電源開発促進税の計算方法と納税申告書の書き方

電源開発促進税の計算方法と納税申告書の書き方

電源開発促進税の計算方法と仕組み

電源開発促進税の基本情報
💡
目的

発電施設の設置促進、運転円滑化、安全確保のための財源

💰
税率

0.375円/kWh(税抜)

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納税義務者

一般送配電事業者(電気事業法第2条第1項第9号に規定)

電源開発促進税は、電気の安定供給と発電施設の整備促進を目的とした税金です。この税金は、最終的には電気料金の一部として私たち消費者が負担することになります。本記事では、電源開発促進税の計算方法から納税申告書の書き方まで、税理士として知っておくべき情報を詳しく解説します。

 

電源開発促進税の計算式と税率

電源開発促進税の計算は、基本的に以下の計算式で行われます。

 

電源開発促進税 = 販売電気の電力量(kWh) × 税率(0.375円/kWh)
この税率は法律で定められており、現在は1キロワット時あたり0.375円(税抜)となっています。実際に消費者の電気料金に含まれる「電源開発促進税相当額」は、以下の計算式で算出されます。

 

電源開発促進税相当額 = 電気使用量(kWh) × 電源開発促進税税率相当額(円/kWh)
ここで注意すべき点は、消費者に転嫁される電源開発促進税相当額は、地域によって若干異なる点です。資源エネルギー庁の公表データによると、2024年4月時点での電源開発促進税相当額は、ほとんどの地域で0.413円/kWh〜0.414円/kWh(税込)となっています。沖縄電力のみ0.409円/kWh(税込)と若干低くなっています。

 

これは、電源開発促進税相当額が以下の計算式で算出されるためです。

 

電源開発促進税相当額 = 電源開発促進税税率(0.375円/kWh)× 電源開発促進税対象需要 ÷ 託送料金算定対象需要 + 税

電源開発促進税の納税申告書の書き方と注意点

電源開発促進税の納税義務者である一般送配電事業者は、毎月、納税申告書を提出する必要があります。納税申告書の書き方について、いくつかの重要なポイントを解説します。

 

  1. 申告書の種類の選択

    電源開発促進税納税申告書は、期限内申告書、期限後申告書、修正申告書の3種類があります。不要な文字は二重線で、不要な欄は斜線で抹消します。

     

  2. 年月の記載

    申告書の「令和〇年〇月分」には、販売電気の料金の支払を受ける権利が確定した日の属する年月を記載します。自家使用販売電気の場合は、電力量計算の基礎となる期間の終了する日の属する年月を記載します。

     

  3. 電力量の記載

    販売電気の区分ごとに、それぞれの電力量を記載します。

     

  4. 税額の計算と記載

    電力量の合計数量に電源開発促進税の税率を乗じて得た金額を計算し、納付すべき税額を記載します。この金額に100円未満の端数がある場合は切り捨て、金額の全額が100円未満の場合は「0」と記載します。

     

納税申告書の提出期限は、原則として、販売電気の料金の支払を受ける権利が確定した日の属する月の翌月末日までとなっています。期限を過ぎると、延滞税や加算税が課される可能性があるため注意が必要です。

 

電源開発促進税が電気料金に与える影響と託送料金の関係

電源開発促進税は、電気料金の中でも「託送料金」の一部として消費者に転嫁されています。託送料金とは、小売電気事業者が発電所から各家庭に電気を送るときに利用する送配電網の利用料金のことです。

 

電気料金の構成要素を見ると、託送料金は電気料金全体の約3割を占めており、その中に電源開発促進税相当額が含まれています。つまり、私たちが支払う電気料金には、間接的に電源開発促進税が含まれているのです。

 

託送料金には、電源開発促進税以外にも以下のような費用が含まれています。

  • 送配電部門における人件費
  • 設備修繕費
  • 減価償却費
  • 固定資産税
  • 賠償負担金
  • 廃炉円滑化負担金

これらの費用は、電力の安定供給や発電施設の整備・安全確保のために必要なものですが、最終的には消費者が負担することになります。

 

