国際観光旅客税の計算と徴収方法の解説

国際観光旅客税の計算と徴収方法の解説

国際観光旅客税の計算と徴収方法

国際観光旅客税の基本情報
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税額

出国1回につき1,000円

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対象者

船舶または航空機で日本から出国するすべての人

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導入時期

2019年1月7日から施行

国際観光旅客税の計算方法と税率の詳細

国際観光旅客税は、2019年1月7日から導入された比較的新しい税金です。この税金は、日本から出国する際に課される「出国税」の一種で、その計算方法はシンプルです。

 

税率は一律で、出国1回につき1人1,000円となっています。年齢や国籍、渡航目的(観光・ビジネス・留学など)に関わらず、同一の税率が適用されます。例えば、家族4人で海外旅行に行く場合は、4,000円(1,000円×4人)が航空券代に上乗せされることになります。

 

この税金の計算においては、以下の点に注意が必要です。

  • 出国のたびに課税されるため、1回の旅行で複数国を訪問する場合でも、日本から出国する際の1回のみ課税
  • 海外旅行代金に含まれる諸費用(空港使用税、燃油サーチャージなど)とは別に計算
  • 航空券や船舶のチケット購入時に自動的に上乗せされるため、個別の計算手続きは不要

税理士としてクライアントに説明する際は、この税金が旅行代金の一部として徴収されるため、別途申告や納付手続きは不要である点を強調するとよいでしょう。

 

国際観光旅客税の徴収方法と納付の流れ

国際観光旅客税の徴収方法には、主に2つの方法があります。

 

  1. 特別徴収による方法

    国際旅客運送事業者(航空会社や船舶会社)が特別徴収義務者となり、航空券や船舶チケットの代金に上乗せする形で徴収します。この場合、旅客は航空券等の購入時に税金を支払うことになります。特別徴収義務者は、徴収した税金をまとめて国に納付する義務を負います。

     

  2. 旅客による直接納付

    プライベートジェットなど、特別徴収義務者を通じない出国の場合は、旅客自身が出国時に税関で直接納付します。

     

納付の流れについては、特別徴収義務者は以下の手順で処理を行います。

  • 旅客から徴収した国際観光旅客税を一時的に預かる
  • 翌月末日までに「国際観光旅客税の計算書」を作成
  • 計算書と共に徴収した税金を納付

税理士としては、国際旅客運送事業を営むクライアントに対して、特別徴収義務者としての責任と手続きについて適切にアドバイスする必要があります。特に、「国際観光旅客税の計算書」の作成方法や提出期限について正確な情報を提供することが重要です。

 

国際観光旅客税の非課税対象者と適用条件

国際観光旅客税はすべての出国者に課税されるわけではなく、一定の条件に該当する場合は非課税となります。税理士として、クライアントに正確な情報を提供するために、以下の非課税対象者を把握しておきましょう。

 

非課税となる対象者:

  • 船舶または航空機の乗員(パイロット、客室乗務員など)
  • 強制退去者等(入国拒否者、退去強制者など)
  • 公用船または公用機(政府専用機等)により出国する者
  • 乗継旅客(入国後24時間以内に出国する者)
  • 外国間を航行中に、天候その他の理由により日本に緊急着陸等した者
  • 日本から出国したが、天候その他の理由により日本に帰ってきた者
  • 2歳未満の者
  • 日本に派遣された外交官、領事官等の一定の者

特に注意すべき点として、乗継旅客の場合は24時間以内に出国する場合のみ非課税となります。24時間を超えて日本に滞在する場合は、通常通り課税対象となります。

 

また、2歳未満の子どもは非課税となるため、家族旅行の際の税額計算では、子どもの年齢を確認することが重要です。例えば、両親と3歳と1歳の子どもの4人家族が旅行する場合、課税対象は3人(両親と3歳の子ども)となり、合計3,000円の国際観光旅客税が課されます。

 

国際観光旅客税の計算書作成と提出方法

特別徴収義務者である航空会社や船舶会社は、徴収した国際観光旅客税を適切に計算し、国に納付するために「国際観光旅客税の計算書」を作成・提出する必要があります。税理士として、こうした事業者をクライアントに持つ場合、以下の手続きについて適切にアドバイスしましょう。

 

計算書作成のポイント:

  1. 記載事項
    • 出入国港コード
    • 出国年月日
    • 総旅客数
    • 非課税対象者数(乗員、2歳未満の者等)
    • 免税対象者数(外交官等)
    • その他課税しない人員
    • 課税対象人員(総旅客数から非課税・免税対象者を差し引いた人数)
  2. 提出期限と納付
    • 徴収した月の翌月末日までに計算書を提出
    • 同時に徴収した税金を納付
  3. 計算書の様式
    • 国税庁指定の様式を使用
    • 電子申告(e-Tax)での提出も可能

計算書作成時の注意点として、出入国港ごとに出国者数を正確に記録し、非課税対象者を適切に区分することが重要です。特に、2歳未満の乗客や24時間以内の乗継旅客などの非課税対象者の把握と記録が必要となります。

 

税理士としては、クライアントの業務効率化のために、国際観光旅客税の計算と納付のプロセスを自社のシステムに組み込むことや、電子申告の活用を提案するとよいでしょう。

 

国際観光旅客税の計算における経過措置と特例

国際観光旅客税が導入された際、急な変更による混乱を避けるため、いくつかの経過措置が設けられました。税理士として、これらの特例についても理解しておくことが重要です。

 

主な経過措置と特例:

