

仕訳を丸暗記しても、第3問で30点以上落として不合格になる人が続出しています。
決算整理仕訳(けっさんせいりしわけ)とは、会計期間が終了する決算日に、帳簿をより正確な状態に整えるために行う「修正仕訳」のことです。日々の取引を記録する通常の仕訳とは別に、期末だけに行う特別な処理として位置づけられています。
なぜこの作業が必要なのでしょうか?
その答えは「発生主義」という会計の基本原則にあります。発生主義とは、現金の動きに関わらず、経済的な価値が発生した時点で収益や費用を認識する考え方です。たとえば、1年分の保険料を一括で前払いした場合、支払い時点ではすべてを「費用」として記録していますが、次の期にかかる分まで当期の費用にしてしまうのは正確ではありません。
この「期間のズレ」を正しく調整するのが、決算整理仕訳の核心です。
実務上では、決算整理を経て初めて「貸借対照表」と「損益計算書」が完成します。つまり、決算整理仕訳は財務諸表を作成するための最終ステップといえます。また、簿記3級の試験では第3問(配点35点)でこの知識が集中的に問われます。合格ラインの70点を取るには、第3問で25点前後を確保することが目安になります。決算整理仕訳を理解しているかどうかが、合格率に直結するわけです。
※決算整理仕訳の全体像を図解で確認できる、初心者向けの解説記事です。
簿記3級の試験で出題される決算整理仕訳には、大きく8つのパターンがあります。これらを一度整理しておくことで、学習の全体像がつかめます。
| # | 項目 | 一言概要 |
|---|------|----------|
| ① | 売上原価の算定 | 「売れた商品の仕入原価」だけを費用に計上する |
| ② | 貸倒引当金の設定 | 売掛金の回収不能リスクを見積もり費用計上する |
| ③ | 減価償却費の計上 | 固定資産の価値の減少分を分割して費用にする |
| ④ | 費用の繰延(前払費用) | 支払済みの費用のうち次期分を資産に振り替える |
| ⑤ | 収益の繰延(前受収益) | 受取済みの収益のうち次期分を負債に振り替える |
| ⑥ | 費用の見越(未払費用) | 当期分の費用で未払いのものを計上する |
| ⑦ | 収益の見越(未収収益) | 当期分の収益で未受取のものを計上する |
| ⑧ | その他(貯蔵品・現金過不足・法人税等) | 消耗品未使用分の振替や税金の計上など |
これが基本です。試験では10個程度の決算整理事項が与えられ、精算表や財務諸表を完成させる問題が出ます。つまり、上記パターンをすべて使いこなす総合力が試されます。
また、意外に見落とされがちなのが「未処理事項」という概念です。本来は期中に仕訳すべきだった取引が漏れていた場合、決算時にその仕訳を補完する必要があります。問題文をよく読み、「仕訳漏れがないか」を確認する姿勢が重要です。
【簿記入門】決算整理仕訳とは?計算方法と仕訳例、ポイントも紹介(CPAラーニング)
※各決算整理仕訳の具体的な計算方法と仕訳例が網羅されています。
8パターンのなかで特に重要な「売上原価の算定」と「減価償却」を、具体例で確認しましょう。
📦 売上原価の算定(しーくり・くりしー)
売上原価とは、当期に売れた商品の仕入原価のことです。計算式は次のとおりです。
> 売上原価 = 期首商品棚卸高 + 当期商品仕入高 − 期末商品棚卸高
この計算を「仕訳」として処理するのが、有名な「しーくり・くりしー」です。
- しーくり(仕入/繰越商品):期首在庫を仕入勘定に加える
`(借方)仕入 100,000 / (貸方)繰越商品 100,000`
- くりしー(繰越商品/仕入):期末在庫を繰越商品(資産)に振り戻す
`(借方)繰越商品 150,000 / (貸方)仕入 150,000`
つまり「仕入」勘定を調整することで、結果的に売上原価が算出される仕組みです。
🏢 減価償却(定額法・間接法)
取得原価300,000円、耐用年数5年、残存価額ゼロの備品を例にします。
> 年間減価償却費 = (300,000 − 0)÷ 5年 = 60,000円
仕訳は次のとおりです。
`(借方)減価償却費 60,000 / (貸方)減価償却累計額 60,000`
ここで大切なのが「なぜ直接備品を減らさないのか」という点です。間接法では、備品の取得原価をそのまま残しつつ、減価償却累計額で差し引き表示することで、「いくらで買ったか」「どれだけ価値が減ったか」の両方を貸借対照表から読み取れるようになります。これが間接法のメリットです。
簿記3級 決算整理仕訳の8パターンをわかりやすく解説(会計支援ブログ)
※公認会計士が監修した、全8パターンの仕訳例と図解が充実した解説記事です。
受験生が最も苦手とするのが「経過勘定」です。前払費用・未払費用・前受収益・未収収益の4つを混同するケースが非常に多く見られます。
まず「なぜ4種類も存在するのか」を理解しましょう。考え方は「お金が先か、後か」と「費用か、収益か」の2軸で整理できます。
| | 費用(支払い側) | 収益(受取り側) |
|---|---|---|
| 繰延(お金が先) | 前払費用(資産) | 前受収益(負債) |
| 見越(お金が後) | 未払費用(負債) | 未収収益(資産) |
これが原則です。語呂合わせ「くまのみみ」で整理する方法も効果的です。
- く(繰延)→ ま(前払費用・前受収益の「ま」)
- み・み(見越)→ 未払費用・未収収益
具体的な仕訳例:前払費用
