

上乗せ課税が発生しなくても、GIRを提出しないだけで追徴リスクが生じます。
GloBE情報申告書(GIR:GloBE Information Return)とは、グローバル・ミニマム課税(Pillar 2)の対象となる多国籍企業グループが、国別の実効税率や所得・税額情報を各国税務当局に報告するために提出する申告書です 。日本では法人税法第150条の3「特定多国籍企業グループ等報告事項等」として規定されており、国税庁が2024年6月28日に様式の「ひな型」を公表しました 。 zeiken.co(https://www.zeiken.co.jp/news/18646628.php)
これが通常の法人税申告書(別表20)と異なる点は、課税額の計算とは別に「情報報告」として独立して提出が求められる点です 。つまり、税金を払う・払わないに関係なく、報告義務が生じます。これは意外ですね。 zeiken.co(https://www.zeiken.co.jp/news/18646628.php)
OECDが策定した標準ルールに基づき、申告書はXMLスキーマ形式で各国間の自動的な情報交換にも使われます 。国税庁では現在、CSVまたはXMLによる電子申告様式の公開準備を進めている段階です 。報告内容は構成事業体ごとの所得・税額・実効税率などに及ぶため、データ集計の工数が非常に大きい点が実務上の課題となっています。 ey(https://www.ey.com/ja_jp/technical/ey-japan-tax-library/tax-alerts/2024/tax-alerts-07-23-02)
国税庁「グローバル・ミニマム課税に関する様式等」(特定多国籍企業グループ等報告事項等の記載要領・最新版)
対象となる企業グループの条件は、グローバル連結総収入金額が直前4対象会計年度のうち2以上で7億5,000万ユーロ以上であることです 。日本円に換算すると、おおよそ1,200億円規模の多国籍企業グループが該当します。大企業の話と思いがちですが、国内子会社や恒久的施設(PE)を持つ企業も個別エンティティとして申告に含まれる点に注意が必要です 。 comrade-tax(https://comrade-tax.com/global-minimum-tax-iir/)
申告期限は、対象会計年度終了の翌日から15ヶ月以内が原則です 。ただし初年度については18ヶ月以内の特例が認められており、3月決算の日本企業であれば2025年3月期(初年度)のGIR提出期限は2026年9月30日となります 。期限内に提出できるかどうかは、決算処理と同時並行で進める必要があるため、事前のデータ整備が鍵になります。 pwc(https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/brochure/assets/pdf/global-minimum-tax-guide.pdf)
申告期限は守れば問題ありません。ただし2026年3月期以降は提出期限が15ヶ月(2027年6月末)に短縮されるため、初年度の準備遅れを引きずると翌年に間に合わないリスクがあります 。早めにデータ収集体制を整えることが条件です。 assets.kpmg(https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmgsites/jp/pdf/2026/tax-kokusaizeimu-2026.pdf.coredownload.inline.pdf)
山田&パートナーズ「グローバル・ミニマム課税 —情報申告制度とセーフ・ハーバー」(申告期限・記載事項の概要を解説)
GIRに記載が求められる情報は、大きく分けて①グループ全体の識別情報、②国別(ジュリスディクション別)の所得・税額・実効税率データ、③構成事業体ごとの詳細情報の3層構造です 。恒久的施設(PE)も独立した構成事業体として識別情報の記載が必要で、本店とは別に名称・所在地国・納税者番号(TIN)を報告しなければなりません 。 comrade-tax(https://comrade-tax.com/global-minimum-tax-iir/)
国税庁が公表した「特定多国籍企業グループ等報告事項等の記載要領」は2024年6月初版が公表され、令和7年(2025年)6月に改訂版が公開されています 。記載要領はPDFで1,271KBと大部なもので、各欄の記載方法まで細かく規定されています。担当者がゼロから読み解くには相当な時間が必要です。 nta.go(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kokusai/global-minimum/yoshiki.htm)
OECDは2025年1月15日に更新されたGIRテンプレートと執行ガイダンスを公表しており 、国内実務はこの国際標準との整合性を常に確認しながら進める必要があります。様式の変更に気づかず旧バージョンで申告を準備するという実務リスクも存在します。更新情報は国税庁サイトで定期チェックするのが基本です。 ey(https://www.ey.com/ja_jp/technical/ey-japan-tax-library/tax-alerts/2025/tax-alerts-02-10)
EY Japan「OECD、GloBE情報申告書に関する新たな文書を公表」(2025年1月更新テンプレートの詳細解説)
GIRを正確に提出できなかった場合、各国の国内法に基づく罰則や制裁が適用される可能性があります。OECDは2025年1月公表のGIRテンプレートに「罰則の免除」に関するセクションを設け、企業がGloBEルールの適切な適用を確保するため「相当の措置(reasonable measures)」を講じた場合は、罰則適用を慎重に検討すべきとしています 。 ey(https://www.ey.com/ja_jp/technical/ey-japan-tax-library/tax-alerts/2025/tax-alerts-02-10)
「相当の措置」の定義は明確ではなく、各国・地域の既存規則と慣行に照らして解釈されます 。そのため、対応が不十分であっても「努力した証拠」を残しておくことが実務上のリスク軽減策になります。記録を残すことが原則です。 ey(https://www.ey.com/ja_jp/technical/ey-japan-tax-library/tax-alerts/2025/tax-alerts-02-10)
一方、意図的な義務回避・虚偽申告・規定の濫用が認められた場合は、罰則免除は一切適用されません 。また、罰則免除が認められる場合であっても、修正申告と税金の満額納付は別途求められます 。つまり罰則免除はあくまで「ペナルティの免除」であり、税額そのものは正確に納付する必要があります。金融や税務に関わる担当者ほど、この点を曖昧にすると後から大きなダメージを受けます。 pwccn(https://www.pwccn.com/en/china-tax-news/chinatax-news-jan2023-1-jp.pdf)
PwC「OECDのセーフハーバーと罰則免除に関するガイダンス」(罰則免除の条件と実務対応のポイント)
多くの実務担当者が見落としやすいのが、恒久的施設(PE:Permanent Establishment)の取り扱いです。海外に支店・事務所などのPEを持つ場合、そのPEは「独立した構成事業体」としてGIR上で本店とは別に記載しなければなりません 。PE単体でのGloBE所得・実効税率の計算が求められるため、本店の計算だけでは申告が完結しません。 comrade-tax(https://comrade-tax.com/global-minimum-tax-iir/)
日本企業の場合、海外駐在員事務所や現地支店が多数存在するケースでは、各拠点ごとに識別情報(名称・所在地国・TIN)を整理する作業が発生します。PEを1件でも漏らした場合、GIR全体の正確性に疑義が生じ、税務当局から調査対象となるリスクがあります。1件の漏れが全体の信頼性を損なうため、事前の棚卸しが必要です。
PE問題は特に初年度に顕在化しやすいです。グループ内で「PEとして認識されていなかった活動」がGloBEルール上はPEと判断されるケースも報告されており、グループ全体のエンティティマップを国際税務の専門家と確認する作業は初期段階から着手すべき重要なタスクです。PwCやKPMG、EYなどの大手税務事務所が提供するGIR対応ツール(BIツール連携やCSV出力機能付き)を活用することで、データ整備の精度と速度を両立できます 。 pwc(https://www.pwc.com/jp/ja/about-us/brochure/assets/pdf/global-minimum-tax-guide.pdf)
KPMG「日系企業がグローバル・ミニマム課税の対応を進めるにあたり」(2026年の実務スケジュールと留意点)