派遣先均等・均衡方式の情報提供で知っておくべき重要ポイント

派遣先均等・均衡方式の情報提供で知っておくべき重要ポイント

派遣先均等・均衡方式の情報提供を正しく理解するための完全ガイド

情報提供書類を1枚でも欠かしたまま派遣契約を結ぶと、あなたの会社は許可取り消し処分の対象になります。


この記事の3つのポイント
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情報提供は契約前が絶対条件

派遣先均等・均衡方式では、労働者派遣契約を締結する「前」に比較対象労働者の待遇情報を派遣元へ提供しなければなりません。 順序を誤ると契約そのものが無効になります。

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提供しないと許可取り消しリスク

情報提供を怠った場合、派遣先企業は「勧告・企業名公表」、派遣元企業は「許可取り消し・事業停止命令」の対象になります。 2020年の法改正で罰則が強化されました。

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書類は派遣終了後3年間の保存義務あり

情報提供の書面は、派遣先は写しを、派遣元は原本を「派遣契約終了日から起算して3年間」保存しなければなりません。紛失しただけでも許可取り消しの対象になります。


派遣先均等・均衡方式の情報提供とは何か:基本的な仕組みを理解する

派遣先均等・均衡方式とは、2020年4月1日に施行された改正労働者派遣法に基づき、派遣労働者の待遇を「派遣先の通常の労働者(正社員等)」と均等・均衡にする方式です。基本給・賞与・手当・福利厚生・教育訓練など、あらゆる待遇において「不合理な格差」をなくすことが求められます。


この方式を成立させるために不可欠なのが「情報提供」です。派遣先企業が派遣元会社に対し、比較対象となる正社員の待遇に関する詳細情報を事前に渡さなければ、派遣元は適正な賃金を設定できません。派遣先からの情報提供は「配慮」ではなく、法律上の義務です。


なお、労働者派遣法上の同一労働同一賃金を実現するための方式には「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の2種類があります。どちらかを選択して運用することが派遣元企業に義務付けられています。最新の厚生労働省のデータによると、派遣先均等・均衡方式の選択割合は約7.7〜7.9%にとどまり、労使協定方式が約9割を占めているのが現実です。


つまり、派遣先均等・均衡方式は「珍しいケース」という認識を持たれやすいのですが、採用している派遣元会社から派遣を受け入れる企業にとっては避けられない手続きです。情報提供の義務を知らないまま契約を進めることは、深刻なリスクにつながります。


厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」:派遣先均等・均衡方式の定義と比較対象労働者の選定方法が公式に解説されています


派遣先均等・均衡方式の情報提供で必要な5つの事項:何を渡すのか

派遣先企業が派遣元会社に提供しなければならない情報は、大きく5つの項目に整理されています。これらはすべて、比較対象労働者(派遣労働者と同等の業務に従事する派遣先の通常の労働者)に関する情報です。


まず1つ目は「比較対象労働者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲、並びに雇用形態」です。どんな業務を担当し、転勤や昇格がどの程度あるのかといった情報を含みます。2つ目は「比較対象労働者を選定した理由」で、なぜその正社員が比較対象として適切かを示す根拠を明記します。


3つ目は「比較対象労働者の待遇の内容」です。これが最も情報量が多く、基本給・賞与・各種手当(役職手当・精皆勤手当・通勤手当・食事手当など)・退職手当・有給休暇・病気休職・教育訓練・福利厚生施設の利用まで、ガイドラインに定める待遇をすべて網羅します。「昇給や賞与がない場合はその旨」も含めて明記が必要です。


4つ目は「待遇の性質及び目的」で、各手当がなぜ存在するのかの趣旨を記載します。5つ目が「待遇決定に当たって考慮した事項」です。評価制度や職能基準など、待遇を決めた際の判断軸を記載します。情報量の多さが、この方式の負担感を高めている主因です。


厚生労働省大阪労働局「別添2 派遣先均等・均衡方式」PDF:情報提供の様式と具体的な記載項目が確認できます


派遣先均等・均衡方式の情報提供タイミング:契約「前」が絶対ルール

情報提供のタイミングは、法律上明確に定められています。労働者派遣契約を「締結する前」に行う必要があります。


これは原則です。


仮に情報提供が遅れ、派遣元が情報を受け取らないまま契約を締結してしまった場合、その契約自体が問題となります。派遣元には「情報提供を受けずに派遣契約を締結してはならない」という義務があるため、情報提供なしの契約は許可取り消し・事業停止命令の対象となります。情報提供は「後から補完すればいい」という性質のものではありません。