2024年4月時点での各一般送配電事業者の託送料金平均単価(低圧供給)は以下の通りです。

事業者 託送料金平均単価 電源開発促進税相当額
北海道 10.62円/kWh 0.414円/kWh
東北 11.20円/kWh 0.414円/kWh
東京 9.44円/kWh 0.413円/kWh
中部 10.04円/kWh 0.414円/kWh
北陸 9.27円/kWh 0.413円/kWh
関西 8.61円/kWh 0.413円/kWh
中国 10.21円/kWh 0.413円/kWh
四国 10.14円/kWh 0.413円/kWh
九州 10.27円/kWh 0.413円/kWh
沖縄 12.68円/kWh 0.409円/kWh

(単位:円/kWh、税込)

電源開発促進税の会計処理と税務上の取り扱い

電源開発促進税の会計処理と税務上の取り扱いについて、税理士として知っておくべきポイントを解説します。

 

1. 納税義務者の会計処理
一般送配電事業者(納税義務者)の会計処理は以下のようになります。

(借)租税公課 XXX (貸)未払金(または現金預金) XXX

電源開発促進税は、法人税法上、損金算入が認められる税金です。

 

2. 小売電気事業者の会計処理
小売電気事業者が一般送配電事業者に支払う託送料金には電源開発促進税相当額が含まれていますが、これは電源開発促進税そのものではなく、託送料金の一部として処理します。

(借)支払託送料 XXX (貸)未払金(または現金預金) XXX

3. 消費者への転嫁
小売電気事業者は、託送料金(電源開発促進税相当額を含む)を電気料金に含めて消費者に請求します。この場合、消費税の課税対象となるため、消費税の計算にも注意が必要です。

 

4. 税務申告上の注意点
電源開発促進税は、消費税の課税標準に含まれます。つまり、電源開発促進税相当額を含む電気料金に対して消費税が課されることになります。これは、いわゆる「税金に対する税金」の状態となっているため、消費者の負担は実質的に増加しています。

 

電源開発促進税の使途と今後の動向

電源開発促進税の税収は、「電源開発促進対策特別会計」に繰り入れられ、主に以下のような用途に使用されています。

  1. 原子力発電施設等の設置促進と運転の円滑化
  2. 発電施設の利用促進と安全確保
  3. 電気の供給円滑化のための措置
  4. 電源立地地域対策交付金
  5. 電力系統安定化対策

電源開発促進税は1974年に創設されて以来、数回の税率改定を経て現在に至っています。当初は0.085円/kWhでしたが、現在は0.375円/kWhとなっています。

 

近年のエネルギー政策の変化や再生可能エネルギーの普及に伴い、電源開発促進税の在り方についても議論が行われています。特に、以下のような点が今後の課題として挙げられています。

  • 再生可能エネルギー発電促進賦課金との関係整理
  • 電力自由化の進展に伴う制度の見直し
  • 脱炭素社会への移行に対応した税制の在り方

税理士としては、これらの動向にも注目しておく必要があります。特に、電源開発促進税の税率変更や制度変更があった場合には、クライアントへの適切なアドバイスが求められるでしょう。

 

また、電源開発促進税は電気料金に含まれる税金の一つですが、他にも再生可能エネルギー発電促進賦課金など、電気料金に含まれる様々な費用についても理解しておくことが、総合的なアドバイスを行う上で重要です。

 

再生可能エネルギー発電促進賦課金の計算式は以下の通りです。
再生可能エネルギー発電促進賦課金(円) = 毎月の電気使用量(kWh) × 再エネ賦課金単価(円/kWh)
再エネ賦課金単価は全国一律で設定され、毎年経済産業大臣によって決定されます。この賦課金も電気料金の一部として消費者が負担しており、電源開発促進税と合わせて理解しておくことで、より包括的なアドバイスが可能になります。

 

以上、電源開発促進税の計算方法と仕組みについて解説しました。電源開発促進税は一見すると単純な計算式ですが、実際の運用や会計処理、税務上の取り扱いには様々な注意点があります。税理士として、これらの知識を活用し、クライアントに適切なアドバイスを提供していきましょう。

 

資源エネルギー庁:各一般送配電事業者の託送料金平均単価等(最新の電源開発促進税相当額の確認に役立ちます)
国税庁:電源開発促進税納税申告書の書き方(申告書記入方法の詳細が記載されています)