
利息制限法第4条第1項では、金銭消費貸借における遅延損害金の上限を「第1条に規定する率の1.46倍」と定めています 。この規定により、借入元本の金額に応じて以下の上限利率が適用されます :
この1.46倍という数値は、債務者保護の観点から設定された制限であり、通常の利息制限より厳格な基準となっています 。元本額の区分は利息制限法第1条の基準に準拠しており、段階的な保護措置を講じています 。
参考)https://kubotaoffice.com/keiyaku-risoku.html
消費者金融や銀行などの営業的金銭消費貸借については、利息制限法第7条第1項により特例が設けられています 。この規定では、借入金額に関係なく遅延損害金の上限を**年20%**と定めており、第4条の基本規制よりも統一的な基準を採用しています 。
営業的金銭消費貸借とは「債権者が業として行う金銭を目的とする消費貸借」を指し 、以下の場合に適用されます:
この特例により、消費者金融各社では契約書に年20%の遅延損害金利率を設定することが一般的となっています 。
参考)遅延損害金(延滞利息)とは?普通の利息とどう違うの?
遅延損害金の計算は以下の基本公式を用います :
遅延損害金 = 滞納元金 × 年利率 × 滞納日数 ÷ 365日
実務では、滞納期間の長短により計算方法が異なります 。一時的滞納の場合は月次返済額を基準とし、期限の利益喪失後は残債務全額を基準として算出します。
参考)遅延損害金の計算方法は?
【計算例】借入残高50万円、年利20%、30日滞納の場合。
50万円 × 20% × 30日 ÷ 365日 = 8,219円
滞納期間が長期化すると、遅延損害金が元本を上回る可能性もあり、債務者の経済的負担が急激に増加する構造となっています 。
利息制限法で定められた上限を超える遅延損害金の約定は、その超過部分について無効となります 。この無効性は強行法規による制限であり、当事者の合意があっても覆すことはできません 。
参考)利息制限法|条文|法令リード
実務上の注意点として、以下のケースで無効判定される可能性があります。
金融機関では、契約書作成時に利息制限法の上限内での設定を徹底し、法的リスクを回避する必要があります 。無効部分は自動的に法定上限まで減額され、債権者は超過分を請求できません。
参考)企業法務事例コラム│契約書で見落としがちな重大ポイント(7)…
一般的な金銭消費貸借以外では、利息制限法の適用が制限される場合があります。企業間の商取引における代金支払遅延では、消費者契約法の年14.6%上限が適用されるケースが多く見られます 。
また、個人間の金銭貸借で遅延損害金の約定がない場合は、民法第419条により法定利率(年3%)が適用されます 。この場合、利息制限法の1.46倍規制は直接適用されず、より低い利率での計算となります。
特殊な事例として、以下のような場合には異なる基準が適用される可能性があります。
これらの事例では、利息制限法以外の法令や国際慣行が優先される場合があり、個別の法的検討が必要となります 。金融業従事者は、取引の性質を正確に把握し、適切な法的根拠に基づく遅延損害金の設定・請求を行うことが求められています。