

精算書は、社内で発生した立替・仮払などの支出について「誰が、何のために、いくら使い、会社としていくら負担するか」を確定させ、過不足を調整するための書類です。
一方、請求書は、取引先や顧客に対して商品・サービスの対価を「支払ってください」と請求するための書類で、請求漏れや認識違いを防ぐ実務ツールとして使われます。
この違いを外すと、経費精算で“請求書を添付したのに証憑として弱い”ケースや、逆に“精算書で社外請求を回そうとして締日管理が崩れる”ケースが起きます。
現場の整理に使える早見(社内教育向け)を置いておきます。
| 観点 | 精算書 | 請求書 |
|---|---|---|
| 主目的 | 社内の立替・仮払の過不足調整 | 取引先への支払請求 |
| 主な相手 | 従業員 → 会社(経理) | 売り手 → 買い手(取引先) |
| 発行タイミング | 支払後(立替後)〜精算時 | 提供後(または提供前に前受請求することも) |
参考:精算書と請求書の基本的な使い分けの考え方
https://strate.biz/keihiseisan/c_seisanseikyu/
経費精算がややこしくなる理由は、「精算書」と「証憑(領収書など)」を同一視しがちな点です。精算書は“申請・承認のための社内書類”、領収書は“支払った事実を示す外部証憑”という役割分担で考えると整理しやすくなります。
請求書と領収書の違いも押さえておくと、監査・税務調査対応での説明がブレません。請求書は支払前に代金を請求する書類で、領収書は支払後に受領した事実を示す書類、という基本がまずあります。
ただし実務では「請求書兼領収書」「代済」「相済」「了」など、支払済みである旨が明記された請求書が領収書の代替として扱われる場面があり、ここは社内規程(証憑要件)に落とし込むのが安全です。
参考:請求書と領収書の違い、請求書が代替になり得るケースの考え方
https://bill-one.com/knowledge/expense-invoice-usage/
「支払明細書(支払明細、支払通知書)」が混ざると、さらに混同が増えます。支払明細書は“内訳の確認”が主目的で、請求書のように支払いを求める性格があるかどうかがポイントになります。
たとえば、買い手側が「請求レス取引」を運用している場合、売り手が請求書を出さず、買い手が支払通知書で金額確定→支払という流れもあり得ます。こうした取引形態では、経理は「取引の根拠書類が何になるか(請求書・支払通知書・契約書・検収書)」をセットで定義しないと、保存要件や承認フローが崩れます。
参考:支払明細書と請求書の違い(支払いの要求があるかどうか)
https://www.yayoi-kk.co.jp/seikyusho/oyakudachi/billing-statement-04/
インボイス制度(適格請求書等保存方式)以降、経費精算で重要なのは「精算書そのもの」よりも、添付される領収書・レシート等が“適格請求書(または適格簡易請求書)として要件を満たすか”の確認設計です。
制度上、適格請求書発行事業者の登録、交付義務、保存、そして例外的な取扱い(特例・経過措置)など論点が多く、経費精算はその影響を最前線で受けます。
意外と見落とされがちなのが、「精算書」がインボイスっぽい見た目でも、税務上の“適格請求書等”の保存要件を満たすのは別問題という点です。原則としては、取引の相手方から交付された適格請求書等を保存する設計になっているため、社内で作る精算書は“誰が何を立替えたかの社内証跡”として位置づけ、外部証憑との紐づけ(添付・番号・明細一致)で強くします。
さらに実務で効くのが、インボイスQ&Aに出てくる「精算書」という言葉の登場シーンです。委託販売などでは、精算書を基に売上税額の計算(積上げ計算)を検討する論点があり、精算書が“取引の集計書”として機能する場面も示されています。経費精算の精算書と同じ日本語でも用途が違うため、社内教育では「経費精算書」と「取引精算書(委託販売等)」を言い分けるだけで事故が減ります。
参考:インボイス制度の公式Q&A目次(精算書が出てくる論点も含む)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/qa_invoice_mokuji.htm
検索上位の記事は「定義の違い」解説が中心になりがちですが、現場で事故を減らすには“名称”より“判定手順”を固定する方が効きます。おすすめは、経理が迷う前に、申請者が自己判定できるチェックをフォームに埋め込むやり方です(紙でも電子でも発想は同じ)。
たとえば、申請画面や精算書テンプレートの冒頭に、次のようなYes/No質問を置きます。
この“質問”を固定すると、精算書・請求書・領収書・支払明細書が混ざったケースでも、処理の入口が揃います。結果として、差戻し理由が「書類名が違う」ではなく「支払済み根拠がない」「取引年月日が欠ける」「税率ごとの金額が確認できない」など具体化し、教育コストが下がります。
最後に、用語の混同で地味に多いのが「精算」と「清算」です。精算は金額を細かく計算する日常業務で、清算は廃業などで債権債務を整理する文脈で使われる、と整理されているため、社内文書のタイトル(例:精算書/清算書)でも取り違え防止に役立ちます。
参考:精算と清算の違い(用語混同の事故防止に有用)
https://www.yayoi-kk.co.jp/kaikei/oyakudachi/seisan-chigai/