確定拠出年金と退職金どちらが得?選択前に知るべき違いとメリット

確定拠出年金と退職金どちらが得?選択前に知るべき違いとメリット

確定拠出年金と退職金どちらが得

確定拠出年金vs退職金 比較ポイント
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税制優遇の違い

確定拠出年金は拠出時・運用時・受給時の三段階で税制優遇を受けられる

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転職時の取り扱い

確定拠出年金は資産をそのまま転職先に移換可能(ポータビリティ)

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運用による資産増加

確定拠出年金は運用次第で退職金より多くの資産形成が可能

確定拠出年金と退職金の基本的な違い

確定拠出年金と従来の退職金制度には、資金の準備方法から受け取り方まで大きな違いがあります。

 

退職金制度の特徴

  • 会社が資金準備から給付まですべて管理
  • 社内規定に基づいて支給額が決定
  • 勤続年数をベースに金額が算出される
  • 会社の倒産リスクがある(社内積立の場合)

確定拠出年金制度の特徴

  • 企業型と個人型(iDeCo)の2種類が存在
  • 運用方針は加入者が自分で決定
  • 拠出額と運用実績によって将来の受給額が変動
  • 社外積立のため会社の倒産リスクから保護される

特に注目すべきは、確定拠出年金が企業の福利厚生として任意で整備される制度である点です。そのため、両方の制度を用意している会社もあれば、どちらも無い会社も存在します。

 

企業型確定拠出年金では、基本的に掛金は全額事業主が拠出しますが、従業員が追加で拠出できる「マッチング拠出」という仕組みもあります。これにより、退職金以上の資産形成が可能になるケースも多くあります。

 

確定拠出年金のメリットと税制優遇

確定拠出年金の最大の魅力は三段階の税制優遇措置にあります。

 

拠出時の優遇
確定拠出年金の掛金は非課税扱いとなり、給与として課税されません。例えば、毎月3万円を拠出する場合、年収400万円の方なら所得税・住民税・社会保険料合わせて約30%の税負担軽減効果があります。

 

運用時の優遇

  • 運用益は全額非課税
  • 一般的な投資では利益の20%が課税対象となるが、確定拠出年金では0%
  • 複利効果を最大限活用可能

受給時の優遇
受け取り方法によって異なる控除が適用されます。

受け取り方法 適用される控除 特徴
一時金 退職所得控除 勤続年数が長いほど控除額が大きい
年金 公的年金等控除 分割受給で計画的な資金活用が可能
併用 両方の控除 税務上最も有利になる場合がある

退職所得控除の計算式は、勤続年数20年以下の場合「40万円×勤続年数」、20年超の場合「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」となります。勤続年数40年なら控除額は2,200万円にもなり、多くの場合税金がかからないレベルです。

 

退職金制度の特徴と受け取り方法

従来の退職金制度には安定性という大きなメリットがあります。

 

退職金制度の安定性

  • 社内規定であらかじめ支給額が決められている
  • 運用リスクは会社が負担
  • 定年以外の退職でも受け取り可能
  • 受給時に退職所得控除の適用あり

しかし、退職金制度にはいくつかの課題も存在します。
転職時のデメリット

  • 勤続年数が短いと支給額が大幅に減額される
  • 資産の持ち運び(ポータビリティ)ができない
  • 早期転職では退職金がゼロになる場合もある

会社の財務状況による影響

  • 業績悪化により退職金が減額される可能性
  • 社内積立の場合、会社倒産時に保全されないリスク
  • 退職金制度の廃止や縮小のリスク

近年、従来の退職金制度を見直し、確定拠出年金に移行する企業が増加している背景には、景気や金利の変化により、従来の退職金制度だけでは十分な退職金が確保できなくなってきた事情があります。

 

転職時のポータビリティと運用リスク

確定拠出年金の**ポータビリティ(資産の持ち運び)**は、現代の転職が当たり前の時代において大きなアドバンテージとなります。

 

ポータビリティの具体的メリット

  • 転職先に資産をそのまま移換できる
  • 積み立てた資産が無駄にならない
  • 複数回の転職でも資産が継続して増加
  • 個人型(iDeCo)への移換も可能

一方で、確定拠出年金には運用に関するリスクも存在します。
🔴 運用リスク

  • 運用実績によって将来の受給額が変動
  • 元本割れの可能性
  • 投資知識が必要
  • 定期的な運用見直しが必要

⚠️ 流動性のリスク

  • 原則60歳まで引き出し不可
  • 急な資金需要に対応できない
  • 障害状態や死亡時以外は中途解約不可

ただし、これらのリスクは適切な分散投資と長期運用により軽減可能です。投資の原則である「リスクを分散しながら長期間かけてコツコツ積み立てる」ことで、元本割れのリスクを大幅に軽減できます。

 

年収・勤続年数別の最適な選択戦略

確定拠出年金と退職金のどちらが得かは、個人の状況によって大きく異なります。以下の判断基準を参考にしてください。

 

確定拠出年金が有利なケース

  • 年収が高く税負担軽減効果が大きい(年収500万円以上)
  • 転職の可能性がある
  • 投資に興味があり運用に積極的
  • 勤続年数が長期間見込める(20年以上)
  • 現在の年齢が若い(30-40代)

退職金制度が有利なケース

  • 投資リスクを取りたくない
  • 運用の知識や時間がない
  • 途中で資金が必要になる可能性が高い
  • 会社の財務状況が安定している
  • 定年まで同じ会社で働く予定

実際のシミュレーション例
30歳から60歳まで毎月3万円を積み立てる場合。
退職金前払い制度では、税金・社会保険料を差し引かれ手取り約27,000円となり、30年間で約108万円の損失となります。

 

一方、確定拠出年金では3万円全額が非課税で運用に回り、年利3%で運用できれば約1,750万円の資産形成が可能です。

 

選択時の注意点
企業によっては選択制確定拠出年金を導入しており、確定拠出年金か退職金前払いかを選べるケースもあります。一般的には確定拠出年金の方がお得になりますが、老齢厚生年金などの社会保障の受給額が減る可能性もあるため、総合的な判断が必要です。

 

また、確定拠出年金を選んだ場合でも、後から退職金前払い制度に変更できる企業もあるため、事前に自社の制度をよく確認することが重要です。

 

最終的には、自分のライフプランや投資に対する考え方、リスク許容度を総合的に判断して選択することが大切です。不安な場合は、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをおすすめします。