固定資産税の特例措置で中小企業が得する節税の全手順

固定資産税の特例措置で中小企業が得する節税の全手順

固定資産税の特例措置で中小企業が活用すべき節税の仕組み

賃上げを1円もしていない中小企業は、2025年4月以降この特例を1円も受けられません。


📋 この記事の3つのポイント
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2025年4月から「賃上げ」が必須条件に

令和7年度税制改正により、従業員への賃上げ方針の表明(1.5%以上)が固定資産税特例の絶対条件になりました。賃上げ表明なしでは特例はゼロです。

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最大5年間・課税標準を1/4まで軽減できる

3%以上の賃上げを表明すれば、固定資産税の課税標準が5年間にわたり1/4に軽減。1,000万円の設備投資なら約31万円以上の節税効果が見込めます。

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「計画認定の前に設備を取得」すると一切適用されない

先端設備等導入計画の認定を受ける前に設備を購入してしまうと、要件を満たしていても特例は完全に無効になります。手順を守ることが最重要です。


固定資産税の特例措置とは何か:制度の基本概要

固定資産税の特例措置とは、中小企業が中小企業等経営強化法に基づく「先端設備等導入計画」を策定し、市区町村の認定を受けた上で一定の設備を取得した場合に、その償却資産に係る固定資産税が軽減される制度です。


この制度の最大の特長は、黒字・赤字を問わず適用できる点にあります。法人税の節税措置は利益が出ていないと恩恵がありませんが、固定資産税は赤字でも課税されます。だからこそ、赤字経営の中小企業にとってもリアルな節税手段となり得るのです。これは使えそうです。


令和7年度の税制改正により、適用期限が2年間延長されました。具体的には、2025年(令和7年)4月1日から2027年(令和9年)3月31日までに事業の用に供した設備が対象となります。同時に、制度の要件も大きく見直されており、従来とは異なる点に注意が必要です。


この制度を管轄するのは中小企業庁であり、実際の申請・認定は市区町村(東京都特別区については東京都)が窓口になります。全国1,657団体(令和6年9月30日現在)が固定資産税特例措置を講じており、お住まいの自治体がどのような対象設備・対象業種を設定しているかは、事前に確認する必要があります。


参考として、中小企業庁の公式ページでは制度の全体像と申請フローが整理されています。


中小企業庁「固定資産税の特例(中小企業等経営強化法による支援)」

https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/tokurei/kotei_shisan.html


固定資産税の特例措置における中小企業の対象要件と対象設備

まず、対象となる中小企業者の範囲を正確に押さえることが条件です。


以下に整理します。


  • 資本金もしくは出資金の額が1億円以下の法人(ただし、大規模法人に発行済株式総数等の2分の1以上を所有されている法人等を除く)
  • 資本または出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人
  • 常時使用する従業員の数が1,000人以下の個人事業


ただし、大企業の子会社等は除外されます。なお、先端設備等導入計画の認定対象となる「中小企業者」の範囲と、税制支援を受けられる「中小企業者」の範囲は微妙に異なる場合がありますので、注意が必要です。


次に対象設備の種類と最低取得価格を確認しましょう。


設備の種類 最低取得価格
機械装置 160万円以上
測定工具および検査工具 30万円以上
器具備品 30万円以上
建物附属設備(家屋と一体となって効用を果たすものを除く) 60万円以上


これらに加え、「年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれる」ことについて、認定経営革新等支援機関の事前確認を受けることが必須となっています。投資利益率は「(営業利益減価償却費)の増加額÷設備投資額」で算出します。


また、中古資産や生産・販売活動等に直接供されない設備は対象外です。この点を見落とすと、せっかく計画を認定されても設備が特例の対象外になる恐れがあります。中古資産は対象外が原則です。


固定資産税の特例措置の軽減内容と賃上げ要件の関係:2025年4月以降の新ルール

令和7年度の税制改正で最も大きく変わった点が「賃上げ要件の必須化」です。


2025年4月1日以降に取得する設備については、従業員への賃上げ方針の表明が特例適用の絶対条件となりました。以前は賃上げ表明なしでも3年間・課税標準を1/2に軽減する措置がありましたが、現在はそれが廃止されています。賃上げ表明なしでは特例はゼロです。


