはほとんどありません。「うまい話には裏がある」という格言を思い出すことが大切です。
近年のフィンテック(金融とテクノロジーの融合)の発展により、従来の金融の枠組みでは想定されていなかった新しいサービスが次々と登場しています。こうした状況の中で、出資法の規制がどのように適用されるべきかという課題が生じています。
クラウドファンディングと出資法
クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を集める仕組みです。リターンの形態によって以下のように分類されます。
特に融資型や投資型のクラウドファンディングは、出資法の規制と関わる部分があります。これらのサービスを提供する事業者は、貸金業法や金融商品取引法などの規制を受けることになりますが、新しいビジネスモデルに対して既存の法規制がどこまで適用できるかという問題が生じています。
暗号資産(仮想通貨)と出資法
暗号資産(仮想通貨)に関連するビジネスも、出資法との関係が問題になることがあります。例えば、暗号資産の預かりサービスや、暗号資産を担保とした融資サービスなどは、出資法の「預り金」規制に抵触する可能性があります。
2017年4月に施行された改正資金決済法により、暗号資産交換業者は登録制となりましたが、暗号資産に関連する新しいサービスが次々と登場する中で、法規制の整備が追いついていない面もあります。
今後の規制の方向性
金融庁は、イノベーションを促進しつつも利用者保護を図るという観点から、「規制のサンドボックス」制度を導入するなど、新しい取り組みを進めています。今後は、出資法を含む金融規制の枠組みが、フィンテックの発展に合わせて見直されていく可能性があります。
しかし、どのような形で規制が変わっていくにせよ、「一般大衆の財産保護」という出資法の基本理念は維持されるでしょう。新しい金融サービスを提供する事業者は、この点を十分に意識した事業運営が求められます。
ビジネスを行う上で、意図せず出資法に違反してしまうリスクを避けるために、以下のようなチェックポイントを確認しておくことが重要です。
1. 資金調達方法の適法性確認
不特定多数から資金を集める場合。
2. 預り金に該当しないかの確認
顧客から前払金などを受け取る場合。
3. 貸付業務を行う場合の確認事項
4. 投資商品を扱う場合の確認事項
5. 新しいビジネスモデルの場合
出資法違反は刑事罰の対象となるだけでなく、企業の信用を大きく損なう可能性があります。法令遵守は企業経営の基本であり、特に金融関連の規制については慎重な対応が求められます。
不明点がある場合は、弁護士や金融庁などの専門家・当局に相談することをお勧めします。また、ビジネスモデルに変更がある場合は、その都度、出資法を含む関連法規との適合性を確認することが重要です。
金融庁によるフィンテック関連の法律相談窓口
以上、出資法の基本から実務上の注意点まで解説しました。金融に関わるビジネスを行う際には、出資法を含む金融関連法規を十分に理解し、コンプライアンス体制を整えることが重要です。法令遵守は単なるリスク回避ではなく、持続可能なビジネスを構築するための基盤となります。