固定資産税 計算方法と評価額の求め方

固定資産税 計算方法と評価額の求め方

固定資産税 計算方法

固定資産税の基本
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対象となる資産

土地・家屋・償却資産の3種類が課税対象となります

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基本計算式

固定資産税額 = 課税標準額 × 税率1.4%

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納付時期

毎年4月1日時点の所有者に課税され、通常6月に納税通知書が届きます

固定資産税 計算の基本的な仕組み

固定資産税は、土地や家屋などの不動産を所有している方に毎年課せられる地方税です。この税金は、所有する資産の価値に応じて計算されます。基本的な計算式は非常にシンプルで、以下のようになります。

 

固定資産税額 = 課税標準額 × 税率(1.4%)
この計算式は一見単純ですが、実際の計算プロセスはいくつかのステップに分かれています。まず、固定資産の評価額が決定され、その評価額をもとに課税標準額が算出されます。そして、その課税標準額に標準税率である1.4%を掛けることで、固定資産税額が決まります。

 

ただし、自治体によっては条例で異なる税率を定めている場合もあるため、お住まいの地域の税率を確認することが重要です。例えば、名古屋市では固定資産税の標準税率は1.4%、都市計画税は0.3%と定められています。

 

また、課税標準額の合計が土地は30万円未満、家屋は20万円未満の場合は、固定資産税は課税されないという免税点も設けられています。

 

固定資産税 計算における土地の評価額の求め方

土地の固定資産税を計算する際、まず評価額を正確に把握する必要があります。土地の評価額は、地価公示価格の約70%程度を目安として算出されることが一般的です。この評価額は3年ごとに見直される「評価替え」の対象となります。

 

土地の評価額が決まったら、次に課税標準額を求めます。ここで重要なのが、住宅用地に対する特例措置です。住宅用地は、その広さによって「小規模住宅用地」と「一般住宅用地」に分類されます。

 

  • 小規模住宅用地(200㎡以下の部分):評価額の1/6が課税標準額
  • 一般住宅用地(200㎡を超える部分):評価額の1/3が課税標準額

例えば、評価額が3,600万円の150㎡の土地の場合、小規模住宅用地の特例が適用され、課税標準額は600万円(3,600万円×1/6)となります。これに税率1.4%を掛けると、固定資産税額は8.4万円と計算できます。

 

なお、住宅用地でない更地などの場合は、これらの特例が適用されないため、評価額がそのまま課税標準額となり、結果として固定資産税額が高くなる傾向があります。

 

固定資産税 計算における家屋の評価額と経年減点

家屋の固定資産税を計算する際の評価額は、再建築価格を基準に算出されます。具体的には、同じ建物を現在の価格で新たに建築した場合にかかる費用(再建築価格)の約60%程度が評価額の目安となります。

 

家屋の評価額を求める計算式は以下のようになります。

 

家屋の評価額 = 評点1点あたりの価額 × 床面積 × 単位面積あたりの再建築費評点 × 経年減点補正率
この計算式は複雑で、自分で正確に計算するのは難しいため、簡易的な方法として購入価額の70%程度を評価額とする概算方法も用いられます。

 

家屋の評価額の特徴として、「経年減点補正率」による減額があります。これは建物の築年数が経過するにつれて価値が下がることを反映したものです。構造によって経年減点の割合は異なり、木造住宅は比較的早く評価額が下がる一方、鉄筋コンクリート造のマンションなどは評価額が下がりにくい傾向があります。

 

例えば、木造住宅の場合、築20年で評価額が当初の約50%程度まで下がることもありますが、鉄筋コンクリート造の場合は同じ20年でも70%程度までしか下がらないことがあります。

 

固定資産税 計算における減税措置と特例

固定資産税の負担を軽減するための様々な減税措置や特例があります。これらを理解し活用することで、納税額を適正に抑えることが可能です。

 

1. 新築住宅の減額措置
新築住宅には、一定期間固定資産税が減額される特例があります。一般的な住宅の場合、新築後3年間(マンションなどの中高層耐火建築物は5年間)、家屋の固定資産税が2分の1に減額されます。この特例を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。

 

  • 床面積が50㎡(一戸建て)または40㎡(マンション)以上280㎡以下
  • 新築された住宅であること
  • 人の居住の用に供するものであること

2. バリアフリー改修に関する減額措置
一定のバリアフリー改修工事を行った住宅について、翌年度分の固定資産税が3分の1減額される特例があります。対象となる改修工事には、手すりの設置、段差の解消、廊下の拡幅などが含まれます。

 

3. 省エネ改修に関する減額措置
一定の省エネ改修工事を行った住宅について、翌年度分の固定資産税が3分の1減額される特例があります。対象となる改修工事には、窓の断熱改修、外壁や屋根の断熱改修などが含まれます。

 

4. 耐震改修に関する減額措置
耐震改修工事を行った住宅について、翌年度分の固定資産税が2分の1減額される特例があります。1982年1月1日以前に建築された住宅が対象となります。

 

これらの減税措置は期間限定のものが多く、適用条件も細かく定められているため、最新の情報を確認することが重要です。また、これらの特例を受けるためには、工事完了後一定期間内に申告が必要な場合が多いので注意が必要です。

 

固定資産税 計算の具体的なシミュレーション例

固定資産税の計算方法をより具体的に理解するために、いくつかのシミュレーション例を見てみましょう。ここでは、新築マンション、新築一戸建て、中古住宅の3つのケースについて計算例を示します。

