
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生は、2019年12月31日に中国湖北省武漢市で「原因不明の肺炎」として世界保健機関(WHO)に最初に報告されました 。しかし、実際の最初の患者発生はこれより早く、2019年12月1日に武漢で最初の患者が原因不明の肺炎を発症したとされています 。
参考)新型コロナウイルス:どこから来て、どこに向かうのか
中国の研究グループは、12月30日に採取した患者検体の解析により、原因が新型コロナウイルスであることを明らかにし、その全ゲノム配列を解読して、2020年1月10日頃までに国際的データベース(GISAID)に登録しています 。2020年1月7日には原因が新種のコロナウイルスと特定され、1月9日に中国で最初の死者が報告されました 。
参考)2019 年新型コロナウイルス感染症 (2019-nCoV)
興味深いことに、WHO調査団員の指摘によると、中国側が調査団に対して提示したデータでは、2019年12月に武漢市内と周辺で174の新型コロナ症例が確認されており、実際には1000人を超える感染者がいた可能性があることが示唆されています 。
参考)武漢、2019年12月に1000人超感染か WHO調査団員指…
日本では2020年1月16日に国内初の新型コロナウイルス感染者が確認されました 。この患者は武漢から帰国した神奈川県在住の30代中国人男性で、1月6日に武漢から帰国し、帰国前から発熱の症状があり、帰国後に肺炎の症状を訴えて入院していました 。youtube
参考)新型コロナウイルスに関連した肺炎の患者の発生について(1例目…
その後、1月28日には日本人として初の感染者が確認されました 。この患者は奈良県在住のバス運転手で、武漢への渡航歴がなく、武漢からのツアー客を乗せたバスを運転していたことから、国内での人から人への感染が初めて確認されたケースとなりました 。
参考)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200128/k10012262471000.html
2月5日には横浜港に停泊していたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」で集団感染が確認され、最終的に乗客と乗員の全て(3711名)にPCR検査が実施され、696名が陽性となる大規模な感染事例となりました 。
参考)日本の動向/東京大学 保健センター
新型コロナウイルスは中国から急速に世界各国に拡散していきました。2020年1月13日にタイで中国国外として初の感染者が報告されたのを皮切りに、韓国、台湾、そして日本など中国近隣諸国に感染が拡大しました 。
参考)https://www.hosp.med.osaka-u.ac.jp/home/hp-infect/file/ictmon/ictmon282.pdf
WHO(世界保健機関)は2020年1月30日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言し 、その後、3月11日には世界的な大流行を意味する「パンデミック」であると正式に発表しました 。WHO事務局長テドロス・アダノム・ゲブレイエスス氏は会見で「中国国外での症例数が2週間で13倍に増加した」と指摘し、世界各国に対して積極的な対応を呼びかけました 。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8020611/
パンデミック宣言時点で、新型コロナウイルスは100カ国以上で症例が確認され、感染地域への渡航とは無関係の感染者が増加していることが背景にありました 。
参考)https://www.bbc.com/japanese/51846258
日本政府は2020年2月7日に新型コロナウイルスによる肺炎などを「指定感染症」と定め、診断された患者を強制的に入院させることができるようになりました 。同時に「検疫感染症」とする政令が施行され、中国湖北省からの外国人の入国が拒否されることとなりました 。
2月25日には厚生労働省内にクラスター対策班が設置され、1人の感染者から大勢の人に感染するクラスター(感染者の集団)を制御することで、感染の制圧を目指す方針が取られました 。日本では2020年1月16日から2021年8月5日までの期間に複数の流行の波を経験し、第1波から第5波までの急激な新規患者数の増加が確認されています 。
参考)新型コロナウイルスと血液透析
ウイルスの変異についても日本独自の経緯があり、最初は武漢株が流入しましたが、3月中旬からはヨーロッパから流入した株(欧州株;B.1.1.114系統)による第1波が始まり、その後日本国内で起こった変異による第2波、第3波の流行株が確認されています 。
2025年現在、新型コロナウイルス感染症は収束に向かいつつあると考えられています。日本における累計感染者数は約3,500万人と報告されており、これは日本の全人口の約28%に相当します 。ただし、この数字には再感染者も含まれており、実際の感染経験者数はさらに多い可能性があります 。
参考)コロナは収束へ向かっている
現在の感染状況については、2025年2月時点で医療機関への受診者は一日1~2人程度と大幅に減少しており、軽症者が増え、発熱のない患者が多い傾向にあります 。これは、多くの人が感染やワクチン接種により免疫を獲得し、ウイルスの毒性も弱くなってきていることを示唆しています 。
水際対策についても段階的に緩和が進められており、2023年4月29日からはワクチン接種証明書などの提出が不要となりました 。今後は新型コロナウイルスが世界から完全に消失することはなく、一般的な風邪のような季節性の感染症として定着していく可能性が高いと専門家は予想しています 。
参考)https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/restrictions/
新型コロナウイルスの起源と変異について詳しい医学的解説
日本医師会COVID-19有識者会議による新型コロナウイルスの起源、変異、パンデミックの経緯について権威ある医学的見解を提供
東京大学による日本の新型コロナ動向分析
東京大学大学院医学系研究科による日本国内での感染拡大の詳細な分析と対策の変遷
厚生労働省による国内初症例の公式発表
日本で初めて確認された新型コロナウイルス感染者についての厚生労働省による正式な発表資料