なお、情報提供の方法は「書面の交付」「FAX送信」「電子メール等の送信」の3種類が認められています。口頭での情報提供だけでは要件を満たしませんので注意が必要です。


リクルートスタッフィング「派遣先均等・均衡方式」:情報提供の5項目と比較対象労働者の選定順位がわかりやすくまとめられています


派遣先均等・均衡方式の比較対象労働者の選定方法:優先順位がある

情報提供の核となるのが「比較対象労働者」の選定です。派遣先企業の全従業員の情報を提供する必要はなく、一定の優先順位に従って1名(または複数名の平均)を選定します。


選定の優先順位は次のとおりです。



  1. 職務の内容と配置変更の範囲が派遣労働者と同一と見込まれる正社員

  2. 職務の内容が同一と見込まれる正社員

  3. 業務の内容または責任の程度のいずれかが同一と見込まれる正社員

  4. 配置変更の範囲が同一と見込まれる正社員

  5. 上記①〜④に相当するパート・有期雇用労働者

  6. 「仮想の通常の労働者」(当該業務に新たに正社員を雇い入れたと仮定した場合の労働者)


比較対象労働者に該当する候補が複数いる場合、1名の情報だけでなく「複数人の平均」で提供することも認められています。また、「新卒入社5年目・B評価・経理職」といった標準的なモデルで提供することも可能です。


これは個人情報の保護にも配慮した運用です。


ただし、⑤の短時間・有期雇用労働者を比較対象とする場合は、パートタイム・有期雇用労働法に基づいて通常の労働者との均衡が確保されていることが条件です。また、⑥の「仮想の通常の労働者」は、現行の就業規則が有効であり、実際に適用実績がある場合に限られます。


派遣先均等・均衡方式の情報提供で注意すべき「変更通知」義務

情報提供は「最初に一度行えば終わり」ではありません。重要なのは「変更があった場合の通知義務」です。


派遣先企業の待遇情報に変更があった場合、派遣先は「遅滞なく」派遣元に変更内容を通知しなければなりません。


これは法律上の義務です。


例えば、比較対象労働者に昇給があった場合や、通勤手当の上限が変わった場合、育児休業の取得によって比較対象者が変わった場合なども、変更通知の対象になります。


「派遣労働者に影響がないだろう」と判断して変更通知を省略することは認められていません。厚生労働省のQ&Aでは「通勤手当の上限が引き上げられたが、派遣労働者がその上限に届かない場合でも1週間以上前の変更であれば通知が必要」と明確に示されています。将来的に経営方針や派遣労働者の家庭状況が変わる可能性があるためです。


ただし、「派遣契約が終了する日の前1週間以内の変更」であって、その変更を踏まえて待遇を変えなくても法律違反にならない場合は、通知不要という例外があります。


これが原則です。


厚生労働省「派遣先均等・均衡方式に関するQ&A(令和元年12月26日公表)」PDF:変更通知の例外ケースや複数業務時の対応など実務上の疑問が整理されています


派遣先均等・均衡方式の情報提供と書類保存義務:3年間の管理が必要

情報提供を行った後の書類管理にも、法律上の義務があります。書面は派遣元・派遣先の両社で一定期間保存しなければなりません。


具体的には、派遣元は情報提供書類の「原本」を、派遣先はその「写し」を、それぞれ「派遣契約が終了した日から起算して3年を経過する日まで」保存する義務があります。3年間は、ちょうど駅から徒歩5分のマンションに住んで引っ越すまでの間と同じくらいの期間感覚です。


決して短くはありません。


この保存義務に違反した場合、派遣元は「許可の取り消し・事業停止命令・改善命令」の対象になります。「書類を紛失した」「担当者が退職して引き継ぎができなかった」といった言い訳は通用しません。


とりわけ金融機関や金融関連企業が派遣先となる場合、コンプライアンス上の要求水準は高く、監査や行政調査の際に書類を提出できない事態は企業の信用を大きく損ないます。保存すべき書類の種類と保管期間は、担当者がいつでも確認できる社内管理台帳に記録しておくことを強くお勧めします。


