石油ガス税の計算と税率の仕組みを解説

石油ガス税の計算と税率の仕組みを解説

石油ガス税の計算方法と税率について

石油ガス税の基本情報
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税率

石油ガス1kgあたり17円50銭の従量税

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課税対象

自動車用石油ガス容器に充填されているLPG

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使途

1/2は国の道路特定財源、1/2は地方自治体の道路財源

石油ガス税の概要と課税対象となる石油ガス

石油ガス税は、1966年に創設された国税で、自動車用の石油ガス(LPG)に対して課される消費税の一種です。この税金は、揮発油税軽油引取税とのバランスを取るために設けられました。

 

課税対象となる石油ガスは、主にタクシーなどのLPG車で使用されるプロパンやブタンを主成分とする液化石油ガスです。ただし、メタンを主成分とする天然ガスやエチレン、エタンなどを主成分とする石油ガスは課税対象外となっています。

 

石油ガス税の課税物件は、自動車用石油ガス容器に充填されている石油ガスであり、納税義務者は以下の2つのケースに分かれます。

  1. 石油ガスを自動車用石油ガス容器に充填する者(充填者)
  2. 自動車用石油ガス容器に充填されている石油ガスを保税地域から引き取る者(引取者)

充填者の場合、石油ガスを充填場から移出した月の翌月末までに申告し、翌々月末までに納付する必要があります。

 

石油ガス税の税収の使途は、その半分(1/2)が国の道路整備財源として使用され、残りの半分は石油ガス譲与税法に基づいて都道府県および指定市に譲与され、道路関連の財源として活用されています。

 

石油ガス税の税率と従量税の仕組み

石油ガス税は従量税方式を採用しており、課税標準は移出または引き取る石油ガスの重量に基づいています。現行の税率は、石油ガスの重量1kgあたり17円50銭です。

 

この税率は、ガソリン車に課される揮発油税・地方道路税や、ディーゼル車に課される軽油引取税とのバランスを考慮して設定されています。自動車用燃料間での税負担の公平性を確保するための措置といえるでしょう。

 

石油ガス税の計算は基本的に以下の式で行われます。

石油ガス税額 = 石油ガスの重量(kg) × 17円50銭

例えば、100kgの石油ガスを充填場から移出した場合、石油ガス税額は以下のように計算されます。

100kg × 17.5円 = 1,750円

なお、石油ガスが容量(リットル)で計量されている場合は、容量1リットルにつき重量0.56キログラムとして計算することが法令で定められています。例えば、50リットルの石油ガスの場合。

50L × 0.56kg/L = 28kg

28kg × 17.5円 = 490円

このように、石油ガス税は単純な従量税方式を採用しているため、使用量に比例して税額が増加する仕組みとなっています。

 

石油ガス税の端数計算と申告方法について

石油ガス税の計算において、端数処理は非常に重要な実務上のポイントです。国税庁の通達によれば、課税石油ガスの重量等の端数計算等は、原則として以下のように行うことが定められています。

 

  1. 課税石油ガスを重量により計算する場合。
    • kg位未満2位以下の端数を切り捨てる
  2. 課税石油ガスを容量により計量する場合。
    • L位未満2位以下の端数を切り捨て、その容量またはその容量の合計容量を法令の計算方法により重量に換算
    • この場合、kg位未満の端数が生じたときは、kg位未満2位まで算出し、そのkg位未満2位の端数を四捨五入してkg位未満1位にとどめる
  3. 石油ガス税に関する届出書、申告書および申請書に記載すべき課税石油ガスの合計重量にkg位未満の端数がある場合。
    • その端数を切り捨て、すべてkg位にとどめる

また、石油ガス税額の端数計算については、以下のルールが適用されます。

  1. 課税標準数量に対する石油ガス税額に1円未満の端数があるとき。
    • その端数を切り捨てる
  2. 控除税額に1円未満の端数があるとき。
    • その端数を切り捨てる
  3. 石油ガス税額の確定金額に100円未満の端数があるとき、またはその全額が100円未満であるとき。
    • その端数金額またはその全額を切り捨てる
  4. 還付金の額に相当する石油ガス税額に1円未満の端数があるとき。
    • その端数を切り捨てる

これらの端数処理ルールを正確に適用することで、適正な申告・納税が可能となります。

 

石油ガス税と石油石炭税の違いと関連性

石油ガス税と石油石炭税は、どちらも石油関連製品に課される税金ですが、その目的や課税対象、税率などに違いがあります。これらを正確に理解することは、税務実務において重要です。

 

石油ガス税の特徴:

  • 課税対象:自動車用石油ガス容器に充填されているLPG
  • 目的:揮発油税や軽油引取税とのバランスを取るため
  • 税率:1kgあたり17円50銭
  • 使途:道路整備財源(国と地方自治体で分配)

石油石炭税の特徴:

  • 課税対象:原油・ガス状炭化水素・石炭
  • 目的:エネルギー政策の財源確保と環境対策
  • 税率。
    • 原油・石油製品:1kℓあたり2,800円(本則税率2,040円+上乗せ税率760円)
    • ガス状炭化水素(LPG・LNG):1tあたり1,860円(本則税率780円+上乗せ税率1,080円)
    • 石炭:1tあたり1,370円(本則税率700円+上乗せ税率670円)
  • 使途:道路整備、石炭対策、省エネルギー対策、石油代替エネルギー対策など

