

税額控除15%を使い切ったつもりが、実は法人税額の20%上限で還付されていなかった企業が続出しています。
5G投資促進税制(正式名称:特定高度情報通信用認定等設備を取得した場合の特別償却または税額控除制度)は、令和2年(2020年)8月31日の法律施行日を起点として始まりました。最初の適用期限は令和4年(2022年)3月31日でしたが、その後「デジタル田園都市国家構想」を背景として3年間延長され、最終的な期限は令和7年(2025年)3月31日となりました。
結論は明確です。法人税・所得税の特例措置(税額控除・特別償却)は、2025年3月31日をもって廃止されています。令和7年4月1日以降に取得した設備は、この税制の対象外です。
ただし、重要な例外があります。ローカル5G設備に係る固定資産税の課税標準の特例措置は別扱いで、こちらは令和8年(2026年)度末まで継続されています。「5G税制は全部終わった」と思い込んでいると、固定資産税の軽減を見逃す可能性があります。これは見落としがちですね。
税額控除率は、令和4年度改正から段階的に引き下げられていました。令和4年4月1日〜令和5年3月31日の間に事業の用に供した場合は取得価額の15%(条件不利地域外は9%)、令和5年4月1日〜令和6年3月31日は9%(同5%)、そして令和6年4月1日〜令和7年3月31日は一律3%という具合に、時間が経つほど恩恵が薄れる設計でした。控除上限は法人税額の20%が原則です。
参考:5G導入促進税制の概要・Q&A(経済産業省公式)
特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(METI経済産業省)
制度の対象となるのは、「認定導入計画」に基づいて導入される全国5Gおよびローカル5Gの設備です。この「認定導入計画」がポイントで、勝手に5G設備を購入しただけでは適用されません。あらかじめ経済産業大臣または総務大臣の認定を受けた導入計画に従って取得した設備のみが対象となります。認定が条件です。
対象設備は大きく2種類に分かれています。全国5Gの場合は送受信装置・空中線(アンテナ)が対象で、ローカル5Gの場合はさらに通信モジュール・交換設備・伝送路設備(光ファイバを用いたもの)も加わります。令和4年度の改正によって、ローカル5Gの対象設備には「先進的なデジタル化の取り組みに限定」という条件が追加されました。
税制優遇の措置は、次の2つから選択する形でした。
- 特別償却:取得価額の30%を特別に償却できます(いわゆる「早期費用化」)。
- 税額控除:取得価額の最大15%を法人税額から直接控除できます(ただし控除上限は法人税額の20%)。
ここで多くの企業が見落とすのが「控除上限20%」という壁です。たとえば取得価額5億円の設備について税額控除15%を適用すると7,500万円の控除枠が生まれますが、その年の法人税額が3,000万円であれば控除できる金額は最大600万円(3,000万円×20%)に制限されます。控除しきれなかった分は翌年度に繰り越すことができましたが、繰越期間は1年のみとなっていました。計画段階で法人税額の見込みとの照合が必要です。
また、同一の資産について特別償却と税額控除の併用はできません。さらに他の特別償却制度との重複適用も認められていないため、どの制度を優先するかを事前に検討する必要がありました。つまり制度の選択が重要です。
5G投資促進税制の一部見直しと延長(税理士法人山田&パートナーズ):税額控除率の年度別変遷や改正内容の詳細が確認できます。
経済産業省と総務省が廃止を要望した理由は「信頼性等のある5G基地局の導入促進に一定の役割を果たしたため」という言葉でまとめられています。政府側は「目標を達成した」という位置づけで終了させた形です。
しかし、実態を見ると少し違う景色が浮かび上がります。中部経済連合会の2024年度税制改正に対する意見書には、5G導入促進税制の令和4年度の適用件数・適用金額のデータとして「適用件数1件、適用金額2百万円」という記述が確認できます。比較すると、同じ年の地域未来投資促進税制が適用件数363件・適用額339億円であったのと比べると、極めて活用実績が少なかった実態があります。意外ですね。
活用が少なかった背景には、認定導入計画の申請手続きの複雑さ、そもそも対象となる設備が大手通信キャリア向けの特殊な基地局設備に限定されていたことが挙げられます。実際、国会審議(第208回国会財務金融委員会、令和4年2月9日)においても「5Gの促進税制の対象が一社だった」という指摘がなされています。制度設計の対象が非常に限定的だったわけです。