パソナ「派遣先均等・均衡方式の待遇確保の措置とは?」:書面保存義務の詳細と提供方法の要件が解説されています


派遣先均等・均衡方式の情報提供を怠った場合のリスク:許可取り消しも

2020年4月の法改正で、情報提供に関する罰則規定が大幅に強化されました。これは金融業など規制の厳しい業界でも見落とされがちな変更点です。


派遣先が情報提供をしなかった場合、または虚偽の情報を提供した場合の制裁は「勧告・企業名公表」です。派遣先の名前が公表されると採用や取引への影響は甚大です。一方、派遣元が情報提供を受けずに契約を締結した場合、または受け取った情報を3年間保存しなかった場合は「許可の取り消し・事業停止命令・改善命令」の対象となります。


許可の取り消しは、派遣事業そのものを継続できなくなる最も重い処分です。「書類を出さなかっただけでここまでの処罰が?」と感じるかもしれません。しかし厚生労働省は、同一労働同一賃金の実現を担保するためにこれだけ厳しい罰則を設けています。


なお、「不合理な待遇差を設けた」という実体的な違反に対しては、最終的に許可取り消しという処分が用意されています。さらに、待遇に関する説明義務違反(派遣労働者からの求めに対して待遇差の説明を拒否するなど)も同様の処罰対象です。手続き違反だけでなく実体違反もセットで把握しておく必要があります。


クロスリンク「2020年から施行される派遣法改正~違反行為の罰則編」:改正後に新設された5つの罰則規定がわかりやすく整理されています


派遣先均等・均衡方式の情報提供と労使協定方式の違い:提供項目を比較する

同一労働同一賃金の対応方式は2種類あるため、どちらを採用するかによって情報提供の内容は大きく異なります。その違いを正確に理解することが実務上重要です。


派遣先均等・均衡方式では、前述のとおり比較対象労働者の「職務内容・配置変更範囲・雇用形態・選定理由・待遇の内容・待遇の性質と目的・待遇決定の考慮事項」という広範な情報の提供が必要です。


一方、労使協定方式では、派遣先から提供すべき情報は「①業務に必要な能力を付与するための教育訓練」と「②食堂・休憩室・更衣室の利用」の2項目のみです。


情報量の差は歴然としています。


これが、約9割の派遣元が労使協定方式を選ぶ大きな理由の一つとなっています。


ただし、労使協定方式を採用している場合でも、教育訓練や福利厚生施設(食堂・休憩室・更衣室)については派遣先の正社員と同等の扱いが求められます。「労使協定方式だから情報提供は一切不要」ではなく、項目が絞られるだけという点に注意が必要です。





























派遣先均等・均衡方式 労使協定方式
賃金の比較基準 派遣先の比較対象労働者 同種業務に従事する一般労働者の平均賃金
情報提供の項目数 5項目(広範) 2項目(限定的)
教育訓練・施設利用 均等・均衡確保が必要 均等・均衡確保が必要(同じ)
採用割合(令和5年度) 約7.9% 約88.8%


派遣先均等・均衡方式の情報提供における契約更新時のルール:省略できる条件とは

派遣契約を更新する際にも、原則として情報提供が必要です。「以前の契約で一度提供したから、更新時はいらない」という理解は誤りです。


ただし、更新時に「比較対象労働者及びその待遇に関する情報に変更がない場合」は、同一の情報を改めて提供する必要はありません。その場合は「令和○年○月○日付けの情報提供から変更がない」という旨を書面・FAX・メール等で送信することで足ります。


これが条件です。


同様に、同一の派遣先・業務・組織で追加の派遣社員を受け入れる際も、既存の情報提供に変更がない場合は「変更なし」の通知で対応できます。ただし、情報の保存期間は新たに受け入れる派遣社員の派遣終了日から3年間となるため、書類管理の起算日に注意が必要です。


複数の業務を行う派遣社員を受け入れる場合は、業務ごとに比較対象労働者を選定して情報を提供するのが原則です。ただし業務ごとに共通する待遇がある場合は、どちらかを提供すれば省略可能ですが、省略する旨と参照箇所の明記が必要という条件があります。


