同一労働同一賃金いつから始まり何が変わったか

同一労働同一賃金いつから始まり何が変わったか

同一労働同一賃金はいつから始まり何がどう変わったのか

違反しても罰則ゼロなのに、放置した企業が数百万円の損害賠償を命じられています。


この記事のポイント3つ
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施行はいつから?

大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月から適用。現在は全企業が対象で、2026年10月にはガイドラインが大幅改正予定。

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何が対象になる?

基本給・賞与・各種手当・福利厚生が対象。正社員と同じ業務のパート・契約社員・派遣社員との「不合理な待遇差」が禁止される。

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知らないと損するポイントは?

罰則はなくても損害賠償請求は可能。非正規労働者は企業に待遇差の説明を義務として求めることができる権利を持っている。


同一労働同一賃金の施行時期と根拠法:大企業・中小企業それぞれいつから?


同一労働同一賃金が法的に整備されたのは、2018年6月29日に成立した「働き方改革関連法」がきっかけです。この法律により「パートタイム・有期雇用労働法」と「改正労働者派遣法」が整備され、正社員と非正規社員の不合理な待遇差を禁止する仕組みが義務化されました。


施行時期は企業規模によって段階的に設定されています。大企業に対しては2020年4月1日、中小企業に対しては1年遅れて2021年4月1日から適用開始となりました。つまり、2021年4月以降は規模を問わず「すべての企業」が対象です。


大企業・中小企業の判定基準は業種によって異なります。


- サービス業:資本金5,000万円以下、または常時使用する労働者が100人以下
- 小売業:資本金5,000万円以下、または常時使用する労働者が50人以下
- 卸売業:資本金1億円以下、または常時使用する労働者が100人以下
- その他(製造業など):資本金3億円以下、または常時使用する労働者が300人以下


上記いずれかに該当する場合に中小企業として扱われます。これが基準です。


自分が働く企業がどちらに該当するか確認しておくと、制度の適用タイミングへの理解が深まります。また、正社員だけでなくパート・アルバイト・契約社員・派遣社員として働く人にとっても、いつから権利が発生したのかを知ることが、自分の待遇を正しく判断する第一歩になります。


厚生労働省による同一労働同一賃金の公式特集ページ(施行時期・ガイドライン・対象者など一次情報)
厚生労働省|同一労働同一賃金特集ページ


同一労働同一賃金の対象範囲:何が「同一」でないといけないのか

「同一労働同一賃金」という名称から「まったく同じ賃金にしなければならない」と誤解されることがありますが、これは正確ではありません。正しくは「不合理な待遇差を設けてはいけない」という原則です。これが基本です。


対象となる待遇は賃金(基本給・賞与)にとどまらず、幅広い項目が含まれます。


- 基本給・昇給:職務内容・能力・経験に基づく不合理な差は禁止
- 賞与(ボーナス):正社員と同様に業績貢献が認められれば支給対象になりうる
- 各種手当:通勤手当・皆勤手当・時間外手当・役職手当など
- 福利厚生・施設利用:食堂・休憩室・更衣室の利用など
- 教育訓練:同じ職務内容であれば同じ内容の研修を受ける機会が必要


「合理的な理由のある待遇差」は認められます。たとえば、正社員が全国転勤を前提とした雇用契約を結んでいるのに対し、パート社員が地域限定で働いている場合、責任の範囲や配置転換の有無が異なるため、一定の賃金差は許容される場合があります。


一方で、「正社員だから」という理由だけで通勤手当を支給し、同じ区間を通勤するパート社員には支給しない、といったケースは典型的な不合理な待遇差として問題視されます。痛いところですね。


注目すべき点として、「同一企業内」が対象であることも押さえておく必要があります。つまり、別会社との賃金比較ではなく、同じ会社の中の正規・非正規間の格差が問題になります。


同一労働同一賃金に罰則はない?実は損害賠償請求リスクが大きい理由

「同一労働同一賃金に違反しても罰則はない」という話を耳にしたことがある人は多いでしょう。これは事実です。しかし、罰則がないことと「何もリスクがない」ことはまったく別の話です。


違反に対する直接的な刑事罰(懲役や罰金)は存在しません。ただし、以下の二つの重大なリスクが企業を待ち受けています。


① 損害賠償請求民事訴訟
非正規労働者が「待遇差は不合理だ」と判断した場合、会社に対して民事訴訟を起こすことができます。裁判所が不合理と認定すれば、企業は未払い分の差額相当額の損害賠償を命じられます。実際に最高裁判決が複数出ており、数百万円規模の損害賠償が認められた事例もあります。これは使えそうです。


② 行政指導と過料(最大10万円)
「待遇に関する説明義務」を怠った場合、都道府県の労働局から行政指導を受け、改善がなければパートタイム・有期雇用労働者1人につき最大10万円の過料が科せられます(パートタイム・有期雇用労働法第31条)。従業員数が多い企業では、この額が積み重なることも想定されます。