新しいルールをまとめると以下の通りです。


賃上げ表明の内容 軽減期間 課税標準の軽減割合
なし 特例なし(0円軽減)
1.5%以上の引き上げを表明 3年間 課税標準を1/2に軽減
3%以上の引き上げを表明 5年間 課税標準を1/4に軽減


賃上げ表明は従業員全員に対して行う必要はなく、従業員代表者への表明でも可能です。また、賃上げ表明を証する書面として、従業員代表者の署名(記名・押印も可)が必要になります。


ここで重要なのが「雇用者給与等支給額」の計算方法です。これは給与総額の増加率を指し、「(計画認定の申請日が属する事業年度または翌事業年度の給与総額 − 直前事業年度の給与総額)÷ 直前事業年度の給与総額」で算出します。


なお、3%以上の賃上げ表明で受けられる「5年間・課税標準1/4」という条件は、改正前の「最大2/3軽減」から大幅に引き上げられた、今回の改正の目玉です。これは使える改正です。


令和7年度税制改正の詳細は、以下の解説ページが参考になります。制度の変遷がわかりやすく整理されています。


山田&パートナーズ「生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置の延長等」

https://www.yamada-partners.jp/reform/r7/s02-extension-of-special-measures-for-fixed-asset-tax-on-capital-investment-by-small-and-medium-sized-enterprises


固定資産税の特例措置の申請手続きと中小企業が押さえるべき注意点

申請の流れを正しく理解することが、この制度を確実に活用するための最初のステップです。


手続きの全体フローは以下の通りです。


  1. 認定経営革新等支援機関に事前確認を依頼し、確認書を取得する
  2. 投資利益率5%以上の投資計画について、認定経営革新等支援機関の確認を受ける
  3. 従業員(または従業員代表者)に賃上げ方針を表明し、証する書面を用意する
  4. 設備の所在する市区町村へ先端設備等導入計画を申請する(確認書・賃上げ表明書類を添付)
  5. 市区町村から認定を受ける
  6. 認定後に対象設備を取得する
  7. 税務申告の際に所定の書類を添付して申告する


特に注意すべきは⑥の順番です。「認定を受けてから設備を取得する」という順序は絶対に守らなければなりません。認定前に設備を取得してしまった場合、どれだけ他の要件を満たしていても特例措置は一切適用されません。


痛いですね。設備を先に買ってしまうと、何十万円もの軽減が消えることになります。


また、2025年4月以降に新たな設備を取得する場合、過去に先端設備等導入計画の認定を受けていたとしても、新しい様式で改めて認定を受け直す必要があります。旧計画の認定があれば流用できると思い込んでいると大きな落とし穴になります。


さらに、変更申請時に賃上げ方針を新たに追加することはできない点にも注意が必要です。賃上げ方針は計画の「新規申請時」にのみ位置付けが可能です。あとから追加は不可能が原則です。


認定経営革新等支援機関としては、商工会議所・商工会・金融機関・税理士・中小企業診断士などが対応しています。複雑な申請書類の作成には、専門家への早めの相談が効果的です。


あがた税理士法人のコラムでは、改正前後の違いや留意点が実務目線で整理されています。申請の際の確認資料として活用できます。


あがたinsight「固定資産税の特例措置」

https://www.ag-tax.or.jp/insight/detail.html?id=2262


固定資産税の特例措置による軽減額シミュレーション:中小企業の設備投資に当てはめる

実際にどれほどの節税になるのか、数字で確認しましょう。


固定資産税の計算式は次の通りです。


  • 固定資産税額 = 課税標準額(1,000円未満切り捨て)× 税率(標準税率1.4%)
  • 評価額(前年中に取得した場合)= 取得価格 × (1 − 減価率 ÷ 2)


