再エネ賦課金の仕組みと計算方法や単価の推移

再エネ賦課金の仕組みと計算方法や単価の推移

再エネ賦課金の仕組みと計算方法

再エネ賦課金の基本情報
💡
正式名称

再生可能エネルギー発電促進賦課金

📅
制度開始

2012年7月(固定価格買取制度の導入と同時)

🔄
単価改定

毎年度、経済産業大臣が決定(5月分から翌4月分まで)

再エネ賦課金とは何か

再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)とは、再生可能エネルギーで発電された電気を電力会社が買い取るための費用を、電気を使用する全ての消費者が負担する制度です。毎月の電気料金の一部として請求され、全国一律の単価が適用されています。

 

この制度は、2012年7月に始まった固定価格買取制度(FIT制度)の一環として導入されました。固定価格買取制度とは、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーで発電された電気を、電力会社が一定期間、一定価格で買い取ることを国が義務付ける制度です。

 

再エネ賦課金は、電気料金の計算式の中で次のように位置づけられています。

 

電気料金 = 基本料金 + 電力量料金 + 再エネ賦課金 ± 燃料調整費等
重要なのは、再エネ賦課金は電力会社の収益になるわけではないという点です。電力会社は徴収した再エネ賦課金を国の指定機関に納付し、その後、国から電力会社に対して再エネ電力の買取費用が支給される仕組みになっています。

 

再エネ賦課金の計算方法と単価

再エネ賦課金の計算方法はシンプルで、以下の式で算出されます。

 

再エネ賦課金 = 再エネ賦課金単価 × 電気使用量(kWh)
再エネ賦課金単価は毎年度改定され、経済産業大臣によって決定されます。この単価は全国一律で、5月分から翌年4月分までの1年間適用されます。

 

2024年度の再エネ賦課金単価は3.49円/kWhとなっています。これを標準的な家庭(月間電気使用量約400kWh)に当てはめると、月々の再エネ賦課金は約1,396円になります。

 

再エネ賦課金単価の推移を見ると、制度開始当初の2012年は0.22円/kWhでしたが、年々上昇し、2022年には3.45円/kWhまで増加しました。2023年には1.4円/kWhと一時的に減少したものの、2024年には再び3.49円/kWhと上昇しています。

 

この単価の変動は、再生可能エネルギーの導入量や買取価格、市場価格などの要因によって影響を受けます。また、前年度の推測値と実測値の差は、翌々年度の賦課金単価に調整されて反映される仕組みになっています。

 

再エネ賦課金の固定価格買取制度との関係

再エネ賦課金は、固定価格買取制度(FIT制度)と密接に関連しています。固定価格買取制度は、再生可能エネルギーの普及を促進するために導入された制度で、以下のような特徴があります。

 

  1. 買取価格の保証: 再生可能エネルギーで発電した電気を、国が定めた価格で一定期間買い取ることを電力会社に義務付けています。
  2. 投資回収の見通し: 発電事業者は高額な設備投資の回収見通しが立ちやすくなり、再エネ事業への参入障壁が下がります。
  3. エネルギー自給率向上: 国内で生産できるエネルギーが増えることで、化石燃料の輸入依存度が下がり、エネルギー安全保障の強化につながります。

固定価格買取制度によって、電力会社は市場価格よりも高い価格で再エネ電力を買い取ることになります。その差額を補填するために、再エネ賦課金が設けられているのです。

 

この制度の流れを簡単に説明すると次のようになります。

  1. 再エネ発電事業者が太陽光や風力などで発電する
  2. 電力会社が固定価格で再エネ電力を買い取る
  3. 電力会社が需要家(消費者)に電気を供給する
  4. 需要家は電気料金と一緒に再エネ賦課金を支払う
  5. 電力会社は再エネ賦課金を国の指定機関に納付する
  6. 国の指定機関から電力会社に買取費用が交付される

このサイクルによって、再生可能エネルギーの普及が促進され、持続可能なエネルギー社会の実現に貢献しています。

 

再エネ賦課金の対象となる再生可能エネルギー

再エネ賦課金の対象となる再生可能エネルギーには、主に以下の5種類があります。

 

  1. 太陽光発電: 最も普及している再生可能エネルギーで、住宅用から大規模メガソーラーまで様々な規模で導入されています。
  2. 風力発電: 風の力を利用して発電するもので、陸上風力と洋上風力があります。特に洋上風力は今後の成長が期待されています。
  3. 水力発電: 水の落差を利用して発電するもので、固定価格買取制度では主に中小水力(30,000kW未満)が対象となっています。
  4. 地熱発電: 地熱エネルギーを利用した発電方式で、安定した発電が可能な特徴があります。
  5. バイオマス発電: 木材や農作物残渣、生ゴミなどの生物由来の資源(バイオマス)を燃料として発電します。

