

信託報酬が安くても、トラッキングエラーが大きいと10年で0.68%以上リターンが下ぶれする。
インデックスファンドは、日経平均やTOPIX、S&P500などの指数(ベンチマーク)に連動した運用成果を目指す。しかし実際には、ベンチマークと完全に一致した動きにはならない。その「ズレ」を数値で示したものがトラッキングエラーだ。
具体的には、一定期間におけるファンドのリターンとベンチマークのリターンの差(超過リターン)を計算し、その標準偏差を年率換算した値として表す。標準偏差というと難しく聞こえるが、「日々の誤差がどれだけバラついているか」を数字にしたものだと理解すればいい。
たとえばトラッキングエラーが1%という場合、ファンドのリターンがベンチマーク±1%の範囲に収まる確率が約67%だということを意味する。それ以上のズレが生じる可能性も、統計的に3分の1ほど存在するということだ。
つまり「小さければ小さいほど、ベンチマークに忠実な運用ができている」ということです。
一方でアクティブファンドの場合、話が変わってくる。アクティブファンドはベンチマークを上回るリターンを狙って独自に銘柄を選択するため、むしろトラッキングエラーが大きい方が「独自の運用戦略がしっかり機能している」ことの証拠になる。つまり同じ「大きい・小さい」の数字でも、インデックスとアクティブでは全く逆の評価になる点は、混同しやすいので注意が必要だ。
なお、よく似た言葉に「トラッキングディファレンス」がある。こちらはファンドとベンチマークのリターンの差そのもの(単純な引き算の値)を指し、トラッキングエラーはその標準偏差だ。「どれだけリターンがずれたか(結果の差)」を見るならトラッキングディファレンス、「どれだけ連動性がブレているか(動きの揺れ)」を見るならトラッキングエラーと使い分けると分析の精度が上がる。
参考:インデックス型ETFのパフォーマンス評価指標の解説(野村アセットマネジメント)
では実際に、どの程度の数値であれば「優秀なインデックスファンド」と判断できるのか。業界でよく言われる目安を整理すると以下になる。
| トラッキングエラーの水準 | 評価 |
|---|---|
| 0.1%未満 | 非常に優秀。ほぼベンチマーク通りの動き |
| 0.1〜0.5% | 合格ライン。国内の優良インデックスファンドの多くはここに収まる |
| 0.5〜1.0% | やや大きい。要注意ゾーン |
| 1.0%以上 | 連動性が低く、インデックスファンドとしては問題あり |
楽天証券トウシルのデータによれば、運用商品としてのインデックスファンドであれば1%未満には収めたいところとされており、200銘柄程度の組み入れが必要とも言われている。これはTOPIX連動型を例にした話だが、銘柄数50銘柄だと推定トラッキングエラーが2.32%、100銘柄で1.33%、200銘柄でようやく0.70%まで下がるというデータが示されている。数字がイメージしにくければ、「0.7%のズレ」とはコーヒー1杯分の値段(約200円)を毎月少しずつ余分に削られ続けるようなイメージに近い。
また、モーニングスターが2022年12月末時点のデータとして公表した調査では、日経225連動型の過去1年トラッキングエラーの平均が1.08%、TOPIX連動型が1.39%だった。過去10年に延ばすとそれぞれ0.89%、1.15%と長期では数値が改善する傾向も確認されている。
ここで重要なのは「同じ指数を追うファンド同士で比較する」という原則です。
異なる指数を追うファンド間では、そもそも構成銘柄の性質が違うため、単純な数字の大小比較に意味がない。「日経225連動型のAファンドとS&P500連動型のBファンドのトラッキングエラーを比べる」といった比較は意味をなさないので注意しよう。
参考:モーニングスターによるインデックスファンドのトラッキングエラー実態調査
インデックスファンドを選ぶ際に確認しておきたいトラッキングエラーとは - wealthadvisor.jp
多くの投資家が「信託報酬が低いファンドはトラッキングエラーも小さいはず」と考えがちだが、実際はそれだけではない。これが落とし穴になっている。
トラッキングエラーが生じる主な原因は4つある。
特に見落とされがちなのが信託報酬以外のコストだ。モーニングスターの調査では、同じ日経225連動型ファンドでも信託報酬の最高値が0.88%、最低値が0.05%と約17倍の差がある。同じ指数に投資しているのにこれほどの差がある、というのは意外に感じる人が多いだろう。
信託報酬だけが指標ではない、という認識が大切です。
