相続放棄の確認方法|家庭裁判所への照会手続きを詳しく解説

相続放棄の確認方法|家庭裁判所への照会手続きを詳しく解説

相続放棄確認の方法

相続放棄確認の3つの主要方法
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直接確認

相続放棄した本人に直接連絡して確認する最も簡単な方法

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通知書確認

相続放棄申述受理通知書のコピーを送ってもらう方法

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家庭裁判所照会

管轄家庭裁判所に申述の有無を照会する公式な確認方法

相続放棄の確認が必要になるケース

相続放棄の確認が必要となる場面は、主に以下のような状況で発生します。

 

次順位相続人の立場から確認が必要な場合

  • 先順位相続人が全員相続放棄をしなければ、次順位相続人は相続放棄の手続きができない
  • 第1順位(子・孫)が相続放棄した場合、第2順位(父母・祖父母)に相続権が移る
  • 第2順位も相続放棄すれば、第3順位(兄弟姉妹・甥姪)に相続権が移る
  • 自分に相続権があるかを判断するため、先順位の相続放棄状況を把握する必要がある

債権者の立場から確認が必要な場合
債権者等が相続放棄を確認する理由は、手続きを進めたいからという意味があります。相続人が全員相続放棄をしているなら、債権が回収不能になるので次の手続きに進みたいからです。

 

音信不通の相続人がいる場合
故人が生前に配偶者と離婚し、子供と音信不通となっている場合など、連絡が取れない先順位相続人がいるケースでは特に重要になります。こうした状況では、葬儀を行った親兄弟姉妹にとって、第1順位の子供が相続放棄を行っているかどうかが深刻な問題となります。

 

相続放棄申述受理通知書による確認方法

相続放棄が受理されると、家庭裁判所から申述人に「相続放棄申述受理通知書」が送られてきます。

 

相続放棄申述受理通知書の記載内容

  • 事件番号
  • 申述人氏名(相続放棄をした人)
  • 被相続人氏名(亡くなった人)
  • 申述を受理した日
  • 送付元の家庭裁判所の記載

通知書による確認の具体的な方法
一般的には、相続放棄申述受理通知書のコピーを送ってもらうことで、相続放棄の確認を取ることが多いです。ただし、相続人から聞いただけでは判断できないので、相続放棄申述受理通知書のコピーを送ってもらう必要があります。

 

通知書確認の限界と注意点
この方法は連絡が取れることが前提条件になります。連絡を取ることができなければ、この方法は選択できません。また、通知書は再発行ができないため、紛失した場合は相続放棄申述受理証明書を取得する必要があります。

 

相続放棄申述の有無照会による確認方法

連絡が取れない場合でも、家庭裁判所に相続放棄申述の有無照会をすることで、相続放棄をしているか確認することができます。

 

照会申請の基本情報

  • 申請先: 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
  • 手数料: 無料
  • 申請可能者: 利害関係を疎明した第三者(共同相続人、後順位相続人、相続債権者等)

必要書類一覧
照会申請には以下の書類が必要です。

  • 照会申請書
  • 被相続人等目録
  • 被相続人の住民票の除票(本籍地が表示されているもの)
  • 照会者と被相続人の発行から3か月以内の戸籍謄本
  • 利害関係を証する書面

利害関係を証する書面の詳細
親族の場合で直系尊属である父母や祖父母などの第2順位相続人、傍系血族である兄弟姉妹甥姪などの第3順位相続人である場合は、以下の書類が必要です。

  • 被相続人の出生~死亡までの戸籍
  • 被相続人の両親の出生~死亡までの戸籍
  • (被相続人の兄弟姉妹が亡くなっている場合は亡くなっている兄弟姉妹の出生~死亡までの戸籍)

照会結果の内容
申請書に相続人の氏名を記載して提出すると、相続放棄しているか返答があります。相続放棄していると事件番号も記載されるので、相続放棄申述受理証明書を取得することもできます。

 