これらの再生可能エネルギーは、それぞれ買取価格や買取期間が異なります。例えば、2024年度の新規案件における太陽光発電(10kW以上50kW未満)の買取価格は10円/kWh(税抜)、買取期間は17年間と設定されています。

 

再生可能エネルギーの種類や規模、導入時期によって買取価格は異なり、一般的に技術の成熟度や設備コストの低減に伴って、新規案件の買取価格は徐々に引き下げられる傾向にあります。

 

再エネ賦課金の税金控除と減免制度

再エネ賦課金は基本的に全ての電気使用者が負担するものですが、一部の事業者に対しては減免制度が設けられています。これは、電力を大量に消費する製造業などの国際競争力を維持するための措置です。

 

減免制度の対象となるのは、以下の条件を満たす事業者です。

  1. 製造業、鉱業、上下水道業などの指定業種に該当すること
  2. 売上高に占める電気使用量の割合が一定以上であること(電力多消費事業者)
  3. 省エネの取り組みを行っていること

減免率は事業者の電力使用状況によって異なり、最大で80%の減免が適用されます。ただし、この減免分は他の電気使用者の負担増につながるため、公平性の観点から議論もあります。

 

一般家庭や中小企業に対する直接的な減免制度はありませんが、再エネ賦課金は課税対象となるため、事業者の場合は経費として計上できます。また、消費税の計算においては、再エネ賦課金も含めた電気料金全体に対して消費税が課されます。

 

なお、自家発電設備(太陽光発電など)を導入することで、電力会社からの購入電力量を減らし、結果的に再エネ賦課金の負担を軽減することが可能です。特に、FIT制度を利用して余剰電力を売電している場合は、売電収入によって実質的な負担軽減効果が得られます。

 

再エネ賦課金の今後の見通しと節約方法

再エネ賦課金は、再生可能エネルギーの普及状況や政策方針によって変動します。今後の見通しとしては、以下のような要因が影響すると考えられます。

 

  1. 買取価格の低下: 太陽光発電などの技術進歩やコスト低減により、新規案件の買取価格は徐々に下がる傾向にあります。
  2. 買取期間の終了: 2012年に始まった固定価格買取制度の対象案件は、順次買取期間が終了していきます(住宅用太陽光は10年間、事業用は20年間など)。
  3. FIP制度への移行: 大規模な再エネ発電は、固定価格買取制度(FIT)から市場連動型のフィードインプレミアム制度(FIP)へと移行が進められています。

これらの要因により、中長期的には再エネ賦課金の負担増加ペースは緩やかになると予想されますが、当面は一定の負担が続くと見られています。

 

家庭や企業が再エネ賦課金の負担を軽減するための方法としては、以下のような対策が考えられます。

  1. 省エネの徹底: 電気使用量そのものを減らすことで、再エネ賦課金の負担も比例して減少します。LED照明への切り替えやエアコンの適切な温度設定などが効果的です。
  2. 太陽光発電の導入: 自宅や事業所に太陽光発電設備を設置することで、電力会社からの購入電力量を減らせます。初期投資は必要ですが、長期的には電気代の節約につながります。
  3. PPAモデルの活用: 初期投資なしで太陽光発電を導入できるPPA(電力購入契約)モデルも選択肢の一つです。電力事業者が設備を設置・所有し、発電した電気を購入する形式です。
  4. 電力会社の選択: 電力自由化により、再エネ比率の高い電力会社を選ぶことも可能です。再エネ賦課金自体は変わりませんが、環境負荷の低減に貢献できます。

再エネ賦課金は、持続可能なエネルギー社会への移行を支える重要な制度ですが、消費者としては賢く対応することで、負担を適切に管理することが大切です。

 

再エネ賦課金のメリットとデメリット

再エネ賦課金制度には、様々なメリットとデメリットが存在します。この制度が社会全体にもたらす影響を多角的に理解することが重要です。

 

再エネ賦課金のエネルギー自給率向上への貢献

再エネ賦課金制度の最大のメリットの一つは、日本のエネルギー自給率向上に貢献している点です。日本は資源の乏しい国であり、エネルギー資源の多くを海外からの輸入に依存しています。2021年のエネルギー自給率はわずか11.2%程度と、先進国の中でも極めて低い水準にとどまっています。

 

再生可能エネルギーは国内で生産できるエネルギー源であり、その普及はエネルギー安全保障の強化につながります。特に、2011年の東日本大震災以降、エネルギー政策の見直しが進む中で、再生可能エネルギーの重要性が高まっています。

 