マンパワーグループ「派遣先均等・均衡方式とは?労使協定方式との違い」:派遣先企業が行うべき手続きと比較対象労働者の選定例が詳しく解説されています


派遣先均等・均衡方式の情報提供にまつわる独自視点:金融業界で見落とされがちな個人情報保護との交差点

派遣先均等・均衡方式の情報提供において、金融業界を含む多くの企業が盲点にしているのが「個人情報保護法との関係」です。


比較対象労働者が1名しかいない場合、その情報を提供すると「特定の個人が識別できる」状態になります。個人情報取扱事業者に該当する多くの企業(銀行・保険会社・証券会社など、ほぼすべての金融機関)は、この情報を提供する際に当該労働者本人に利用目的を通知・公表する必要があります。


個人情報保護法第18条第1項〜第3項が根拠条文です。厚生労働省のQ&Aでは「本人への説明等を行うことが必要であり、同意を得られることが望ましい」と示されています。同意を取ること自体が義務ではないものの、説明は必須です。


また、派遣元が提供を受けた比較対象労働者の情報は、「派遣労働者の待遇確保等の目的の範囲に限って」使用しなければなりません。法律上、秘密保持義務の対象にもなります(労働者派遣法第24条の4)。情報が他の業務に流用されたり、漏洩した場合は法的責任が生じます。


金融機関やその関連企業では、この情報の取り扱いについて社内規程への反映と担当者教育が不可欠です。コンプライアンス体制の整備として、情報提供書類の保管・アクセス制限・廃棄ルールを整備したうえで運用することを推奨します。


派遣先均等・均衡方式の情報提供フォームの活用:厚生労働省の様式を使う

実際に情報提供を行う際、様式は法律で特定のフォームを使うことが義務付けられているわけではありません。必要な5項目を網羅していれば、自社で作成した書類でも構いません。


ただし、厚生労働省や各都道府県労働局が公式の様式サンプルを公開しており、実務上はこれをベースにした書類が多く使われています。大阪労働局や東京労働局のホームページでは、記載例付きの書式が入手可能です。


特に初めて対応する担当者の場合、公式様式のチェックリスト機能として活用すると、記載漏れを防げます。「待遇の性質と目的」欄は記載が難しいと感じる担当者も多い箇所ですが、公式サンプルには具体的な例文が掲載されているため参考になります。


また、派遣会社によっては独自のフォームを提供しているケースもあります。リクルートスタッフィングやランスタッド、パソナなどの大手派遣会社は、派遣先向けの情報提供記入ガイドを用意しています。派遣元の担当者に問い合わせると、記載例をもとに一緒に確認してもらえることも多いため、「どこまで書けばいいかわからない」という場合は積極的に相談することをお勧めします。


東京都「派遣先から派遣元への比較対象労働者の待遇情報の提供」:派遣先均等・均衡方式と労使協定方式それぞれの提供情報の内容が整理されています


派遣先均等・均衡方式の情報提供が派遣社員の待遇に与える直接的な影響

情報提供は書類手続きにとどまらず、派遣社員の実際の待遇に直結します。


これが原則です。


派遣元企業は、提供を受けた比較対象労働者の情報をもとに、派遣社員の基本給・手当・賞与・福利厚生などを設定しなければなりません。つまり、情報の精度が低ければ低いほど、派遣社員の待遇設定が不正確になります。


例えば、比較対象労働者の通勤手当の上限が「月3万円」と正確に提供されれば、派遣社員にも同等水準の通勤手当が支給されることになります。一方、その情報が「提供漏れ」になっていた場合、派遣社員は通勤手当の不支給という不利益を受けることになり、後日是正が求められます。


派遣先均等・均衡方式を採用している場合、派遣先企業の待遇水準が高ければ高いほど、派遣社員にも高い水準の待遇が保障されます。逆に、賃金水準の低い企業では派遣社員も同等の低い水準になるため、求人が成立しにくくなるという側面もあります。


情報提供は「法令遵守のための形式的な書類作業」ではなく、働く人の生活に直接影響を与える実質的な行為です。そのような認識のもとで、正確かつ誠実に対応することが求められます。


クラウドスタッフィング「派遣先均等・均衡方式のハードルが高い理由とは?課題とメリット」:情報提供の負担と方式のメリット・デメリットが具体的に解説されています


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