相続放棄確認の注意点とタイミング

相続放棄の確認には、いくつかの重要な注意点があります。

 

照会申請のタイミングに関する注意
照会申請書は基本的には照会請求の申請日までの間に相続放棄がなされているか否かの家庭裁判所からの回答となります。したがって、被相続人が亡くなった後すぐに照会請求した場合には、申請日以降で対象者が相続放棄を行っている可能性もあります。

 

相続放棄期限の考慮
相続放棄の3か月の期限とは相続開始を知った時からとなっていますが、債権者などから督促が来て債務の存在を初めて知った時にはその時から3か月以内の申請も認められるため、タイムラグが生じることになります。

 

形式的な審査の限界
家庭裁判所は、相続人から相続放棄の申述書の提出があれば、それを受理して良いかを形式的に判断します。形式的というのは、法律で定められた期間内に申立てが行われているか、相続財産の処分など法律で禁止された行為を行っていないかということを、あくまで提出された資料に基づいて判断することです。

 

実態が伴わない相続放棄のリスク
実態が伴わない相続放棄は、後日債権者から効力を覆されるおそれがあります。資料に出てこない部分でウソをつくと、相続放棄をする前に禁止されている行為を行っていた場合などに問題となる可能性があります。

 

照会可能期間の制限
照会できる期間は、被相続人の死亡日が平成12年以降の場合は、現在まで可能です。これより古い記録については確認できない場合があります。

 

相続放棄確認後の手続きと対応策

相続放棄の確認が取れた後の具体的な対応について説明します。これは他の記事では詳しく触れられていない重要なポイントです。

 

確認結果に基づく具体的な対応
先順位相続人が相続放棄していた場合

  • 自分が新たに相続人となるため、3か月以内に相続放棄の判断が必要
  • 被相続人の債務状況を詳しく調査する
  • 必要に応じて専門家(司法書士・弁護士)に相談する
  • 他の同順位相続人との連絡・調整を行う

先順位相続人が相続放棄していなかった場合

  • 自分には相続権がないため、基本的に何もする必要がない
  • ただし、先順位相続人が後日相続放棄する可能性もあるため、状況を注視する
  • 債権者からの連絡があった場合は、自分に相続権がないことを説明する

相続放棄申述受理証明書の活用
相続放棄を確認した後、第三者への証明が必要な場合は、相続放棄申述受理証明書を取得します。

 

  • 取得が必要なケース: 相続放棄をした人以外が預貯金の解約や不動産の名義変更等の手続きを行う場合
  • 取得方法: 相続放棄を行った家庭裁判所へ交付申請書と150円分の収入印紙を提出
  • 必要書類: 利害関係が分かる書類(戸籍謄本、相続関係図等)

債権者対応のポイント
相続放棄の確認後、債権者から連絡があった場合の対応も重要です。

 

  • 相続放棄申述受理通知書の写しまたは証明書を提示する
  • 口頭での説明だけでは不十分な場合が多い
  • 債権者によっては証明書の原本を要求される場合もある

複数相続人がいる場合の調整
同順位の相続人が複数いる場合は、全員で連携して対応することが重要です。

 

  • 相続放棄の意思統一を図る
  • 手続きのタイミングを合わせる
  • 費用負担の分担を決める
  • 連絡体制を整備する

静岡家庭裁判所の相続放棄照会に関する詳細な手続き案内
https://www.courts.go.jp/shizuoka/saiban/tetuzuki/souzoku_houki/index.html
継続的な状況確認の重要性
相続放棄の確認は一度行えば終わりではありません。特に複雑な家族関係の場合は、継続的な状況確認が必要になることもあります。

 

  • 定期的な照会で最新状況を把握する
  • 新たな相続人が発覚した場合の対応を準備する
  • 時効や除斥期間などの法的期限を意識する

このように、相続放棄の確認は単なる事実確認にとどまらず、その後の適切な対応までを含めて考える必要があります。不明な点がある場合は、早めに専門家に相談することをお勧めします。