

18歳になったジュニアNISAの資産を放置すると、翌年1月に課税口座へ強制移管され、その後の値上がり分に約20%の税金が取られます。
「廃止されたから終わり」と思っていたとしたら、それは大きな誤解です。ジュニアNISAは2023年12月末で新規投資こそ終了しましたが、すでに口座内にある資産は現在も静かに動き続けています。
廃止に伴って導入されたのが「継続管理勘定」という仕組みです。ジュニアNISAでは元々、投資した年から5年間が非課税期間とされていました。その5年が経過すると、資産は自動的にこの継続管理勘定へと移管され、子どもが18歳になる年の12月31日まで非課税での保有が続きます。移管の手続きは一切不要で、保護者が何もしなくても証券会社が自動で対応してくれます。
移管できる金額に上限はありません。これは見落としがちなポイントです。
たとえば2023年に80万円で投資した投資信託が5年後に130万円に値上がりしていたとしても、130万円全額を継続管理勘定に移すことができます。時価が投資枠の80万円を超えていても問題ありません。継続管理勘定に入った資産はその後も引き続き非課税で運用され、複利の恩恵を享受できます。
もう一点、廃止後に変わった重要なルールがあります。それが払い出し制限の撤廃です。
2023年以前は、18歳前にジュニアNISAから資金を引き出すと、過去にさかのぼってすべての運用益に課税されるという厳しいペナルティがありました。しかし2024年以降は、このペナルティが完全に廃止されています。年齢や理由を問わず、いつでも非課税で全額を引き出せるようになりました。つまり非課税のまま教育費に充てることが可能です。
「全額払い出し」が条件です。一部だけを引き出すことはできません。
たとえば口座に150万円あって「50万円だけ中学受験の塾代に使いたい」という場合、それは認められません。払い出しを行う際は口座内の全資産を売却・解約し、口座を閉鎖することになります。この点はとても重要なので、引き出しを検討する際は慎重に判断する必要があります。一度引き出して口座を閉じると、その非課税の器は二度と使えなくなるためです。
現在(2026年2月時点)、ジュニアNISA口座を持つ家庭がまず確認すべきことは3点です。①継続管理勘定へ正しく移管されているか残高を確認する、②子どもや親権者の住所・氏名などの情報が最新の状態になっているか確認する、③子どもの年齢から逆算して「18歳の年末」を把握しておく、この3点が基本です。
ここが最も注意が必要なポイントです。多くの保護者が「18歳まで非課税だから安心」と思いがちですが、正確には「18歳になる年の12月31日まで」が期限であり、それを1日でも過ぎると状況が大きく変わります。
子どもが18歳になった翌年1月1日、ジュニアNISA(継続管理勘定)にある資産は自動的に「課税口座(特定口座または一般口座)」へ移管されます。この移管時の取得価額は、移管時点の時価が基準となります。課税口座に移った後で値上がりした分については、売却時に約20.315%の税金がかかります。
ここで注意が必要なのは、新NISAへの自動移行はされないという点です。
これを知らずに「18歳になったら自動的に新NISAへ引き継がれるだろう」と思い込んでいると、気づかないうちに課税口座で保有を続けてしまうことになります。非課税のメリットを継続したいなら、18歳になる年の年末(12月31日)までに一度売却し、改めて本人名義の新NISA口座で買い直す必要があります。この「売却→新NISAで買い直し」という作業は、自動では行われません。
具体的な数字で考えてみましょう。たとえば0歳のときに80万円を投資し、年平均5%で18年間運用したとすると、18歳時点での資産は約192万円になります。この192万円を新NISA口座で買い直せば、その後の運用益も非課税で積み上げることができます。一方、手続きを怠って課税口座に移管されたままにしてしまうと、以降の値上がり分(仮に50万円なら約10万円)には税金がかかります。