野村アセットマネジメントが公表しているトラッキングディファレンスの要因分解例では、信託報酬が最も高い0.13%のファンドでも、その他費用の低さとレンディング等の運用工夫によって、総合的なトラッキングディファレンスが3社中で最も良好だったケースが報告されている。信託報酬だけを見てファンドを比較するのは、スーパーで「値札だけを見て品質を判断する」ようなもので、実態とかけ離れた選択になりうる。
実際に確認する際は、信託報酬に加えて「総経費率(TER)」や「実質コスト」という数字もあわせてチェックする習慣をつけておくといい。
参考:ETFのコスト構造とTER(総経費率)の詳細解説
トラッキングエラーの目安を知っても、実際に確認できなければ意味がない。具体的な確認場所と手順を整理しておこう。
まず最もアクセスしやすい方法が、SBI証券のファンド詳細画面を使う方法だ。各ファンドのページに「トラッキングエラー」の項目があり、3年以上の運用実績があるファンドについては数値が表示されている。ファンド名を検索して詳細ページを開き、「リスク指標」や「運用評価」セクションを見ればいい。
次に、モーニングスター(morningstar.co.jp)でも確認できる。こちらはファンドごとの詳細データが充実しており、トラッキングエラーに加えてシャープレシオやインフォメーションレシオなども一括確認できる。同じベンチマークを持つ複数のファンドを横並びで比較しやすい点が強みだ。
確認方法はシンプルです。
また、各運用会社が毎月発行している月次レポート(月報)にも、ベンチマークとファンドの騰落率の比較が掲載されているケースが多い。月報はPDF形式で運用会社の公式サイトや証券会社のファンド詳細ページからダウンロードできる。月報の「運用報告」欄で「ベンチマークとの乖離」欄を確認するだけで、そのファンドの連動精度がわかる。
実際の使い方としては、次の3ステップが基本だ。
この手順で比較すると、「信託報酬は同じでもトラッキングエラーに差がある」ケースや、逆に「信託報酬はやや高くてもトラッキングエラーが極めて小さい優良ファンド」が見えてくることがある。これが見えるかどうかで、長期的なリターンに差がつく。
なお、楽天証券では一部のETFのトラッキングエラーがベーシスポイント(bp)表示になっているケースがある。1bp=0.01%なので、数値が大きく表示されていても慌てずに100で割って%に換算すればいい。これを知らないと「100bpって大きすぎる!」と誤解してしまうことになる。
参考:大和アセットマネジメントによるトラッキングエラーの用語解説
トラッキング・エラー | iFreeETF | 大和アセットマネジメント株式会社
トラッキングエラーはファンドを評価する一つのピースに過ぎない。ここではあまり語られない指標「インフォメーションレシオ(IR)」との組み合わせを紹介する。これを知っているかどうかで、ファンド選びの解像度が格段に上がる。
インフォメーションレシオとは、ファンドがどれだけ「効率よくリターンの上乗せ(超過リターン)を生み出しているか」を示す指標で、計算式は以下の通りだ。
インフォメーションレシオ = 超過リターン(年率) ÷ トラッキングエラー(年率)
たとえば、超過リターンが年率1%で、トラッキングエラーが年率2%なら、インフォメーションレシオは0.5となる。SBI証券の解説によれば、この数値が0.5以上なら優良なファンドと評価されるとされている。
これが使えそうです。
インデックスファンドのようにベンチマークにできる限り連動させることが目的のファンドでは、トラッキングエラーが小さければ小さいほど良い評価になる。一方、アクティブファンドを評価するときは、「ある程度トラッキングエラーが大きくても、それに見合う超過リターンを出せているか」を確認するためにインフォメーションレシオを使う。インフォメーションレシオが低ければ、リスク(ブレ)を取っただけで報われていないことを意味する。
金融庁が2021年に公表した資産運用業高度化プログレスレポートでも、インフォメーションレシオ(IR)がプラスのファンドはトラッキングエラーが相対的に高い傾向にある一方で、トラッキングエラーが低いファンドにはIRが低いケースも多いという分析結果が示されている。つまり「トラッキングエラーが小さい=良いファンド」という単純な図式だけで判断するのは危険で、そのファンドの目的(インデックス型かアクティブ型か)に応じた使い分けが必要なのだ。
実際にiDeCoや新NISAで投資信託を選ぶ際、トラッキングエラーだけを見て選んでいたとしたら、アクティブファンドの評価を誤っている可能性がある。インデックスファンドにはトラッキングエラーの小ささ、アクティブファンドにはインフォメーションレシオの高さを判断基準に加えると、より的確なファンド選びができる。
参考:インフォメーションレシオの解説(オリックス銀行)

ABS ラインメーター: 滑り止めパッドとエラー修正を備えた双方向海水/淡水カウンター双方向ライントラッキングカウンター