2024年12月2日の自民党税制調査会の会合で廃止が正式に認められ、2024年12月27日の令和7年度税制改正大綱に廃止が明記されました。DX投資促進税制も同時に廃止されており、デジタル投資関連の二大税制優遇が一気に幕を閉じた形です。
DX投資促進税制と5G導入促進税制の廃止を経産省が容認(税理士法人アピロ):廃止要望の経緯と経産省の公式理由が整理されています。
ここが今の時点で最も見落とされやすいポイントです。法人税・所得税の特例措置(税額控除・特別償却)は令和7年3月31日で終了しましたが、ローカル5G導入計画の認定を受けた設備に係る固定資産税の課税標準を3年間1/2にする特例は、別の制度として継続されています。
総務省が公表している「ローカル5G税制利用ガイド(2025年度版)」によると、ローカル5G設備に係る固定資産税の特例は令和8年(2026年)度末まで延長されています。つまり今現在(2026年3月)でも、適切な要件を満たすローカル5G導入計画の認定があれば、固定資産税の軽減を受けることができます。これは使えそうです。
ただし条件は厳しい面もあります。固定資産税の特例の対象となるためには、2025年3月31日までに導入計画の認定を受け、かつ同日までに設備を取得していることが要件とされています(経済産業省Q&A)。2025年4月1日以降に取得した設備は固定資産税の特例も対象外となる点は注意が必要です。
対象設備の固定資産税が3年間にわたり1/2に軽減されるのは、設備コストが数億円規模になることも多いローカル5G導入において、無視できない金銭的メリットです。たとえば固定資産税評価額が1億円の設備であれば、固定資産税率が1.4%として年間70万円、3年間で合計約210万円の節税効果が見込めます。3年分の効果が残る点は見逃せません。
ローカル5G税制利用ガイド(総務省):固定資産税特例の対象設備・申請方法・期限が詳しく記載されています。
5G投資促進税制が廃止されたからといって、すべての税制優遇・補助金が消えたわけではありません。重要なのは、5G設備への投資をどの「目的」で位置づけるかによって、活用できる代替制度が変わる点です。目的の整理が先決です。
まず、中小企業が5G設備を含む設備投資を行う場合は「中小企業経営強化税制」が使える可能性があります。この制度は2025年度税制改正によって適用期限が2027年3月31日まで2年延長されており、一定の要件を満たす設備取得について税額控除10%または特別償却100%が受けられます。
また、IoT活用や自動化投資を伴う形でローカル5G設備を導入する場合は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)」の対象となる可能性があります。補助上限は枠によって750万円〜3,000万円規模と大きく、設備取得費用の一部を直接カバーできます。
金融に興味を持つ投資家・企業オーナーの立場から見た独自の視点として、見落とされがちな点を一つ補足します。5G投資促進税制は「通信インフラへの投資」を直接支援するものでしたが、廃止後の日本の税制設計は「使途・目的ベース」から「産業・企業規模ベース」へとシフトしています。つまり、これからは「5G設備を入れるから優遇」ではなく「中小企業が設備投資するから優遇」「特定産業への国内投資だから優遇」という文脈で制度を選ぶ発想に切り替えることが、節税・補助金活用の精度を高めます。
制度設計の方向性が変わった今、特定の技術名称でなく「自社の投資目的」から制度を探す逆引き発想が有効です。税理士や認定経営革新等支援機関(認定支援機関)に相談する際も、「5G投資の代替制度を探している」ではなく「DX・省人化・スマート化を目的とした設備投資計画がある」と伝えたほうが、より適切な制度提案につながります。
| 代替制度 | 対象 | 主な優遇内容 | 適用期限(目安) |
|---|---|---|---|
| 中小企業経営強化税制 | 中小企業者等 | 即時償却or税額控除10% | 2027年3月31日 |
| ものづくり補助金 | 中小企業・中堅企業 | 補助率1/2〜2/3、上限750万〜3,000万円 | 毎年公募(要確認) |
| IT導入補助金 | 中小企業 | 補助率最大3/4 | 毎年公募(要確認) |
| ローカル5G固定資産税特例 | ローカル5G認定事業者 | 課税標準3年間1/2 | 2026年度末まで |
複数の制度を組み合わせることが基本です。
中小企業投資促進税制(中小企業庁):2027年3月31日まで延長された中小企業向け設備投資税制の概要が確認できます。