大学時代からの親友、健太。彼はいつも明るく、周囲を笑顔にするムードメーカーだった。そんな彼から、ある日突然、深刻な声で連絡があった。
「実は、会社で大きなミスをしてしまい、50万円の損害賠償金を支払わなければならなくなったんだ。給料では到底返済できなくて、本当に困っている。もしよかったら、お金を貸してくれないか?」
親友からの切実な訴えに、私は同情せずにはいられなかった。当時、私はアルバイトで貯めた50万円を貯金していた。健太なら必ず返してくれると信じて、私は彼に全額を貸すことを決意した。
健太は何度も感謝の言葉を述べ、必ず返済すると約束してくれた。返済期限は3ヶ月後。それまで彼は、毎日のように連絡をくれ、返済に向けて努力している様子を伝えてくれた。
しかし、3ヶ月後が過ぎても、健太から返済の連絡はなかった。不安を感じ始めた私は、彼に連絡を試みたが、電話は繋がらなくなり、LINEも既読スルー状態になってしまった。
数日後、彼の家を訪ねてみたが、すでに引っ越した跡だった。近所の人に聞いてみると、彼は数週間前に突然引っ越していったらしい。
絶望感と怒りに震えながら、私は警察に相談した。しかし、民事上の問題であるため、警察は捜査に乗り出すことはできないとのことだった。
50万円という大金だけでなく、親友を失った喪失感は計り知れない。私は深い傷を負い、人間不信に陥ってしまった。
その後、数ヶ月経ったある日、私は一通の手紙を受け取った。差出人は健太だった。
彼は、会社を辞めて地方で新しい生活を始めたこと、借金を踏み倒したことを深く反省していること、そして必ず返済するつもりであることを記していた。
手紙には、彼の新しい住所と連絡先が書かれていた。私は半信半疑ながらも、彼に連絡を取ってみることにした。
電話で話してみると、彼は反省の言葉を繰り返し、毎月少しずつ返済していくことを約束してくれた。
私は彼の言葉を信じることにした。そして、毎月彼は約束通りに少しずつ返済を続けている。
健太との友情は完全に修復することはできないかもしれない。しかし、彼の誠意を受け止め、再び信頼関係を築きあげていく努力をするつもりだ。
この経験は、私にとって人生の教訓となった。お金を貸すことは、相手との信頼関係を築くだけでなく、失うリスクも伴うという事実を、私は決して忘れないだろう。
友人の借金を踏み倒したら、法律的にどうなる?
友達からの借金を放置していたら、まあ普通に人間関係が悪くなりますけど、強制執行で差し押さえになる可能性があります。法的な措置を取られるリスクがあるんですね。
友達からの借金をして、何度か督促の連絡を無視していた。そのうち、簡易裁判所の支払督促が自宅に郵送されてきて、返済しないと強制執行になることがわかった。
母が私の代わりに借金を立て替え払いしてくれた。
友達からは縁を切られ、彼女にも借金の話がバレてわかれることになった。
元は彼女とのデート代を友だちに借りたのが始まりだったそう。
上記のケースでは、強制執行前に親が払ってくれたものの、そもそもの借金の目的だった彼女とも別れることになってしまった…という話です。
友達からの借金を踏み倒しても、刑事罰を課せられることはありません。
しかし、お金を返さなかった場合には民事で訴えられる(返済請求される)可能性はあります。
そして、何より、その後の人間関係が悪くなるんですね。
過去、友人たちに総額1,880万円を貸した人の話。貸したうち、戻ってきたお金は1080万円、回収率は57.4%。
無事にお金が返ってきた相手とは現在も関係良好なケースが多いとのことですが、最終的な教訓は「借金を頼まれたら、そいつとは縁を切れ」だそう。
友人からの借金をする場合、借用書や返済期限など明確に決めないことも多いですよね。
しかし、口約束であっても、友人との貸付契約は成立することになっています。
友達からの借金に利息につい決めなかった場合にも、「特に利息を決めなかった場合は、民法第404条により年5%の利息がつく」ということになっています。
