

省エネリフォームで断熱材だけ入れても、あなたの固定資産税は1円も減りません。
固定資産税は、毎年1月1日時点で土地や建物を所有している人が支払う税金です。計算式のベースになるのは「評価額」で、建物の構造・面積・建材グレード・築年数などをもとに市区町村が算出します。
計算の基本は「評価額 × 税率1.4%」です。経年減点補正率によって築年数が増えるほど評価額は下がる仕組みなので、古い建物の固定資産税は一般的に低く抑えられていきます。
リフォームと固定資産税の関係は、大きく「上がるケース」「変わらないケース」「下がるケース」の3種類に分かれます。これが基本です。
多くの方が「リフォームすると税金が上がる」と心配しますが、実際には設備交換や内装の張り替えといった一般的なリフォームであれば、固定資産税はほとんど変わりません。逆に、耐震・省エネ・バリアフリーといった特定の性能向上リフォームを行えば、税金を「下げる」制度が用意されています。
固定資産税が上がるのは、床面積を増やす増築やスケルトンリフォームのような「建物の価値が大幅に上がる工事」に限られます。一方、外壁塗装・クロスの張り替え・キッチン交換などの維持・更新目的の工事では、税額は据え置きになります。知っておくだけで安心できますね。
参考リンク(固定資産税の仕組みと評価額の基本を国土交通省が解説)。
国土交通省:リフォーム促進税制【所得税・固定資産税】について
リフォームで固定資産税を減額できる制度は「リフォーム促進税制」と呼ばれ、対象となる工事は4種類あります。これが条件です。
| リフォームの種類 | 減額割合 | 最低工事費用 | 対象床面積 |
|---|---|---|---|
| 耐震リフォーム | 1/2軽減 | 50万円超 | 120㎡相当分まで |
| バリアフリーリフォーム | 1/3軽減 | 50万円超(補助金控除後) | 100㎡相当分まで |
| 省エネリフォーム | 1/3軽減 | 60万円超 | 120㎡相当分まで |
| 長期優良住宅化リフォーム | 2/3軽減 | 50万円超(補助金控除後) | 120㎡相当分まで |
減額されるのはいずれも「工事完了翌年度分の固定資産税1年分」が対象です。つまり恒久的に下がり続けるわけではなく、1年間の軽減措置という点を覚えておきましょう。
仮に、床面積100㎡の戸建て住宅で年間10万円の固定資産税を払っていた場合、耐震リフォームを行えば翌年は約5万円、長期優良住宅化リフォームならば約3万3,000円まで下がる計算になります。これは使えそうです。
各制度について、要件や注意点を次のセクションで詳しく確認していきましょう。
耐震リフォームによる固定資産税の減額は、昭和57年(1982年)1月1日以前に建てられた「旧耐震基準」の住宅が対象です。この住宅を現行の耐震基準に適合させる工事を行うことで、翌年度の固定資産税が1/2に軽減されます。
要件をまとめると以下のとおりです。
旧耐震の戸建てを所有している方にとって、耐震補強工事は地震対策と税負担軽減の一石二鳥になります。また、多くの自治体では耐震改修工事に対する補助金制度も設けており、国・都道府県・市区町村の補助金と組み合わせることで自己負担を大幅に抑えることも可能です。
申請手順としては、①工事前に耐震診断を受ける、②耐震基準適合を目指した補強工事を実施する、③完了後3ヶ月以内に「固定資産税減額申告書」と「増改築等工事証明書」などの必要書類を市区町村に提出する、という流れになります。
「増改築等工事証明書」は建築士や登録住宅性能評価機関などが発行する書類です。必須です。リフォーム会社が対応しているか、工事の契約前に必ず確認しておきましょう。
参考リンク(耐震改修に関する特例措置の詳細条件を国土交通省PDFで確認できます)。
国土交通省:耐震改修に関する特例措置(PDF)
省エネリフォームの固定資産税減額は、多くの方が勘違いしている落とし穴があります。断熱材の施工や床暖房の設置、高効率給湯器の交換だけでは、この制度の対象になりません。「窓の断熱改修工事」が必須条件として定められているためです。
具体的には、窓を二重サッシや複層ガラス(ペアガラス)に改修する工事を必ず含めたうえで、床・壁・天井の断熱改修や太陽光発電装置の設置といった工事を組み合わせることが要件となります。
省エネリフォーム減額の主な条件は以下のとおりです。
「先進的窓リノベ事業」などの国の補助金制度と組み合わせることが可能で、補助金を活用すれば実質的な自己負担を抑えつつ、固定資産税の減額まで受けられる場合があります。ただし、補助金を受け取った分は工事費から差し引いた金額が「60万円超」を満たしているかどうかの判断基準になります。補助金が多いほど自己負担額は下がりますが、60万円の要件を下回らないよう、工事内容の調整が必要になることがあります。
省エネリフォームは所得税のリフォーム促進税制との併用申請も可能ですが、申告先が異なります。所得税は税務署への確定申告、固定資産税は市区町村への申告と、窓口が別々になる点に注意が必要です。
参考リンク(省エネ改修に関する固定資産税の特例措置、必要書類まで網羅されています)。
国土交通省:省エネ改修に関する特例措置(PDF)
バリアフリーリフォームによる固定資産税の減額
バリアフリーリフォームは、65歳以上の方・要介護・要支援の認定を受けている方・障がいのある方などが居住する住宅が対象です。手すりの設置・段差の解消・廊下幅の拡張・トイレや浴室のバリアフリー化といった工事が対象となり、翌年度の固定資産税が1/3軽減されます。
注意しておきたいポイントは、「補助金を受け取った場合の自己負担額が50万円超かどうか」という判定基準です。介護保険の住宅改修補助(最大18万円)を使って工事費を抑えた場合、補助金を引いた後の自己負担額が50万円を下回ってしまうと減税の対象外になります。厳しいところですね。
