兄弟の相続どこまで範囲対象?順位割合を徹底解説

兄弟の相続どこまで範囲対象?順位割合を徹底解説

兄弟の相続どこまで

兄弟の相続範囲のポイント
👥
第3順位の相続人

子や親がいない場合のみ相続権が発生

📊
相続割合

配偶者がいる場合は1/4、いない場合は全額

⚖️
遺留分なし

遺言で財産を渡さないとされても請求不可

兄弟の相続順位と対象範囲

兄弟姉妹の相続権は、民法で定められた第3順位の法定相続人として位置づけられています。この順位制度により、兄弟姉妹が相続人になれるケースは限定的です。

 

相続順位の仕組み:

  • 常に相続人:配偶者
  • 第1順位:子(直系卑属)
  • 第2順位:父母や祖父母(直系尊属)
  • 第3順位:兄弟姉妹(傍系血族)

兄弟姉妹が相続人となるのは、第1順位と第2順位の相続人がいない場合のみです。つまり、被相続人に子どもや孫、父母や祖父母が存在する場合、兄弟姉妹は相続権を持ちません。

 

兄弟姉妹の対象範囲:

  • 実の兄弟姉妹
  • 異母兄弟・異父兄弟(父母の一方が同じ)
  • 養子縁組による兄弟姉妹

異母兄弟・異父兄弟も第3順位の相続人に含まれるため、相続権を有します。ただし、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1となる点が特徴的です。

 

兄弟の相続割合と具体的計算方法

兄弟姉妹の相続割合は、他の相続人の有無によって大きく異なります。

 

配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合:

  • 配偶者:4分の3
  • 兄弟姉妹全体:4分の1

兄弟姉妹が複数いる場合は、4分の1をさらに人数で分割します。

 

具体的な計算例:

相続人構成 配偶者の相続分 兄弟1人あたりの相続分
配偶者+兄弟1人 3/4 1/4
配偶者+兄弟2人 3/4 1/8ずつ
配偶者+兄弟3人 3/4 1/12ずつ

兄弟姉妹のみが相続人の場合:
配偶者がおらず、子や親もいない場合は、兄弟姉妹が全財産を相続します。

 

遺産総額6,000万円で兄弟3人が相続する場合。

  • 各兄弟の相続分:2,000万円(6,000万円÷3人)

異母・異父兄弟の相続分:
父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の半分となります。

 

兄弟の代襲相続はどこまで続く

兄弟姉妹の代襲相続には、直系卑属とは異なる重要な制限があります。

 

代襲相続の基本ルール:
代襲相続とは、相続人となるべき人が被相続人より先に死亡している場合に、その子が代わりに相続することです。

 

兄弟姉妹の代襲相続の特徴:

  • 一代限りで終了(再代襲なし)
  • 甥・姪までが対象
  • 甥・姪の子(被相続人の大甥・大姪)は相続不可

具体例で理解する代襲相続:
被相続人Aに配偶者と兄弟Bがいたが、兄弟Bは既に死亡。Bには子C・Dがいる場合。

  • 配偶者:4分の3を相続
  • 甥C:8分の1を相続(本来のBの相続分1/4を2分割)
  • 姪D:8分の1を相続

さらにCも死亡していてCに子Eがいても、Eは相続できません。これが「一代限り」の制限です。

 

代襲相続の相続分計算:

  1. まず兄弟全体の相続分を確定
  2. 代襲相続が発生した兄弟の相続分を、その子の人数で分割
  3. 生存している兄弟と代襲相続人で最終的な相続分が決定

兄弟に遺留分はない重要な注意点

兄弟姉妹には遺留分が認められていません。これは相続において極めて重要な特徴です。

 

遺留分とは:
法定相続人が最低限受け取ることができる相続財産の割合のことです。通常は法定相続分の2分の1が遺留分となります。

 

遺留分が認められる相続人:

  • 配偶者:あり
  • 子(直系卑属):あり
  • 父母(直系尊属):あり
  • 兄弟姉妹:なし

実務上の影響:
被相続人が「全財産を慈善団体に寄付する」「愛人に全て譲る」といった遺言を残した場合、兄弟姉妹は一切相続できません。

 

兄弟姉妹に遺留分がない3つの理由:

  1. 被相続人との関係が遠い:第3順位という位置づけ
  2. 代襲相続があるため:遠い親戚まで遺留分を認めると被相続人の意思が尊重されにくい
  3. 経済的依存度が低い:通常は別世帯で生活しており、被相続人の財産に依存していない

対策方法:
兄弟姉妹が確実に財産を受け取りたい場合は、生前に被相続人に遺言書を作成してもらう必要があります。

 

異母兄弟・異父兄弟の相続権と特殊事例

異母兄弟・異父兄弟の法的地位:
父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹も、民法上は第3順位の法定相続人として認められています。

 

相続分の計算:
異母・異父兄弟の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の2分の1です。

 

計算例:
遺産4,800万円、配偶者と実兄1人・異母兄弟1人が相続人の場合。

  • 配偶者:3,600万円(4分の3)
  • 実兄:800万円(1,200万円の3分の2)
  • 異母兄弟:400万円(1,200万円の3分の1)

認知や養子縁組の影響:

  • 認知された子:第1順位として相続権を有し、兄弟姉妹の相続権は消滅
  • 養子縁組した子:実子と同等の相続権
  • 内縁の配偶者:相続権なし

戸籍調査の重要性:
相続手続きでは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。この過程で、知らなかった異母・異父兄弟の存在が判明するケースがあります。

 

特殊な事例:

  • 認知していない子がいる場合:その子が後に認知の訴えを起こし、認められると兄弟姉妹の相続権が影響を受ける可能性
  • 海外在住の兄弟姉妹:相続権は有するが、手続きが煩雑になる
  • 行方不明の兄弟姉妹:家庭裁判所での不在者財産管理人選任が必要になる場合がある

実務上の注意点:
相続発生時には、被相続人の兄弟姉妹全員の所在確認と意思確認が必要です。一人でも連絡が取れない場合は、相続手続きが停滞する可能性があります。

 

兄弟姉妹間の相続では、感情的な対立が生じやすいため、事前の話し合いや専門家への相談が重要です。特に不動産など分割が困難な財産がある場合は、早期の対策が求められます。

 

国税庁の統計によると、遺産分割事件の約7,000件のうち、1,000万円以下の遺産でも約2,300件の争いが発生しており、一般的な家庭でも兄弟姉妹間の相続トラブルは十分に起こり得ることが分かります。