

「貸した株が戻らないことがある」なんて、信じられますか?
有価証券貸借取引(SLB: Securities Lending and Borrowing)は、株式などを一時的に貸し出すことで流動性を高める仕組みです。貸し手は保有する株を証券金融会社を通して借り手(一般的には証券会社や機関投資家)に貸し、一定期間後に同銘柄・同数量の株式を返却されます。
この取引では担保として現金や国債などを差し入れることが求められ、証券金融会社がその担保を保全します。つまり、株式市場の裏側で株の「貸出」と「返却」が行われているのです。
株式の貸借バランスが日々の市場需給を調整します。つまり株価形成の一部でもあります。
有価証券報告書などではこのデータも開示されています。信用市場の健康度を示す指標でもあるんですね。
日本証券金融株式会社|株式貸借取引の概要
多くの個人投資家は「貸していても配当がもらえる」と考えがちですが、実際には「配当金」ではなく「配当金相当額」が支払われます。ここが大きな違いです。
税法上、この「配当金相当額」は配当所得ではなく雑所得または事業所得として扱われます。そのため通常の株式配当よりも税金の控除が少なくなるケースがあります。
つまり、貸出で得られる利益より税負担で損をする可能性があります。
配当落ちの時期に貸出を行うと、約2〜3%分の実効リターンが変わる可能性があります。これが投資家の想定外の結果を生むことも。損益通算ができない点も注意が必要です。つまり節税面では不利になりやすいということですね。
国税庁|有価証券貸借取引に係る税務の取扱い
SLBでは貸出側は借り手から担保(保証金)を受け取り、通常105%以上の担保率を求めます。
例えば、100万円の株を貸す場合、借り手は105万円相当の現金や有価証券を差し入れます。市場の変動次第で担保の追加(マージンコール)が発生する場合もあります。これを怠ると取引停止のリスクがあるため、日々の評価が重要です。
担保の管理は自動処理されています。つまり、証券金融会社にとってはリスクマネジメントの要です。
また、貸し手は貸株料(年率0.1〜5.0%程度)を受け取ります。ただし銘柄によって大きな差があり、空売り人気の高い銘柄ほど料率が上がります。つまり、リスクとリターンが比例する構造です。
一見すると信用取引と似ていますが、目的とリスクが異なります。信用取引は「売買のための資金・株」を借りる行為なのに対し、有価証券貸借取引は「保有株の一時貸出」による収益化です。
信用取引では建玉の管理が中心ですが、貸借取引では実際の現物株を扱うため、現物保有者の管理も必要になります。
どちらもレバレッジに関係します。つまりリスクを理解せずに行うと損失が拡大します。
特に近年はネット証券でも自動貸出プログラム(例:SBI証券・楽天証券の自動貸株サービス)が普及しています。この機能をオンにしておくと、知らないうちに株が貸し出されているケースも。設定確認が重要です。
自動貸株は便利です。ですが税務上・議決権上のデメリットを理解したうえで利用すべきですね。
SBI証券|貸株サービスの注意点
有価証券貸借取引の裏側には「信用供与」というリスク構造があります。2020年以降、証券会社の一部でシステムトラブルにより担保評価が誤り、返却が遅れた事例も報告されています。
こうしたリスクは小さく見えますが、金融庁の報告では年間100件以上の苦情が出ており、返却不能による損失は1件あたり平均200万円超でした(2023年度金融ADR統計より)。
つまり、システムリスクは現実的な脅威です。
対策としては、貸出先の格付け確認・取引額の分散・短期貸出契約の活用が有効です。加えて、担保の内容を「現金中心」にすることで、価格変動リスクを抑えることもできます。
損失防止の基本はリスク分散です。つまりひとつの証券会社だけに頼らないことです。