設計段階から補助金と減税制度のバランスを考えた計画が必要です。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 対象者 | 65歳以上・要介護認定者・障がい者などが居住 |
| 工事費 | 50万円超(補助金控除後) |
| 対象床面積 | 50㎡以上280㎡以下 |
| 減額割合 | 翌年度分の1/3軽減(100㎡相当分まで) |
長期優良住宅化リフォームによる固定資産税の最大2/3軽減
4種類の中で最も節税効果が大きいのが「長期優良住宅化リフォーム」です。行政庁から「長期優良住宅」の認定を受けたうえで、耐震改修と省エネ改修を組み合わせ、さらに耐久性向上工事(小屋裏換気・床下防湿など)を行うことで、翌年度の固定資産税が2/3軽減されます。
仮に年間12万円の固定資産税を払っている方が長期優良住宅化リフォームを実施した場合、翌年は8万円の軽減で約4万円の支払いになる計算です。1年分だけとはいえ、かなりのインパクトがあります。
ただし、この制度は認定申請を工事前に行うなど手続きが複雑で、対応できるリフォーム会社も限られています。早い段階で専門家に相談することが、長期優良住宅化を成功させる条件です。
参考リンク(バリアフリー・長期優良住宅化リフォームの特例措置の詳細)。
国土交通省:バリアフリー改修に関する特例措置(PDF)
固定資産税の減額は、自動的に適用される制度ではありません。申請を怠ると、要件を満たしていても一切の恩恵を受けられないままになってしまいます。これだけ覚えておけばOKです。
申請期限は「工事完了後3ヶ月以内」
所得税の控除は翌年2月〜3月の確定申告期間が期限ですが、固定資産税の減額申請は確定申告の時期とは別に設定されています。工事が完了した日から数えて3ヶ月以内に市区町村へ申告しなければなりません。実際に「確定申告の時期にまとめてやればいいと思っていた」という理由で期限を過ぎてしまうケースが多く報告されています。工事完了後すぐに動くことが原則です。
申告先は「市区町村の固定資産税担当窓口」
所得税控除の申告先が税務署なのに対し、固定資産税の減額申告先は住宅が所在する市区町村の固定資産税担当窓口です。窓口が異なります。同じ書類でも提出先を間違えると手続きが無効になるため、事前に自治体のウェブサイトや電話で確認しておきましょう。
必要書類チェックリスト
「増改築等工事証明書」はリフォーム会社が手配するケースが多いですが、すべての会社が対応しているわけではありません。契約前に必ず確認することが必要です。
申請を忘れた場合はどうなる?
期限の3ヶ月を過ぎてしまった場合、固定資産税の減額は原則として受けられなくなります。痛いですね。所得税の確定申告は5年間さかのぼって還付申告が可能ですが、固定資産税の申請は遡及が認められないケースがほとんどです。自治体によって対応が異なる場合もあるため、期限超過が発覚したらまず市区町村の担当窓口に相談することをおすすめします。
所得税減税と固定資産税減額を同時申請する場合は、書類が一部異なります。「増改築等工事証明書」は2部作成が必要になることもあるため、リフォーム会社に事前に伝えておきましょう。
参考リンク(固定資産税減額申請の手続きの流れを東京都主税局が詳しく解説しています)。
東京都主税局:省エネ改修工事をした住宅に対する固定資産税の減額
固定資産税の減額制度は、他の税制優遇措置と組み合わせることで節税効果をさらに高めることができます。この視点は、税制や制度設計に関心の高い方にとって特に役立つ情報です。
所得税のリフォーム促進税制との併用
固定資産税の減額措置は、所得税のリフォーム促進税制(投資型減税)と基本的に併用が可能です。たとえば省エネリフォームを行った場合、工事費用の10%が所得税額から控除(最大62.5万円)され、さらに翌年度の固定資産税が1/3軽減されるという二重の恩恵を受けることができます。申告先が税務署と市区町村で別々になるため、双方の手続きを並行して進めることが重要です。
住宅ローン減税との関係
住宅ローンを組んでリフォームした場合は「住宅ローン減税(増改築)」の活用も検討できます。年末のローン残高の0.7%が所得税から最大10年間控除される制度で、年間控除額の上限は14万円、10年間で最大140万円の控除になります。ただし、ローン残高が伴わない現金一括のリフォームではこの制度は対象外です。その場合はリフォーム促進税制(投資型)の適用を検討しましょう。
贈与税の非課税措置の活用
親や祖父母からリフォーム資金の援助を受ける場合、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」を活用することも可能です。令和8年(2026年)12月31日までの贈与が対象で、省エネ性能・耐震性能・バリアフリー性能などの基準を満たす「質の高い住宅」の場合は最大1,000万円まで、一般住宅の場合は最大500万円まで贈与税が非課税になります。
各制度を組み合わせるうえで注意すべき点は、「補助金を受け取った場合は、その金額を差し引いた自己負担額で工事費要件を満たしているかどうか」を確認することです。特に省エネリフォームやバリアフリーリフォームでは、補助金の活用によって最低工事費要件を下回る可能性があります。
制度の適用期限は現在2026年3月31日(一部2027年12月31日まで延長の可能性あり)となっており、期限を逃さないための事前計画が節税戦略の要になります。制度の期限には注意が必要です。
各制度の詳細な適用条件は随時改正が行われるため、工事着手前に国土交通省や住宅リフォーム推進協議会の最新情報を確認することをおすすめします。
参考リンク(リフォームで使える減税制度・補助金制度の一覧をまとめて確認できます)。
住宅リフォーム推進協議会:リフォーム減税制度(令和7年度版)