手順としては、まず18歳の年の年末(12月の売却受渡日に間に合う時期)を確認し、ジュニアNISA口座内の資産を売却します。次に、子ども本人が新NISAの口座開設を行います。18歳になった年から本人名義で新NISA口座を開設できるため、売却して得た現金を原資に新NISAで同じ銘柄や好みの投資信託を買い直します。
タイミングを逃さないことが原則です。
年末は証券会社の事務処理も込み合うため、12月の早い時期から手続きを進めることを強くすすめます。具体的には12月中旬ごろまでに売却注文を入れておくのが安全です。SBI証券や楽天証券などの主要ネット証券では、各社のウェブサイトに年内取引の締め切りスケジュールが掲載されるため、それを事前に確認しておく習慣をつけておくとよいでしょう。
楽天証券:ジュニアNISAに残高があるお客様(2024年以降の取扱いと手順)
ジュニアNISAの資産をどう扱うかは、今の子どもの年齢によって最適解が大きく変わります。ここでは年齢帯ごとに「やるべきこと」を整理します。
🟢 現在0〜5歳の子ども:「放置」が最強戦略
まだ18歳まで13年以上あります。このケースでは、何もしないことが最大の戦略です。継続管理勘定に移管された後、特別な手続きをせずそのまま運用を続けましょう。
80万円を0歳のときに投資し、年率5%で18年間運用した場合、18歳時点で約192万円になる計算です。これは東京から大阪までの新幹線代約3万円換算で、64回分に相当する金額です。運用益の約112万円に通常なら約23万円の税金がかかりますが、非課税のため全額を手元に残せます。ただし「いつでも引き出せるから」という安心感で気軽に全額解約してしまうのは避けるべきです。一度解約すると二度と非課税の器は戻ってきません。
🟡 現在6〜12歳の子ども:教育費の使いどころを計画する
このゾーンは「いつ、何に使うか」を具体的にシミュレーションし始めるタイミングです。中学受験の費用が必要なら、ジュニアNISA全額解約(非課税)で対応するという選択も有効です。ただし全額解約になる点を念頭に置き、「本当にすべての資産を今使う必要があるか」を冷静に判断してください。
使う予定がないなら、そのまま継続管理勘定で保有を続けるのが原則です。
🔴 現在13〜17歳の子ども:18歳の年末スケジュールを今すぐ確認
最も行動が求められる層です。子どもが18歳になる年の12月31日が「非課税の期限」です。その日が何年の何月何日なのかをカレンダーに書き込み、逆算して売却→新NISA買い直しの計画を立ててください。
市場が暴落しているタイミングで期限が来てしまうリスクもあります。たとえば高校2年生(16歳)の今から少しずつ準備を始め、18歳になる1〜2年前から教育費として使う分を少しずつ売却・現金化しておく「逆算売却」の手法が有効です。一度に全額売却しようとすると、暴落タイミングと重なったときに損失が出る可能性があるためです。
どの年齢帯であれ、ひとつ共通して重要なことがあります。それは住所変更や氏名変更の漏れを防ぐことです。引っ越し後に子どもの口座情報を更新し忘れるケースが増えており、18歳時の解約手続きがスムーズに進まない原因になっています。年に一度はログインして情報を確認する習慣を持つことを強くおすすめします。
ジュニアNISAが廃止されて以来、0歳〜17歳を対象とした子ども専用の非課税投資制度が存在しない「空白の期間」が続いていました。しかし、その空白を埋める制度がついに正式決定しています。
2025年12月19日に発表された「令和8年度税制改正大綱」で、2027年1月から「こどもNISA(こども支援NISA)」が開始されることが正式に決定しました。以下が現時点(2026年2月)で確認されている主なスペックです。
| 項目 | こどもNISA(2027年1月開始予定) | ジュニアNISA(廃止) |
|---|---|---|
| 対象年齢 | 0〜17歳 | 0〜17歳 |
| 年間投資上限 | 60万円 | 80万円 |
| 生涯非課税枠 | 600万円 | 400万円(実質) |
| 非課税期間 | 無期限 | 最長5年 |
| 払い出し制限 | 12歳以降、本人の同意で引き出し可 | 原則18歳まで不可(廃止後は撤廃) |
| 18歳到達後 | 新NISAへ自動移行 | 課税口座へ自動移管(手動で買い直し必要) |
