
航空機燃料税は、航空機に積み込まれる航空機燃料に対して課される国税です。この税金は、航空機の運航に必要な燃料に課税することで、空港整備や航空行政の財源を確保することを目的としています。
航空機燃料税の計算方法は基本的にシンプルで、以下の計算式で求められます。
航空機燃料税額 = 航空機燃料の積込数量(キロリットル) × 適用税率
ただし、航空機の種類や路線によって適用される税率が異なります。令和5年4月の租税特別措置法の改正により、航空機燃料税の軽減措置が令和10年3月31日まで延長され、税率も見直されました。現在の税率区分は以下の3種類です。
それぞれの区分における税率の推移は以下の通りです。
航空機の種類 | 本則税率 | 令和5年4月1日~ 令和7年3月31日 |
令和7年4月1日~ 令和9年3月31日 |
令和9年4月1日~ 令和10年3月31日 |
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一般国内航空機 | 26,000円/kℓ | 13,000円/kℓ | 15,000円/kℓ | 18,000円/kℓ |
沖縄路線航空機 | 13,000円/kℓ | 6,500円/kℓ | 7,500円/kℓ | 9,000円/kℓ |
特定離島路線航空機 | 19,500円/kℓ | 9,750円/kℓ | 11,250円/kℓ | 13,500円/kℓ |
この軽減税率の適用により、航空会社の負担が軽減され、航空運賃の安定化や地域間の交通アクセスの確保に貢献しています。特に沖縄路線や離島路線については、より大きな軽減措置が講じられており、地域経済や観光振興の観点からも重要な役割を果たしています。
航空機燃料税の申告は、「航空機燃料税納税申告書」を使用して行います。この申告書は期限内申告書、期限後申告書、修正申告書、還付請求申告書として使用できる汎用性の高い様式となっています。
申告書の記入にあたっては、以下のポイントに注意する必要があります。
特に注意すべき点として、修正申告書を提出する場合には、修正後の内容を記載し、修正申告直前の内容をそれぞれ該当欄の上部にかっこ書きする必要があります。
また、航空機から取卸しをした航空機燃料について税額の控除または還付を受ける場合には、「航空機燃料税取卸控除(還付)税額計算書」を添付する必要があります。ただし、期限後申告書を提出する場合には、この控除または還付を受けることができないため、計算書は添付できません。
航空機燃料税納税申告書の詳細な記入方法については国税庁のPDFガイドを参照
航空機に積み込んだ燃料を何らかの理由で取り卸した場合、その燃料に対して納付した(または納付すべき)税額の控除または還付を受けることができます。この手続きには「航空機燃料税取卸控除(還付)税額計算書」の提出が必要です。
取卸控除(還付)税額計算書には、以下の項目を記載します。
この計算書は航空機燃料税納税申告書に添付して提出します。取卸控除を適用することで、実際に使用されなかった燃料に対する税負担を軽減することができます。
実務上のポイントとして、取卸控除の申請は適切な証拠書類(取卸作業の記録、数量確認書類など)を保管しておくことが重要です。税務調査の際に取卸しの事実を証明できるよう、関連書類は少なくとも7年間は保存しておくことをお勧めします。
航空機燃料税は、その時々の経済状況や航空業界の環境に応じて、税率の改正や軽減措置が実施されてきました。この変遷を理解することは、現在の税制を正確に把握する上で重要です。
航空機燃料税の軽減措置と税率改正の主な歴史は以下の通りです。
平成23年3月31日まで
平成23年4月1日から令和3年3月31日まで
令和3年4月1日から令和4年3月31日まで
令和4年4月1日から令和7年3月31日まで
令和7年4月1日から令和9年3月31日まで
令和9年4月1日から令和10年3月31日まで
特に注目すべきは、令和3年度に実施された大幅な税率引き下げです。これは新型コロナウイルス感染症の影響で深刻な経営危機に陥った航空業界を支援するための措置でした。その後、段階的に税率を引き上げる形で調整が行われています。
この軽減措置の延長や税率の見直しは、航空業界の競争力強化や地域間の交通アクセスの確保、環境対策など、様々な政策目的を反映したものとなっています。
航空機燃料税は国税として徴収されますが、その一部は「航空機燃料譲与税」として地方自治体に譲与されます。この仕組みは、空港が立地する地方自治体の財政支援や、空港周辺の環境対策などの財源を確保するために重要な役割を果たしています。
航空機燃料譲与税の譲与割合は、時期によって異なります。現在の譲与割合は以下の通りです。
この譲与税は、以下の基準で地方自治体に配分されます。
特に空港周辺の自治体にとっては、航空機の騒音対策や環境整備の財源として重要な収入源となっています。
税理士として航空関連企業の税務を担当する場合、この譲与税の仕組みを理解しておくことで、クライアントに対してより包括的なアドバイスが可能になります。例えば、空港周辺に事業所を持つ企業にとっては、この譲与税がどのように地域の環境対策や基盤整備に活用されているかを説明することで、納税の意義をより具体的に伝えることができます。
地方譲与税の概要と航空機燃料譲与税の詳細については総務省の資料を参照
航空機燃料税の計算と申告において、実務上注意すべきポイントと具体的な事例を紹介します。これらは税理士として航空関連企業のクライアントに対応する際に役立つ知識です。
1. 税率適用の判断基準
航空機の種類(一般国内航空機、沖縄路線航空機、特定離島路線航空機)によって適用税率が異なりますが、その判断基準は以下の通りです。
例えば、東京(羽田)-那覇間を飛行する航空機は「沖縄路線航空機」として、東京(羽田)-隠岐間を飛行する航空機は「特定離島路線航空機」として、それぞれ軽減税率が適用されます。
2. 国際線と国内線の区分
重要なポイントとして、航空機燃料税は国内線にのみ課税され、国際線には課税されません。このため、国内線と国際線の両方を運航する航空会社では、それぞれの用途に応じた燃料の区分管理が必要です。
例えば、同じ航空機が国内線と国際線を連続して運航する場合、国内線分の燃料にのみ航空機燃料税が課税されるため、その区分を明確にする必要があります。
3. 計算事例
ある航空会社が1ヶ月間に以下の燃料を積み込んだ場合の航空機燃料税額を計算してみましょう。
令和5年4月1日から令和7年3月31日までの税率を適用すると。
一般国内航空機分:500kℓ × 13,000円/kℓ = 6,500,000円
沖縄路線航空機分:200kℓ × 6,500円/kℓ = 1,300,000円
特定離島路線航空機分:100kℓ × 9,750円/kℓ = 975,000円
合計税額:8,775,000円
4. 取卸控除の実務
航空機から燃料を取り卸した場合、その燃料に対する税額の控除または還付を受けることができます。例えば、機体整備のために100kℓの燃料を取り卸した場合。
取卸燃料(一般国内航空機分):100kℓ × 13,000円/kℓ = 1,300