1月1日に1年分の保険料120,000円を支払い、決算日が3月31日(会計期間は1月〜3月の3か月)の場合を考えます。
当期に属する費用は3か月分:120,000 × 3/12 = 30,000円。
翌期以降の9か月分:120,000 × 9/12 = 90,000円を前払費用(資産)に振り替えます。
`(借方)前払費用 90,000 / (貸方)支払保険料 90,000`
具体的な仕訳例:未払費用
給料の支払いが翌月10日払いで、3月31日時点で3月分30,000円が未払いの場合。
`(借方)給料 30,000 / (貸方)未払費用 30,000`
月割計算が必要な問題では、「何か月分か」を丁寧に数えることが鍵です。時間軸を図に書いて確認する習慣をつけると、計算ミスが大幅に減ります。
また、経過勘定では「再振替仕訳」という概念も登場します。これは翌期首に、決算整理仕訳を逆向きに戻す処理のことです。たとえば前払費用として資産計上した金額は、翌期の期首に再び支払保険料(費用)に戻します。この一連の流れを理解しておくことで、試験の応用問題にも対応できます。
見越・繰延を完全マスター(プロフェッショナル簿記)
※4つの経過勘定を体系的に整理し、図解で解説している参考ページです。
貸倒引当金は、「なんとなく難しそう」と後回しにされやすい論点ですが、仕組みを理解すれば得点源になります。
貸倒引当金とは何か
売掛金などの債権は、取引先が倒産すれば回収できなくなるリスクがあります。この将来の損失を、売上が発生した「同じ期」に見越しで費用計上する処理が貸倒引当金の設定です。これは「費用収益対応の原則」という会計の考え方に基づいています。
貸倒引当金が原則です。当期の売上から生まれた債権に関連する損失は、当期の費用として計上するのが正しい会計処理です。
仕訳の手順(差額補充法)
売掛金の期末残高500,000円、貸倒実績率2%、前期からの引当金残高3,000円のケースです。
1. 当期に必要な引当金:500,000 × 2% = 10,000円
2. 差額の計算:10,000 − 3,000(残高)= 7,000円(補充額)
3. 仕訳:`(借方)貸倒引当金繰入 7,000 / (貸方)貸倒引当金 7,000`
ここで注意したいポイントが2つあります。1つは、貸倒引当金は貸借対照表の「資産の部」にマイナス表示されるという点。負債ではないにもかかわらず貸方に記入するため、混乱しやすいです。2つ目は、前期残高が「当期に必要な額」を上回る場合は「戻入れ処理」が必要になるという点で、借方と貸方が逆になります。
簿記3級の合格率と第3問の関係
日商簿記3級のネット試験(CBT形式)での合格率は、2024年度が約38.6%、2025年度(4月〜12月)が約40.8%となっています。統一試験でも回によって28〜42%程度と幅があり、決して易しい試験ではありません。
第3問の配点35点のうち、決算整理仕訳の理解で左右される問題は全体の8〜9割を占めます。逆にいえば、この論点を集中的に習得することで第3問だけで25〜30点を確保できる可能性が高くなります。合格に必要な70点を確実に狙うためにも、決算整理仕訳の習熟は最優先事項です。
簿記3級受験者データ(日本商工会議所)
※最新の合格率や受験者数など、公式の統計データを確認できます。
簿記3級の試験合格だけを目的にするなら、仕訳パターンの習得で十分です。しかし金融に興味がある方には、決算整理仕訳の「本当の価値」を知ってほしいところです。
財務諸表を読む力に直結する
決算整理仕訳を理解すると、上場企業の決算書を読む際の「精度」が大きく変わります。たとえば、減価償却費の計上方法は企業によって異なります。定額法と定率法では同じ資産でも毎年の費用額が異なり、特に製造業や設備投資の多い企業では利益への影響が数億円単位になることも珍しくありません。
意外ですね。でも、これは投資判断にも関係します。
また、貸倒引当金の「引当率」は企業の保守性を示す指標としても使えます。売掛金に対する貸倒引当金の比率が低すぎる企業は、将来の損失計上リスクを抱えているとも読めます。金融機関のアナリストや投資家が決算書を精査する際も、この視点は重要な判断材料になっています。
経過勘定と企業の「利益調整」リスク
前払費用・未払費用といった経過勘定の処理は、企業が利益を意図的に調整しやすい箇所でもあります。たとえば、費用の計上タイミングをずらすことで当期の利益を高く見せることが技術的には可能です。もちろん、適正な会計処理の範囲内での話ですが、「なぜこの数字になるのか」を読み解く力は、財務諸表の分析眼を鍛えます。
こうした背景から、日本CFO協会や証券アナリスト資格(CMA)の学習においても、簿記3級レベルの決算整理仕訳の理解は前提知識として位置づけられています。
学習ツールを活用して効率を高める
決算整理仕訳の習得に向けて、無料で使えるオンライン学習サービスを活用するのも有効です。CPAラーニングでは簿記3級の講義動画を無料公開しており、決算整理仕訳の全8パターンを動画で確認できます。また、パブロフ簿記のアプリは仕訳問題を繰り返し解く練習に最適で、スキマ時間を使った反復学習に向いています。
学習の流れとしては、まず「①概念を理解する → ②仕訳を書いてみる → ③精算表問題で総合演習する」の順序が効果的です。特に精算表問題は、複数の決算整理を一度に処理する練習になるため、試験直前には欠かせない演習形式です。
【動画付き】日商簿記検定3級の大問ごとの対策方法(CPAラーニング)
※第3問の決算対策を含む、大問別の学習方法を動画つきで解説しています。