返済を遅らせた場合、利息や遅延損害金が発生する可能性があるんですね。
借金の時効の規定もあります。
友達など、個人の借金の時効は10年でしたが、2020年4月の改定で5年に短縮されています。
関連)時効の援用の書き方
借金の金額が大きいなら、認定司法書士や弁護士を使って、法的手段に出ることも考えられます。
関連)債権回収を弁護士に 得意&強い 個人の法律相談
時効をリセットする行動が「債務承認」です。
借金の一部だけでも返そう、と返済を1円でもおこなうと、「借金があるということを認めた」ということになり、債務承認扱いになります。
もし、時効を既に迎えていたとしても、リセットされて時効が中断(つまり、借金を返済しなければいけない)ということになるんですね。
一部の返済以外にも「支払いを月末まで待って!」と口頭で伝えることも、債務承認にあたります。
ただ、貸した側は相当用心深くないと、会話の録音などはしていないでしょう。そもそも借金に時効があることさえ知らない人の方が多いです。
A君がB君に10万円貸しました。
あなたは「B君の借金の保証人になって」とA君に言われ、「いいよ」と答えました。
この場合、あなたに友人の借金の返済義務はある?
口約束だけの場合は、「返済義務はない」、正式な契約書ではない「覚書」であっても、書面で「保証人になる」と書いてしまった場合は返済義務が生じてしまいます。ただ、「覚書」がどの程度のものかによって、過去の裁判の判決も違ってくるんですね。
しっかりした書類があって、捺印までした「覚書」なら、法律的な効力も十分にあると言えるでしょう。
民法446条2項には、「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。」という項目があります。書類があるかどうかが、返済義務が生じるかどうかのポイントになっています。
借金を返さないと、相手から法律的に根拠のある支払督促が送られてくることがあります。
「仮執行宣言付支払督促」や「確定勝訴判決」などの書類が送られてきた場合、給与や預金、不動産などを差し押さえされてしまうこともあります。
140万円以下の借金の場合、認定司法書士に債権回収や簡易裁判所での代理人を依頼できます。
「アイツはまさか、この金額で法律的手段に訴えたりしないだろう」と思っていても、弁護士を頼まずにプロに債権回収することもできるんですね。
といっても、いきなり訴訟されることはまずありません。
督促の第一段階としては、内容証明の送付になります。
貸付の事実、金額、期日を過ぎても返済がないこと、このまま返済がなければ法的手段に訴えるということを通知するんですね。内容証明なので「見ていない」「知らない」は通用しません。
裁判所からの期日呼出を無視し続け、答弁書も出さずにいて債権者が勝訴判決となった場合、不動産や預貯金、給与の差し押さえを強制執行できます。
借金の額が大きい場合は、弁護士に依頼して法律の強制執行(差し押さえ)でお金を回収するケースもあります。
また、お金ではなく債権を持っている場合にも回収可能なケースがあります。
関連)債権者代位権とは
お金を貸した友人が、精神的苦痛を理由に慰謝料請求をおこなうことはできません。
「お金を返さない」ということは、金銭債務の不履行になります。
金銭債務の不履行の際、利息の取り決めをしていなくても、法定利率年5%で、遅延損害金を請求することはできます。しかし、これ以上の請求は精神的被害があっても、弁護士費用がかかっても賠償請求することはできないんですね。
「無いものは払えない」と開き直ることで、ガッチリ法律に守られてしまう状態になっています。
裁判を起こして勝訴しても、公的機関が代わりにお金を回収するわけではありませんし、差し押さえ財産がなければ強制執行はできません。財産がない人から、お金を取ることはできません。
「訴えることはできるけど、勝ってもお金は戻ってこない」という状況。
倫理的にはどうかと思いますが、「どんな手段を使っても、返さないで逃げたものが勝ち」というのが現実のようです。