相続財産一覧の作成方法と評価のポイント完全ガイド

相続財産一覧の作成方法と評価のポイント完全ガイド

相続財産一覧の作成

相続財産一覧作成の基本ステップ
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財産の種類別分類

不動産・動産・金融資産・債務に分けて整理

📍
所在と数量の記載

財産の特定に必要な詳細情報を正確に記録

💰
適切な評価方法

相続税法に基づいた正確な財産評価を実施

相続財産一覧に含める財産の種類

相続財産一覧を作成する際は、被相続人が所有していたすべての財産を網羅的に把握する必要があります。相続財産にはプラスの財産だけでなく、マイナスの財産も含まれることを理解しておくことが重要です。

 

プラスの財産

  • 不動産:宅地、建物、駐車場、店舗、農地、田畑、山林、借地権、借家権
  • 動産:自動車、家財道具、骨董品、美術品、宝石、貴金属
  • 金融資産:現金、預貯金、株式、投資信託、配当金、貸付金、手形、売掛金
  • 知的財産権:商標権、著作権、意匠権、特許権
  • その他:電話加入権、ゴルフ会員権、損害賠償請求権、賃貸人・賃借人としての契約上の地位

マイナスの財産

  • 借入金やローン
  • 滞納していた税金や家賃
  • 連帯保証人としての責任
  • 損害賠償責任

特に見落としがちなのが、**家財道具(家庭用財産)**です。家具や家電、衣類や靴、楽器やスポーツ用品なども相続財産として相続税の課税対象となります。親の相続が発生し、別世帯で暮らしている子供が相続人となるケースでは、親の家にある家財道具のほとんどを相続することになるため、適切な評価が必要です。

 

近年では、暗号資産(仮想通貨)のような新しい形態の財産も増えており、相続財産調査をより慎重に行う必要があります。

 

相続財産一覧の作成方法と記載項目

相続財産一覧の作成には決まった書式はありませんが、相続財産目録として機能するために最低限記入すべき項目が3つあります。

 

1. 相続財産の種類
財産をカテゴリ別に分類して記載します。

  • 不動産(土地および建物)
  • 預貯金(銀行など金融機関に預けているお金)
  • 有価証券(株や国債など)
  • 現金(金庫などにあったお金)
  • 動産(自動車や家具・家電など)
  • 債務(マイナスの財産、借金)

2. 相続財産の所在
財産を特定するために詳細な所在を記載します。

  • 土地:所在を地番まで記入
  • 建物:家屋番号まで記入(未登記建物の場合は家屋番号なし)
  • 株式:銘柄、証券会社を記入
  • 預金:銀行名・支店名・預金種目・口座番号を記入
  • ゴルフ会員権:ゴルフ場の名前・運営会社・会員番号を記入

3. 相続財産の数量
財産の量を特定するために記載します。

  • 不動産:地積(土地の面積)を記載
  • 銀行預金:死亡日時点での残高を記載
  • 株式:株式数を記載

遺産分割協議書を作成する場合は、より具体的な記載が求められます。例えば、不動産の場合は登記簿謄本の記載内容に基づいて、所在、地番、地目、地積、建物の種類、構造、床面積などを正確に記載する必要があります。

 

相続財産一覧の評価方法とポイント

相続財産の評価は、相続税の計算において極めて重要です。特に家財道具の評価方法には注意が必要です。

 

家財道具の評価基準
家財道具の相続税評価方法は、その価値によって異なります。

  • 5万円以下:「家財一式」としてまとめて評価
  • 5万円超:個別に評価

具体的な評価方法
家電製品
パソコン、スマートフォン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの古い家電は、減価償却により5万円以下の評価になることがほとんどです。しかし、相続発生直前に購入した5万円以上の高級家電や、相続開始後に5万円以上で売却した家電については、業者の買取価格等を参考に個別評価します。

 

家具
ソファー、テーブル、椅子、本棚、ベッドなどの古い家具も、減価償却により5万円以下の評価になることが多く、「家財道具一式」として評価します。高級家具や骨董価値のある家具は個別評価が必要です。

 

自動車
自動車の評価額によって、名義変更手続きの必要書類が異なるため、正確な評価が重要です。

 

不動産の評価
不動産の評価は相続税額に大きく影響するため、専門家による適正な評価が重要です。土地の形状や立地条件により、評価額が大きく変わる可能性があります。

 

相続財産一覧作成時の注意点と漏れ防止策

相続財産の調査で見落としがちな財産や注意すべきポイントについて解説します。

 

見落としやすい財産

  • ネット銀行の口座:通帳がないため発見が困難
  • 証券会社の口座:特にオンライン証券
  • 暗号資産(仮想通貨):新しい形態の財産
  • 貸金庫の中身:銀行の貸金庫に保管されている財産
  • 他人に貸している金銭:借用書の確認が必要
  • 保険金の受給権生命保険金は相続財産に含まれない場合もあるが確認が必要

調査方法のポイント

  • 郵便物の確認:金融機関からの郵便物で口座の存在を確認
  • 通帳・印鑑の保管場所:金庫や仏壇の引き出しなど
  • 税務署への確認:過去の確定申告書で収入源を把握
  • 法務局での調査:不動産の名寄帳で所有不動産を確認

デジタル財産の調査
現代では、スマートフォンやパソコンに保存されている情報から、オンライン口座や暗号資産の存在が判明することがあります。パスワード管理アプリやブラウザの保存情報も重要な手がかりとなります。

 

相続人間での情報共有
相続人が複数いる場合は、それぞれが知っている被相続人の財産情報を共有することで、見落としを防ぐことができます。兄弟姉妹で異なる情報を持っている場合があるため、定期的な情報交換が重要です。

 

相続財産一覧を活用した遺産分割協議

作成した相続財産一覧は、遺産分割協議において重要な役割を果たします。

 

遺産分割協議での活用方法
遺産分割協議書では、相続財産一覧を「別紙遺産目録」として添付するか、協議書内に全ての遺産の内容を列挙します。これにより、被相続人名義の遺産であっても実は第三者の遺産である場合の紛争を防ぐことができます。

 

具体的な記載例
専門家が作成する遺産分割協議書では、以下のような文章で遺産の範囲を確認します。
「相続人全員は、別紙遺産目録記載の財産が、被相続人の遺産であることを確認する。」
財産の分配方法
相続財産一覧に基づいて、各相続人が取得する財産を具体的に記載します。例えば。

  • 土地の場合:所在、地番、地目、地積を正確に記載
  • 建物の場合:所在、種類、構造、床面積を記載
  • 預貯金の場合:銀行名、支店名、預金種目、口座番号を記載
  • 現金の場合:具体的な金額を記載

税務上の配慮
相続財産一覧は相続税申告でも使用されるため、税務上の評価額も併せて記載しておくと便利です。特に不動産については、相続税評価額と実際の売却価格に差がある場合があるため、専門家のアドバイスを受けることが重要です。

 

紛争予防のための工夫
将来の紛争を防ぐために、相続財産一覧には「記載されていない財産が後日発見された場合の取り扱い」についても明記しておくことが推奨されます。例えば、特定の相続人が取得する、または再度協議するなどの取り決めを記載します。

 

適切な相続財産一覧の作成により、円滑な相続手続きと税務申告が可能となり、相続人間の紛争も防ぐことができます。複雑な財産構成の場合は、相続に詳しい専門家への相談を検討することをお勧めします。