 

1. 新築マンションの場合
土地の評価額が2,000万円、家屋の評価額が1,000万円のマンションを例に考えます。

 

まず、土地が200平方メートル以下と仮定すると、小規模住宅用地の特例が適用され、土地の課税標準額は評価額の1/6となります。

 

  • 土地の課税標準額:2,000万円 × 1/6 = 約333万円

次に、新築マンションの場合、家屋の評価額に対して5年間2分の1の軽減制度が適用されます。

 

  • 家屋の課税標準額:1,000万円 × 1/2 = 500万円

これらの課税標準額に税率1.4%を掛けると、固定資産税額は以下のようになります。

 

  • 土地の固定資産税:333万円 × 1.4% = 約4.7万円
  • 家屋の固定資産税:500万円 × 1.4% = 7万円
  • 合計:約11.7万円

2. 新築一戸建ての場合
土地の評価額が3,000万円、家屋の評価額が2,000万円の一戸建てを例に考えます。

 

土地が150平方メートルと仮定すると、小規模住宅用地の特例が適用されます。

 

  • 土地の課税標準額:3,000万円 × 1/6 = 500万円

新築一戸建ての場合、家屋の評価額に対して3年間2分の1の軽減制度が適用されます。

 

  • 家屋の課税標準額:2,000万円 × 1/2 = 1,000万円

これらの課税標準額に税率1.4%を掛けると、固定資産税額は以下のようになります。

 

  • 土地の固定資産税:500万円 × 1.4% = 7万円
  • 家屋の固定資産税:1,000万円 × 1.4% = 14万円
  • 合計:21万円

3. 中古住宅の場合
中古住宅の場合、築年数に応じて家屋の評価額が経年減点補正率によって減額されています。例えば、築15年の木造住宅では、新築時の評価額から約40%程度減額されていることが一般的です。

 

土地の評価額が2,500万円、家屋の新築時評価額が1,800万円、築15年の木造住宅を例に考えます。

 

  • 土地の課税標準額(150平方メートルと仮定):2,500万円 × 1/6 = 約417万円
  • 家屋の評価額(経年減点後):1,800万円 × 0.6 = 1,080万円
  • 家屋の課税標準額:1,080万円

これらの課税標準額に税率1.4%を掛けると、固定資産税額は以下のようになります。

 

  • 土地の固定資産税:417万円 × 1.4% = 約5.8万円
  • 家屋の固定資産税:1,080万円 × 1.4% = 約15.1万円
  • 合計:約20.9万円

これらのシミュレーション例からわかるように、同じ価格帯の不動産でも、新築か中古か、マンションか一戸建てか、土地の広さなどによって固定資産税額は大きく異なります。また、新築時の減税措置の適用期間が終了すると、税額が上昇することにも注意が必要です。

 

固定資産税 計算における税理士のアドバイスポイント

税理士として顧客に固定資産税に関するアドバイスをする際、以下のポイントに注目することで、より価値のあるサービスを提供できます。

 

1. 評価額の妥当性の検証
固定資産税の評価額が適正かどうかを検証することは重要です。特に、周辺の類似物件と比較して明らかに高い評価額が設定されている場合は、「固定資産評価審査委員会」への審査申出を検討するよう助言しましょう。申出期間は、納税通知書を受け取った日から3か月以内と限られているため、迅速な対応が必要です。

 

2. 特例措置の適用漏れの確認
住宅用地の特例や新築住宅の減額措置など、様々な特例措置が適用されているかを確認します。特に、以下のような場合は特例措置の適用漏れがないか注意が必要です。

 

  • 住宅用地であるにもかかわらず、特例が適用されていない
  • 新築住宅であるにもかかわらず、減額措置が適用されていない
  • バリアフリー改修や省エネ改修を行ったにもかかわらず、減額措置の申請を忘れている

3. 事業用資産としての活用検討
個人所有の不動産を事業用資産として活用することで、固定資産税を経費として計上できる可能性があります。例えば、個人事業主や法人の役員が所有する不動産を事業や会社に賃貸することで、固定資産税を必要経費や損金に算入できる場合があります。

 

4. 相続対策としての固定資産税の考慮
不動産の相続を検討する際、固定資産税の負担も重要な考慮要素です。特に、収益性の低い不動産や使用予定のない不動産を相続すると、毎年の固定資産税が大きな負担となる可能性があります。相続前に売却や贈与などの対策を検討することも一案です。

 

5. 都市計画税との合算考慮
固定資産税と一緒に課税されることが多い都市計画税(税率は通常0.3%)も含めた総負担額を考慮することが重要です。都市計画税は市街化区域内の土地・家屋にのみ課税されるため、物件の立地によっては大きな差が生じます。

 

6. 減税措置の期限管理
新築住宅の減額措置など、期限付きの特例については、その終了時期を管理し、終了後の税額増加に備えた資金計画を立てるようアドバイスします。特に、マンションの場合は5年間の減額措置が終了する6年目に税額が大きく上昇することがあるため、注意が必要です。

 

これらのポイントを踏まえたアドバイスを提供することで、顧客の税負担の適正化と長期的な資産管理をサポートすることができます。また、固定資産税は毎年の負担となるため、継続的なフォローアップも重要です。

 

国税庁:固定資産税の特例措置に関する詳細情報