

民事再生は、資金繰りが詰みかけても再建の見込みがある企業について、裁判所の関与の下で「再生計画」を作り、債権者の同意を得て返済条件を組み直しながら事業を続けるための手続です。
経理目線で最初に押さえるべきは、「会社を畳む(清算)」ではなく「会社を残す(再建)」ための枠組みであり、計画に基づいて弁済が進む点です。
また民事再生は、会社が主体的に手続を進め、会社更生よりも手続進行が早い特徴があるとされています。
次に、手続の流れを“会計・証憑・台帳”の観点で言い換えると、だいたい次の順で実務負荷が来ます。
参考)民事再生と会社更生のメリット・デメリット|自社の再建にどちら…
・申立て直後:裁判所の「保全命令」により支払が制限され、資金繰り表・支払予定表の作り直しが即発生します。
・開始決定後:債権届出→認否→異議対応が続き、売掛金台帳・請求書・検収情報・契約書を根拠に“債権の確定作業”が発生します。
・財産評定:開始決定日時点の資産・負債の実態把握(換価前提に近い評価)が求められ、固定資産台帳・棚卸・リース・担保の整理が必要になります。
意外に見落とされがちなのは「財産評定は、帳簿価格の確認作業では終わりにくい」という点です。
処分価格に基づくのが原則とされ、仮に清算したら債権者がどれだけ回収できるかが判断基準になるため、在庫の滞留、回収不能売掛、遊休資産など“換価目線”の棚卸しが避けにくくなります。
民事再生では、裁判所が監督委員を選任し、監督委員は会社の手続運営が適正かをチェックし、財務調査などを行う一方で、原則として会社財産の管理・処分や経営を直接は行いません。
つまり現場感としては「経営陣が残ったまま、重要行為にブレーキ役(監督)が付く」イメージになりやすく、経理は“稟議・支払・契約締結の承認フロー”を監督委員前提に組み替える必要が出ます。
一方で、民事再生でも例外的に管財人が選任され、従前の代表者が管理処分権限を失うケースは「極めて例外的」と説明されています。
ここでの「違い」は、経理事故の発生ポイントと直結します。
・監督委員型を前提にして勝手に支払を進めると、裁判所・監督委員との関係で説明負担が爆発します。
・逆に、管財人型のつもりで窓口を一本化しすぎると、現経営陣が動ける範囲の情報収集(取引実態・検収・値引・返品)まで遅れ、債権認否の根拠が弱くなります。
経理の実務としては、申立てが出た時点で「誰が管理処分権を持つ運用か」をまず確認し、次に“支払・発注・入金消込・相殺”の承認経路を確定させるのが安全です。
社内向けには、最低限「支払は一時停止→窓口から指示が出るまで例外処理禁止」という掲示だけでも先に出すと、初動の混乱を抑えやすいです。
民事再生と会社更生はいずれも再建型の法的手続で、計画(再生計画・更生計画)を作って債権者の同意を得て実行する点は共通しています。
ただし会社更生は「株式会社のみ」が対象で、立法の経緯等から、民事再生は個人事業主・中小企業に、会社更生は比較的大規模な会社に利用される傾向があると説明されています。
この“対象の違い”は、経理が対応する文書量・利害関係者の多さ・資金繰りの複雑さ(担保、協調融資、社債、グループ会社取引)にそのまま反映されがちです。
また、民事再生では保全命令後も会社は業務を継続でき、代表者が財産管理処分権を失わないのが原則とされる一方、会社更生は保全管理人や管財人に権限を集中させ、従前の経営者を経営から排除する点が異なると整理されています。
この違いは、経理の“決裁の所在”だけでなく、「現場の取引実態の説明責任を誰が引き取るか」にも影響します。
会社更生寄りの運用では、現場が把握していた口約束・検収慣行・値引合意が、後から第三者へ説明し直す必要が増えるため、契約書・発注書・納品書・検収書・メールを揃える重要性が一段上がります。
ここで、経理担当者向けに“ざっくり判断軸”を表にします(初動の説明用)。
| 観点 | 民事再生 | 会社更生 |
|---|---|---|
| 目的 | 再生計画で再建 | 更生計画で再建 |
| 対象 | 法人・個人事業主も含み得る(会社更生は株式会社のみとの対比) | 株式会社のみ |
| 手続の主導 | 従前の経営者が中心+監督委員の監督 | 従前の経営者を経営から排除し、管財人等に権限集中する整理がされる |
取引先が民事再生や会社更生を申し立てたとき、経理の最大論点は「開始前に発生した債権・債務」と「開始後に発生した債権・債務」を分けて管理できるかです。
民事再生の説明として、裁判所は申立受理後に弁済を禁止する趣旨の保全命令を出すとされ、これが“開始前債務の支払を止める圧力”としてまず現場に効いてきます。
この局面で起きがちな事故は、①従来の自動振込データが走る、②口座引落(家賃・リース・保守)が止まらない、③クレカ/決済代行の精算が想定外に継続する、の3つです(止めるのではなく「止まる/止める根拠」を確認して運用化するのがポイントです)。
売掛金側(債権者側)に回る場合、開始決定後に裁判所から債権者宛に通知と「再生債権の届出用紙」が送られ、届出→認否→異議という流れで債権を確定していくと説明されています。
つまり、請求書を出しているだけでは足りず、「いつ・何を・いくらで・どの契約で・検収は済んだか」を説明できる証憑セットが必要になります。
経理としては、最低限次のチェックリストを作ると、届出漏れと金額ズレが減ります。
買掛金側(債務者側)に回る場合も同様に、債権届出が来たら「認否」をする立場になり、台帳の整合・未着品・未検収・長期未払の洗い出しが必要です。
特に“経理として意外にしんどい”のは、開始決定日時点の財産評定や報告が求められるため、期ズレでは済まない「実態の棚卸し」を短期間で行うことです。
棚卸資産や固定資産だけでなく、前払費用・未収入金・未払費用・引当金の妥当性まで説明が必要になりやすいので、監査対応に近い段取りを想定すると安全です。
経理従事者向けの権威性ある参考リンク(制度の前提確認に便利)
民事再生の手続の全体像(保全命令、監督委員、債権届出、財産評定、決議要件)
https://www.2ben-tousan.com/business-revitalization/legal-arrangement/civil-rehabilitation
破産・民事再生・会社更生の目的と対象の違い(再建/清算、会社更生は株式会社のみ等)
https://www.sansokan.jp/akinai/faq/detail.san?H_FAQ_CL=1&H_FAQ_NO=347
検索上位の解説は制度比較(対象、経営権、管財人/監督委員)に寄りがちですが、経理の成果物としては「社内ルールの即時整備」が再現性の高い勝ち筋になります。
理由は単純で、民事再生は会社が主体的に手続を進める前提のため、社内の支払・承認・証憑の乱れがそのまま監督委員対応、債権者対応、裁判所報告の負荷に跳ね返るからです。
最低限、申立て〜開始決定の初動で“経理が握るべきルール”を、テンプレとして置いておくと強いです。
さらに、意外に効くのが「財産評定は処分価格が原則」という説明を社内共有しておくことです。
帳簿上の利益やBSの見栄えよりも、“換価したらいくらか”の目線が入りやすくなるため、在庫処分・遊休資産売却・回収不能債権の整理といった痛みを伴う意思決定が、経理起点で現実味を帯びます。
結果として、再生計画の前提となる数字(返済可能キャッシュ、必要運転資金、継続前提の整理)が固まりやすくなり、監督委員への説明も通りやすくなります。