再エネ賦課金制度によって、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの導入が急速に進みました。2012年の固定価格買取制度開始時には約2,060万kWだった再生可能エネルギーの導入量は、2023年には約9,000万kWを超え、約4倍以上に増加しています。

 

この再生可能エネルギーの増加により、化石燃料の輸入依存度が低下し、エネルギー自給率の向上に貢献しています。また、国際情勢の変化による燃料価格の高騰リスクを軽減する効果もあります。

 

再エネ賦課金の環境負荷低減効果

再エネ賦課金制度のもう一つの重要なメリットは、環境負荷の低減効果です。再生可能エネルギーは、発電時に二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しないクリーンなエネルギー源です。

 

固定価格買取制度によって普及した再生可能エネルギーにより、2023年度には約7,800万トンのCO2排出削減効果があったと推計されています。これは、日本の年間CO2排出量の約6%に相当する量です。

 

日本は2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)を目標に掲げており、再生可能エネルギーの普及はその達成に不可欠な要素となっています。再エネ賦課金制度は、この環境目標達成を支える重要な政策手段の一つと位置づけられています。

 

また、再生可能エネルギーの普及は、大気汚染物質の排出削減にも寄与し、地域の環境改善や健康被害の低減にもつながっています。

 

再エネ賦課金の経済的負担と産業競争力への影響

再エネ賦課金制度の最大のデメリットとして挙げられるのが、電気料金の上昇による経済的負担の増加です。特に、電力を多く使用する製造業などの産業界では、国際競争力への影響が懸念されています。

 

標準的な家庭(月間電力使用量400kWh)の場合、2024年度の再エネ賦課金は月額約1,396円となり、年間では約16,752円の負担になります。2012年の制度開始時と比較すると、約16倍に増加しています。

 

企業にとっては、特に電力多消費型の製造業では、再エネ賦課金の負担が大きく、コスト増加要因となっています。このため、前述のように一部の事業者に対しては減免制度が設けられていますが、それでも国際競争の激しい分野では課題となっています。

 

また、家計への影響も無視できません。特に低所得世帯では、電気料金の上昇が家計を圧迫する要因となっており、エネルギー貧困(必要なエネルギーサービスを利用できない状態)のリスクも指摘されています。

 

再エネ賦課金の負担増加は、電力自由化による競争効果を一部相殺してしまう側面もあり、電力市場の活性化にとっても課題となっています。

 

再エネ賦課金の技術革新と産業育成効果

再エネ賦課金制度がもたらすポジティブな側面として、技術革新と産業育成効果が挙げられます。固定価格買取制度によって安定した市場が創出されたことで、再生可能エネルギー関連技術の研究開発が促進されました。

 

特に太陽光発電では、パネルの変換効率向上やコスト低減が急速に進みました。2012年当時、住宅用太陽光発電システムの設置コストは1kWあたり約46万円でしたが、2023年には約25万円程度まで下がっています。この技術進歩により、補助金がなくても経済的に成立するレベルに近づいています。

 

また、再生可能エネルギー関連産業の成長も見逃せません。太陽光発電設備の製造・施工・保守、風力発電の開発・運営、バイオマス燃料の生産・供給など、多様な分野で新たな雇用が創出されています。経済産業省の試算によると、再生可能エネルギー関連産業は2030年には約10兆円規模の市場に成長すると予測されています。

 

さらに、地域に根ざした再生可能エネルギー事業は、地域経済の活性化にも貢献しています。例えば、地域の未利用資源を活用したバイオマス発電や、農地と発電を組み合わせたソーラーシェアリングなど、地域の特性を活かした取り組みが各地で展開されています。

 

再エネ賦課金の国際比較と日本の特殊性

再エネ賦課金制度は日本独自のものではなく、ドイツやスペインなど多くの国々でも類似の制度が導入されています。しかし、各国の制度設計や負担水準には違いがあり、日本の再エネ賦課金制度には特有の課題も存在します。

 

ドイツでは、日本と同様に固定価格買取制度(EEG制度)を導入していますが、2022年からは再エネ賦課金相当額を電気料金から切り離し、連邦予算から拠出する形に変更しました。これにより、電気料金の上昇を抑制する効果が期待されています。

 

一方、日本の再エネ賦課金制度の特徴的な点として、以下のような要素が挙げられます。

  1. 地理的条件: 日本は国土が狭く、平地が限られているため、再生可能エネルギー設備の設置コストが相対的に高くなる傾向があります。
  2. 系統制約: 電力系統の容量不足や地域間連系線の制約により、再生可能エネルギーの導入拡大に制約が生じています。
  3. 買取価格の設定: 制度開始当初、特に太陽光発電の