重要な最高裁判決として、「日本郵便事件(2020年)」では、非正規社員への年末年始勤務手当や夏期・冬期休暇の不支給が不合理と認定されました。また「ハマキョウレックス事件(2018年)」では、通勤手当・皆勤手当の格差が違法と判断されています。


非正規労働者として働いている場合、会社に対して「待遇差の理由の説明」を求める権利があります。説明を求めたことを理由に不利な扱いをすることも禁止されています(パートタイム・有期雇用労働法第14条3項)。損害賠償を求める訴訟の前に、まずこの説明義務制度を活用することが現実的な一歩です。


日本郵便事件など主要最高裁判決と企業実務への影響を解説
マネーフォワード|同一労働同一賃金の判例とは?主要5事件と企業が学ぶポイント


同一労働同一賃金の対象外になるケースと意外な落とし穴

実は、すべての非正規雇用者が同一労働同一賃金の保護を受けられるわけではありません。意外なところに対象外のルールが存在します。


無期雇用フルタイム労働者は対象外


パートタイム・有期雇用労働法が対象とするのは「短時間労働者(パート)」と「有期雇用労働者(契約社員など)」に限られます。契約期間の定めがなく、フルタイムで働く「無期雇用フルタイム労働者」は同一労働同一賃金の対象外です。これが原則です。


たとえば、5年以上の有期雇用を経て「無期転換ルール」によって無期雇用に切り替わったとしても、フルタイムになった時点で正社員と同じ扱いになり、パートタイム・有期雇用労働法による保護は適用されなくなります。


派遣社員の場合は「二つの選択肢」


派遣社員の場合は少し仕組みが異なります。


- 派遣先均等・均衡方式:派遣先企業の正社員と同等の待遇にする方式
- 労使協定方式:派遣元(派遣会社)と労働組合等が結ぶ協定に基づき、一般的な賃金水準以上の待遇を保証する方式


厚生労働省のデータによると、約9割の派遣会社が「労使協定方式」を採用しています。つまり、派遣先の正社員と賃金を比べても意味がない場合が多く、比較すべき基準は「職業安定局長通知で示された一般賃金水準」になります。


退職金と賞与の扱いにも注意が必要


大阪医科薬科大学事件(2020年最高裁)では、アルバイト職員への賞与不支給は「不合理とはいえない」と判断されました。ただし、これはあくまで特定の状況における判断であり、すべてのケースで賞与不支給が許容されるわけではありません。2026年10月施行予定の新ガイドラインでは、賞与に複合的な性質(労務対価の後払い・功労報償など)があるとして、一律不支給は認めにくい方向に改正される見込みです。


無期雇用フルタイムが対象外になる仕組みを詳しく解説
Jinjer|無期雇用は同一労働同一賃金の対象外?適用時期やリスクも解説


2026年10月施行の新ガイドラインで何が変わるか:金融に興味がある人が注目すべき最新動向

同一労働同一賃金は、施行から5年が経過した2025年頃から大きな転換点を迎えています。厚生労働省は2026年1月に新しいガイドラインの方針を固め、2026年10月から施行する計画です。


新ガイドラインの主な変更ポイント


これまでガイドラインに明記されていなかった「退職手当・住宅手当・家族手当」の取り扱いが初めて具体化されます。


| 待遇項目 | 改正前 | 改正後(2026年10月〜) |
|---|---|---|
| 退職手当 | 明記なし | 継続勤務が見込まれる場合は差別禁止 |
| 住宅手当 | 明記なし | 転勤の有無が同じなら同一支給が必要 |
| 家族手当 | 明記なし | 継続雇用見込みがある場合は同一支給 |
| 賞与 | 支給義務が曖昧 | 一律不支給は原則不合理と明確化 |
| 病気休暇 | 明記なし | 継続雇用見込みがある非正規にも同一保証 |


「正社員の待遇引き下げ」を明確にNGとした点が重要


新ガイドラインでは、非正規との格差是正を理由にした「正社員の待遇引き下げ」は原則として望ましくないと明記されます。つまり、企業が「非正規を上げる余裕がないから正社員を下げる」という対応は認められません。いいことですね。


金融に興味ある人に直結する視点


こうした制度の変化は、企業の人件費コストに直結します。非正規社員への賞与・退職金の支給が義務に近づけば、企業の人件費率は上昇し、利益率や主還元に影響する可能性があります。特に非正規雇用比率が高い小売業・飲食業・物流業などは影響が大きく、関連株を保有している場合は注意が必要です。


また、企業の人件費コスト増加は、長期的には労働者の消費余力(可処分所得)の改善にもつながるため、国内消費関連株のプラス要因として見ることもできます。単なる労働法制の話に見えても、実は投資判断にも影響する話です。


2026年10月施行の新ガイドライン改正の詳細解説(弁護士事務所による専門的分析)
長島・大野・常松法律事務所|最高裁判決を踏まえた同一労働同一賃金ガイドラインの改正案の概要


改正ガイドラインの見直し案の概要(2026年10月施行に向けた最新情報)
労働新聞社|改正同一賃金指針 記載拡充し10月施行 住宅手当などを追加 厚労省




第2版 同一労働同一賃金対応の手引き