注目すべきはジュニアNISAの最大の弱点だった「18歳まで引き出せない」という制限が大幅に緩和されていることです。こどもNISAでは12歳以降、子ども本人の同意があれば引き出しができるようになります。これは実際の教育費の支出タイミング(中学進学、高校進学など)に合わせた柔軟な設計です。
また、18歳到達後は資産が自動的に成人向け新NISA(つみたて投資枠)に移行します。これはジュニアNISAにはなかった仕組みです。廃止されたジュニアNISAでは18歳時に手動で売却・買い直しを行わなければ課税口座に流れてしまいましたが、こどもNISAではその手間がゼロになります。
ただし、年間投資上限がジュニアNISAの80万円から60万円へ引き下げられている点は把握しておきましょう。月5万円の積み立てに最適化された金額であり、政府が教育費の「一般家庭向け」に設計し直した結果です。格差固定化への懸念から上限を絞った背景があります。
2027年の開始に向けて、今から準備できることが2つあります。①2026年中に各証券会社から詳細な口座開設情報が発表される予定なので、いつも利用している証券会社の公式サイトをブックマークしておくこと。②まずは親の新NISAで投資経験を積んでおくことで、2027年にスムーズに始められる状態を整えておくことです。
野村総研:2026年度税制改正でNISAつみたて枠を18歳未満にも解禁(こどもNISA概要解説)
2024年から2026年の現在にかけては、子ども名義で新たに非課税投資を始める制度が存在しません。しかし、この空白期間を「待ち」で過ごすのはもったいないことです。今すぐ動ける代替策があります。
第一の選択肢:親の新NISAを教育資金の器に使う
これが最も優先すべきアクションです。親の新NISAはいつでも引き出し可能で、贈与税のリスクもゼロです。1人あたり年間360万円・生涯1,800万円という枠がありますが、夫婦2人なら合計3,600万円の非課税枠があります。子ども1人の教育費(幼稚園〜大学、すべて公立の場合で約800万円)であれば、親の枠だけで十分カバーできる家庭は多いはずです。
口座内で「教育費用」と「老後用」の銘柄をあえて分けて管理するのがおすすめです。たとえば「老後用は全世界株式インデックス、教育用はS&P500連動型」のように目的別に銘柄を決めておくと、管理と引き出しのタイミングが明確になります。これは使えそうです。
第二の選択肢:子ども名義の特定口座(課税)で仮運用する
親の新NISA枠が既に埋まっている場合や、将来のこどもNISA移行を視野に入れて子ども名義で積み立てたい場合は、子ども名義の特定口座(源泉徴収あり)を開設して運用する方法があります。2027年にこどもNISAが始まったら、特定口座の資産を一度売却してこどもNISAへ移行するという計画です。
利益には約20%の税金がかかりますが、現金のまま放置するよりも複利の効果を活かせます。デメリットも正直にお伝えすると、急に大きな利益が出た年は確定申告が必要になるケースもあるため、年1回は損益状況を確認する習慣が必要です。
第三の選択肢:祖父母からの暦年贈与を活用する
祖父母から孫への贈与には、一般的に知られていない節税ポイントがあります。通常の暦年贈与では「相続前7年以内の贈与は相続税に加算される」という7年ルールがありますが、このルールの対象は原則として「相続人(子や配偶者)」のみです。相続人ではない孫への贈与は、亡くなる直前であっても原則としてこの7年ルールの対象になりません。
これが条件です。ただし遺言で孫に財産を残す「遺贈」がある場合は例外的に対象となるため、注意が必要です。
年間110万円の非課税枠内で祖父母から孫に贈与し、その一部を2027年以降のこどもNISAへ充てるという3世代連携の資産形成プランは、節税効果と教育資金準備を同時に実現できる強力な手段です。この場合も「贈与契約書」を毎年作成し、銀行振り込みで記録を残すことが必須です。現金手渡しだと後から「名義預金(実際は祖父母の資産)」とみなされ、相続税の対象になるリスクがあります。
国税庁:贈与税がかかる場合・かからない場合(暦年贈与の基礎控除110万円の公式説明)