石油石炭税には「地球温暖化対策のための税」として上乗せ税率が設定されており、これは2012年10月から段階的に導入されました。この上乗せ分は、CO2排出抑制のための温暖化対策税としての性格を持っています。

 

一方、石油ガス税は自動車用燃料としてのLPGにのみ課される税金で、道路整備財源を確保するという目的が明確です。

 

これらの税金は、最終的には消費者が負担することになります。例えば、都市ガス会社は石油石炭税の増税分をガス料金に転嫁するため、2016年4月の税率引き上げ時には、1m³あたり0.2376円(税込)のガス料金引き上げが行われました。

 

石油ガス税の計算における容量と重量の換算方法

石油ガス税の計算において、石油ガスが容量(リットル)で計量されている場合の重量換算方法は、法令で明確に規定されています。この換算方法を正確に理解することは、適正な税額計算のために不可欠です。

 

石油ガス税法施行令第4条によれば、容量により計量されている課税石油ガスの重量計算には、主に以下の2つの方法があります。

  1. 液比重と温度が明らかな場合の計算方法
    • 石油ガスの液比重とその測定時の温度が明確に記録されている場合に適用
    • 充填場の貯蔵タンクに石油ガスを受け入れる都度、液比重と温度を測定し帳簿に記帳
    • 計算式に基づいて正確な重量を算出
  2. 標準換算率を用いる方法
    • 自動車用の石油ガス容器に充填される際の液容量をもとに計算
    • 容量1リットルにつき重量0.56キログラムとして換算
    • 例:100リットルの石油ガス → 100L × 0.56kg/L = 56kg

なお、容量により計量する場合の温度条件についても規定があり、原則として計量する都度その石油ガスの温度を測定し帳簿に記帳する必要があります。ただし、これが困難で税の保全上特に弊害がないと認められる場合に限り、計量する日の正午における貯蔵タンク内の石油ガスの温度を代用することも認められています。

 

保税地域から引き取られる課税石油ガスについては、液比重と温度による計算方法を適用できないため、標準換算率による方法を用いることになります。

 

これらの換算方法を正確に適用することで、適正な課税標準を算定し、正確な税額計算が可能となります。

 

国税庁:石油ガス税法基本通達 第4章 移出重量等の算定方法および税額の端数計算等

LPG車と石油ガス税の実務的影響と節税対策

LPG(液化石油ガス)を燃料とする自動車、いわゆるLPG車は、主にタクシーやトラック、フォークリフトなどの商用車に多く採用されています。これらの車両に使用される燃料に課される石油ガス税は、事業者の燃料コストに直接影響を与えるため、その実務的影響と対策を理解することが重要です。

 

LPG車が選ばれる理由と石油ガス税の影響:

  1. 経済性
    • LPGはガソリンの約60%の価格で、燃料コストを大幅に削減可能
    • 石油ガス税(17.5円/kg)はガソリン税(53.8円/L)に比べて低税率
    • 長距離走行が多いタクシーやトラックでは、この差が大きなコスト削減につながる
  2. 環境性能
    • LPGはガソリンやディーゼルに比べてCO2排出量が少なく、環境負荷が低い
    • 排気ガスがクリーンで、都市部での使用に適している
  3. 安全性
    • LPGは空気より重いため、漏れた場合に地面に溜まる特性がある
    • 適切な安全装置と定期点検により、安全性を確保できる

LPG車運用における実務上の注意点:

  1. 容器検査の義務
    • 経過年数20年未満のものは6年に1回、20年以上のものは2年に1回の容器検査が必要
    • この検査費用と容器交換費用も運用コストとして考慮する必要がある
  2. 燃料供給インフラの制約
    • LPGスタンドはガソリンスタンドより少なく、給油計画に注意が必要
    • 長距離移動時には、ルート上のLPGスタンドの位置を事前に確認しておくことが重要
  3. 燃料消費量の正確な記録
    • 石油ガス税の正確な計算と申告のために、燃料消費量を正確に記録する必要がある
    • 特に事業用車両の場合、燃料費は経費として計上するため、適切な記録管理が重要

石油ガス税に関する実務的な節税対策:

  1. 適正な重量計算と端数処理
    • 法令に基づく正確な重量計算と端数処理を行い、過大申告を防止
    • 容量から重量への換算時には、法定換算率(0.56kg/L)を適切に適用
  2. 燃費向上による消費量削減
    • エコドライブの徹底や定期的なメンテナンスにより燃費を向上
    • タイヤ空気圧の適正管理や不要な荷物の削減など、基本的な対策も効果的
  3. 適切な車両選択と運用計画
    • 使用目的や走行距離に適した車両を選択し、燃料効率を最大化
    • 配送ルートの最適化や共同配送の活用など、運用面での工夫も重要

LPG車の運用においては、石油ガス税の負担を考慮しつつも、総合的な運用コストと環境性能のバランスを取ることが重要です。適切な車両選択と運用管理により、石油ガス税の負担を最小限に抑えながら、LPG車のメリットを最大限に活かすことが可能となります。

 

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