  1. 導入前契約の特例
    • 2019年1月7日より前に締結された運送契約については、国際観光旅客税が課税されない経過措置が適用されました。
    • この経過措置は計算書の「⑤その他課税しない人員」欄に記載する必要がありました。
  2. 特定の国際会議等参加者への配慮
    • 大規模な国際会議や国際的なスポーツ大会の参加者に対しては、一定の条件下で課税を免除する特例措置が検討されることがあります。
    • こうした特例は、計算書作成時に適切に反映する必要があります。
  3. 災害時の特例
    • 大規模災害発生時など、特別な状況下での出国については、柔軟な対応が求められる場合があります。
    • 天候不良などにより出発した空港に引き返した場合は非課税となります。

これらの経過措置や特例は、導入初期に特に重要でしたが、現在(2025年)においては多くの経過措置が既に終了しています。しかし、税理士としては、今後新たな特例措置が導入される可能性も視野に入れ、最新の情報を常に把握しておくことが大切です。

 

特に国際的なイベント開催時や災害発生時には、臨時の特例措置が設けられる可能性があるため、関連する通達や情報に注意を払うことをお勧めします。

 

国際観光旅客税の計算における税収使途と将来展望

国際観光旅客税の税収は、観光先進国実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図るための財源として活用されています。税理士として、この税金の社会的意義や将来展望についても理解しておくことで、クライアントへのより包括的なアドバイスが可能になります。

 

税収の使途:
国際観光旅客税の税収は、「外国人観光旅客の来訪の促進等による国際観光の振興に関する法律」において、以下の3つの分野に充当することが明文化されています。

 

  1. ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備
    • 顔認証システムなどを活用した出入国手続きの高度化
    • 多言語対応の強化
    • 公共交通機関等の利便性向上
  2. 我が国の多様な魅力に関する情報の入手の容易化
    • 観光情報の多言語化
    • 日本の魅力を発信するプロモーション活動
    • デジタル技術を活用した情報提供システムの構築
  3. 観光資源の整備等による地域での体験滞在の満足度向上
    • 文化財や国立公園等の観光資源の保全・活用
    • 新たな観光コンテンツの開発
    • 地域の観光インフラ整備

将来展望:
日本政府は2030年までに訪日外国人観光客数6,000万人を目標としています。2024年には過去最高の3,600万人を突破し、インバウンド観光は日本経済の重要な柱となっています。

 

国際観光旅客税の税収は、2019年の導入時には年間約400億円が見込まれていましたが、訪日外国人観光客の増加に伴い、今後さらに増加することが予想されます。これにより、より多くの観光関連施策が実施可能となり、日本の観光産業の発展に寄与することが期待されています。

 

税理士としては、この税金が単なる財源確保の手段ではなく、日本の観光産業の発展と地域経済の活性化に貢献する重要な施策であることをクライアントに伝えることも大切です。特に観光関連事業を営むクライアントにとっては、この税収がどのように活用され、自社のビジネスにどう影響するかという観点からのアドバイスも有益でしょう。

 

また、少子高齢化社会の日本において、インバウンド観光の促進は国内消費の拡大と税収確保の観点からも重要です。国際観光旅客税はその一翼を担う税制として、今後も継続的に重要な役割を果たすことが予想されます。

 

国際観光旅客税の計算における税理士の役割と実務上の注意点

税理士として国際観光旅客税に関わる場合、主に特別徴収義務者である航空会社や船舶会社のクライアントに対するアドバイスが中心となります。実務上の役割と注意点について解説します。

 

税理士の主な役割:

  1. 計算書作成のサポート
    • 「国際観光旅客税の計算書」の正確な作成方法の指導
    • 非課税対象者の適切な区分と記録の確認
    • 計算書の提出期限管理
  2. 納税管理のアドバイス
    • 徴収した税金の適切な管理方法の提案
    • 納付期限の遵守と延滞税の回避
    • 電子申告(e-Tax)の活用支援
  3. システム構築のサポート
    • 国際観光旅客税の徴収・計算・納付を効率化するシステム導入のアドバイス
    • 既存の会計システムとの連携方法の提案

実務上の注意点:

  1. 正確な課税対象者の把握
    • 非課税対象者(2歳未満の乗客、24時間以内の乗継旅客など)を正確に把握するための仕組み作り
    • 出国港ごとの旅客データの適切な管理
  2. 特別徴収義務者の責任
    • 特別徴収義務者には、正確な税額の徴収と納付の法的責任があることを理解
    • 徴収漏れや納付遅延があった場合の対応策の準備
  3. 国際的な税制との調整
    • 他国の類似税制(出国税など)との二重課税問題への対応
    • 国際的な観光税制の動向把握
  4. 記録保持の重要性
    • 徴収した税金の記録を適切に保持(通常7年間)
    • 税務調査への備え

税理士としては、特に航空会社や旅行代理店などのクライアントに対して、国際観光旅客税の正確な徴収と納付のプロセスを確立するためのアドバイスが求められます。また、この税金が旅行代金に与える影響や、消費者への適切な説明方法についてもサポートすることが重要です。

 

さらに、国際観光旅客税は比較的新しい税制であるため、今後の法改正や税率変更の可能性にも注意を払い、最新情報をクライアントに提供することも税理士の重要な役割といえるでしょう。

 

国際的な観光需要の変化や、日本の観光政策の方向性によっては、将来的に税率や課税対象の見直しが行われる可能性もあります。そうした動向を先取りして、クライアントのビジネス戦略に役立つ情報提供ができる税理士は、高い付加価値を提供できるでしょう。