では、1,000万円の金属プレス機(機械装置・耐用年数10年)を令和7年5月に取得したケースでシミュレーションしてみます。


パターン 軽減期間 3年間の固定資産税合計 軽減額
特例なし(賃上げ表明なし) 約304,300円 0円
1.5%以上の賃上げ表明 3年間・1/2軽減 約152,000円 約152,300円
3%以上の賃上げ表明 5年間・1/4軽減 約104,000円(5年合計:約417,000円→約104,000円) 約313,000円


1,000万円の設備投資でも、賃上げ表明の内容次第で15万円超から31万円超の差が生まれます。「1,000万円の設備投資=賃上げ3%の表明なら、通常より約31万3,000円の節税」という感覚で捉えると理解しやすいでしょう。東京ドーム1つ分の広さの工場に入れた生産ラインが、賃上げ方針の一言で数十万円変わる、そういうインパクトです。


さらに1,500万円と500万円の2つの設備を組み合わせた場合、3%以上の賃上げ表明があれば5年間で約57万4,000円の軽減が見込まれます。これが条件です。


なお、リース契約で設備を導入する場合も、この特例は適用可能です。固定資産税はリース会社が納付しますが、その軽減分がリース料金に反映される形で、実質的に事業者側の負担が下がります。所有かリースかで諦める必要はありません。


軽減シミュレーションの詳細な計算例は以下のページが参考になります。取得資産の耐用年数別の試算も確認できます。


オフィスキシガミ「令和7年度の先端設備等導入計画に関する固定資産税の特例での軽減額の計算例」

https://office-kishi.com/property-tax-simulation/


固定資産税の特例措置で見落とされがちな「自治体差」と戦略的活用のポイント

多くの中小企業経営者が見落としているのが、この特例は自治体ごとに内容が異なるという事実です。


先端設備等導入計画の認定は市区町村が窓口ですが、各自治体が策定する「導入促進基本計画」の内容によって、対象設備・対象業種・対象地域が変わります。つまり、隣の市では対象になる設備が、自社のある市では対象外になるケースがあり得るのです。意外ですね。


たとえば、ある自治体では工具が対象設備に含まれていても、別の自治体では含まれない場合があります。計画を認定してもらった後に「この設備は当市の導入促進基本計画では対象外です」となってしまうと、取り返しがつきません。事前確認が条件です。


また、もう一点見逃しやすいのが「適用除外事業者」の規定です。申請する事業年度開始日前3年以内に終了した各事業年度の所得金額の合計が年15億円を超える法人は、中小企業向け租税特別措置の対象外となります。資本金が1億円以下でもこの条件に引っかかることがあるため、成長著しい中小企業ほど注意が必要です。


さらに、既存の認定計画がある場合でも、令和7年4月以降に新しい設備を追加取得するには新規認定申請が必要です。また、申請様式も旧制度から変更されているため、過去の申請資料をそのまま流用するのは危険です。旧様式での申請は受け付けてもらえない場合があります。


この制度を最大限に活用するための戦略ポイントをまとめると以下の通りです。


  • 📌 設備取得の前に必ず計画認定を取得する:認定後取得が絶対ルール
  • 📌 自治体の導入促進基本計画を事前に確認する:対象設備・業種・地域を把握
  • 📌 3%以上の賃上げ表明を検討する:5年間・1/4軽減は最大の節税効果
  • 📌 中小企業等経営強化税制と併用する:法人税の特別償却税額控除と組み合わせることで二重の節税が可能
  • 📌 認定経営革新等支援機関に早めに相談する:投資利益率5%の確認書取得に時間がかかる場合がある
  • 📌 2027年3月31日の適用期限から逆算して計画する:期限間近の申請は自治体の混雑で認定が遅れる可能性がある


つまり、制度の「知っているかどうか」だけでなく、「いつ・どの順番で手続きするか」が節税の成否を分けます。結論は「早期の計画策定と専門家連携」です。


固定資産税の特例措置と中小企業経営強化税制を組み合わせた活用方法について、令和7年度の最新情報を含む解説は以下が参考になります。


早川公認会計士事務所「令和7年度 税制改正のポイント 中小企業の設備投資に関する固定資産税の特例措置」

https://hayakawa-acc.jp/column/令和7年度-税制改正のポイント 中小企業の設備投資に関する設備/